特別親しかった訳ではない。 ただゼミで調べることがあって、それで一緒に行ったんだ。 その子と図書館を出るとき、雨が降っていた。結構強めの雨で、幸いにも俺たちは傘を持っていた。 少し歩くと傘を持たない男性が雨に濡れて立っていた。俺は何気なくその人を見ていたが、心の底では惨めだなと思って見ていた。 すると「ねぇ」と不意に彼女から声をかけられた。 傘をささずに濡れている人を見るのは良くないよ。 誰にだって傘を持っていない時はあるから。 それは人生も同じ。 そう言われて、ハッとした。 それから俺は人のことを見下したり、酷い状態にいる人のことを笑わなくなった。 そういった状況は、誰にだってあり得ることなのだから。 今はもう彼女とは疎遠だが、それでも人生について教えてもらったことには今でも感謝している。

