2026年の株式市場はどうなる

デフレからインフレへと向かう動きが鮮明になった2025年。2026年の株式市場にはどのような景色が待ち受けているのか。また、これまでの「投資の常識」をいかにアップデートすべきか。日本経済新聞社のアナリストランキングでトップを走り続ける日本屈指のアナリスト、大和証券の木野内栄治さんに、2026年の相場展望と今仕込むべき注目銘柄について聞いた。

インフレ時代の「アニマルスピリッツ」を買う

2026年の相場を展望する上で、私が最も注目しているのは「その企業がどれだけ野心的に、将来の成長へ投資しているか」という点です。これを象徴するいくつかの「キーワード」に沿って、具体的な銘柄を解説します。

①AIエージェント

これまでAI相場は、半導体からサーバー、データセンターへと物色対象(将来高くなる見込みがあると考えて買いに出る銘柄)が移ってきましたが、次はインフラを活用して実際に収益を生むアプリケーション開発の段階に入ります。この分野ではグロース市場の大小の銘柄がひしめき、どこが勝ち組になるのか見極めるのは、プロのアナリストでも容易ではありません。ですが現場のエンジニアから「優秀な人材はみんなあそこへ行く」と評されるサイバーエージェント(4751)は「人が集まる=成長」の目安となるかもしれません。

AIエージェントの主力7銘柄
4751 サイバーエージェント 広告効果を予測する「極予測AI」を提供
4755 楽天グループ 大規模言語モデル「Rakuten AI」シリーズを開発
6701 NEC 大規模言語モデル「cotomi」を開発提供
6702 富士通 AIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」、大規模言語モデル「Takane」
9432 NTT 軽量かつ日本語に強い「tsuzumi」を開発提供
9433 KDDI 東京大学松尾研究室発ベンチャーELYZAを子会社化
9434 ソフトバンク 超大規模日本語言語モデル開発
木野内栄治さんへの取材をもとに編集部作成。


②設備投資

その企業がどれだけ将来の成長を見越しているかは、設備投資の状況で測ることができます。なぜなら、工場がフル稼働して得た利益を「もうかった」で終わらせず、さらなる成長のために次の設備増強へ回す企業こそが、次の成長フェーズへと進めるからです。現在、AI需要を背景に、研究開発や能力増強を突出させているのが電線各社です。たとえば古河電気工業(5801)は、1000億円規模を投じて直流ケーブルを増産し、光ファイバーの生産能力を5倍増させるなど、極めて意欲的です。こうした巨額投資は、経営側が将来の収益に強い確信を持っている表れであり、年度初めの業績見通し(ガイダンス)が保守的になりにくいという安心感にも繋がります。

設備投資で強気な電線関連4銘柄
5801 古河電気工業 光ファイバー関連の製造能力を5倍に。1000億円でHVDCケーブルも
5802 住友電気工業 190億円投じ光デバイスの生産能力を3割増しに
5803 フジクラ 450億円投じ光ファイバーなどを製造する新工場の建設
5805 SWCC 10億円投じ光ファイバー増産。20億円で電力接続製品増強
木野内栄治さんへの取材をもとに編集部作成。


③トランプ政策と米国投資

不透明な国際情勢下において、自らリスクを取り米国への積極投資を表明する企業には、将来の売り上げを自らつくり出そうとする強い意思が宿っているといえるでしょう。かつてトランプ氏らが来日した際、いわゆる「80兆円の対米投資」に関連して、自ら「アメリカで事業をやりたい」と手を挙げた企業群がありました 。その代表例が村田製作所(6981)です。同社のように、拡大再生産によってさらなる成長を目指す意欲的な姿勢を見せながらも、足元の株価が出遅れている銘柄は、2026年に向けた大きな伸び代を感じさせます。

80兆円米国投資計画に手を挙げた8銘柄
5803 フジクラ 光ファイバーケーブルの供給
6501 日立製作所 HVDCケーブルの送電設備および変電設備
6503 三菱電機 データセンター向け電源・機器
6752 パナソニックHLDG エネルギー貯蔵システム、電子部品
6762 TDK AI用先端電子部品、パワーモジュール
6981 村田製作所 MLCC等の電子部品、バックアップ電源
7203 トヨタ自動車 追加試験なしで米国製車両を日本で販売
9984 ソフトバンクグループ 発電エンジニアリング
木野内栄治さんへの取材をもとに編集部作成。


このキーワードに関連するもう一つの視点が、政府が掲げる17の成長戦略分野の一つである「航空機需要」です。トランプ氏への配慮から各国がボーイング機を数百機規模で購入すると表明する中、ボーイング社も1500億円を投じて「ボーイング787」の工場増設を進めています。実はボーイング787の機体構造の約35%は日本製であり、その根幹を支えるのが東レ(3402)の炭素繊維です。トランプ政権への「ご機嫌伺い」で各国の機体購入が加速するほど、日本の成長戦略のど真ん中にある銘柄が、その恩恵を受ける構造になっています。

17の成長戦略の一つ ボーイング関連
3402 東レ 主翼や胴体などの構造材に使用される炭素繊維を独占供給
7011 三菱重工業 主翼の設計・製造を担当。素材は東レから供給を受ける
木野内栄治さんへの取材をもとに編集部作成。


