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Visual Investigation
米政府サイト、消えた1000ページ
トランプ政権、情報操作の跡
米政府機関のウェブページが大量に消えている。国防総省など約90の政府機関の少なくとも1000ページが閲覧できなくなったことが分かった。気候変動や米議会襲撃事件などが対象で、削除の多くはトランプ大統領が就任後に署名した大統領令に基づく。2期目の就任から100日がたち、情報操作を進める政権の実態が浮き彫りになった。
出典:航空宇宙局、疾病対策センター、司法省、ホワイトハウス、環境保護局、国際開発局などのサイト画面
1月20日
トランプ大統領は気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」離脱など多くの大統領令に署名した。
1月21日
消失100ページ超
就任翌日に多くの政府サイトで発生した。
スクロール
2月1日
消失600ページ超
DEI(多様性、公平性、包摂性)や性的少数者に関するページが相次ぎ閉鎖。
スクロール
2月21日
消失900ページ超
政府効率化省を率いるイーロン・マスク氏は、途上国の人道支援を担う国際開発局(USAID)を「閉鎖する」と表明後、同機関のサイトが見られなくなった。
スクロール
3月31日
消失1000ページ超
調査対象の米政府機関は記事末尾の一覧参照
DEI・気候変動…90機関で削除
ページ削除は、農務省や労働省など約90の政府機関のウェブサイトで起きていた。内容を分析すると、DEI推進や気候変動対策、性的マイノリティーの権利擁護といったバイデン前政権の目玉政策がずらりと並ぶ。トランプ政権が批判するキーワードと一致する。
米国の大学図書館などが政権終了時に政府ページを保存するプロジェクト「End of Term Web Archive(EOT)」に登録されたURLを基に、取材班が独自にアクセスの可否を検証した。過去のウェブページを閲覧できるサイト「ウェイバックマシン」を使い、大統領就任式前後の状態と照合して調査を進めた。就任式から2カ月後の3月下旬にアクセスできるかどうかをチェックした。
閲覧できなくなった内容
1つのページで複数のキーワードが該当するケースを含む
削除率、バイデン政権の3倍に
今回のトランプ政権でEOTに集まった政府系URLは約1万件で、削除数は1000ページを超えた。取材班は2021年のバイデン前政権が発足した同じ時期を調べたところ、登録された約3900件のうち、削除数は約120ページだった。トランプ政権下の削除率は3倍近くになる。閲覧できなくなった内容は別のページで新たに掲載されている可能性はあるが、バイデン政権時と比べると削除件数の多さは際立つ。
EOTプロジェクトのジェームズ・ジェイコブス氏は「政権が公開情報をこれほど意図的に削除したのは過去に例がない。政府情報は民主主義にとって不可欠だ」と話す。同プロジェクトは08年のブッシュ政権時に始まった。トランプ政権ではデータ消失の懸念から登録されたURL数は最多となっている。調査対象のウェブページは政府機関サイトの一部であり、実際の削除数はより多い可能性がある。欧米メディアもトランプ政権による公開情報の消去について報じている。
人種関連の画像削除
「違法の可能性」
国防総省はDEIを想起させるコンテンツの排除を進めている。削除の動きのなかで、空軍サイトではヒスパニック系や先住民に関する画像が見られなくなった。政権の「反DEI」の方針に対応した。
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https://www.tinker.af.mil/News/Art.aspx?igphoto=2000096088PHOTO BY: Margo Wright
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https://www.tinker.af.mil/News/Art.aspx?igphoto=2000253833PHOTO BY: Tony Romo
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https://www.tinker.af.mil/News/Art.aspx?igphoto=2003315419PHOTO BY: Clayton Cummins
