Blueskyは米大統領選挙後の数週間で急成長を遂げた。12月3日(米国時間、以下同)の時点で、同プラットフォームのユーザー数は2,400万人を超えている。しかし、ユーザーのエンゲージメントが高いほど責任も重くなる。従って、Blueskyの最高経営責任者(CEO)であるジェイ・グレイバーは、サービスが広告まみれになる「enshittification(改悪化)」を防ぎつつ、急成長を支える資金を確保するという約束を果たすため、多くの課題に取り組む必要がある。
12月3日にサンフランシスコで開催された『WIRED』主催のイベント「The Big Interview」で、グレイバーはこの約束を守ることを誓い、「規模を拡大するなかでも、ユーザーにとってよい体験を提供することに注力し続けます」と話した。
サブスクリプション導入を検討
「改悪化」とはつまり、ソーシャルメディアプラットフォームの規模が拡大する過程で、投資家を満足させ、運営を続けるためにユーザーから収益を搾りとる施策を導入することを指している。Blueskyには広告を導入する計画がないことから、『WIRED』のシニアライターであるケイト・ニブスは、「Blueskyはどのように収益を上げるつもりなのか? 」と質問した。これに対し、グレイバーは「サブスクリプションが最初の一歩です」と答えている。例えば、月額料金を支払うユーザーに対し、高画質な動画をアップロードできる機能や特定のカスタマイズ機能を提供する計画を進めているのだ。
ただし、こうした計画はあるものの、最近のユーザーの急増によって有料のサブスクリプションサービスの導入が遅れていることをグレイバーは認めている。そうした機能が近々提供されるのかと問われると、「それが当初の計画でしたが、いまは急激な成長に対応しなければなりません」と回答したのである。
BlueskyはもともとTwitterの社内で実験的なソーシャルメディアとして立ち上げられたサービスだったが、イーロン・マスクによる旧運営会社の買収と「X」への改名前に完全に独立している。マスクが米大統領選挙中にドナルド・トランプを強く支持したこともあり、選挙後の11月、Blueskyに数百万人の新規ユーザーが登録した。
選挙後にユーザーが急増した際、20人のフルタイムスタッフがいるBlueskyはユーザーの流入に対応しきれず、サイトが一時的にダウンすることもあった。現在も成長は続いているものの、Blueskyはユーザーベースを途切れることなく処理するための体制を整えている。ニュースレター『Platformer』のケイシー・ニュートンとの最近のインタビューで、同社は契約ベースのコンテンツモデレーターの人数を25人から100人に増やしたと語っている。
Blueskyの特徴のひとつは、ユーザーに提供するカスタマイズ機能と権限に重点を置いた分散型プラットフォームである点だ。ユーザーリスト、スターターパック、ミュートワードを通じて、ユーザはフィードで見たいものを簡単に調整できる。さらに、手順を踏めば、ヘビーユーザーは自分専用のウェブサイトホスティングプロバイダーを設定することも可能である。
Blueskyはいまの時代の流れを捉えている一方で、メタ・プラットフォームズが提供するもう1つのTwitter(現X)の代替サービスであるThreadsも引き続き成長しており、規模では依然としてBlueskyを大きく上回っている。メタの広報担当者であるアレック・ブッカーは、11月だけで3500万人以上の新規ユーザーがThreadsに登録したと『WIRED』にメールで語った。競争によるプレッシャーを感じているメタは、Threadsにさらに多くのカスタマイズのための設定を追加する計画を発表している。
(Originally published on wired.com, translated by Nozomi Okuma, edited by Mamiko Nakano)
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