福島の今
福島県内推計人口
福島県における出生数と合計特殊出生率
福島県内の空間放射線量の推移
◆福島県環境放射線モニタリング・メッシュ調査結果等に基づく県全域の空間線量率マップ
世界の都市との放射線量比較

出典:環境省ホームページ ( https://www.env.go.jp/chemi/rhm/r1kisoshiryo/r1kiso-02-05-05.html )
避難区域
拠点整備着々と 古里活性化加速
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生から11日で14年となる。県内外への避難者は2万5610人(2024年11月1日現在)に上り、復興はいまだ途上だ。原発事故で避難区域が設けられた12市町村は地域再生に向けたさまざまな施策を展開しており、富岡、大熊、双葉、浪江、葛尾、飯舘の6町村に設定されていた特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示は2023(令和5年)11月までに全て解除された。帰還困難区域の残る町村は希望者が古里に戻って暮らせるよう、特定帰還居住区域を設定し避難指示の解除を進めている。
■大野駅西口、15日開業 大熊町
特定復興再生拠点区域(復興拠点)として2022(令和4)年6月に避難指示が解除されたJR大野駅西口で新たなまちづくりが本格化している。産業交流施設「CREVA(くれば)おおくま」と、商業施設「クマSUNテラス」が完成。3月15日のグランドオープンを控える。
クマSUNテラスには昨年12月にコンビニエンスストアのファミリーマートが先行オープンした。この他、物販店1店、飲食店5店が入居する。CREVAおおくまは県内外の企業による産業創出や住民の交流の場となる。
原地区にはスーパーのマルトが出店する。町が整備する商業施設に入り、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生後、町内で営業する初のスーパーとなる。2027年度早期のオープンを見込む。可能な限り開店時期の前倒しに努める。
住民の生活環境向上に向けた取り組みが進む一方、住宅不足が課題となっている。住宅資材の高騰により民間による住宅の建設が進んでいないのが現状だ。受け皿確保のため、町は住宅を建設する民間事業者に対する補助支援を取り入れ、整備を促していく方針。
15日にグランドオープンする。
■JR双葉駅東口再開発本格化 帰還・移住促進に期待 双葉町
特定復興再生拠点区域(復興拠点)として、2022(令和4)年8月に避難指示が解除されたJR双葉駅東口の再開発が本格化している。スーパーと飲食店を備える商業施設の建設が進む。完成後は町の課題となっている住民の生活環境改善、帰還・移住の促進が期待される。
商業施設は町役場新庁舎に隣接する土地と町立体育館跡地に町が整備している。町役場新庁舎隣にはスーパーのイオンが入り、7月以降の開店を見込む。町立体育館跡地には飲食店3店舗が入居し、来年春ごろにオープンする計画だ。
東日本大震災・原子力災害伝承館北側には大和ライフネクストが大型ホテルを建設している。5階建てでダブルやツインの客室100室を設け、インバウンド(訪日客)の利用も見据える。浜通り最大級となる約300人が収容できるカンファレンス(会議室)を備え、国際会議の誘致も見込む。2026年1月の完成を予定している。
町内の居住者数は2月1日現在、181人。少しずつ帰還や移住が進む一方、資材高騰などにより住宅の建設が思うように進まず、町民らが住む受け皿の確保が課題となっている。
■土地利用構想案まとまる 富岡町
昨年9月に特定帰還居住区域の除染が始まった。対象は特定帰還居住区域約220ヘクタールのうち小良ケ浜、深谷両地区の特定復興再生拠点区域を含む約21ヘクタールで、宅地や農地など。家屋など50件も解体する。工期は3月末までを予定している。新たな居住区域の設定に向けた2回目の帰還意向調査を4月末まで期間を延長して実施している。
町内居住者数は増加傾向が続いているが震災発生前の住民基本台帳に基づく人口の16%ほどにとどまる。商業施設の充実など居住環境を巡る課題は山積している。町は夜の森地区で原発事故発生後に解体した温浴宿泊施設「リフレ富岡」の跡地を活用した施設整備を目指し、計画を進めている。2027(令和9)年度以降、物販施設から段階的な開業を構想している。
2025年度から10年間のまちづくりの指針となる「町災害復興計画(第3次)」の計画案がまとまった。現状を踏まえて第2次計画の土地利用構想を改定。帰還困難区域が残る小良ケ浜、深谷両地区周辺は「未来創造グリーンイノベーションゾーン」に位置付け、次世代型農業と環境技術が融合する先進的産業エリアとして利用する方向性を示した。
