人種差別的な中傷する人は「ファンじゃない」、イングランド主将らが非難

Gareth Southgate addresses the social media abuse of England players following their defeat to Italy in Euro 2020 final.
画像説明, ユーロ2020決勝後、代表選手に対するソーシャルメディア上での中傷について言及するイングランドのギャレス・サウスゲイト監督

サッカーの2020年欧州選手権(ユーロ2020)の決勝戦でペナルティーキック(PK)を外したイングランド代表選手が、人種差別的な中傷を受けた問題で、イングランド代表をはじめ各界から差別を非難する声が相次いでいる。

イングランド主将のハリー・ケインは12日、ソーシャルメディアで人種差別攻撃をする人について、そのような人間は「イングランド・ファンではないし、我々はそんな人はいらない」と述べた。

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イングランド・フットボール協会(FA)は試合後ただちに、人種差別的攻撃を非難。その後、イギリス国内ではボリス・ジョンソン首相英王室のケンブリッジ公爵ウィリアム王子カンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビー牧師ロンドンのサディク・カーン市長などの要人から、一般人に至るまで、人種差別を非難する声がソーシャルメディアにあふれている。ロンドン警視庁は捜査に着手した。

ウィリアム王子はツイッターで「昨晩の試合の後、イングランドの選手たちに向けられた人種差別な虐待に、とても不快な思いをしている。このようなおぞましい行動に選手たちが耐えなくてはならないなど、まったく容認できない。ただちに終わりにしなくてはならないし、かかわった全員に責任をとらせなくてはならない」と書いた。

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イングランド・フットボール協会(FA)は、差別的中傷に「愕然(がくぜん)とした」と間もなくコメントした。

欧州サッカー連盟(UEFA)は「非常に不快な人種差別的中傷」を非難し、「我々は、可能な限り強力な処罰を求める選手とFAの呼びかけを支持する」とした。

ボリス・ジョンソン英首相は、「イングランド代表チームはソーシャルメディアで人種差別的に中傷されるのではなく、英雄として称賛されるべきだ」とツイート。首相官邸での12日の定例会見では、選手たちに人種差別中傷を浴びせた者たちを「恥を知れ。お前たちがはい出てきた石の下に、また潜って戻ってもらいたい」と非難していた。

差別的中傷する人はファンではない

Bukaya Saka and Harry Kane

画像提供, Getty Images

画像説明, イングランド主将ハリー・ケイン(奥)とブカヨ・サカ(手前)

ケイン主将は差別攻撃の対象になったFWマーカス・ラッシュフォード、MFジェイドン・サンチョ、MFブカヨ・サカの3人について、「支持と応援に値する。昨夜から続く、下劣な人種差別的攻撃を浴びせられるべきじゃない」とツイートした。

「素晴らしい活躍を見せた3人は、のるかそるかの一大事に、勇気を持ってペナルティーキックに臨んだ」とケインは3人をたたえ、さらに次のように断言した。

「ソーシャルメディアで誰かを中傷するような人はイングランドのファンではないし、我々はそんな人はいらない」

英ロンドンのウェンブリー・スタジアムで11日に行われた決勝戦では、イタリアとイングランドが1-1で延長戦に突入するも決着がつかず、PK戦にもつれ込んだ。イタリア先攻のPK戦では、イングランドのラッシュフォードとサンチョ、5人目のサカが外した。サカのシュートをイタリアのGKジャンルージ・ドンナルンマが止めた瞬間、イタリアが優勝を決めた。

決勝戦後のソーシャルメディアには、ラッシュフォード、サンチョ、サカの3選手に対して人種差別的な中傷が相次いだ。

England"s Bukayo Saka with manager Gareth Southgate after the match

画像提供, Reuters

画像説明, 最後のPKを外して泣くサカを抱きしめるサウスゲイト監督

ラッシュフォードは今年5月にも、所属するマンチェスター・ユナイテッドがヨーロッパリーグ決勝戦でスペインのビリャレアルに敗れた際、自分がソーシャルメディアで人種差別攻撃に遭ったと発言していた。

サンチョは昨年5月、米ミネアポリスで黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官に拘束され死亡した事件の後、いち早く抗議の声を上げたスポーツ選手の1人だった。

Sancho and Rashford

画像提供, Reuters

画像説明, イングランド代表のMFジェイドン・サンチョ(左)とFWマーカス・ラッシュフォード(右)はイタリアとの決勝戦でPKを外した

19歳のサカが所属するプレミア・リーグのアーセナルをはじめ、3人の所属チームはそれぞれ、自分たちの選手を誇りに思うと声明を出した。

アーセナルは声明で、若いサカを誇りに思う気持ちがソーシャルメディアの人種差別発言で「たちまち悲しみに変わった」、「またしても、黒人選手に対する人種差別を非難すると言わなくてはならない。これは悲しいことだ」と述べ、「このまま続けさせるわけにはいかないし、我々の選手たちが日常的にさらされる、下劣な虐待行為を今すぐ確実に終わらせるため、ソーシャルメディア・プラットフォームと当局は行動しなくてはならない」と求めた。

元イングランド代表DFのギャリー・ネヴィル氏は、英スカイニュースに対して、「あの3選手が外した瞬間、こうなると思った」と話した。

選手たちが中傷を非難

イングランド代表のDFタイローン・ミングスはツイッターで、チームが決勝に進出したことへの誇りを語った一方、「今日、目を覚ますと、この国を助けるために勇気を持って立ち向かった仲間が人種差別的な中傷を浴びせられているのを見て気分が悪い。ただ、驚きはしなかった」と述べた。

