- 更新日 : 2025年11月6日
労働保険料の納付のしかたをわかりやすく解説
労働保険料は、今年度の保険料を概算で申告・納付すると同時に、昨年度に概算で申告した概算保険料と実際に支払った賃金額から計算した確定保険料との差額の清算を行う「年度更新」と呼ばれる複雑な申告・納付方法を行います。
毎月納付する健康保険料や厚生年金保険料などとは異なる労働保険の保険料納付方法について、今一度確認しましょう。
目次
労働保険料とは
労働保険とは、労災保険と雇用保険を合わせた総称です。原則として労働者を一人でも雇ったら加入が義務付けられています。
労働保険料はこれらの保険料を指し、労災保険料では雇用主が全額負担、雇用保険料は雇用主と労働者の双方が負担することになっています。なお、労働保険料の金額は労働者に対して支払った賃金に対して、雇用保険、労災保険それぞれの保険料率を乗じて計算します。
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労働保険料の基本的な納付方法
上記で説明した労働保険料の納付に関する項目について、ここでは一般的なケースである事務所や工場、商店など事業の期間が予定されていない継続事業についての労働保険料の基本的な納付方法を中心に解説します。建設や立木の伐採などの有期事業とは異なる部分がありますので、該当する業種の方は注意しましょう。
年度更新(納付)の時期と回数
労働保険は、「年度更新」と呼ばれる申告と保険料の納付の方法を取っており、毎年6月1日から7月10日(7月10日が土日に当たる場合は翌月曜日)の間に申告と保険料の納付を行います。
概算保険料が一定の金額を超えるなど、分割納付が認められる場合を除いては、原則としてこの時期に保険料を一括で納付しなければなりません。この年度更新の手続きでは、前年度に概算で支払った概算保険料とその年度1年間に支払った賃金総額をもとに計算して確定させた確定保険料との差額を清算し、さらに、今年度における概算労働保険料を合計して申告・納付することが必要になります。
労働保険料は、年度(4月1日から3月31日分)を単位として概算額を計算して前払いするのが原則です。具体的な保険料の計算は、次の3つに分けて行います。
- 前年度に実際に支払った賃金総額をもとに確定保険料を計算し、前年度に支払った概算保険料との差額から過不足分を清算する
- 今年度分の概算保険料を計算する
- 前年度の概算保険料と確定保険料の過不足分と今年度分の概算保険料の合計額を計算して、6月1日から7月10日までの間に支払う
以下で、年度更新の流れの詳細について見ていきましょう。
1.前年度の労働保険料を確定し過不足分を調整する
労働保険料は、前年度(4月1日から3月31日分)に支払いが確定した賃金をもとに確定保険料を計算し、前年度に支払った概算保険料との過不足を調整すると同時に、6月1日から7月10日までの間に当年度の概算保険料を前払いする仕組みになっています。
労働保険の場合、対象となる賃金は年度内に支払った金額ではなく、年度内に確定した賃金で集計します。例えば、「月末締め翌月20日払い」の場合で考えてみましょう。
3月分の賃金は締日である3月末日に確定するため、3月分の賃金を4月に支払う場合でも、3月分の賃金は前年度(3月が属する年度)の賃金として集計します。労働保険料は賃金締切日で集計するのがポイントです。
年度更新時には、前年度に概算払いした労働保険料を、実際に支払った賃金総額をもとに確定させます。その結果、前年に支払った保険料のほうが少なければ不足分を支払い、多ければ新年度の保険料に充当します。
例えば、2021年7月に概算保険料を20万円納付していた場合で、2021年4月1日から2022年3月31日までの確定した賃金総額から計算した労働保険料が25万円、2022年4月1日から2023年3月までに支払う予定の賃金総額(概算賃金)から計算した概算保険料が25万円だったとしましょう。
今年度の概算保険料25万円+前年度の不足金額5万円=30万円(今年度納付保険料)
上記のような計算方法で、前払いした概算保険料と確定保険料との過不足に今年度の概算保険料を合計して、毎年7月10日までに申告と納付を繰り返すことになります。
2.今年度の労働保険料の概算
今年度分の労働保険料は概算保険料となっているため、4月1日から3月31日までの賃金見込み額から算定します。ただし、賃金総額の見込額が前年の2分の1〜2倍の間となる予定であれば、前年の確定賃金額と同額で計算することとなっています。
概算保険料のベースとなる今年度支払う予定の賃金総額(概算賃金)は、前年度に支払った確定賃金の総額をもとにした見込額です。大きな変動の予定がなければ同額として問題ありません。