■浪江新駅舎、2030年完成へ 浪江町
JR浪江駅周辺整備事業の完成がずれ込む見通しとなった。交流施設などの各施設は1年、駅舎・自由通路は3年遅れとなる。いずれも2027(令和9)年3月を予定していた。建築資材の高騰や作業員の働き方改革が主な原因。町は全ての整備を終える見通しの2031年3月にグランドオープン式典を計画している。
棚塩地区に建設中の大規模畜産施設「復興牧場」(仮称)は2025年度末の完成、2026年度早期の供用開始を目指している。約25ヘクタールの敷地に牛舎や研究施設などを新設する。乳牛など約千頭を飼育し、年間の生乳生産量は約1万3千トンを見込む。酪農畜産業の再生拠点となる。
町内小野田の高瀬川沿いには、サケふ化施設の整備が本格化。最大456万匹を育てられる飼育池の他、採卵室や機械室などを設ける。2025年度に供用を開始する方針。同時に稚魚を育て始める計画で、早ければ2026年秋にも東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生後休止しているサケ漁を復活させる。
2023年3月に避難指示が解除された特定復興再生拠点区域(復興拠点)では、営農再開やにぎわい創出に向けた取り組みが進む。
■公営住宅今春から入居 葛尾村
村内野行の小出谷地区に残る帰還困難区域を特定帰還居住区域に設定するため、村が復興再生計画づくりを進めている。来年度には政府に計画を提出したい考え。浪江町の小伝屋地区と同じ集落にあるため、町と意見交換しながら取り組みを進めていく方針だ。
村中心部に整備している公営住宅が今春に完成し、入居が始まる。全16戸を備え、家族で住める環境も整えた。産業団地には人工知能(AI)関連などの企業立地も進む。村の居住人口拡大が期待される。
県道浪江三春線小出谷工区の工事が本格化している。復興加速につながる一大事業で、工事完了後は交通環境が改善し、近隣地域とのアクセスの向上が期待される。県と調整し、早期開通を目指している。
■広野町
防災力を高めるためのさまざまな施策が検討されている。新年度からは民間資金を活用し、公共施設に太陽光発電や蓄電設備を導入する。自家消費するだけでなく、最終的には各施設を自営線でつなぐことで発電した電力を融通し合い、災害時などに非常用電源として使えるようにする考え。
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の教訓から防災拠点となる「防災の駅」を整備する方針も固めている。JR広野駅は新年度から駅舎の改修に入り、防災機能を備えたコミュニティー施設と一体化した新たな広野駅へと生まれ変わる。
住民の約9割が帰還したが、復興関係事業で滞在する人らもおり、コミュニティーは変化している。季節ごとのイベントなどで住民の交流機会を創出し、広野駅東側の住宅団地整備や官民連携のまちづくりを進めて移住・定住に結び付けたい考えだ。
■川内村
クラフトジンの蒸留所や古民家を改修したカフェなど若者世代の新事業が村内で動き出している。今年秋には旅先に滞在しながら仕事する「ワーケーション」事業の拠点となる複合施設が運用開始予定で、村内の新たな事業所や既存施設を周遊する仕組みを作り、地域を活性化させる構想が進む。
農業の振興にも村は力を入れている。生食用ブドウやピーマン、高冷地を生かしてブランド化を目指している自然薯(じねんじょ)栽培などが柱だ。復興の進展と地方創生を目的に始まった「かわうちワイン」の醸造に加え、新たな特産品が生まれつつある。
村役場の老朽化を受けた新庁舎の整備や旧中学校の利活用を巡る検討が続いている。
■長泥地区堆肥製造施設周辺 31日避難解除 農地活用目指して担い手確保にも力 飯舘村
東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域のうち、飯舘村長泥地区の堆肥製造施設周辺の計約6・2ヘクタールの避難指示は3月31日午前9時に解除される。帰還困難区域の解消に向けて、着実に歩みを進めている。
解除されるのは、イイタテバイオテック(飯舘村)が運営する堆肥製造施設と資材置き場計約2・7ヘクタールの他、施設向けの燃料となる資源作物の栽培農地約3・5ヘクタール。製造施設では県内の浄化センターから汚泥、村周辺の農家から家畜のふんなどを集め、乾燥から発酵・熟成、製品化まで一連の作業を実施する予定。1月に工事が完了し、試験運転している。
長泥地区では特定復興再生拠点区域(復興拠点)約186ヘクタール、拠点外の長泥曲田公園約0・64ヘクタールの避難指示が2023(令和5)年5月に解除されている。
