- 更新日 : 2026年1月14日
8時間以上勤務の休憩時間は何分?労働基準法のルールや違反事例・対処法を解説
休憩時間は労働基準法で明確に定められており、付与方法にも「途中付与」「自由利用」など守るべきルールがあります。
休憩時間が守られていない場合、企業側に未払い賃金や法令違反のリスクが生じる可能性もあるので要注意です。
本記事では、休憩時間の基礎知識や法律上の原則、8時間以上勤務で特に起こりやすい違反事例、適切な対処法までわかりやすく紹介します。
目次
そもそも休憩時間とは?
休憩時間は、従業員が業務の指示や拘束から離れ、心身を回復させるために設ける時間です。
休憩の付与は「労働時間の長さ」に応じて義務付けられており、労働時間が8時間を超える勤務では60分以上の休憩が必要です。
まずは休憩の基本的な考え方を整理しましょう。
休憩時間の定義
休憩時間とは、労働者が業務の指示や拘束から完全に離れた時間を意味します。
単に業務量が少ない時間帯や手が空いている状態を休憩と位置づけるのではなく、使用者の指揮命令下から外れ、労働をおこなう義務がない状態が休憩時間の大前提です。
そのため、休憩中の過ごし方は原則として労働者の自由であり、会社が外出や行動内容を制限する運用は原則として認められていません。
たとえば、電話当番や来客対応、内線待機を指示されている場合、見た目は休憩でも実態として業務対応が求められているため、休憩時間ではなく労働時間と判断されます。
とくに8時間以上勤務のような長時間労働では、自由利用ができているかどうかが健康確保の観点からも重要です。
企業には、形式的な休憩設定にとどまらず、実質的に休める環境を整える義務があります。
勤務時間ごとの休憩時間
労働基準法では、勤務時間に応じて必要となる休憩時間の最低基準が明確に定められています。
具体的には、労働時間が6時間を超える場合、少なくとも45分の休憩を付与しなければなりません。
さらに、労働時間が8時間を超える勤務では、60分以上の休憩が義務付けられています。
休憩は単に時間数を満たせばよいわけではなく、労働時間の途中に与える必要があるため、終業前にまとめて休憩を取らせる運用は認められません。
企業側には、法定時間を満たすだけでなく、実際に疲労回復につながる形で休憩を付与する姿勢が求められます。
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休憩時間に関する法律上の原則
労働基準法では、休憩を「途中付与」「自由利用」「一斉付与」という3つの原則に沿って与える必要があると定めています。
ここではそれぞれの原則について詳しく解説します。
途中付与の原則
途中付与の原則とは、休憩を労働時間の途中に与える考え方です。
休憩は、労働による疲労を回復させる目的で設けられているため、勤務の最初や最後にまとめて与える形では、原則として休憩とは認められません。
労働時間が長くなるほど、勤務の途中で適切に休憩をはさみ、心身の負担を軽減できているかどうかが重要になります。
実務上は、業務の都合で休憩を後ろにずらす運用が見られるケースがある一方で、実態として休憩として機能していない場合は労働時間として扱われる可能性にも要注意です。
休憩ではなく労働時間と判断された時間については、賃金の支払いが必要となる点も留意しておきましょう。
自由利用の原則
自由利用の原則は、休憩中に労働者が業務から完全に解放され、時間の使い方を自分で決められる状態を求める考え方です。
たとえば使用者の指示に従う必要があったり、業務対応に備えて待機したりといった状況がある場合、休憩時間は自由に利用できるとはいえません。
休憩と認められるかどうかの判断においては、業務上の指示や対応から離れている状態であるかどうかが重要な基準です。
形式上は休憩時間を設けていても、業務との関係が断ち切れていなければ、休憩とは扱われない点に注意しましょう。
なお、休憩中の業務対応が常態化している場合、未払い賃金の発生による是正指導につながるおそれがある点も留意しておきたいポイントです。
一斉付与の原則
一斉付与の原則とは、同じ事業場で働く労働者に対して、原則として同じ時間帯に休憩を与えるという考え方です。
