ソーシャルグラフじゃない、次の流れはテイストグラフ!

鈴木 仁士

 2007年、ニューヨークから非常に面白いスタートアップが登場しました。写真共有サービスのFlickrを共同創業したCaterina Fake氏、そして起業家兼、個人投資家で以前SkypeやFoursquareに投資をしていたChris Dixon氏が手を結び、新しいレコメンデーションサイトにチャレンジをしたのです。

 それがHunch (=直感)です。彼らは、ユーザーがキーワードを入力する従来の検索エンジンに変わって、より自然に、そして的確に人々の意思決定をサポートする「レコメンデーションエンジン」の開発を試みました。

 ご存知、FacebookやTwitterなどのサービスを通して、人と人の繋がりは「ソーシャルグラフ(人間関係図)」として可視化されましたが、Hunchの着目点は違います。彼らは、ただの友達や同僚だけではなく、同じ趣味や嗜好を持った人々同士を「テイストグラフ(趣味をベースにした関係性)」として繋げることで、私たちの意思決定をサポートする仕組みを作ったのです。

 映画、レストラン、本、どんなカテゴリーに対しても、私たちの意思決定を手助けし、ユーザーがより満足が出来る選択を提供する。エッジのあるアイデア、ニューヨークという起業環境、そして経験豊富な起業家チームが創り出すHunchというサービスについて本日はご紹介したいと思います。

質問からユーザーのニーズを学ぶHunchという人工知能

Hunchのプロファイルページには、質問結果を基にあらゆるレコメンデーションがすっきりと提示される。

 私たちは思った以上に自分自身のことを知りません。

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 自分の意思決定の傾向はある程度把握出来ていても、何気なく取っている行動(例;サンドイッチのためのパンの切り方等)の本質的な理由はなかなか説明が難しいもの。

 曖昧だけれども、人間一人一人を形創る性格や嗜好にフォーカスを当て、人々の「直感」に限りなく近いオプションを提供してくれるのがHunchの醍醐味です。

 肝心なサービスは非常にシンプルかつ楽しい作りです。ユーザーはサイトを開くと、まず質問を20問投げられ、それに答えることで自身の性格や嗜好をHunchのデータベースに提供します。

 質問の例としては、4つの異なる写真を提示されて「あなたはどの作品が最もアーティスティックだと思いますか?」という私たちの感性に関わる質問や、サンドイッチを作る際にパンを横で切るか、対角線で切るのか?という日常の些細な嗜好についても面白可笑しく質問してくれます。

 もちろん20問を聞いただけでは一人の人間のニーズを完全に網羅することは出来ませんが、同内容の質問を答えた人が100万人いた際には、20問から得られる洞察には付加価値が生まれます。そういった個人個人のデータが現在Hunch上では200億個にも及び、どんなカテゴリーを取っても非常に的確(時に非常に面白い)レコメンデーションをリストしてくれるのです。

 もちろんサービスリリース当初は、肝心なデータベースを構築するために1年程の期間を要しました。しかし現在その推奨エンジン(=人口知能)の精度は日々向上していて、ユーザー自身さえも今まで知れなかった嗜好に関する気づきを日常的に提供しているのです。

二人の起業家魂が作り出したHunchという可能性

 Hunchはその事業内容も面白いのですが、もっと面白いのは創業メンバーの二人の経歴です。一人は写真共有サイトのFlickrの共同創業者であるCaterina Fake氏。同氏はパートナーと共にFlickrを創業し、2005年時に35億円でYahooに同社を売却。その後はYahooにて技術開発部門を率いました。

 Web 2.0 時代の成功者、そして多くのギークからも評価の高い彼女を今回のスタートアップに誘ったのが、ニューヨークで活躍をしていたChris Dixon氏でした。

 Chris氏はシリアルアントレプレナー兼、アーリーステージ企業への投資家。個人的に創業したSiteAdvisor(Webサイトの安全性を診断するツール)を約74億円でMcAfeeに売却しています。同氏の経歴も異色で、プログラマーでありながら、学士/修士はコロンビア大学にて哲学を学び、その後MBAをハーバード大学にて取得しています。

 このパワフルな二人がシリコンバレーではなく、あえてニューヨークでHunchをスタートさせたのです。「私もChrisも自身のスタートアップをエグジット(売却)した経験があるの。そんなメンバーが集まっているからこそ、今回の事業(Hunch)は個性的だし、相当自信があるわ」そうFake氏は語っています。

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 2010年3月の段階で、米国の著名なベンチャーキャピタル会社のKhosla Ventures、そしてその他の投資家から計21.7億円の出資も受け(*1)、事業内容と共に、スタートアップが生まれる好環境は米国東海岸にもあることをHunchは体現しているのです。

インプット(情報収集)が変われば、もちろんアウトプット(購入方法)も変わる

 私たちの意思決定に関する道筋が変わること、それは出口(行動)が変化することも意味します。還元すると、ユーザーはHunchから推奨された自分と似たユーザーがよく購入するアイテムを参考に、Hunch上で購入行動に移るようになるのです。

 その可能性を感じ取り、今年の9月からHunchは7つの大型サイトと提携(*2)して彼らの製品、サービスに対するパーソナライズされたレコメンデーションをユーザーに提供し始めました。Hunchはこういった活動を通して、ユーザー、そして提携サイト双方に付加価値のあるプラットフォーム構築を目指しています。

 また、最近盛り上がりを見せている位置情報との連携もHunchは当然チェックしていて、Google Mapsを活用して、ユーザーのジオデータを基にしたレストラン、ホテル、娯楽施設に関する的確なレコメンデーションも行っています(*3)

 今までバラバラだった世界中の人間を同じ「テイスト(好み)」で繋げていくHunchは、Facebook等に変わる次の大きなサービスへと成長するかもしれない、そう私は感じ取っています。

参考資料:
*1: Hunch Takes $12 Million From Khosla Ventures, Adds Former Facebook CFO To Board Of Directors
http://techcrunch.com/2010/03/14/hunch-takes-12-million-from-khosla-ventures-adds-former-facebook-cfo-to-board-of-directors/
* 2:Hunch Exports Taste Graph Via API, Business Model Emerges
http://techcrunch.com/2010/09/15/hunch-taste-graph-business-model-api/
*3:まだ日本でのデータは乏しいのですが、Hunchのローカルレコメンデーションサイトはこちらからご確認下さい。
http://hunch.com/local/

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