イングランド代表選手たちは今大会で、人種差別との戦いを強調するために試合前に膝をつくジェスチャーをしていた。先月にこの行為について「ジェスチャー政治」だと発言したプリティ・パテル内相は、今回の中傷について「不快極まりない」などと非難するツイートを投稿した。これに対してミングスは「いまさら不快だなんてふりをするのは通用しない」などと、パテル内相を非難した。

MFジュード・ベリンガムは、中傷を受けた3選手の頭に王冠を乗せた写真をツイートし、「自分たちは共に勝利を収め、共に敗れる。このような素晴らしい特性を持ったチームメイトがいることを誇りに思う。人種差別については傷ついたが、驚きはない。もっと何かしなければならないと言っても言い過ぎることはないだろう。人を教育し、こうしたプラットフォームをコントロールすべきだ」と述べた。

イングランドのギャレス・サウスゲイト監督は先に、人種差別的中傷は「許されない」と述べた。

「我々が体現するものと、(差別は)あまりにかけ離れている」と監督は強調。

「大勢を一つにまとめ、大勢が自分の代表チームに共感できるようにするため、私たちは道を示す光であろうとしてきた。代表チームはすべての人の代表なので、その一体感は維持しなくてはならない」

「この国が一丸となり、前向きにエネルギーを共有すれば、どれだけ力強くなれるか、私たちは示してきた」

「誰がPKをするのかは私の判断だ。選手が手を上げないとか、経験豊富な選手がしり込みするとか、そういうことではない」

中傷を受けた選手は何と

応援メッセージで「修復」されたラッシュフォード選手の壁画

画像提供, PA Media

画像説明, 応援メッセージで「修復」されたラッシュフォード選手の壁画

ラッシュフォードは12日に声明を発表。PKを外したことを謝罪した一方で、「自分がどういう人間で、どこから来た人間かについて、僕は絶対に謝らない」と述べた。

ラッシュフォードは声明で、「どこから始めたらいいのか分からないし、今まさにこの時、自分が何を感じているかどうやって言葉にしたらいいのかも分からない」と書いた。

「チームメイトや全員をがっかりさせた気がしていた。チームに貢献するのに、自分に要求されたのはペナルティーキックだけ。ペナルティーは寝ていても入れられるのに、どうしてあれは入れられなかったんだ?(中略)自分には、ごめんなさいとしか言えない。別の結果になったらよかったのに」

ラッシュフォードはそう謝罪した後、「今日自分が受け取ったメッセージは圧倒的にポジティブで、ウィジントンでの反応を見て、泣きそうになった。常に自分を抱きしめて受け入れてくれたコミュニティーは、今も僕を支えてくれる。僕はマーカス・ラッシュフォード。南マンチェスターのウィジントンとウィゼンショーから来た、23歳の黒人男性。ほかに何がなくても、自分にはそれがある」と書いた。

ラッシュフォードの出身地ウィジントンにある壁画は、PK後に汚されたが、その後は応援メッセージで埋め尽くされた。

Messages posted on the defaced mural
画像説明, 破壊された壁画は、「模範となる人」、「強くて尊敬されている人」、「いつもここぞいう時に活躍するヒーロー!」「あなたに励まされている」「私たちにとってはいつでもスター」といったポジティブなメッセージで覆われた
The mural of Marcus Rashford has now been cleaned

画像提供, PA Media

画像説明, ラッシュフォード選手の壁画は13日、本格的に修復された

警察が捜査を開始

中傷について捜査を進めているロンドン警視庁は、「このようなことは許されない」とツイートした。

イギリス・フットボール取締ユニット(UKFPU)も調査を開始した。

イギリスの全国警察本部長評議会(NPCC)のマーク・ロバーツ本部長は、警察はフェイスブック、インスタグラム、ツイッターと連携し、「すでに捜査が進められている」と述べた。

ウェスト・マーシア警察は、シュロップシャー州ミンスターリーに住む60代の男を、人種的憎悪を扇動した疑いで逮捕したと発表した。

1900件以上の「中傷」ツイート

イングランドのプロサッカー選手協会(PFA)は、大会期間中に投稿された85万件以上のツイートの分析結果について次のように説明した。このデータはチャンネル4ニュースに共有された。

  • 1913件のツイートが、ジェイドン・サンチョ、、ブカヨ・サカ、マーカス・ラッシュフォード、ラヒーム・スターリングの4選手を中傷している可能性があると判定された
  • 167件の投稿が「高リスク」の中傷と判定された

PFAによると、これらのツイートの多くは削除されたものの、ツイッター社によるカウントの永久停止には至っていない。

「我々の予備分析によると、ユーロ2020の決勝戦を中心に、主にジェイドン・サンチョ、ブカヨ・サカ、マーカス・ラッシュフォード、ラヒーム・スターリングに向けられた中傷の数は、今大会のほかの試合に関するものの総数より多かった」と、PFAは付け加えた。

ツイッター社は過去24時間で1000件以上の投稿を削除し、規約違反のアカウントを多数停止したと明らかにした。

一方でフェイスブック側は、ダイレクトメッセージで中傷を繰り返し送信したアカウントの永久削除などの厳しい措置をインスタグラムにおいて発表したと述べた。

FAはソーシャルメディア各社に対して、差別投稿を重ねる利用者を排除し、当局による起訴を助ける証拠集めに協力するよう呼びかけている。

ファン追放も

レイトン・オリエントFCは12日、今回の中傷に関連し、ファン1人を永久追放したと発表した。

「問題となっているツイッター上での中傷に関連し、サポーター1人について、昨夜遅くに当クラブに通報があった。禁止命令を出すための措置が迅速に取られた」

ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズFCは、サポーターの1人が人種差別的な中傷をしているとの通報を受け、警察に詳細を伝えたと発表した。