第5回「安い世界」の終焉、予言した経済学の大家 あらゆる前提が崩れゆく
国境を越えて効率を追い求める「安い世界」が、終わりを迎えつつある。足元のインフレは一時的なものではなく、コストとリスクの増大により、物価高が「常態」となる時代に入ったことを告げる序曲なのか。
英ロンドンとつないだ画面越しながら、ピンク色のシャツに身を包んだ89歳の経済学者は、自信を深めているようにみえた。
「構造的なインフレが到来し、低金利の時代は終わった。世界経済の転換は今後も進むだろう」
チャールズ・グッドハート。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の名誉教授で、戦後の世界経済の洞察を続けてきた泰斗だ。
とりわけ賛否を呼んだ論考がある。2020年に原書を出版した共著「人口大逆転」。
それまで40年間の低インフレ・低金利は、中国や東欧の労働力の参入や女性就業の拡大といった「例外的な条件」に支えられたもので、「本来の姿ではなかった」と分析。高齢化と労働人口が減ることによる世界的な人口構成の変化で、インフレ時代への「大逆転」が起こると主張したのだ。
08年のリーマン・ショックに端を発した金融危機以降、経済論壇では主流派学者が唱えた「長期停滞」論が強く支持されていた。当時危ぶまれたのはインフレではなく、日本も長く苦しんでいた低インフレと低成長だった。それが反転するというグッドハートの主張は「異色」とされた。
しかし、新型コロナ危機とウクライナ戦争をきっかけに、彼の見立てを裏付けるかのように世界は高インフレへと転じる。
重要なのは、こうした変化がショックによる一時的なものではなく、後戻りできない動きである可能性が高いことだ。
揺らぐ比較優位
「安い世界」が終わる大きな…



















































