ANALYSIS

【分析】トランプ氏によるベネズエラへの攻撃と大統領の拘束は合法か

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ベネズエラ攻撃後の記者会見に臨むトランプ米大統領(左)とヘグセス国防長官/Jim Watson/AFP/Getty Images

ベネズエラ攻撃後の記者会見に臨むトランプ米大統領(左)とヘグセス国防長官/Jim Watson/AFP/Getty Images

(CNN) 昨年11月2日、ホワイトハウスのワイルズ大統領首席補佐官は米誌バニティ・フェアの取材に対し、ベネズエラでの地上攻撃には連邦議会の承認が必要になると語った。仮にトランプ大統領が「地上での何らかの行動を許可すればそれは戦争であり、続いて連邦議会が必要になる」という。

数日後、トランプ政権の複数の当局者が非公開の発言で、連邦議会の議員らにほぼ同じ内容を告げた。つまり自分たちには法的正当性がなく、ベネズエラ国内のいかなる地上目標に対する攻撃も支持することができないと。

ところがそのわずか2カ月後、トランプ政権は当初不可能だと示唆していたことを実行に移してしまった。

それはトランプ氏が言うところの「ベネズエラに対する大規模攻撃」と、同国のマドゥロ大統領の起訴を目的とした拘束に他ならない。トランプ政権はこうした体制転覆の取り組みを議会の承認を得ることなく開始した。

(トランプ氏は11月の時点で、地上での行動に議会の承認は必要ないと主張していたが、それは明らかに政権内で合意した見解ではなかった。)

当該の任務は今のところ、マドゥロ氏の排除に限定されているように見える。しかし、トランプ氏が指摘した通り、任務にはベネズエラ国内への攻撃が絡んでいた。つまり政権内の一部が以前承認を要すると示唆したのと同じ状況だが、実際には承認は得られなかった。CNNは11月初旬、政権がそのような攻撃に関する司法省からの新たな法的見解を求めていると報じた。

さらにトランプ氏が今月3日の記者会見で再三語っているように、作戦の要点はマドゥロ氏の拘束だけでなく、ベネズエラの運営ならびに同国の石油の掌握にも及ぶ。こうしたコメントから、明らかにマドゥロ氏の拘束以上の目的が作戦にあったことが理解できる。

3日、カラカスでの連続爆発の発生後、火災に見舞われるベネズエラ最大の軍事施設/AFP/Getty Images
3日、カラカスでの連続爆発の発生後、火災に見舞われるベネズエラ最大の軍事施設/AFP/Getty Images

合法性が疑わしい中での他国への攻撃は、目的を外国の指導者排除に限定したものであっても、近年の米国において珍しい話ではない。しかしそうした背景があってさえなお、今回の攻撃には際立った特徴が見られる。

二転三転する正当化

その理由は、トランプ政権が一貫した正当化なり法的枠組みを、今回の攻撃に関して提示することに驚くほど無頓着だからだ。しかも前もって議会に攻撃を知らせた様子さえない。こうした状況では、通常そうするのが最低限の措置だ。

攻撃の正当性を主張する完全な説明はまだ出されていないが、初期段階で見られる兆候の特徴は分かりにくさにある。

共和党のマイク・リー上院議員(ユタ州選出)は攻撃直後、ルビオ国務長官から攻撃は必要だと言われたと明かした。リー氏の言葉を借りれば、「逮捕令状の執行者を保護する」ためというのがルビオ氏の説明だった。

「この行動は合衆国憲法第2条に基づく大統領固有の権限の範囲内に収まる公算が大きい。同条は実際の、もしくは差し迫った攻撃から米国人を保護するためのものだ」と、リー氏は指摘した。同氏は未承認の外国での軍事行動をしばしば批判している。

数時間後にはバンス副大統領やヘグセス国防長官、ルビオ氏もその台詞(せりふ)を繰り返した。ルビオ氏の言葉を借りれば今回の攻撃は「法執行任務」であり、そこに「2~3時間の行動」が関与するものだった。

NBCの番組で冒頭のワイルズ氏のコメントについて直接質問されたルビオ氏は、「これはベネズエラへの攻撃ではなかった」と答えた。ワイルズ氏は地上攻撃の是非は議会で審議する必要があると述べている。これに対しルビオ氏は「これは起訴された麻薬密売人を拘束する法執行任務だった」と主張した。

ルビオ氏はさらに、政権には議会の承認を得る必要がなかったと指摘。「なぜならこれは侵攻ではなかったからだ。これは大規模な軍事作戦ではなかった」と付け加えた。同氏によれば国防総省が関与したのは、ベネズエラ側に対空ミサイルの装備があり、「ヘリコプターが撃墜される恐れがあった」からだという。

しかし、米国内で起訴された状態で国外に暮らす人は大勢いる。外国を攻撃してそうした人々に裁きを受けさせるのは、通常の米国のやり方ではない。

昨年11月、カラカスで市民と軍の合同集会に参加するベネズエラのマドゥロ大統領/Jesus Vargas/Getty Images/File
昨年11月、カラカスで市民と軍の合同集会に参加するベネズエラのマドゥロ大統領/Jesus Vargas/Getty Images/File

