『ハーバード、スタンフォード、科学的に証明された時間をムダにしない人の習慣』(堀田秀吾 著、アスコム)の著者がずっと関心を持ち続けてきたテーマのひとつが、「時間の感じ方」と「先延ばし」の仕組みなのだそうです。
「やるべきことはわかっているのに、なかなか手をつけられない」とか、「一日じゅう働いていたのに『なにもできなかった』と感じてしまう」というようなことはあるもの。
そこで本書においては、「時間が足りない」「また先延ばししてしまった」というようなことの本質をわかりやすく整理し、そこから抜け出すための「時間の習慣」をまとめているのです。
興味深いのは、時間のことを研究している著者自身もまた、「時間が足りない」状態と日々戦っている当事者であること。
だからこの本は、「時間の達人」が上から目線で書いた理想論ではありません。
バタバタしがちな一人の人間が、なんとか自分の時間を守るために試してきた工夫と、世界中の研究から見つけた「効き目のあるやり方」を合わせてまとめた、52個の習慣集です。(「はじめに」より)
執筆にあたって意識したのは、「数分で読める」「すぐに試せる」「うまくいかなかったらやめていい」という3つの条件だそう。
日常のすき間時間にひとつずつ試してみて、「これならできそうだ」と感じたものだけを、日常生活に取り入れてみればいいというのです。
そんな考え方に基づいて書かれた本書のなかから、きょうはCHAPTER 4「『考えすぎ』を減らす習慣」に注目してみたいと思います。
不安を書き出す
「不安」は、私たちから多くの時間を奪う厄介な感情。よくないことを避けるための防衛反応のように見え、実際には思考停止状態や余計な行動をま招くものでもあります。その結果、時間や労力を浪費することになるわけです。
ペンシルベニア州大学のボルコヴェックの研究では、人が不安に思うことの79%は実際には起こらず、15%は実際に起こったけれど、その79%は「思ったほど悪くなかった」だと報告されています。
つまり、私たちが不安に思っていることの97%は、まったく悩む必要がないものなのです。(242ページより)
ここからも、「不安」がいかに実体のないものであるかがわかるのではないでしょうか。しかし、それでも不安を解消できないということもあるかもしれません。そんなときには、不安の内容を紙に書いてみるといいようです。
シカゴ大学のラミレスとベイロックの研究により、「書く」行為が脳の前頭葉を活性化させ、感情を司る大脳辺縁系の過剰反応を抑え、冷静な思考を取り戻せることがわかったというのです。
そこで著者は、不安にとらわれたときは次のステップを踏んでみるべきだと提案しています。
① 書き出す:頭の中の不安を5分で紙に書く。
② 分ける:「自分で変えられること」と「変えられないこと」を仕分ける。
たとえば、自分の営業成績などは、努力によってある程度変えることができますが、会社全体の経営状態は、自分一人の力で大きく変えることはできません。
③ 手放す:「変えられないこと」は捨て、「変えられること」今できる行動に集中する。(244ページより)
このステップを踏めば、「悩んでも仕方がないこと」「自分ではどうにもならないこと」を不安に思う必要がなくなるわけです。(240ページより)
一日を整える朝と夜の儀式
前向きに一日をスタートさせたいのに、どうもやる気が起きない――。そんなことは少なくないもの。朝はストレスホルモン(コルチゾール)が一日のなかでもっとも高く、もっとも気持ちの立ち上げが難しい時間帯だからなのだそうです。
ただしケンブリッジ大学のアスケルンドらの研究により、目覚めた直後の数分間に「うまくいった過去の仕事」「誰かに感謝された瞬間」など“よい記憶”“ポジティブなこと”をひとつ思い浮かべるだけで、「コルチゾールが穏やかに下がる」「自己否定的な思考が減る」「うつ気分を防ぐことができる」などに効果が得られることがわかったのだとか。
また、夜にも重要な意味があるようです。なぜなら夜は、日中にたまった感情を穏やかに整理し、翌日の思考を軽くするための大切な時間だから。
そして、ストレスを翌日に持ち越さないためにぜひ実践するべきなのが、「感謝を書き留める」習慣(感謝日記)なのだといいます。
この方法を世界的に広めたのは、カリフォルニア大学デイヴィス校のエモンズとマイアミ大学のマッカラフです。
彼らは被験者を「その日に『感謝できること』を書き留めるグループ」「『不満や嫌だったことや何でも思いついたこと』を書き留めるグループ」の2つに分け、数週間後にそれぞれの幸福度を比べたところ、感謝を書いたグループのほうが、最大で25%も幸福度が高かったのです。(249ページより)
そればかりか感謝グループのなかには、「エネルギッシュでポジティブな気分になる」「睡眠の質が改善される」「将来に対して明るい希望を抱くようになる」「運動習慣が身につく」などの効果を得た被験者もいたようです。
こうした研究結果に基づき、著者は感謝日記をつけてみることを勧めています。難しいことではなく、書き留める内容は「きょう飲んだコーヒーが想像以上においしかった」「仕事が思ったよりスムーズに片づいた」「誰かのことばがうれしかった」「夕方の空がきれいだったなど、ポジティブなことであればなんでもOK。
わずか1〜2分でできる簡単な習慣ではありますが、脳を落ち着かせ、翌日の感情の立ち上がりを明らかに軽くしてくれるそうです。
朝は、ポジティブ記憶でコルチゾールの立ち上がりを抑える。
夜は、感謝でストレスを手放し、翌日の感情を軽くする。
(250ページより)
この2つを揃えることで、感情の乱れを整えるために費やしていた時間を大幅に減らせるということです。(246ページより)
大切なのは、習慣を利用して仕組み化すること。そうすれば、「先延ばしグセ」「時間が足りない」を少しずつなくしていくことができる――著者はそう断言しています。時間を有効に活用するために、参考にしてみてはいかがでしょうか。
>>Kindle Unlimited、500万冊以上が楽しめる読み放題を体験!
著者紹介:印南敦史
作家、書評家、音楽評論家。1962年東京都生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。「ライフハッカー・ジャパン」で書評連載を担当するようになって以降、大量の本をすばやく読む方法を発見。年間700冊以上の読書量を誇る。「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」などのサイトでも書評を執筆するほか、「文春オンライン」「qobuz」などにもエッセイを寄稿。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社、のちにPHP文庫)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)など多数。最新刊は『現代人のための読書入門 本を読むとはどういうことか』(光文社新書)。@innamix/X
Source: アスコム






















