ユーザーがフィードのアルゴリズムを選べるBlueskyの新機能は、SNSの新時代を切り開くかもしれない

分散型SNSのBlueskyは、ユーザーがフィードのアルゴリズムを選べる機能をこのほど実装した。これはつまり、フィードに表示されるコンテンツをサービス側が決めるのではなく、ユーザー自身で決められるようになるということだ。
Digital generated image of abstract blue geometric shapes in a cluster against a blue background
Illustration: Eugene Mymrin/Getty Images

ソーシャルメディアのアルゴリズムは、人々のキャリアの役に立ったり壊したり、または政治的な偏向を加速させるなど、ユーザーにありとあらゆる影響を与えてきた。

そんななか、Blueskyはこれまでと違うことをしている。ユーザーがアルゴリズムを選べるようにしたのだ。5月26日(米国時間)、Blueskyプラットフォームの開発者は「My Feeds」という機能の展開を始め、ユーザーが自分のフィードに表示されるコンテンツを選べるようにしたのだ。

選べるフィード

現在プラットフォームではベータ版として50種類のフィードを提供している。人気の投稿を表示してくれるフィードのほか、ネコばかりのフィード、職場での閲覧には適さないようなコンテンツのフィード、コメディドラマに登場するパペットの「アルフ」の画像を表示するフィードまで、さまざまなものがある。

この機能の展開は、分散型のサービスを目指すBlueskyの理念と合致するものだ。Bluesky の最高経営責任者(CEO)を務めるジェイ・グラーバーが、競合サービスで主流の「マスターアルゴリズム」を「オープンで多様なアルゴリズムのマーケットプレイス」に置き換えると発表したのは2023年3月のことである。

現在、フィードを作成するには技術的な知識がある程度必要だが、いずれ誰でも独自のフィードを簡単につくれるようになると、Blueskyの開発者であるポール・フラジーは以前「スキート」(Twitterのツイートに相当するBlueskyの投稿のこと)で説明していた。

ソーシャルメディアの新時代

Blueskyを最近試し始めたカジュアルユーザーとしては、これはかなり使える機能だと感じている。さらにはサービスの運営元の経営陣ではなく、ユーザーが自分の見たいものを見るコンテンツを決められるソーシャルメディアの新時代を形成する可能性さえある。

イーロン・マスクのファンのコメントを見たくないなら、表示しないように設定できる。K-popについて言及しているすべての人気ツイートを見たい場合も、そのように設定できるのだ。「これはまさに正しい方向への第一歩です」と、マサチューセッツ州にあるベントレー大学でアルゴリズムを研究している教授のノア・ジンシラキューサは話す。「こうしたサービスには柔軟性と多様な選択肢が必要なのです」

これは明らかに、Twitterとは異なる方向性である。Twitterではすでに、青いチェックマーク付きのたくさんの投稿のなかから良質なコンテンツを見つけることが、ますます難しくなっている。

それにイーロン・マスクが「いまどうしてる?(What's New)」のフィードを気まぐれに変更するので、アルゴリズムが提示するコンテンツはころころ変わる。1月はメンズファッションの着こなしについての投稿ばかりが表示された。今週は人類の誇る名画を拡張するとどうなるか(作品の改悪である)を実演するAIの専門家の投稿ばかりだった。要するに、あなたのTwitterでの体験はおそらく、あなたが望むものになっていないということだ。

コンテンツの決定権がユーザーの手に

だからこそ、Blueskyがユーザーにコンテンツの決定権を渡そうとしていることがこんなにも新鮮に感じるのだ。「分散型及びWeb 3.0を基盤としているにもかかわらず、これはRedditとTwitterが合わさったサービスのように感じます」と、アラバマ大学の助教授でインターネット文化の専門家であるジェス・マドックスは話す。

マドックスはBlueskyのユーザーであり、「Cat Pics」というフィードの開発者でもある。「Cat Pics」の説明には、「ネットワーク全体からネコの写真(ときどきネコ以外のコンテンツも含む)を集めてフィードに表示する」と書かれている。ネコを愛でたい欲求を鎮めるために、Redditのネコのカテゴリーに登録してネコの写真を延々と眺めている人もいるだろう。これはそれに似たことができるフィードだと、マドックスは語る。

ユーザーがBlueskyのフィードを好みに合わせて変えられる機能の実装をマドックスは歓迎している。プラットフォームにはまだ欠点もあるものの、見たいものを見れるようユーザーにフィードの決定権を渡している点は新鮮に感じる、とマドックスは話す。「人々はサービスの体験を管理でき、遭遇するさまざまな投稿の種類を制御できるようになります」

これはつまり、ユーザー側で見たいフィードを主体的に選べる、ということだ。わたしの場合は、過去24時間でBlueskyで話題となった投稿を表示する「Catch Up」のフィードを使用している。これで知っておくべき話題がわかるようになった。またフォローしているユーザーの間で人気のコンテンツといいねされたコンテンツの一部を表示する「Popular With Friends」のフィードを使用することで、関心のあるコミュニティ内で何が話題になっているのかも把握できている。

ほかのサービスでの導入に期待

プラットフォームの運営方法にまつわる特定の問題を解決するためにつくられたフィードもある。ルーディー・フレイザーが開発した「Blacksky」は、プラットフォーム上でアフリカ系米国人の投稿を広めるためのものだ。開発のきっかけは、Blueskyの「What’s Hot(人気の投稿)」のフィードに流れるコンテンツに、フレイザーが不満を感じたことだった。「同じ人の投稿ばかりで、アフリカ系米国人の投稿を見ることはまずありませんでした。すでに何千人ものフォロワーがいるユーザーだけがさらに多くの露出を獲得できていたのです」と言う。

ユーザーがアルゴリズムを選べるようにすることで、アルゴリズムの裏側について人々がもっと注意を向けるようになることを期待していると、マドックスは話す。「人々はアルゴリズムをあらゆることに使っていますが、その仕組みについて人々に教えることだけはしていません」。また競合製品の人気機能を真似るソーシャルメディアの文化により、アルゴリズムを選べるBlueskyの機能が今後ほかのサービスにも導入されるかもしれない、マドックスは指摘する。

Blackskyの開発者であるフレイザーも、そうなることを望んでいる。「アルゴリズムを選ぶ権限をユーザーに委ねることは、ソーシャルメディアに必要な次の大きな変化だと思います」とフレイザーは話す。

WIRED US/Translation by Nozomi Okuma)

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