長泥地区の復興拠点で栽培したコメと野菜は、2025年度から出荷を再開できる見通しとなっている。県と村が今年度まで2年間実施した試験で、全品目の放射性セシウム濃度が食品衛生法の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を下回った。村は農地の活用に向け、担い手確保などにも力を入れていく考えだ。
■ロケット開発企業進出 南相馬市小高区
南相馬市小高区の1月末現在の人口は6104人で、このうち実際の居住人口は3803人。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生前の約3割となっている。近年は居住人口が頭打ちの状況となっており、市は引き続き住民の帰還を促すとともに、移住者の受け入れを進める。
市は原発事故に伴う帰還困難区域に特定帰還居住区域を設定する復興再生計画を作成し、小高区金谷地区の帰還を希望する住民1世帯の宅地などを含む約3・7ヘクタールを範囲に定めた。県の同意を得た上で国に計画を申請し、早期の避難指示解除を目指す。
みらい農業学校が昨年4月に開校し、農業の担い手確保や育成を進めている。川房地区には育苗施設と加工施設を備えた園芸施設を整備する予定で、農業の発展や営農再開に向け着実に取り組む。
飯崎産業団地は今年度から供用を始め、ロケット・人工衛星の開発企業「インターステラテクノロジズ」(北海道大樹町)と総合建設業「日本国土開発」(東京都)が進出した。小高復興産業団地は2026(令和8)年度の供用開始を目指して整備を進めており、産業の振興や企業の集積はさらに加速する。
■防災まちづくり拠点施設 来春運用開始へ 川俣町山木屋地区
川俣町山木屋地区では、町が復興拠点商業施設とんやの郷の隣接地に「山木屋地区防災まちづくり拠点施設(仮称)」の整備を進めている。2026(令和8)年春の運用開始を目指している。
施設は平屋で、延べ床面積は約500平方メートルの見込み。災害時には100人ほどが避難できる。備蓄倉庫には水や食料を保管し、有事に備える。敷地面積は約5千平方メートル。同地区の高齢化率は6割を超えている。住民が災害時に安全に避難できる場所を確保する狙いがある。
地域再生の核となっている「とんやの郷」には食堂をはじめ、日用品や食品を販売する店舗が整備され、住民、工事関係者らでにぎわっている。施設前には冬期間、「かわまた田んぼリンク」がオープンし、誘客に一役買っている。若者らが運営しており、地域活性化を後押ししている。
■複合商業施設 建設進む 田村市都路町
避難指示は2014(平成26)年4月1日に解除された。東京電力福島第1原発から半径20キロ圏の解除は対象市町村で初めてで、4月1日で11年となる。2011年3月11日を基準とした帰還率は93・3%(1月30日現在)となっている。
都路町の人口は1874人(1月30日現在)。震災発生当時は3001人で、1127人減少したことになる。特に児童数は原発事故前と比べ約5分の1となっており、対応が喫緊の課題だ。
一方で震災後に町内に立地する企業もあり、復興や地域活性化を後押ししている。復興牧場や複合商業施設、国内最大級の風力発電所などの建設も進んでおり、産業創出や雇用促進、経済活性化への好影響が期待される。
■ユズ生産振興組合発足 楢葉町
町内では以前からあったサツマイモの生産部会に加え、町ユズ生産振興組合が発足した。生産者同士が連携を強め、安定的な生産と品質向上につなげて6次化商品を生み出す。
町内波倉地区では「新産業団地・再エネパーク」の構想が進む。脱炭素社会構築に向けた蓄電設備の整備や、最先端の企業誘致を通して復興のシンボルとしたい考え。交流人口の拡大も目指す。
Jヴィレッジと道の駅ならはをつなぐ道路の南北には多機能拠点を整備している。一帯を子育て世代や若者を呼び込む地域とするのが狙いで、南側には防災倉庫やバスケットボールコートが3月末に完成する予定だ。北側は利活用の調査を進めている。
東京電力福島第一原発事故による避難区域の変遷
避難生活
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内外への避難者数は2024年2月1日時点で2万6277人。内訳は県外が2万279人、県内が5993人、避難先不明者が5人。県外避難者は46都道府県におり、施設別に見ると、親族や知人宅などに身を寄せている人が1万1391人と最も多い。公営や仮設、民間賃貸などの住宅への避難者が8791人、病院などが97人だった。