ただし、年度の中途で事業拡大による急激な人員増加を予定していて賃金総額の見込額が増えるような場合は注意が必要です。賃金総額の見込額が2倍を超えて増加することによって、申告した概算保険料の金額と大幅に概算保険料が乖離(13万円以上増加)するようなケースでは、増加概算保険料の申告と納付が必要になります。
3.納付・申告の手続き
年度更新の手続きは、6月1日から7月10日の間に「労働保険概算・確定保険料申告書」に記入し、労働保険料の申告と納付を行います。
労働保険料の申告や納付は、事業所を管轄する都道府県労働局や労働基準監督署だけではなく、銀行や郵便局などの金融機関、e-Govによる電子申請や電子納付でも可能です。しかし、口座振替にした場合や確定保険料と概算保険料を清算した結果として保険料の納付が必要のない場合など、申告書だけを提出する場合には金融機関では受付できません。
なお、手続きが遅れて申告期限までに納付・申告が行われなかった場合は、政府が一方的に保険料を決定(認定決定)し、さらに、保険料の10%にあたる追徴金が課せられることもありますので、注意しましょう。
例外的な納付方法
ここでは、労働保険料の納付について、上記で説明した基本的な納付方法以外のものについて解説します。
賃金が大幅に変動する場合
前述の通り、労働保険料は1年分の賃金総額を予想し決定しますが、年度の途中で実際の賃金総額がその予定額を大幅に超える(予定額の2倍以上かつ概算保険料が13万円以上増える)場合には、「増加概算保険料」の申告と納付が必要です。申告と納付は「増加した日から30日以内」にしなければならないことも覚えておきましょう。
分割納付について
労働保険料の納付は、原則として6月1日から7月10日の間に一括で行います。しかし、以下の条件のどちらかを満たす場合には、分割して納付することも可能です。
- 概算保険料が40万円以上である場合
- 労災保険と雇用保険のいずれか片方のみ成立して加入しており、かつ、その保険料が20万円以上である場合
これらの場合、概算保険料を3回(事業開始時期により異なる)に分割して納付することができます。新規設立や従業員の雇用などでその年の5月31日までに適用関係が成立した場合は、7月10日(もしくは事業開始後50日以内)、10月31日、1月31日が期限日です。なお、6月1日から9月30日の間に事業を開始した場合の分割は2回のみ可能で、10月1日以降に事業を開始した場合には分割納付はできません。
口座振替納付について
口座振替納付とは、窓口へ保険料を支払いに行くのではなく、指定した自分の口座から保険料を自動的に引き落としてもらう納付方法です。
口座振替納付のためには、「労働保険 保険料等口座振替納付書送付(変更)依頼書兼口座振替依頼書」に記入し、期限日(一括払いと分割の1回目支払いの場合は2月25日)までに口座がある金融機関に提出してください。
依頼書の記入、提出という手間はかかりますが、一度行うと「口座振替の解除」を行うまで継続して口座振替を利用でき、納付に出向く手間が省けて便利です。また、納付日の期限が通常より遅くなる(例えば、第一期の納付期限は2022年度の場合は7月11日ですが、2022年度の口座振替納付の場合は9月6日)というメリットもあります。
労働保険料の年度更新に必要な書類と書き方
労働保険の年度更新には、「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」と「労働保険料年度更新申告書」が必要です。それぞれの書き方を説明します。
確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表

確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表の書き方のポイントは、以下の通りです。
記入内容
| 欄 | 記入内容・注意点 | |
|---|---|---|
| 1. | 労働保険番号 | 印字されている場合は記入不要 |
| 2. | 出向者の有無 | 「受」には受け入れている出向労働者数、「出」には送り出している出向労働者数 |
| 3. | 名称等 | 右の項には製品名や事業内容を具体的に記入 |
| 労災保険および一般拠出金(対象者数及び賃金) | ||
| 4. | 常用労働者 | 雇用保険の被保険者となる者や日雇労働者を含む、常用労働者の賃金額 同居の親族は原則として労働者にはならない |
| 5. | 役員で労働者扱いの人 | 業務執行権や代表権のない役員で、指揮命令を受けて労働に従事している場合には労働者として扱われる |