休憩を一斉に付与した場合、休憩の時間帯に大きなばらつきが生じたり、業務の都合によって特定の人だけが休憩を後回しにされたりする状況が起こりにくくなります。
一斉に休憩を付与することが難しい場合には、労使協定を結ぶ対応によって個別休憩の付与が認められています。
協定がないまま個別付与を続けていると、休憩付与の方法そのものが問題とされ、労基署から指導を受けるケースも少なくありません。
そのため、事前に合意内容を整理し、書面でルールを明確にしておく取り組みが重要です。
ただし、運輸交通業や保健衛生、接客業など、一定の業種の場合、労使協定を締結することなく、一斉付与の対象から除外されます。
8時間以上勤務で起こりやすい休憩時間の違反事例4つ
8時間以上勤務の現場では、業務量の多さや人員不足を背景に、休憩が形式的になりやすい傾向があります。
休憩を与えているつもりでも、実態としては法令違反に該当するケースも少なくありません。
ここでは、実務で特に多く見られる代表的な違反パターンを整理します。
①待機時間が休憩扱いされている
8時間以上勤務の現場でよく見られる違反のひとつが、待機時間を休憩として扱ってしまうケースです。
表向きは休憩時間とされていても、電話番や来客対応を求められている状態では、労働者は業務から完全に解放されているとはいえません。
業務対応を前提とした待機が求められている状態は、見た目にかかわらず休憩には該当しないと判断されます。
とくに、8時間以上勤務が続く受付や販売、介護などの現場では、人員に余裕がなく、「誰かがその場にいなければならない」という運用になりやすい傾向があります。
結果的に休憩時間中も持ち場を離れられず、実態として業務対応を続けているケースが少なくありません。
待機時間を休憩扱いにしている運用は、未払い賃金が発生するおそれがあり、労基署の監査において問題視されやすい点に注意が必要です。
②休憩中に軽作業を依頼している
休憩時間中に業務対応を依頼する運用も、休憩としての要件を満たしているとはいえません。
業務が立て込むと、「少しだけ確認してほしい」「急ぎでこれだけ対応してほしい」といった形で、休憩中の従業員に作業を依頼してしまう場面が起こりがちです。
とくに8時間以上勤務の現場では、業務量の多さを理由に短時間の業務対応が繰り返され、休憩時間が断続的な作業時間に置き換わるケースも見られます。
自由利用の原則に反する運用が続くと、休憩としての役割が十分に果たされず、社員の疲労回復が不十分なまま勤務が続いてしまいます。
繁忙時ほど起こりやすい運用であるからこそ、休憩中に業務が入り込まない体制をあらかじめ整えておきましょう。
③休憩時間を始業直後や終業直前に設定している
始業直後や終業直前にまとめて休憩を与える運用は、途中付与の原則に反し、違法と判断されます。
始業直後や終業直前では、中途に付与することで心身の疲労を回復させるという休憩の趣旨から外れてしまいます。
また、「休憩を取らずに早く帰りたい」という従業員の申し出をそのまま認める運用も注意が必要です。
企業には休憩を適切に付与する義務があり、従業員の希望を理由に休憩を省略したり、取得時点を終業直前に固定したりする運用は認められていません。
休憩のタイミングが適切でない場合、労働時間管理の不備として指摘を受けやすくなる点には注意しておきましょう。
④外出・移動を禁止している
休憩中の外出禁止や移動制限は、労働者を拘束している状態にあたり、自由利用の原則に反します。
人手が限られるシフト体制や、常時対応が求められる現場では、「休憩中でもすぐ戻れる範囲にいてほしい」「敷地内で待機してほしい」と制限を設けるケースがあります。
ただし、事業場内の規律保持のために必要であれば、必要最低限の制限を加えることは可能です。
形式上は休憩を与えていても、実態として行動が制限されている場合には、違反と判断されるので注意しましょう。
休憩時間を確保できない場合の対処法
休憩時間を確保できない状態が続いている場合、そのまま運用を放置すると、労働基準法違反のリスクが高まります。
休憩が確保できない状況が続く場合、企業として必ず対処をおこないましょう。
ここでは代表的な3つの対処法をご紹介します。
時間帯をずらす