県がまとめた県内外への避難者数の推移は【グラフ】の通り。2024年2月1日時点の避難者は前年より1122人減少した。最も多かった2012(平成24)年5月の16万4865人の約16%となり、減少が続いている。
県内の仮設住宅の入居者は郡山市の3戸4人となっている。
関連死、今なお増え続ける
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に伴う避難の影響で体調を崩すなどして死亡した福島県内の「関連死」は、2023年11月1日現在で2339人となっている。未曽有の大災害発生から間もなく13年となる現在も古里を追われ、避難を続ける被災者を中心に増え続けている。
県内の市町村ごとの直接死と関連死の現状は【グラフ・表】の通り。直接死は1605人。震災、原発事故による死者全体の半数超を占める関連死は2023年2月1日時点より南相馬、富岡、川内、浪江の4市町村でそれぞれ1人ずつ増えた。
2024年1月に発生した能登半島地震でも長期避難による被災者の体調悪化などが懸念されており、福島県関係者が防止に向けて震災発生後の研究の知見などを北陸の被災地と共有している。
直接死と関連死の割合
震災関連の自殺 計119人
厚生労働省の集計によると、震災に関連する福島県内の自殺者数は2023(令和5)年1月末時点で119人。岩手県は56人、宮城県は63人で本県が被災3県の中で最も多い。
中間貯蔵・環境再生
中間貯蔵施設への除染廃棄物輸送計画
健康 放射線管理
甲状腺検査 放射線被ばくとの関連分析
原発事故の健康影響を調べる「県民健康調査」のうち甲状腺検査は、原発事故当時に18歳以下だった福島県内の全ての子ども約38万人を対象に、2011(平成23)年度に始まった。2014年度から2巡目、2016年度から3巡目、2018年度から4巡目、2020年度から5巡目と2年に1度の検査が行われている。25歳以上になった対象者は5年に1度の検査になる。
県民健康調査検討委員会の下部組織に当たる甲状腺検査評価部会は2019年6月、2巡目の結果について、「現時点で甲状腺がんと放射性被ばくの関連は認められない」とする中間報告をまとめ、検討委も報告を了承した。
評価部会は対象者の検査間隔や検査時の年齢などの要素も含めて、放射線被ばくと甲状腺がん発症の関連性について分析を進める。
現在、甲状腺検査は6巡目の検査を実施している。
県民健康調査甲状腺検査の流れ
放射線の悩み減 妊産婦調査
県民健康調査検討委員会によると、震災直後の電話相談で高い割合を占めていた「放射線の影響や心配に関する悩み」は年月が過ぎるごとに減少している。近年では「母親の心身の状態に関すること」「子育て関連のこと」の割合が上位となり、産後うつなどのメンタルヘルスに関連した悩みが増えている。
「うつ傾向あり」とされた人の割合は、原発事故直後の2011年度の27・1%から年々減り、2018年度には18・4%に下がった。
同委員会はうつ傾向は低下傾向にあるものの、放射線の影響に不安を持つ妊産婦がまだ一定数いることは今後も注視していく必要がある-とする報告書をまとめた。県に対しては、調査結果を踏まえた相談対応や支援を継続して行うことを提案している。
受診率は低下傾向 県民健康調査(詳細調査)の受診率の推移
処理水・廃炉
デブリ 今月にも2回目採取
東京電力は福島第1原発2号機からの溶融核燃料(デブリ)の試験的取り出しに昨年11月、初めて成功した。ただ、取り出した量はわずか0・7グラムほど。全量取り出しの手法は固まっておらず、廃炉完了への道のりは長い。除染で生じた土壌の最終処分も処分場の選定や国民理解の醸成に多くの課題を抱えており、国の取り組み強化が求められている。
東京電力は昨年11月7日、福島第1原発2号機からの溶融核燃料(デブリ)の試験的取り出しに成功した。東日本大震災と原発事故の発生から14年を前に、廃炉作業が一歩前進した形だ。ただ、採取できた量はわずか約0・7グラムで、1~3号機に計880トンあるデブリの全量取り出しの手法は依然として固まっていない。東電は3月にも、2回目の採取に挑む。
東電は取り出しに最長約22メートルまで伸びるパイプ型の装置を使用した。2号機原子炉格納容器につながる貫通部から装置を投入し、格納容器底部にある「耳かき一杯程度」のデブリをつかみ取った。
デブリは現在、日本原子力研究開発機構(JAEA)大洗原子力工学研究所(茨城県)など国内5カ所の研究施設で詳細な分析が進んでいる。JAEAが実施した非破壊分析では核燃料に含まれるウランや燃料を覆う管の成分とみられるジルコニウムなどが検出されている。東電は分析結果を2030年代初頭に3号機から計画している本格的取り出し方法や保管手法の検討に役立てる。
