「スマートフォンの調子がおかしい」
わたしはGoogle Pixel 9 Proのバッテリーが徐々に劣化していることについて、友人に話していた。普段なら1日持つはずの電池が、夕方には充電が必要になっていた。そこで気づいたのだ。問題は自分自身だったのだと。Instagramでの際限ないスクロールやメールの強迫的なチェックなど、スマートフォンの使用時間が長過ぎたのだ。
Androidには「Digital Wellbeing」という機能群があり、そこにはおやすみ時間モード、通知管理、アプリの使用時間制限などが含まれている。2018年に発表されたこの機能の存在は知っていた。しかし、本当に活用していたかといえば、そうではなかった。
長年わたしは、生産性向上のための工夫を実践してきた。Facebookアプリを削除し、PCからのみアクセスするようにした。また、スマートフォンはキッチンで充電することにし、ベッドでの使用を避けるようにしていた。しかし、これらの方法では不十分だった。無意識なスクロールのせいで、毎日夜8時頃には電池が無くなっていた。使用時間をコントロールする必要があった。以下はわたしが、この状態から抜け出すために実施した内容だ。
アプリの使用制限を設定する
グーグルはすべてのAndroidスマートフォンに、アプリの制限の設定ができる機能を搭載している。アクセスするには、設定から「Digital Wellbeing」を探す。Samsung Galaxyでは表示が若干異なるが、機能は同じだ。わたしは通常、夜に1日の統計を確認している。メイン画面には、1日の総使用時間と、最も使用したアプリが表示される。また、スマートフォンのロック解除数や、受信した通知の総数も確認できる。
使用時間を減らすには、まずアプリの制限の設定から始めよう。最初は厳しく感じるかもしれないが、このタイマーは効果的だ。アプリが自動的に終了し、夢遊病的な状態から引き離してくれるからだ。TikTokでの際限ないスクロールや、ウェブ閲覧のしすぎに気づかされる。
生産性の専門家であるニル・エヤルは著書『HOOKED』(未邦訳)で、わたしたちは実際にはスマートフォンに「依存」しているわけではないと書いている。それは、より深刻な問題のために取っておくべき言葉だ。そうではなく、わたしたちは「執着」しているのだという。ソーシャルメディアでの「いいね!」やコメントによって得られるドーパミンの放出が、その執着を助長しているのだ。
わたしはGoogle Chromeからアプリの使用制限を始めた。正直なところ、つらかった。45分の制限を設定したが、毎日、昼食時までにその制限に達してしまった。制限時間が1分を切ると、アプリが終了する警告として画面がグレーになる。制限時間を90分に延長したところ、うまく機能するようになった。制限に達すると、タイマーをリセットするか、別のデバイスでブラウザを使用する必要がある。自分で設定した制限を解除するには努力が必要で、その結果と向き合わなければならないため、使用時間の抑制に効果的だ。Gmailアプリ、メッセージ、Instagram、TikTokにも制限を設定した。
驚くべきことに、時間制限を設定することで、1日の総使用時間は4時間30分から3時間30分に減少した。毎日1時間を取り戻せたのだ。悪くない成果だが、さらにスクリーンタイムを減らしたかったので、より抜本的な方法に挑戦した。
抜本的な対策
グーグルは、スマートフォンの魅力を減じるほかの設定も用意している。例えば、Androidのおやすみ時間モードは画面を暗くし、すべてをモノクロに変える。この機能を見つけるには、Digital Wellbeing設定から「おやすみ時間モード」を探し、夜8時頃から開始するように期間を設定する。これにより、翌朝まで通知も無効化される。わたしの場合、おやすみ時間モードは、スマートフォンを置いてスクロールを止めるための視覚的な合図として効果があった。使用時間をさらに1時間減らすことができた。
しかし、まだスマートフォンの使用時間は長すぎた。新着メッセージ、Discordのチャット、メールの通知には常に魅力がある。誰が連絡してきているのか? 何が必要なのか? また、通知音が鳴るたびにドーパミンを求めてしまう。すぐに返信するのは有用で生産的だと感じるが、その代償として、さらに画面に縛られることになる。
最終的に効果があったのは、あまりにも単純で笑えるほどの方法だ。Google PixelやSamsungのスマートフォン、その他多くのAndroidモデルには、スマートフォンを伏せて置くと自動的にすべての通知と、ほとんどの電話を無効にする機能がある(お気に入りに登録した連絡先からの着信のみ通知される)。重要なポイントは、スマートフォンを伏せた際に軽い振動があることを確認することだ。これは、おやすみ時間モードが有効になったことを示している。この方法は大きな効果があった。通知音が聞こえなくなり、スマートフォンを手に取る回数も減った。
進捗を把握する
アプリの制限の設定、おやすみ時間モード、そしてPixel 9 Proを伏せて置く方法を合わせることで、使用時間は1日約2時間にまで減少した。特に驚くべきは、何も見逃している感じがしなかったことだ。制限を設定していることを意識していたため、より生産的になった。例えば、Google Chromeでは検索をより意図的に行うようになり、無目的なサーフィンを止めた。同僚の何人かはわたしがスマートフォンを伏せて置くのを見て、同じ方法を始めるようになった。
もちろん、これらの方法は設定を維持し、ダッシュボードで進捗をチェックし続けることでのみ効果を発揮する。わたしにとっては、日々のチャレンジとなった。Digital Wellbeingの最終使用統計を確認し、翌日は自分の「スコア」を更新しようと試みた。
最大の成果は?解放感だった。より多くの本を読み、友人と話すようになった。空き時間には新しいカードゲームを始めるようにもなった。長年の末、ついにスマートフォンに支配されるのではなく、スマートフォンを制御できるようになったと感じた。
(Originally published on wired.com, translated by Mamiko Nakano)
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