| 6. | 臨時労働者 | 臨時労働者であって雇用保険の被保険者とならない者の賃金額 |
| 雇用保険(対象者数及び賃金) | ||
| 7. | 雇用保険の資格ある人 | すべての被保険者の賃金総額 |
| 8. | 役員で雇用保険の資格のある人 | 取締役であって、勤務形態・賃金報酬等の面から労働者的性格が強く雇用関係があると認められる場合に被保険者となる |
| 9. | 備考 | 労災保険・雇用保険に加入している役員の氏名・役職・雇用保険資格の有無 |
計算
| 欄 | 計算 |
|---|---|
| Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ | 記入額の合計を計算する |
| (A) | Ⅰを12で割る |
| (B) | Ⅲを12で割る |
| (C)・(E) | Ⅱを記入(千円未満切り捨て) |
| (D) | Ⅳを記入(千円未満切り捨て) |
労働保険年度更新申告書

労働保険料年度更新申告書は、確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表を用いて、記入します。書き方のポイントは、以下の通りです。
| 欄 | 記入内容 | ||
|---|---|---|---|
| 1. | 常用使用労働者数 | 集計表(A)を転記 | |
| 2. | 雇用保険被保険者数 | 集計表(B)を転記 | |
| 3. | 保険料・一般拠出金算定基礎額 | 労災保険分 | 集計表(C)を転記 |
| 4. | 雇用保険分 | 集計表(D)を転記 | |
| 5. | 一般拠出金 | 集計表(E)を転記 | |
| 6. | 確定保険料 | ③×保険料率 | |
| 7. | ④×保険料率 | ||
| 8. | ⑤×一般拠出金率 | ||
| 9. | ⑥と⑦の合計 | ||
| 10. | 概算保険料 | 確定保険料の内容を転記 | |
| 11. | |||
| 12. | 差引額 | 申告済概算保険料との差額から充当額・不足額・還付額を計算 | |
労災保険料や雇用保険料の変更に注意
労災保険料や雇用保険料の料率が変更されることがあるため注意が必要です。概算保険料や確定保険料は労働者に支払った賃金にそれぞれの保険料率を乗じて計算するため、保険料率の変更は納付する労働保険料の金額に大きな影響を及ぼします。
保険料率が変更されると、今年度の概算保険料と来年度に清算する確定保険料の2年間にわたって影響が生じます。特に2022年度からは雇用保険の保険料が2段階に分けて変更されることに注意しましょう。

例えば、2022年度の年度更新においては、一般の事業の場合、雇用保険料の確定保険料(2021年度の確定賃金により計算する保険料)は変更前の0.9%で計算します。しかし、概算保険料は、0.95%(2022年4月~9月までの分)や1.35%(2022年10月~2023年3月までの分)で計算することとなるため、同じ賃金の金額を支払うとしても概算保険料の金額が増加することでしょう。
2022年3月31日現在では雇用保険の保険料率が段階的に引き上げられることになっています。それぞれ適用される期間ごとに賃金見込額と雇用保険料率を分けて計算することとなるため、概算保険料の計算方法には注意しましょう。
雇用保険料率の引き上げについて、詳細は以下の記事も参考にしてください。
納付方法を理解し、労働保険料を正しく申告しましょう
ここでは継続事業の労働保険料の納付のしかたを中心に解説してきました。労働保険料は一括納付が原則ですが、金額によっては分割納付が可能です。また、口座振替による納付を利用すれば納期にゆとりができるメリットがありますので、うまく利用するとよいでしょう。
よくある質問
労働保険料の納付の時期はいつ頃ですか?
労働保険は年に1度の「年度更新」と呼ばれる申告により保険料を計算し、毎年6月1日から7月10日(7月10日が土日に当たる場合は翌月曜日)の間に納付を行います。詳しくはこちらをご覧ください。
労働保険料の申告と納付はどこでできるでしょうか?
事業所を管轄する都道府県労働局や労働基準監督署、銀行・郵便局などの金融機関、e-Govの電子申請・電子納付で行います。しかし、口座振替の場合や申告書だけ提出する場合は、金融機関では受付できません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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