東電は2回目の採取も同じパイプ型装置を使う。採取する場所を初回とは変えて多様なサンプルを集めたい考えだ。
処理水東電「計画通り」
東京電力は福島第1原発処理水の海洋放出を2023(令和5)年8月に始めた。昨年11月までの通算10回で計7万8285トンを海に流した。処理水に含まれる放射性物質トリチウムの濃度が東電や国の基準を上回ったことはなく、東電は「計画通りに放出できている」と評価している。
これまでの放出の経過と今後の計画は【表】の通り。多核種除去設備(ALPS)で浄化されないトリチウムを海水で薄め、海底トンネルを通じて原発の沖合約1キロで放出している。今年度最後となる通算11回目の放出は3月中に実施する予定。
東電福島第1原発処理水の海洋放出の実績と 2025年度の放出計画案
■2023年度放出実績(1)8~9月 7788トン
(2)10月 7810トン
(3)11月 7753トン
(4)2024年2~3月7794トン
■2024年度放出実績・予定
(1)4~5月 7851トン
(2)5~6月 7892トン
(3)6~7月 7846トン
(4)8月 7897トン
(5)9~10月 7817トン
(6)10~11月 7837トン
(7)2025年3月 約7800トン
■2025年度放出計画案
(1)4月
(2)6~7月
(3)7~8月
(4)9月
(5)10~11月
(6)11~12月
(7)2026年3月
計7回 各回約7800トン
■ 期限まで20年 除染土壌の県外最終処分
東京電力福島第1原発事故に伴う除染で出た土壌の県外最終処分は法律で定める2045年3月の期限まで残り20年となる。最終処分場の選定や国民の理解醸成など課題は多く、期限内実現の道は険しい。
中間貯蔵施設(大熊・双葉町)には約1400万立方メートルの除染土壌が一時保管されている。国は最終処分量を減らすために放射性物質濃度が1キロ当たり8千ベクレル以下の土壌を全国の公共工事などに再利用する方針。ただ、国が首都圏で計画した実証事業は地元の反対で実現していない。双葉町の伊沢史朗町長は2月、報道陣の取材に、個人的な見解として「首都圏の人たちの理解を進めるには、まずは県内で取り組む必要がある」との認識を示した。
国は2月、除染土壌の最終処分に向けた新年度から20年間の工程表を公表した。最終処分地の選定に至るまでに検討すべき項目を示した一方、処分地の決定は2030(令和12)年ごろ以降とし、具体的な時期は盛り込まなかった。これに対し、内堀雅雄知事は2月の定例記者会見で「期限まで残り20年しかない。政府として取り組みをさらに加速させてほしい」と求めた。
国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は2月に中間貯蔵施設を視察し、「県外最終処分を実現させるには一貫した行政の取り組みや十分な予算配分が必要だ」と指摘した。
■ 第2原発燃料搬出2027年度開始 2042年度末完了目指す
東京電力福島第2原発では、1~4号機の使用済み燃料プールからの燃料取り出しが2027(令和9)年度に始まる。東電は1号機から作業を進め、2042年度末までに全4基からの搬出完了を目指す。
1~4号機の燃料プールには使用済みと未使用を合わせて約1万体の燃料が残っている。搬出作業は2027年度開始の1号機に続き、2028年度に4号機で始める。2、3号機の取り出しは2031年度以降になる予定。取り出した使用済み燃料は乾式キャスクに収納し、構内に新たに整備する貯蔵施設で保管する。
■ 東電総額3362億円支払い完了 7万人連絡取れず
東京電力福島第1原発事故の国の賠償基準「中間指針」第5次追補を受けた東京電力の追加賠償は、2月26日までに対象者約148万人のうち133万人へ総額約3362億円の支払いが完了した。依然として7万人近い対象者と連絡が取れない状況で、東電は引き続き情報発信強化に努める。
福島第1原発からの処理水海洋放出に関連する東電の損害賠償の申請は増加している。これまで約3200件の問い合わせがあり、東電は具体的な被害が確認された事業者など約1700件に対し請求に必要な書類を発送している。2月26日時点で約540件、総額約550億円の支払いを終えた。
農林水産業
回復へ地道な努力
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生で大きな打撃を受けた県内の農林水産業は、産出額や水揚げ量の回復に向け、生産者や漁業者らの地道な努力が続く。将来を見据え、若い担い手育成の試みも各地で進んでいる。
農業産出額 3年ぶり2000億円台 物価高受け 震災前の水準は、まだ