④NISA拡充と富裕層の動き

NISA制度の変化にも注目です。新NISAの実態を分析すると、現役世代の「つみたて投資枠」の利用以上に、50代以上の富裕層による「成長投資枠」の利用が圧倒的に多いことが分かります。今後、18歳未満への枠新設などが議論されれば、孫への資産移転としてNISAの利用はさらに増加し、市場規模はますます拡大するでしょう。こうした背景から、富裕層の積極的な運用を支えるメガバンクや証券大手、そして世代を超えた資産管理に強みを持つ三井住友トラストグループ(8309)をはじめとする信託銀行や証券各社には、大きな商機が訪れることになります。

NISA拡充で恩恵を受ける主な証券会社・銀行・信託銀行
8309 三井住友トラストグルーブ 傘下に三井住友信託銀行。信託財産残高首位
8604 野村HLDG 傘下に野村證券や野村信託銀行など
8316 三井住友FG 傘下にSMBC日興証券や三井住友銀行など
8411 みずほFG 傘下にみずほ証券、みずほ銀行など
8306 三菱UFJ FG 傘下に三菱UFJ信託銀行など
木野内栄治さんへの取材をもとに編集部作成。


2026年の相場を動かすのは、経営陣の「アニマルスピリッツ(野心的な意欲)」にあります。思い切った設備投資の決断は、その事業を誰よりも熟知する経営陣が、将来の勝利を確信している証しです。生産能力の増強こそが売り上げ成長の源泉であり、設備投資の有無はその本気度を測る指標です。

デフレが長く続いたことで、投資や資金調達をネガティブに捉える感覚が定着しました。しかし、本来の株式投資は企業の描く「バラ色の計画」に投資家が呼応し、直接金融を通じて未来を築く仕組みです。企業がリスクを取っても拡大再生産に挑む姿勢こそが、「伸び代」をつくり出すのです。

2026年の相場を左右する「高市関連銘柄」の行方

2026年の株式市場は、投資家の期待を集める複数のテーマが浮上しています。その最大の要因は、高市首相が宣言した「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」という姿勢に対する市場の評価です。積極的な経済政策が実行されるとの見方から、防衛やインフラなど政策と結びついた、いわゆる「高市関連銘柄」に資金が集まり始めています。

もっとも、この相場の流れが持続するかどうかは、「解散総選挙」の行方にかかっています。背景にあるのは、与党が参議院で安定多数を確保できていないという構造的な課題です。現状では、重要法案が参院で停滞するリスクを常に抱えているのです。なかでも、2026年3月に期限を迎える「特例公債法」は衆議院の優越が適用されない法案であり、参院で否決された場合、国の財政運営に深刻な支障をきたしかねません。

もう一つ注意すべきは、政権発足直後の期待が持続するのは長くても半年程度という点です。それを過ぎると、「この政権では何も決まらない」と市場からは見切られてしまい、期待が急速に後退する可能性が高くなります。政策そのものよりも、政治がどれだけ早く決断し、結果を出せるかに注目する必要があるということです。

そして、解散の先にあるのは、日本経済を劇的に変貌させる「高圧経済」の始動です。あえて供給を上回る需要をぶつけることで、企業に投資を半ば強要する政策です。企業は現在、総額350兆円もの手元流動性(投資などに使われずにため込まれている資金)を抱えています。たとえば、製品を100個しか作れない工場に110人の買い手が殺到すれば、企業は嫌でも設備投資や研究開発へ投じざるをえません。

このメカニズムが動き出した時、私たちは「早い株高」という衝撃的な光景を目にすることになるでしょう。試算では2029年に到達するはずの名目GDP水準が、2027年に前倒しでやってくる計算です。歴史的な上昇相場が、幕を開けようとしています。

玉石混交の情報に惑わされてはいけない

とはいえ、投資の世界は厳しく、楽をしてもうけられると思ったら間違いです。世の中の情報は玉石混交で、自分でその良しあしを判断するのは不可能です。テレビに出ている専門家が語っていても、真実とは限りません。まずは「情報の真偽は自分では判断できないもの」と自覚するところからスタートしてください。

大切なのは誰かのロジックをうのみにせず、「ファクト(事実)」を確認する姿勢です。具体的にはどんな情報もグラフで確認するクセをつけてください。たとえば「米国の金利が下がれば日本株が上がる」という説が、まことしやかにささやかれていますが、グラフを検証すれば実際にはむしろ逆になっている事実が分かります。

米国利下げと株価の関係.jpg

専門家と称される人のコメントに接して「なるほど」と思うのは、その情報が自分の知識の範囲内にあるからです。自分の知識が間違っていないと安心したいだけではないでしょうか。その裏で、自分が理解できない言説を排除していませんか?

グラフで検証し、数字で裏を取るプロセスを何度も繰り返すことこそが、インプルーブ(改善)の本質です。積み重ねれば、相場の荒波を乗り越える武器になります。今年こそ、相場に向き合って強い投資家になってもらいたいと思います。

(取材協力=木野内栄治 構成=渡辺一朗 図版作成=大橋昭一)