冷たく澄んだ冬の空気に、高貴で優しい香りが漂う。黄色い果皮をむくと輝く果肉が現れ、「サクッ、プリッ」とした独特の食感とともに、穏やかな酸味と爽やかな甘みが広がる。いちき串木野市の特産果実「サワーポメロ」だ。
この果実に情熱を注ぐのが愛知県から移り住んだ磯部泰良さん(32)。高校時代、鹿児島県立農業大学校のオープンキャンパスで味わった鹿児島産フルーツのおいしさに衝撃を受け、「この土地で農業をしたい」と進路を決めた。
同市で就農して8年。手に入れた畑は防風林が生い茂り、植えられていたサワーポメロの木の場所すら分からないほど荒れた耕作放棄地だった。愛知から駆けつけた父と2人、チェーンソーを手に開墾を始め、剪定を重ねる日々。安定して実るまでには、約4年の歳月を要した。
現在も畑の管理に妥協はない。木の状態を見極めながら剪定(せんてい)を行い、土壌分析をもとに肥料の量やタイミングを調整する。自然と向き合いながら、最適なバランスを探り続けている。東シナ海を望む石積みの段々畑は、水はけが良く、潮風が運ぶミネラルが土壌を豊かにする。恵まれた環境で育ったサワーポメロは、収穫後に追熟することで、香りとコクを一層深めていく。
「土地を貸してくれたり、技術を教えてくれたり。地域の人の温かさに支えられています」。消防団や青年クラブにも積極的に参加し、地域に溶け込みながら農業を続ける。「いいものを作って、恩返しがしたい」。サワーポメロを思わせる、澄んだまなざしで語った。
■いちき串木野物産さのさ館
サワーポメロをはじめ、いちき串木野市の港で水揚げされた鮮魚や水産加工品、とれたての野菜が店内に満載。同じ敷地内に、「総合観光案内所」や天然マグロを味わえる「串木野市漁協直営 海鮮まぐろ家」もある。2〜3月には生産者ごとのサワーポメロを味わうことができる「いちき串木野まるっとポメロまつり」を開催。季節ならではの味わいをぜひ楽しんで。
住所/いちき串木野市浅山3018-5
電話/0996(32)0780
営業時間/午前8時半~午後6時
休/1月1~3日
P/あり