県内の2023(令和5)年の農業産出額は、ロシアのウクライナ侵攻による不安定な国際情勢を背景とした物価高騰などを要因に2年連続で増加し、3年ぶりに2千億円台に回復した。ただ、いまだ東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生前の水準には回復していない。
農業産出額の推移は【グラフ①】の通り。2330億円だった2010(平成22)年は青森県に次ぐ東北2位だったが、震災と原発事故が発生した2011年は前年比479億円(20・6%)、減少した。2020年には震災後最高の2116億円まで戻ったが、新型コロナウイルス感染拡大による米価下落などで2021年に再び2千億円台を割った。順位は2011年以降、東北4位となっている。
本県の農業産出額のうち3割強をコメが占める。産出額の回復にはコメだけに頼らない生産体制の構築が重要で、県やJAグループ福島は園芸作物の栽培促進に注力している。JAグループ福島は「ふくしま園芸ギガ団地構想」を進めている。生産規模の維持・拡大に向けて高齢化が進む農家の後継者確保にも急ピッチで取り組んでいる。JAグループ福島は県と連携し、研修型農場(トレーニングファーム)の県内5JAでの整備に向けて準備を進めている。
林業産出額 前年比で3.9%減 「震災前」は2年連続上回る
県内の林業産出額の推移は【グラフ②】の通り。2023年は133億5千万円で、前年に比べ5億4千万円(3・9%)減少した。都道府県別順位は10位で前年から一つ順位を落とした。東日本大震災発生後、2012年には75億1千万円まで落ち込んだが徐々に回復。2022年から震災前の2010年の129億6千万円を上回っている。
林業振興に向けた担い手確保が大きな課題となっている。県は林業復興の促進に向けて林業人材育成拠点「林業アカデミーふくしま」を2022年4月から開設しているが、今春の入講生が定員に満たない見通しとなるなど、厳しい状況にある。
水揚げ量 漁協本格操業へ 助成活用し拡大方針
県内の沿岸漁業は本格操業へ向けた歩みを進めている。各漁協は国の「がんばる漁業復興支援事業」の助成を活用するなどして段階的に水揚げ量を拡大していく方針だ。東京電力福島第1原発事故発生前の操業体制や水揚げ量に戻すことを目標に取り組んでいる。
2010(平成22)年以降の水揚げ量(相馬双葉、いわき市、小名浜機船底曳網の3漁協の合計値)の推移は【グラフ③】の通り。2024(令和6)年の県内沿岸漁業の水揚げ量(速報値)は6470トン。東日本大震災と原発事故発生後に最多となった2023年にはわずかに及ばなかったが、着実に水揚げ量を伸ばしている。
県漁連の野崎哲会長は「今年は宮城、茨城両県への入会漁業を再開できるように話し合いを進めていきたい」と述べ、漁獲域の拡大も視野に漁業の振興に一層力を注ぐ考えを示している。
県産食品の輸入規制 6カ国・地域まで減少 中国とも再開方針で合意
東京電力福島第1原発事故発生後、放射性物質による汚染の懸念から世界各国・地域で県産食品の輸入が規制された。一時は55カ国・地域まで膨らんだが米国が2021(令和3)年、英国が2022年に撤廃。2024年9月現在、中国やロシアなど6カ国・地域まで縮小した。
処理水の海洋放出を受け、中国による日本産水産物の全面禁輸措置も続く。一方、日中両政府は昨年9月、日本産水産物の輸入を再開する方針で合意した。今後は輸入再開や規制撤廃の時期が焦点となる。
内堀雅雄知事は昨年、欧州や東南アジアを訪問し、現地の流通関係者や消費者に直接、県産品の品質の高さを訴えた。県はこうした地道な取り組みを続け、県産食品の安全性を丁寧に伝えていく方針だ。
担い手確保へ南相馬市 「みらい農業学校」昨年開設
南相馬市は農業の担い手を確保しようと2024(令和6)年4月、市内小高区に「みらい農業学校」を開いた。
農業法人や大規模農家で働く雇用就農向けの育成機関で、1期目は15人が入校。出身地の内訳は市内を含む県内が9人、県外が6人だった。8人は農業の経験がなく1年間、座学と実習を重ねた。約40品目の農作物の栽培を体験。農業経営やデータ活用、農業機械の操作などを学んだ。
市内の農家数は2015(平成27年)に2223戸だったのがその後5年間で1309戸となり、41・1%減少した。2020年の農業従事者の年齢構成は60歳以上が84・1%で、全国平均の高齢化率を上回っている。ほ場整備により農地の大区画化が進み、個人経営が減る一方、農業法人などの団体経営は増加している。こうした地域の実情が農業学校設置につながった。
