メタ、元OpenAIの研究者をまたひとり「超知能ラボ」に引き抜く

元OpenAIヤン・ソンが、メタの「超知能ラボ」の主任研究者に起用されていたことが、『WIRED』の取材で明らかになった。
Mark Zuckerberg chief executive officer of Meta Platforms Inc. during the Meta Connect event in Menlo Park California US...
メタ・プラットフォームズの最高経営責任者(CEO)、マーク・ザッカーバーグ。Photograph: David Paul Morris; Getty Images

マーク・ザッカーバーグ率いるメタ・プラットフォームズが、OpenAIの幹部級AI研究者をまたひとり引き抜いた。OpenAIで戦略的探索チームを率いてきたヤン・ソンだ。複数の関係者によると、ソンはメタの新設された人工知能プロジェクト「Meta Superintelligence Labs(MSL)」に、主任研究者として9月初めに着任。7月の発足時から話題のMSLを率いるシェンジャ・ジャオの直属になるという。ジャオもOpenAIの出身だ。

この人事は、ザッカーバーグが今夏に仕掛けた採用攻勢の延長線上にある。OpenAI、グーグルAnthropicから少なくとも11人のトップ研究者がすでにメタに合流している。

ソンは2022年にOpenAIに加わり、大規模で複雑なマルチモーダルデータを処理するモデル能力の強化に取り組んできた。スタンフォード大学・大学院在籍中には、画像生成モデル「DALL·E 2」の開発に影響を与えた、画期的な技術を生み出している。ソンとジャオは、ともに北京の清華大学で学部時代を過ごし、スタンフォード大学では同じ指導教官ステファノ・エルモンのもとで博士課程に進んだという共通点もある。

ザッカーバーグは今夏、社員向けメモのなかで、ジャオの華々しい経歴──ChatGPTGPT-4、各種ミニモデル、4.1、o3の共同開発者としての実績──を誇らしげに称えていた。しかし、当時はメタでの新たな役職について明言を避けていた。

ところが7月、ザッカーバーグはThreadsへの投稿で、ジャオが「MSLの共同創設者」であり「初日からリード・サイエンティストを務めてきた」と説明し、そのリーダーシップを主任科学者として「正式に位置づけた」と発表した。その背景には、ジャオがOpenAIへ復帰する構えを見せ、実際に雇用契約書に署名までしていた事情があったことを『WIRED』は報じている。

人材流出と新戦力の獲得

MSLの構想が6月に発表されて以降、すでに数人の研究者が離脱している。『WIRED』がこれまで報道したところによると、2人はOpenAIへ復帰し、そのうち1人はオンボーディングを終えながら、メタでの初出勤日に姿を見せなかったという。

さらに、AI研究者のオルコ・ロイも7月にメタを去っていたことが、『WIRED』の取材で判明した。ロイはわずか5カ月間しかMSLに在籍せず、現在はマイクロソフトのAI部門に所属していると自身のウェブサイトで明かしている。ロイは、『WIRED』のコメント要請に応じなかった。ヤン・ソン、OpenAI、メタも同様に即時の回答を避けた。

一方、複雑さを増すメタのAI部門に、今回ソンという新たなビッグネームが加わったことになる。7月にジャオが採用された際には、長年メタのチーフAIサイエンティストを務めてきたヤン・ルカンの後任ではないかとの憶測も流れた。しかしルカンは、現在も基礎研究を手がけるメタのFacebook AI Research(FAIR)でチーフAIサイエンティストを務めていると、LinkedInへの投稿で記している

(Originally published on wired.com, translated by Miki Anzai, edited by Mamiko Nakano)

※『WIRED』によるメタ・プラットフォームズの関連記事はこちら


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