トランプ関税の不確実性、世界的な景気後退への懸念、円安と、PC・モバイル機器を取り巻く価格環境は厳しさを増しています。2025年後半にはAIブームの余波でメモリー価格が急騰し、その他のパーツ価格も上昇傾向にあり、一段の値上がりが避けられない状況です。

Apple製品も例外ではない――かに見えます。しかし実際には、不景気や業界の過渡期こそ、Appleが強みを発揮してきた局面でした。PC・モバイル市場全体が縮小傾向に向かう中で、2026年のApple製品には独自の「勝ち筋」が見えつつあります。今、注目すべき製品は何か。最適な買い時はいつなのか。業界の逆風下で光る、Appleの戦略を読み解きます。

  • 2025年後半、PC業界を中心に大きく騒がれたメモリー価格の急騰。iPhoneやMacなどのApple製品も値上げの波にさらされるのでしょうか?

    2025年後半、PC業界を中心に大きく騒がれたメモリー価格の急騰。iPhoneやMacなどのApple製品も値上げの波にさらされるのでしょうか?

iPhoneが出荷台数トップを奪還、29年まで維持する見込み

2025年のiPhone新製品は、発表直後こそ「期待外れ」「新鮮味がない」といった冷ややかな反応を受けました。ところが、蓋を開けてみると、2025年はiPhoneが14年ぶりにスマートフォン出荷台数で世界1位に返り咲く記録的な年になると予測されています(Counterpoint調査)。

  • 2025年のiPhone出荷台数は前年比10%増で、2011年以来の世界首位になるとCounterpointは予測。「よりパーソナライズされたSiri」の導入遅延の影響は限定的で、この順位が2029年まで継続すると予想しています

    2025年のiPhone出荷台数は前年比10%増で、2011年以来の世界首位になるとCounterpointは予測。「よりパーソナライズされたSiri」の導入遅延の影響は限定的で、この順位が2029年まで継続すると予想しています

発表時の反応と実売が、なぜこれほど異なったのでしょうか? 4機種の中では「iPhone 17 Pro」と「iPhone 17」が好調を牽引しました。

Appleの最大市場である米国では、消費マインドの二極化が鮮明になっています。高所得層による高価格帯製品の消費は堅調な一方で、中低所得層は物価高の影響を受け、節約志向を強めています。同様の傾向は日本でも見られます。

iPhone 17 Proシリーズは、ベースモデル価格が100ドル引き上げられましたが、ストレージが256GBに底上げされました。同容量で比較すると、実質的には前年モデルから据え置きとなります。さらに、AI時代に重要となるメモリーが8GBから12GBへ増強され、数年後の下取り価格が高値で安定するという見通しが、「高くてもProを買う」という投資判断を後押ししました。

  • iPhone 17 Proで撮影された「Apple Holiday|A Critter Carol」より

    iPhone 17 Proで撮影された「Apple Holiday|A Critter Carol」より

無印iPhone 17は実用性と完成度の「頂点」

Appleは、SEモデル(現iPhone 16e)ユーザーを無印に、無印ユーザーをProへと導くアップグレード戦略を充実させてきました。これは基本的に変わりません。iPhone 17 Proが好調であるように、いわゆるロイヤル層のユーザーが上位モデルを志向する傾向も引き続き見られます。

一方で、一般的な消費者層(全体の6~7割とみられる)は、景気の先行きが不透明な局面ほど「価格」を重視するようになります。その需要に的確に応えたのが「iPhone 17」です。

画面が6.1インチから6.3インチに大型化され、ベゼルも細くなりました。さらに、これまでPro限定だったProMotion(最大120Hz)が採用されたことで、標準モデルの満足度が大きく向上しました。特に目新しい技術や機能を備えたスマートフォンではありませんが、普及価格帯における完成度と実用性の高さから、「iPhone 5s」や「iPhone 6s」、「iPhone 13 Pro」といった過去の“神モデル”に並ぶ存在、という評価を確立しつつあります。

  • iPhone 17

    iPhone 17

そうした評価の1つとして、テクノロジー系の人気YouTubeチャンネル「MKBHD」の「スマートフォンアワード2025」で、iPhone 17が「フォン・オブ・ザ・イヤー」を獲得しました。

同アワードは、毎年年末に「その年のスマホの各部門別ベストおよび年間ベスト」を決める企画です。グローバル市場で発売されている数多くのスマートフォンを対象に、忖度なしで評価しており、ここ数年iPhoneは部門賞の獲得にとどまっていました。しかし、今年は「Galaxy Z Fold 7」「Xiaomi 17 Pro Max」や「OPPO Find X9 Pro」といった強力なライバルが並ぶ中で、普及帯モデルの「iPhone 17」が栄冠を手にする異例の選出となりました。