1期生は卒業後、7人が雇用、6人が独立して農業の道に進む。いずれも県内での就農で8人は市内、2人は双葉郡内だ。同校は引き続き新たな入校者の育成を進めるとともに、卒業生の指導や支援を通して担い手を地域に定着させていく。
■1期生、東京出身の双田貴晃さん 来月から雇用農家
みらい農業学校の1期生で東京都出身の双田貴晃さん(32)は4月から南相馬市小高区のアグリサービスそうまに就職し雇用農家としての一歩を踏み出す。
都内の大学を卒業後、物流関係の会社で働いていた。何気なく参加した農業体験がきっかけで野菜栽培の楽しさを知り、農業に憧れるようになった。3年ほど前、JR常磐線で旅行する機会があり、双葉町の畑でトラクターに乗って除草する高齢者を見かけた。「復興に向けて頑張っている人がいる。自分も何かできるのでは」。漠然とした憧れが目標に変わった。
都内での農業フェアや南相馬へのバスツアーに参加し、みらい農業学校を知った。「農作物を育てるには気象や土壌をはじめ、さまざまな要素が必要。プロの経験に基づく知識とイメージ力に接することができた」。学校生活を通して農業の魅力に一層、引かれた。
アグリサービスそうまは小高園芸団地でキュウリ栽培などを手がける。「地元の人を喜ばせ、県外から南相馬に足を運んでもらえるようなおいしい野菜をつくってみたい」と夢を描く。
復興加速の推進力
最先端技術で後押し
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興が進む浜通りには、福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)をはじめとした最先端の学術拠点や未来を切り開く新分野の企業などが進出している。被災地に芽生えた新しい産業は地域経済を活性化させ、世界に福島の技術力の高さを発信する役割も果たしている。復興に力強く歩む本県に注目が集まっている。
エフレイ整備本格化 実証拠点へ 来月ロボテスと統合
政府が2023(令和5)年4月に浪江町に設立した福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)は3年目に入る。敷地造成工事の起工式が4月26日に行われる予定で、施設整備が本格化する。
エフレイは東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生で甚大な被害を受けた本県の「創造的復興」の拠点となる。敷地面積は約16・9ヘクタール。事務職員の執務室など管理・運営の機能を備える本部施設は2028(令和10)年度完成を目標にしている。全ての施設は2030年度までに順次供用を開始したい考えだ。
エフレイの主要施設は【図】の通り。研究者や共同研究者が高度な研究に当たる「固有実験施設」は新年度から施設設計に入り、2027年度中には設計が完了する見込み。「放射線科学・創薬医療」「超精密分析」「遺伝子組み換え」「精密温度調整栽培」「土壌環境」の5棟で構成し、このうち土壌環境実験棟では肥沃(ひよく)な土の分析や地力(ちりょく)を高める方法をはじめとした研究を進め、原発事故被災地の農業復興を後押しする。
エフレイは将来的に10人程度の研究者でつくる「ユニット」を50まで確保することを目指している。今月1日には土壌ホメオスタシス研究ユニットのユニットリーダーが就任。1日現在のユニット数は9となっている。
4月に福島ロボットテストフィールド(ロボテス、南相馬市・浪江町)がエフレイに統合される。ロボテスは福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想の具現化に向けて整備された施設で、統合後はエフレイとして必要な研究開発や実証などの拠点として活用される。
4月、大阪万博で復興発信 映像やパネル展示
県や政府は、大阪市で4月13日から10月13日まで開かれる大阪・関西万博を東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興に歩む本県の現状を広く発信する好機と捉え、さまざまな企画を展開する。
万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」がテーマ。復興庁は5月19日から24日まで、「震災伝承・災害対応」「食・水産」「最新技術」「福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)」の四つのテーマで本県と岩手、宮城両県の姿を映像やパネルで紹介する。エフレイは現実と仮想空間を組み合わせたXR(クロスリアリティ)技術を活用して最先端の展示を繰り広げ、「世界に冠たる創造的復興の中核拠点」としての取り組みを国内外にアピールしたい考えだ。