トランプ政権はまた、これまでこうした理由で軍事力を行使できると示唆したこともなかった。

当初、トランプ氏はベネズエラ国内での地上攻撃で麻薬の密売人を標的にすると脅していた。ただ見たところ、麻薬密輸の業界でベネズエラはそれほど重要な存在ではないようだ。

その後、政権は攻撃が必要になり得る理由として、ベネズエラが悪人を米国に送り込んだからだと示唆している。

また米国によるベネズエラとマドゥロ氏への圧力キャンペーンにおいて、当初石油の役割は軽視されていたが、後になってトランプ氏は「彼らが以前我々から盗んだ石油、土地、その他の資産」を取り戻す狙いがあると語っている。

こうした分かりにくい兆候には、タカ派のリンゼー・グラム上院議員(サウスカロライナ州選出)ですら12月中旬に政権に対して、メッセージに「明確さ」がないと苦言を呈するほどだった。

「今この場での明確さを求める」と、グラム氏。「自分には残された日数があまりないと、トランプ大統領は言っている。それなら踏み出さなくてはならないだろう。彼(マドゥロ氏)の排除を目指す理由が我が国にとっての脅威だからということなら、はっきりそう言えばいい。それで次に何が起きるのか? ほとんどの人はそれを知りたがっていると思わないのだろうか?」と問いかけた。

3日には法執行のための作戦に焦点が当たっていたにもかかわらず、トランプ氏が記者会見で語ったのは米国が今後少なくとも一時的に、ベネズエラの運営に関与するということだった。その上で同氏は、ベネズエラの石油に再三言及した。

「我々は石油インフラを再建する」と、トランプ氏は宣言し、別のある時点では「我々が国を適正に運営する」とも言い添えた。

ただ仮にトランプ政権がもっと一貫した正当性を提示したとしても、それが適切な説明になるわけではない。

物議を醸す1989年のメモ

米軍を使用して体制を転覆した直近の主要な事例といえば、当然イラク戦争だ。あの戦争は2002年に連邦議会で承認された。より広範なテロとの戦争は01年、9・11同時多発テロの後に議会承認されている。

それ以降、歴代政権は中東における複数の軍事行動を正当化しようと、時に疑わしい権限を行使してきた。しかしベネズエラは、全く異なる領域に属する。

多くの人々はベネズエラでの取り組みに関してイラクを引き合いに出すが、より適切な比較対象は1989年のパナマだ。政権側もパナマとの比較を意図しているとみられる。

ベネズエラと同様、当時のパナマの指導者だったノリエガ将軍は麻薬の密輸を含む罪により米国で起訴された。さらにベネズエラと同じく、作戦は大規模な戦争というよりも指導者を権力の座から追い落とすためのごく限定的な取り組みだった。

司法省法律顧問局(OLC)は80年の時点で、連邦捜査局(FBI)には外国人を逮捕・誘拐して裁判を受けさせる権限はないという結論を下していた。しかしジョージ・H・W・ブッシュ政権下のOLCは89年の夏、その結論をこっそりと覆した。

後にブッシュ政権と第1次トランプ政権で司法長官を務めるウィリアム・P・バー氏が記したメモによれば、大統領には固有の憲法上の権限があり、FBIに対して外国での人々の拘束を命じることができる。たとえそれが国際法違反であってもだ。

メモはすぐさま、ノリエガ将軍を排除する作戦の正当化に使われた(偶然にもノリエガ将軍が拘束された日付はマドゥロ氏と同じ、90年の1月3日だった)。

とはいえ、当該のメモは今日に至るまで物議を醸している。それは異常なまでに権限の付与を拡大する内容でもあり、適用すればどこにでも米軍を送り込める事態になりかねない。

3日、ベネズエラでの連続爆発後に破壊されたラ・グアイラ港のコンテナ/Matias Delacroix/AP
3日、ベネズエラでの連続爆発後に破壊されたラ・グアイラ港のコンテナ/Matias Delacroix/AP

加えてベネズエラの状況はパナマとは異なる可能性がある。より大きな国という点で、ベネズエラの場合は指導者が国外で拘束された状態での統治が一段と困難になるかもしれない。石油資源も非常に豊富なため、今後の展開に他国が関心を持つ可能性がある(中国は今回の攻撃を「主権国家に対する露骨な軍事力の行使」と非難した)。

3日午前の記者会見とFOXニュースとのインタビューの両方で、トランプ氏は一段の軍事的選択肢の可能性に言及した。これは作戦の要点が単なるマドゥロ氏の拘束以上のものかもしれないとする見方を強めるものだ。

それはまた、トランプ氏の法的権限を巡る問題が再び検証されかねないことも意味する。同氏は既にそうした権限について、合法性の疑わしい行動を通じて試されている。具体的には麻薬運搬船とされる船舶への当該地域における攻撃などだ。

はっきりしているのは、トランプ氏が改めて大統領としての自身の権限を、それに対する米国民の寛容さと併せて試そうとしているということだ。ただ今回、同氏は過去最大級の舞台でそれをやろうとしている。従って同氏による法律の適用範囲拡大を巡る動きが当面続くことは間違いない。

本稿はCNNのアーロン・ブレイク記者による分析記事です。

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