前作『HOLLOW』から約2年ぶりとなる新アルバム『DOUKE』は、ラッパー・(sic)boyさんが自身の迷いや変化をそのまま刻み込んだ、キャリアの転換点とも言えるアルバムだ。
今作では楽曲「君がいない世界」以来となるChaki Zuluさんとの本格的なコラボレーションが復活。
楽曲「Take Me Home」「疑心暗鬼」「Last Smile」「SAY GOODBYE feat. OMSB」「lights on」「Shaggy White」「Chrome Hearts feat. vividboooy」「色のない夜」と、収録全20曲のうち8曲をChaki Zuluさんがプロデュースしている。
また、長年の盟友であるKMさんに加え、Tidoさん、uinさんといった新たなプロデューサー陣も参加。(sic)boyさんがこれまで築いてきた表現の幅をさらに押し広げている。
全国ツアーで得た実感、これまでのスタイルとの向き合い方、そして日常の痛みをすくい上げた歌詞──様々な揺れ動く感情を映し出す『DOUKE』は、どのようにして形づくられたのか。
その制作の裏側を、(sic)boyさんとChaki Zuluさんの対談から紐解いていく。
目次
取材/執筆:フガクラ 撮影:宇佐美亮 編集:米村智水
これまでの(sic)boyを壊して再構築するアルバム『DOUKE』
──はじめに、本作の制作背景を教えてください。全国5都市を巡る「(sic)boy Angel!! TOUR 2024」などのライブを重ねる中で、本作のイメージが固まっていったそうですが、お客さんの反応をもらったことでどのような心境の変化がありましたか?
(sic)boy 2024年の年末にはじめて全国ツアーを回って、東京・大阪以外のお客さんから、たくさんの反応をもらえたことがすごく嬉しかったんです。
アルバムに収録されている曲の半分ぐらいは元々できていたんですが、ライブの中で「こういう曲があったらお客さんともっと一体感が出るかな」とアイデアが色々と湧いてきて。ツアー後の2024年末から実際にアルバム制作に着手しはじめました。
──本作はこれまでの作品での共同制作者であるKMさんをはじめ、Chaki Zuluさん、Tidoさん、uinさんといった新規のプロデューサーの方々を招いてつくられていますよね。
(sic)boy 僕は21〜22歳くらいから(sic)boyとして活動をはじめて、今年で27歳になったんです。5年で3枚のアルバムと2枚のEPを出したのはすごいペースだったし、その分、ずっと同じ自分のままでは、アイデアも出てこなくなる。
KMさんにこれまでの自分のスタイルを守ってもらいながら、Chaki Zuluさんや他のプロデューサーの方を呼ぶことで、今まで(sic)boyとしてやってこなかったジャンルに挑戦して、進化した自分を見せたかった。
Chakiさんのプロデュース曲に関しては、Chakiさんのスタジオに何度も通って一緒につくっていきましたね。
Chaki Zulu KMの曲とはテイストが被らないようには気をつけましたね。ただ、今さら照れくさいから、KMと連絡し合ったとかではなく(笑)。
(sic)boyを経由して「KMの曲、今どんな感じ?」と随時聞きながら進めていました。あくまで監督はKMだから。邪魔しないようにしつつ、その中で自分の個性を出していった感じですね。
戸惑い、迷う姿こそが(sic)boyの“軸”「ポップスへの抵抗感はない」
──Chaki Zuluさんプロデュースでいうと、「Shaggy White」の八分のミュートギターで刻んでいく初期のThe Smashing Pumpkinsを彷彿とさせるサウンドや、あるいは「SAY GOODBYE」は00s風のR&Bなど、個性豊かな楽曲が並びます。(sic)boyさんが得意としてきたポップパンク×ヒップホップとは全く違うサウンドが新鮮でした。
Chaki Zulu
(sic)boy 制作の初期段階で「(sic)boyって、そもそもなんだろう」みたいな根幹のテーマをChaki Zuluさんと深く話しましたね。
Chaki Zulu 正直、(sic)boyの“軸”が最初は全然見えてこなかったんですよ。(sic)boy自身も迷っていたよね。
でも段々と「この迷ってる感じが(sic)boyなんだ」ってことに気づいて。名前がそもそも(sic)boyでしょ?(笑)“男たるもの軸が定まるべき”みたいな昭和気質な考え方だと、もはや「Healthy boy」になっちゃうじゃないですか。
クールに振る舞っているけど、実は内心もがいたり彷徨っている──それが彼らしさの本質なんだと。その感覚を多様なスタイルの曲で表現したいと思ったんですよね。
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