経済産業省は5月20日から24日まで、原発事故で避難区域が設定されたり、津波の被害を受けたりした県内15市町村の取り組みなどを伝える。県は7月19日に単独で出展する計画。復興状況の理解や観光誘客を促す。
会場のシンボルであり、世界最大級の木造建築物とされる1周約2キロの木造の巨大環状屋根「リング」が特徴で県産材が採用されている。
ロケットや人工衛星 宇宙関連企業進出相次ぐ 南相馬市と7社 地元企業活用で協定
南相馬市にはロケットや人工衛星など宇宙関連企業の進出が相次ぐ。市は事業者と連携し、地域産業の活性化を目指している。
市内には東日本大震災後、ロケットを開発する「インターステラテクノロジズ(IST)」、「AstroX(アストロエックス)」、将来宇宙輸送システムや人工衛星を手がける「Elevation Space(エレベーションスペース)」が本社や支社を置いた。これら4社とロケット打ち上げなどのコンサルタント、人工衛星からのデータ分析、物資の運送などを事業とする3社の計7社は、市と連携協定を結び、事業の推進、部品調達での地元企業の利用を進めている。
ロケット分野では昨年、アストロエックスが8月と11月、神奈川大が12月に市内小高区でそれぞれ小型ロケットの打ち上げ実験を行った。ISTは小高区に電子機器を製造する新工場を建設し、今年12月の稼働を目指している。
市は昨年4月に宇宙関連産業推進室を新設した。民間投資による宇宙関連施設の整備や運営の可能性を探り、産業集積に向けた施策を検討している。民間が主導して全国から宇宙関連の企業、研究者、自治体を招いた「福島スペースカンファレンス」を開き、宇宙産業を根付かせるための雰囲気の醸成にも力を入れる。
水素軸に新産業 浪江にドローン研究・開発拠点
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被災地では水素などの新エネルギーを新たな産業とする動きが進んでいる。浪江町には水素を軸とした新エネを燃料とするドローンの研究・開発拠点が誕生する。茨城県日立市で電気工事業などを営むイガラシ綜業が進出し、長時間飛行できる最新鋭の機体の実用化を目指す。
常磐自動車道浪江インターチェンジ(IC)近くの約7600平方メートルの土地に事務、作業、開発の3棟を建てる。2025(令和7)年10月以降の操業開始を見込む。水素を燃料とするドローンはバッテリーと比べて充電が早く、長時間運航できる。主に道路や橋などのインフラ設備の点検用として開発を進める。
施設内では子どもがものづくりの魅力に触れる教育プログラムも展開する方針。「水素タウン構想」を進めている町と連携し、産業人材の育成や地域振興、交流人口の拡大につなげたい考えだ。
復興再生道路「小名浜道路」 今夏にも供用開始
ふくしま復興再生道路「小名浜道路」は、2025(令和7)年夏にも供用開始となる見通しだ。
【地図①】の通り、延長8.3キロの専用道路で、いわき市の小名浜港と常磐自動車道を結ぶ。港から常磐道までの所要時間は現在の約半分の13分となり、アクセスが向上する。物流網が強化され、浜通りの企業誘致を後押しすると関係者は期待する。沿岸部と内陸部の観光地を結ぶ新たな基幹道路にもなり、交流人口の増加につながる。
同じくふくしま復興再生道路に位置付けられる県道吉間田滝根線の広瀬工区は昨年4月13日に開通した。
【地図②】の通り、小野町からいわき市川前町までの延長9.2キロで、中通りと浜通りを結ぶ交通の新たな軸となった。川内村から公立小野町地方綜合病院への救急搬送時間が8分短縮されるなど、医療体制の強化にもつながる。
「ダイヤモンド半導体」工場整備 大熊
ベンチャー企業の大熊ダイヤモンドデバイス(札幌市)は、大熊町に「ダイヤモンド半導体」の量産工場を整備している。熱や放射線への耐久性が高く、次世代の半導体として注目を集めるダイヤモンド半導体の量産体制を確立し、東京電力福島第1原発の廃炉作業や宇宙開発、次世代通信システムに生かす。
同社によると、ダイヤモンド半導体の量産工場は世界初。町が下野上地区の特定復興再生拠点区域(復興拠点)に整備した産業団地「大熊中央産業拠点」に建設している。2026(令和8)年度の完成を目指している。雇用は操業当初、数十人を採用し、将来的に人数を拡大する考えだ。
同社は北海道大や産業技術総合研究所(産総研)などが研究を進めてきたダイヤモンド半導体の商用化・量産化を目指し、2022年に発足。町内の大熊インキュベーションセンターで実証実験を重ねてきた。




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