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https://www.tinker.af.mil/News/Art.aspx?igphoto=2002063940PHOTO BY: Kelly White
ヒスパニック系や先住民などのイベントで撮影された画像(4枚ともウェイバックマシンに保存された空軍サイト「TINKER AIR FORCE BASE」の画像)
削除された写真の一つが、アフリカ系米国人の業績をたたえる「黒人歴史月間」に撮影された画像だ。演説する空軍関係者の背後に「BLACK HISTORY」の文字が写り込んでいた。
ジョージタウン大学のデビッド・スパー教授は「人種で削除したら公民権法に違反する可能性がある。世論を操作しようとする試みだ」と批判する。国防総省はDEIに絡む情報を削除したと認めた上で、「DEIコンテンツを特定し、アーカイブしてきた」(報道官)と強調しており、誤って削除された場合は迅速に復旧するという。
「BLACK HISTORY」の文字があるため、削除されたとみられる
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https://www.grissom.afrc.af.mil/News/Art.aspx?igphoto=2003389785
PHOTO BY: Master Sgt. Rachel Barton
3月7日時点で掲載されていた画像。現在は削除されている(ウェイバックマシンに保存された空軍サイト「GRISSOM AIR RESERVE BASE」の画像)
連邦議会占拠事件、
データベース削除
1月18日時点のアーカイブ
ウェイバックマシンに保存された司法省サイトの画面
「米議会襲撃事件に関する情報」
「議会襲撃事件への対応」
「指名手配犯」
歴史的な大事件ですら例外ではない。「彼らは本当に国を愛している人たちだ」。トランプ大統領は就任当日、21年の連邦議会占拠事件で起訴された約1500人に恩赦を与えた。その8日後には司法省のサイトに掲載されていた同事件に関するデータベースは消え、「Page not found」と表示された。指名手配犯や連邦裁判所で起訴された被告の氏名が書かれたページなどが対象だ。
トランプ政権の狙いは何か。アメリカ政治に詳しい上智大学の前嶋和弘教授は「情報公開のあり方には政権の意図が出る。24年の大統領選は大接戦だった。つまりトランプ政権は盤石ではないため、支持者が望むことをしている」と指摘する。
1月18日時点のアーカイブ
ウェイバックマシンに保存された司法省サイトの画面
「米議会襲撃事件に関する情報」
「議会襲撃事件への対応」
「指名手配犯」
2月2日時点のアーカイブ
ウェイバックマシンに保存された司法省サイトの画面
アクセスできなくなっていた
ジェンダーの記述、何度も改変
ジェンダーの記述を何度も書き換えた形跡が見つかった。薬物乱用・精神保健局(SAMHSA)のページでは、性的少数者「LGBTQI+」の文言が2月2日に「LGB」に変わっていた。その後、「Health Equity(健康の公平性)」の記述がなくなり、3月末時点にはページ自体が閲覧できなくなった。背景にあるのは、トランプ氏の大統領令だ。就任式当日に署名した同令では、性別について男性と女性の2つであるとしていた。トランプ政権の支持層である保守的なキリスト教徒を意識した動きだ。
2025年1月17日
大統領就任前は、「LGBTQI+」だった
2月2日
見出しが「LGB」に変わった
2月14日
Equity(公平性)の文言がなくなる
3月31日
ページが閲覧できなくなった
4枚ともウェイバックマシンに保存されたSAMHSAサイトの画面
書き換えは他の政府機関サイトでも起きている。災害対応を担う連邦緊急事態管理局(FEMA)のページでは、気候変動に関する「Climate Resilience(気候耐性)」の文言が「Future Conditions(未来の状況)」に変わった。連邦政府のデータ変更を監視する環境データガバナンスイニシアティブ(EDGI)のアレサンドロ・パズ氏は、「トランプ氏は気候変動を現実の問題と信じていないか、深刻な問題ではないと考えているのだろう。政府が公開するデータは米国議会での意思決定や科学者の研究で使われており、政策や法律の制定にも悪影響を及ぼす可能性がある」と警鐘を鳴らす。研究者らが使用していたデータツールも削除された。分析や研究の機会が失われており、科学の進歩を阻害しかねない。
公共データの空白 世界に影響
過去の政権交代時でもウェブサイトの変更はあったが、今回ほど露骨な動きはなかったという。国立公文書記録管理局(NARA)は政権交代のたびにホワイトハウスのウェブサイトをアーカイブしているが、膨大な政府記録のうちの一部に過ぎない。
