韓国サムスン電子が同社初の三つ折りスマートフォンを発表した。広げるとタブレットになる三つ折りスマホの製品化は中国通信機器大手ファーウェイに続き2社目。スマホ市場に占める折りたたみスマホのシェアはまだ低いものの、すでに中国市場ではジワリと折りたたみスマホのシェアが広がっている。2026年はアップルの参戦も濃厚で、普及に向け節目の1年になりそうだ。
畳むとスマホ、開くとタブレット

サムスンは2日、三つ折りスマホ「Galaxy Z TriFold」を発表した。
閉じた状態で6.5インチ、開くと10インチのタブレットになる。厚さは畳むと12.9ミリ、開くと3.9ミリ。重量は309グラムで、iPad miniより十数グラム重い。
価格は約359万ウォン(約38万円)から。12日に韓国で発売し中国、台湾、シンガポール、アラブ首長連邦、米国などで順次販売する。現時点で日本での発売予定はない。
三つ折りスマホを世界で最初に発売したのはファーウェイだ。
同社は2024年9月、アップルがiPhone 16シリーズを発表した半日後に「世界で初めて」の三つ折りスマホ「Mate XT」の発表会を開いた。発売日もiPhone 16と同じ日にかぶせてきた。
Mate XTは6.4インチ。2画面を使うデュアルスクリーンだと7.9インチ。すべて開くと10.2インチのタブレットサイズになる。重さは298グラムで、折りたたんだ状態の厚さは12.8ミリ。価格は1万9999元(約44万円)からとした。
反響はすさまじく、発表会の前に予約が300万台を超えた(半導体調達の問題もあり、実際の販売台数は70~100万台と推定される)。
2025年9月には価格を2000元(約4万4000円)下げた後継機種「Mate XTs」を発表した。独自開発した半導体「Kirin(キリン)9020」を搭載したことを初めて明らかにし、基本ソフト(OS)は独自開発の「鴻蒙(Harmony OS)」を採用した。
価格下がればブレークスルー
サムスンとファーウェイの三つ折りスマホはいずれも約40万円で、スマホにしては高額だが、ファーウェイは発表会で「ポケットに入るPC」と説明している。実際、Mate XTsはパソコン用のビジネス関連ソフトが使えるようになっている。
触ってみると、非常に魅力的な製品だと分かった。
スマートフォンとタブレットを2台持ち歩いているビジネスパーソンは少なくない。動画視聴や文章作成などだいたいのことはスマホでもできるが、快適さを求めるとより大きな画面が欲しくなる。通勤時間の地下鉄でも、タブレットで動画を視聴している人をよく見かける。スマホとPCを持ち歩いている筆者も、結局タブレットもカバンに入れることが多い。
三つ折りスマホは、タブレットを代用するだけでなく、画面を3つに分割し、それぞれ別のアプリを立ち上げることもできる。一つの画面で情報を検索しながら、別の画面で買い物をする。さらにもう一つの画面で動画を視聴することも可能だ。
価格がiPhoneと同程度に下がれば、販売面でもブレークスルーが起きると容易に想像できる。
シェア2.5%だが2ケタ成長

2社しか発売しておらず、高額な三つ折りに比べて、二つ折りの折りたたみスマホはアンドロイド陣営から多数の機種が発売されている。iPhone一強の日本では目にする機会が少ないが、有力アンドロイドメーカーがしのぎを削る中国市場では市民権を得ている。
折りたたみスマホは2018年に中国スタートアップは初めて製品化。大手としてはサムスンが2019年に「Galaxy Fold」を発表し先陣を切った。ファーウェイも同じタイミングで「Mate X」を発表した。
2021年から2022年にかけてXiaomi(小米科技、シャオミ)、OPPO、vivo、HONORも折りたたみ型を投入し選択の幅が広がっている。
サムスンが折りたたみスマホを投入して6年、複数のメーカーがさまざまな機種を展開している。にもかかわらず、同ジャンルがニッチから抜け出せていないのも事実だ。
市場調査会社Counterpointがこの12月に発表した調査によると、2025年7~9月、スマホのグローバルでの出荷全体に占める折りたたみ型のシェアは2.5%だった。安い機種でも10万円前後するため、販売を見込める市場が限られていることと、アンドロイドの主要メーカーの大半が中国企業であるため、中国での展開が中心になっていることが大きな理由だ。

それでも同市場の潜在力は大きく、普及以前のステージである今こそ投資のしどころとも言える。
スマホ市場は成熟ステージに入り、2023年まで前年比でマイナスが続いた。2024年は生成AIという新テクノロジーが後押ししプラスに転じた。2025年もiPhone 17の好調でプラスが見込まれている。しかし、成長するといっても5%を下回る規模だ。
一方、折りたたみスマホのシェアは2.5%にすぎないが、同期間の出荷台数は前年同期比14%伸び、過去最高を記録した。Counterpointは、サムスンが2025年7月に発表した「Z Fold7」がプレミアム層への訴求⼒を⾼め、想定を上回る伸びを実現したこなどを、好調の背景に挙げている。
かぎ握る折りたたみiPhone
ハイエンドのイメージが強く、利益幅も大きいが、脇役にとどまる折りたたみスマホだが、業界ウォッチャーは、2026年が飛躍の鍵を握る1年になるとみている。
大手メーカーの中で唯一折りたたみスマホを製品化していないアップルが、いよいよ投入すると予想されるからだ。
2025年9月に発表したiPhone 17は予想を上回る売れ行きを見せ、アップルは2025年の出荷台数でサムスンを抜いてトップになる可能性が高まっている。一方で、久々のイノベーションと評価された超薄型のiPhone Airは振るわず、次期モデルの発表が2027年に延期になったとの報道が出ている。
折りたたみiPhoneを巡ってはさまざまな憶測が乱れ飛んできたが、iPhone Airの不振を受け、同機種に代わる“切り札”として2026年に投入されるとの見方が支配的になりつつある。
アップルが折りたたみiPhoneを発売すれば、中国市場でだけ普及していたアンドロイドの折りたたみスマホにとっても追い風になるだろう。
ファーウェイやサムスンが投入した三つ折りスマホは、販売台数を狙うというより技術で先行しているメッセージの発信に主眼を置いた製品だ。視線の先にはもちろんアップルがある。少なくともこれまでのファーウェイの動きをみる限り、折りたたみiPhoneを迎え撃つ準備を水面下で進めているだろう。
浦上早苗: 経済ジャーナリスト、法政大学MBA実務家講師、英語・中国語翻訳者。早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社(12年半)を経て、中国・大連に国費博士留学(経営学)および少数民族向けの大学で講師のため6年滞在。「新型コロナ VS 中国14億人」「崖っぷち母子 仕事と子育てに詰んで中国へ飛ぶ」(大和書房)。未婚の母歴13年、42歳にして子連れ初婚。














