他人の家に素知らぬ顔で侵入し、娘達をそそのかして母親を殺害させる……。そんな凄惨な事件が現実に起きていることが判明しました。ただし、人間ではなくアリの世界の話です。
※虫が苦手な方はご注意ください。
他の種の巣に潜入して乗っ取る「社会寄生性」とは?
九州大学などの研究チームは11月17日、「社会寄生性ケアリ2種はホストワーカーに実母である女王の殺害を強要する」という研究成果を米国の科学誌「Current Biology」に掲載。翌18日に、同大学の公式サイトで概略を発表しました。
それによると、アリやハチなどの集団生活を送る昆虫の中には、他の種の巣に潜入して、労働力を自分たちの繁殖のために使ってしまい、最終的に巣を乗っ取る「社会寄生性」というパターンがあるそうです。
侵入した「新女王」が、元々いた「旧女王」を殺害するのですが、これまでは「新女王」が直接「旧女王」の首を咬んで切り落とす習性が複数種で知られていたそうです。これだけでも残酷ですが、さらに狡猾なやり方が新たに見つかったのです。
女王アリに液体をかけて、働きアリたちに「敵」と誤認させる残忍な手口
YouTubeに投稿された動画の前半では、テラニシクサアリの「新女王」がキイロケアリの巣に侵入する様子から始まります。働きアリ達から攻撃を受けても後ろ脚ではたき落としています。
数時間後、テラニシクサアリの「新女王」は、娘である働きアリ達に守られるキイロケアリの「旧女王」にゆっくり接近。次の瞬間、蟻酸とみられる液体を体内から「旧女王」に向かって噴射しました。
すると、何ということでしょう。キイロケアリの働きアリたちはパニック状態に陥り、いくつかの個体は母である「旧女王」に攻撃を開始しました。働きアリ達は、実母を「敵」と誤認してしまったのです。
娘たちの攻撃から、必死に逃げる「旧女王」に「新女王」は繰り返し液体を噴射して、そのたびにすばやく退避します。働きアリ達は殺害するまで「旧女王」への攻撃を続けて、「新女王」は最初の20時間で計15回の蟻酸を噴射。4日後に「旧女王」の体を2つに切断したそうです。
この動画の後半はアメイロケアリがトビイロケアリの巣に侵入して、同様の行為をする様子が映し出されています。
【動画】テラニシクサアリとアメイロケアリによる母殺教唆型寄主操作
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研究チームも絶句「まさに事実は小説より奇なり」
九州大学の発表には、同大学の研究チームの髙須賀圭三助教のコメントが掲載されています。
「蟻酸噴射による教唆型寄主操作」の最初の発見者は、論文の共同執筆者でアリ専門店「AntRoom」代表の島田拓さんと明かした上で、その内容を知ったとき「驚愕のあまり絶句してしばらく放心してしまいました」と衝撃をつづりました。
「望まぬ娘に実母殺害を強要するというゾッとするシナリオ」はショッキング過ぎるからか有名な創作には存在しないようだとした上で「まさに事実は小説より奇なり」とコメントを結んでいます。
「人間に置き換えるとゾッとする」SNSでの反応は?
今回の発表を受けて、SNSのXでも騒然としていました。
手塚治虫さんの長女でプランニングプロデューサーの手塚るみ子さん(@musicrobita)は「研究記事を読んでて心底ゾクっとさせられた。自然界のサスペンスすごいわ」と感嘆。
小説家で臨床検査技師の北里紗月さん(@kitazatosatuki)は「これはなかなかエグくて面白い。小説のネタになりそう」と興味をそそられていました。
このほか「母殺しさせるなんて!!」「何とも巧妙というか陰湿というか」「人間に置き換えるとゾッとする」などのコメントが出ていました。