EOTのジェームズ氏は「米国の政治システムの強みは、過去に振り返って公的記録から政策を分析できることだった」と話す。公共の情報の削除は、国民の知る機会を奪い、民主主義の根幹も揺さぶる。同氏は危機感を込めてコメントを寄せた。
「トランプ政権は情報の『ブラックホール』を生み出している。今後何年にもわたって米国と世界に影響を与えるだろう」
調査手法
米国で政権終了時に政府機関のウェブページを保存するプロジェクト「End of Term Web Archive(EOT)」に登録された1万件超のURLを対象とした。EOTはスタンフォード大学図書館などが実施。登録者の多くは匿名の図書館司書だという。25年1月中に閲覧できたウェブページが、3月下旬にアクセスできるかどうか確認した。過去のウェブページを閲覧できるサイト「ウェイバックマシン」を使い、内容を確認した。タグ付けについては関連するキーワードの有無で分類した。日本のIPアドレス(インターネット上の住所)から閲覧できない「ジオブロッキング(地理的制限)」がないことも検証した。
調査対象の米政府機関一覧
ウェイバックマシンに保存されていた履歴を検証
- ホワイトハウス
- 保健福祉省
- 農務省
- 国際開発局
- 国立公園局
- worker.gov
- 労働省
- Federal Highway Administration
- 環境保護局
- 住宅都市開発省
- 疾病対策センター
- 運輸省
- 連邦緊急事態管理局
- 国立衛生研究所
- 連邦政府一般調達局
- 国土安全保障省
- 商務省
- employer.gov
- Office of the Assistant Secretary for Health
- sftool.gov
- エネルギー省
- 内務省
- 教育省
- 海洋大気局
- 薬物乱用・精神保健局
- climate.gov
- 国防総省
- 保健資源事業局
- U.S. AbilityOne Commission
- 国務省
- 特許商標庁
- 海洋エネルギー管理局
- 国勢調査局
- サイバーセキュリティー・インフラストラクチャー・セキュリティー庁
- HUD User
- MILLENNIUM CHALLENGE CORPORATION
- performance.gov
- 国立公文書記録管理局
- 安全環境執行局
- 連邦航空局
- 食品医薬品局
- 議会下院
- 司法省
- 全米人文科学基金
- 財務省
- youth.gov
- American Climate Corps
- 連邦取引委員会
- U.S. Global Change Research Program
- 航空宇宙局
- Administration for Community Living
- 全米芸術基金
- アルコール・たばこ・銃器取締局
- Bureau of Indian Affairs
- 税関・国境取締局
- 消費者金融保護局
- 消費者製品安全委員会
- 国家情報長官室
- U.S. Economic Development Administration
- 雇用機会均等委員会
- 米国輸出入銀行
- 連邦捜査局
- Federal Committee on Statistical Methodology
- 連邦住宅金融庁
- geoplatform.gov
- Assistant Secretary for Technology Policy
- 内国歳入庁
- 全米労働関係委員会
- 人事管理局
- 退役軍人省
- American Battle Monuments Commission
- Agency for Healthcare Research and Quality
- americorps.gov
- Advanced Research Projects Agency for Health
- Bonneville Power Administration
- cms.gov
- congress.gov
- digital.gov
- ENERGY STAR
- ej.gov
- farmers.gov
- medicalcountermeasures.gov
- peacecorps.gov
- 証券取引委員会
- 社会保障局
- stopbullying.gov
- U.S. Citizenship and Immigration Services
- United States Interagency Council on Homelessness
- workcenter.gov
- 空軍
- 海兵隊