「値上げ」は、経営者にとって、夜も眠れなくなるほど悩ましい問題だ。値を上げれば客が減る、上げなければ利益が圧迫される……。難局を企業はどう乗り切っているのか。各社の創意と工夫を追った。
値上げラッシュでも客足が離れない理由
8月10日、日本マクドナルドのオンライン決算発表会の場に、白いスーツに身を包んだ吉田修子CFOがあらわれた。胸には、マックのロゴの「M型」のピン。ブランドへの愛着を大切にする、同社の企業風土を示すようなファッションだ。
吉田CFOがおもむろに口をひらく。
「'23年上期の営業利益は、前年比3%増の180億円です」
淡々とした口調で語られたが、じつは上期としては過去最高の営業利益。驚くべき数字である。
なぜ驚きなのかといえば、マックは昨年3月、9月、今年1月と、3回にわたって多くの商品を値上げしたからだ。普通に考えれば、値上げが客離れを招き、厳しい業績に陥ってもおかしくない。
しかし決算発表の最後まで、吉田CFOの口から出てきたのは、堅調を示す言葉だった―。
'21年ごろに始まった、日本社会全体におよぶ「値上げラッシュ」は、2年が経ったいまもとどまるところを知らない。消費者にとって値上げはもちろん悩ましい問題だが、しかしそれと同じように、企業の経営者にとっても値上げは苦悩と葛藤のタネである。
飲食にアパレル……多くの企業が苦心しているが、うまく値上げできている企業、値上げしても業績が上がる企業は、いったいどんなことをやっているのか。