  • MKBHDのマルケス・ブラウンリー氏は「iPhone 17 ProやiPhone Airといった、より高いiPhoneの影に隠れながらも、iPhone 17は最も完成度が高く、“神コスパ”と呼べる存在にレベルアップしました」と評価(@mkbhdより)

    MKBHDのマルケス・ブラウンリー氏は「iPhone 17 ProやiPhone Airといった、より高いiPhoneの影に隠れながらも、iPhone 17は最も完成度が高く、“神コスパ”と呼べる存在にレベルアップしました」と評価(@mkbhdより)

「iPhone 17」と「iPhone 17 Pro」は、それぞれ異なる消費者層のニーズに応える製品として設計されています。自分の優先順位に合ったモデルを選べば、2026年のスマートフォン市場においても満足度の高い選択肢となるでしょう。

メモリー高騰の影響は? Appleも値上げする?

2026年は、PC・モバイル産業にとって厳しい1年になると見られています。 AIバブル懸念で景気の先行きが不透明なうえ、メモリーメーカーがAI向けデータセンターの旺盛な需要にリソースを振り向けた結果、一般向けメモリーチップの供給がひっ迫。10月以降、DDRを中心にメモリー製品(RAM、SSDなど)の価格が急騰しています。

この影響は2026年第1四半期後半から、 PCやスマートフォンの価格(値上げ)または仕様(スペックの引き下げ)に表れる可能性があります。IDCは、2026年にPCやスマートフォンの平均販売価格が最大8%上昇する可能性があると分析しています。

もっとも、Appleは部材メーカーと長期大量契約を結んでおり、12~24カ月先までメモリー供給を確保していると見られています。加えて、高い利益率を維持しているため、部品コストの上昇をある程度吸収できます。このため、少なくとも2026年前半にかけては、Apple製品への影響は回避されると考えられます。

ただし、メモリー不足は2027年まで続くとの見方もあり、現在のような厳しい供給制約が長期化すれば、最終的にはAppleも影響を免れない可能性があります。

日本では、過去数年にわたる円安の進行を受け、2022年にApple製品の大幅な値上げが行われました。そのため「Apple製品は高くなった」という印象が強いものの、価格設定の基準となる米国価格を見ると、大きな変動はありません。たとえば、13インチMacBook Airのベースモデル価格は、999ドル~1,199ドルの範囲で推移しつつ、性能は着実に向上してきました。

  • 13インチMacBook Airベースモデルの米国価格の推移

    13インチMacBook Airベースモデルの米国価格の推移

こうした背景から、日本とは対照的に、米国市場では現在のApple製品に割安感を抱く消費者も少なくありません。仮に、今後値上げが行われたとしても、比較的受け入れられやすい状況にあるといえます。

買い替えを検討している人は、メモリー高騰問題の動向を注視しつつ、将来的な値上げの可能性も判断材料に含めておくべきです。

業界停滞期にこそ強いAppleの歴史

中低所得層の節約志向が高まる局面では、より低価格な製品が選ばれやすくなり、普及帯以上を主戦場とするAppleは不利に見えがちです。

しかし、過去を振り返ると、業界の停滞期にAppleが相対的な存在感を高めてきた例が 見られます。たとえば、リーマンショックとその後の景気後退期に、当時低価格帯PC市場を席巻していたネットブックが急速に失速し、低価格Windows PCも不振に陥りました。一方で、Macは価格を引き下げることなく、2011年~2012年ごろに相対的な強さを示しました。

理由はいくつかありますが、その1つに景気が悪い時ほど「買い物で失敗したくない」という消費者心理が強まることが挙げられます。つまり、現在のように景気の先行きが不透明で、価格の上昇が予測される状況では、多少高くても「長く使えて、満足度の高い製品」や「将来の価値が下がりにくい製品」を選ぶことが、むしろ合理的な選択になる場合があります。

  • 「iPhone 17」の公式ページから。買い替えサイクルが長期化する中、Appleはユーザーが所有する機種からの買い替え効果を確かめられるよう、新製品のパフォーマンスを数世代前の機種に遡って比較できるようにしています

    「iPhone 17」の公式ページから。買い替えサイクルが長期化する中、Appleはユーザーが所有する機種からの買い替え効果を確かめられるよう、新製品のパフォーマンスを数世代前の機種に遡って比較できるようにしています

こうした視点を踏まえ、後編ではMacやiPad、さらに2026年の登場が噂される製品も含め、より具体的にApple製品の買い時を見通していきます。