繁忙時間帯に休憩を取りにくい場合は、休憩の取得時間を前後にずらす方法が有効です。
とくに全員が同じ時間に休憩を取れないケースでは、順番に休憩へ入るローテーションを組むと休憩時間を確保しやすくなります。
誰かが常に現場に残る体制を前提として、業務を止めずに個々の休憩を確保するように努めましょう。
なお、一斉付与が難しい場合、労使協定を結ぶと個別に休憩を付与する運用が認められます。
繁忙を理由に休憩を後ろ倒しにしたり、中断したりしないよう、休憩の取得時間帯を柔軟に設計したうえでシフトを組む意識が重要です。
休憩時間を分割する
業務の性質上、まとまった60分の休憩を連続で確保しにくい場合は、休憩時間を分割して付与する方法も検討できます。
たとえば「15分+15分+30分」のように、合計で法定休憩時間を満たす形で分割すれば、8時間以上勤務の現場でも休憩を取り入れやすくなります。
休憩時間を分割すると、業務の区切りに合わせて短時間の休憩を挟めるため、現場の負担を抑えながら疲労回復を図れる点もメリットです。
ただし、数分程度の休憩を細かく繰り返すだけでは、実質的な休憩と認められない可能性がある点には注意が必要です。
一定のまとまりを持たせた分割を意識し、疲労回復につながる休憩になっているかを確認しながら運用しましょう。
業務設計を見直す
休憩が確保できない状態が慢性化している場合は、個々の対応で乗り切ろうとするのではなく、業務設計そのものを見直しましょう。
一時的な忙しさではなく、人員配置や業務フローの構造上、休憩を取りづらい体制になっているケースも少なくありません。
たとえば、ピーク時間帯を洗い出したうえでシフトを組み替えたり、一時的にアルバイト・派遣を検討したりすれば、休憩時間の確保をしやすくなります。
また、休憩時間の開始や終了が曖昧な場合、認識のずれやトラブルを招きやすいため、業務フロー全体の中で明確に休憩の位置づけを取り決めましょう。
休憩時間を管理する際のポイント
休憩時間を確実に確保するためには、現場任せにせず、ルールの見直しや実態の把握、専門的な視点を組み合わせた管理が欠かせません。
ここでは、休憩時間を適切に管理するために押さえておきたいポイントを整理します。
休憩ルールを周知する
休憩時間の長さや取得方法、休憩中に認められない行為については、就業規則やマニュアルで明確に定め、全従業員に周知しましょう。
休憩の扱いは現場判断に委ねられやすく、ルールが曖昧なままだと「忙しいから後で」「少しだけなら問題ない」といった判断が積み重なりがちです。
そこで、休憩中は業務対応や待機を求めないという原則を明文化して伝えておき、現場ごとに運用が異なる状況を防ぎましょう。
休憩ルールは管理職だけでなく全社員が共通認識を持つ意識が重要です。
勤務実態を確認する
勤怠システムや打刻データを定期的に確認し、休憩が形式だけでなく実態として取得できているかを把握する取り組みも重要です。
とくに注意したいのが、休憩時間が自動控除されているケースで、記録上は休憩を取っているように見えても、実際には業務対応が続いている場合も少なくありません。
さらに、休憩未取得が常態化しやすい現場では、データの確認に加えて、ヒアリングや現場の状況確認を組み合わせましょう。
休憩を妨げている具体的な行為や場面を把握したうえで、問題がある部署には是正指導をおこなうなど、継続的に改善できる体制を整える姿勢が求められます。
専門家に相談する
休憩の確保が難しい業態や、未払い賃金が発生している可能性がある場合には、早い段階で専門家に相談する取り組みも有効です。
8時間以上勤務が前提となるシフト制の現場では、法定休憩の付与方法や労使協定の扱いが複雑になりやすく、企業単独での判断がリスクになるケースもあります。
そこで、社会保険労務士や弁護士の助言を得ると、労使協定の整備やシフト運用の見直し、休憩管理方法の改善などを法令に沿って進めやすくなります。
休憩不足が長期間続くと、是正指導や調査対応が必要になる可能性もあるため、問題が小さいうちに相談しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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