120ギガヘルツの高周波性能実現…「ダイヤモンド半導体」社会実装へ、佐賀大発新興がサンプル製販
通信用途のダイヤモンド半導体の社会実装に向けた動きが本格化している。佐賀大学発のスタートアップ、ダイヤモンドセミコンダクター(佐賀市、嘉数司津子社長)は1月からサンプルの製造・販売を順次始める。これに先駆け2025年12月にはマイクロ波帯(マイクロは100万分の1)・ミリ波帯での120ギガヘルツ(ギガは10億)の増幅という高周波性能を確認したと発表。同大学の研究責任者であり、同社で最高技術責任者(CTO)も務める嘉数誠教授は「『思った以上に早く高性能を実現してくれた』と周囲からも言われる」と手応えを語る。(豊原秀平)
ダイヤモンドは高周波、高出力を実現し耐環境性能に優れ、物性では炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)を大きく上回る基板材料。嘉数教授は宇宙航空研究開発機構(JAXA)とも共同で、ダイヤモンド半導体の研究を進めてきた。
今回、回路を形成するパターニングについて、光学系を活用するフォトリソグラフィーから電子線描画に変えたことで、157ナノメートル(ナノは10億分の1)と微細なゲート電極の作製に成功。これにより、120ギガヘルツの高周波性能を確認した。
衛星送信用デバイスや携帯基地局など、現在も真空管が使われている領域の置き換えを狙う。サンプルの製造・販売は26年夏に本格化させる計画だ。
25年12月に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された半導体の国際展示会「セミコン・ジャパン2025」に、嘉数教授は研究室として出展。性能向上の発表から間もないこともあり、多くの来場者がブースを訪れた。嘉数教授は「大手電機メーカーとの話し合いも進んでいる」とアピールする。
ダイヤモンドセミコンダクターは25年2月に設立。嘉数教授の研究を社会実装すべく準備を進め、設立から1年弱で大きく動き出す。26年は大熊ダイヤモンドデバイス(札幌市北区、星川尚久社長)も、夏に福島県大熊町でダイヤモンド半導体工場を竣工予定。「究極の半導体」実現が現実に近づく年になりそうだ。
【半導体ニュースまとめ】はこちら
パソコンやスマートフォン、自動車など現代社会のあらゆる電子機器に欠かせない「半導体」。安全保障上の戦略物資とされ、産業をめぐる国際競争は激しさを増す。その主たるプレイヤーである台湾積体電路製造(TSMC)やラピダス、キオクシアなどの動きや最先端の研究開発の動向を追う。
【関連記事】EV向け需要を狙うフェローテック、半導体基板の生産能力を2倍以上に!