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「リベラル」と「レフト」の不幸な結婚を終わらせよう――リベラリズムを再建するための絶縁状 芹沢一也 SYNODOS / SYNODOS Future 編集長 政治 「リベラル」という言葉が、これほどまでに手垢にまみれ、憎悪の対象となってしまったのはなぜでしょうか。 それは、私たちが本来守るべき「自由」と、それとは似て非なる「急進的な変革(レフト)」とを、あまりにも長い間、曖昧に混同させてきたからではないでしょうか。 世間一般の目には、リベラルも左翼も、ひとまとめに「サヨク」として映っています。 キャンセルカルチャーで他人の口を封じる人びと、資本主義の破壊を叫ぶ人びと、あるいは過去の歴史を断罪する人びと。 そうした「レフト」の過激な振る舞いが炎上するたびに、なぜか「リベラル」という看板全体が泥を被り、本来のリベラリストまでが信頼を失っていく。 この「連帯責任」の悪循環を断ち切らなくてはなりま
「効率性」という病――ノーベル賞経済学者が懺悔する、リベラル経済学の罪と罰 芹沢一也 SYNODOS / SYNODOS Future 編集長 経済 「専門家の言うことなんて信用できない」 そう言われたとき、私たちはどう返答すればよいでしょうか。 とくに経済学者は、近年のポピュリズムの台頭の中で、激しい批判の矢面に立たされてきました。 「自由貿易は全員を豊かにする」「移民は経済にプラスだ」「技術革新は素晴らしい」。 彼らが数式とグラフを使ってそう説けば説くほど、現実に職を失い、コミュニティを破壊された人々との溝は深まりました。 そしてその怒りは、こうした経済政策を推進してきた「リベラルなエリート」全体へと向かいました。 もし、リベラリズムがふたたび未来の希望になり得るとすれば、私たちはこの「経済学の傲慢さ」と決別しなければなりません。 今回紹介するのは、2015年にノーベル経済学賞を受賞し
「旗」を奪還せよ――リベラルが「愛国心」を語らねばならない理由 芹沢一也 SYNODOS / SYNODOS Future 編集長 政治 世界中で「自国第一」を掲げるポピュリストや権威主義的なリーダーが台頭しています。 彼らは声高に「国を守れ」「偉大な国を取り戻せ」と叫び、熱狂的な支持を集めています。 一方で、私たちリベラルはどうでしょうか。 「国家」や「愛国心」という言葉を聞くと、どこか居心地の悪さを感じてしまわないでしょうか。 「それは排外主義につながる危険なものだ」「時代遅れの感情だ」と、距離を置こうとしてはいないでしょうか。 しかし、私たちがそうやって「国家」という概念をゴミ箱に捨てているあいだに、そのゴミ箱から「国家」を拾い上げ、自分たちの都合のいいように磨き上げ、強力な武器として独占してしまったのが、現代の排外主義者たちです。 今回紹介するのは、カリフォルニア大学バークレー校の
憎悪の時代の処方箋――ジョン・ロールズに学ぶ「謙虚」で「強靭」なリベラリズムの未来 芹沢一也 SYNODOS / SYNODOS Future 編集長 社会 世界中で「リベラル」という言葉が、かつてないほどの逆風にさらされています。 「リベラル」といえば、少し前までは「自由」や「寛容」を重んじる良識ある態度のことでした。 しかし今や、SNSでは「傲慢」「エリートの道楽」といった罵声が飛び交い、憎悪の対象にすらなっています。 なぜ、これほどまでに嫌われてしまったのでしょうか。 そして、私たちはこの瓦礫の中から、未来を照らす理念としてリベラリズムを救い出すことができるのでしょうか。 今回紹介するのは、オーストラリアの哲学者アレクサンドル・ルフェーブル(Alexandre Lefebvre)がオンライン誌『Aeon』に寄せたエッセイ、「ロールズという〈贖う者〉(Rawls the redeeme
「日本版トラス・ショック」を引き起こさないために:「夕張ショック」と「運用部ショック」(その3) 中里透 マクロ経済学・財政運営 経済 「日本の財政はギリシャよりも悪い」。石破総理の国会での発言をきっかけに、日本の財政状況をめぐる問題が話題になっています。 前回はあるイベントを起点に債券市場に動揺が広がり金利が急騰した3つの事例を振り返るとともに、「トラス・ショックをどのようにとらえるか」ということを考えました。 今回はそれを踏まえて、「日本版トラス・ショック」を引き起こさないためにはどのようなことが求められるのかということについて考えてみたいと思います。前回の記事は下記にて自由にご覧いただくことができます。必要に応じご利用ください。 「夕張ショック」と「運用部ショック」(その2):トラス・ショックをどのようにとらえるか 「競合脱線」としてのトラス・ショック(再説) トラス・ショックは、さ
石破総理の国会答弁をきっかけに、「日本の財政はギリシャより悪いのか」ということが話題になっています。前回はこのことについて、これまでの経緯とデータをもとに考察を行いました。 それに引き続いて今回は、日本において債券市場に動揺が広がり金利が急騰した3つの事例を振り返り、「トラス・ショックをどのようにとらえるか」ということについて考えてみたいと思います(それに先立って、2万円の給付金の根拠などをめぐる議論についてもふれています)。トラス・ショックというと「また増税の話か」と思われるかもしれませんが、ここでは減税や歳出増に異を唱える際の「お題目」としてトラス・ショックを利用するスタンスとは一線を画し、異なる視点から一連の経過をながめています。 なお、前回の記事については下記ページにて自由にご覧いただくことができます。必要に応じご利用ください。 「夕張ショック」と「運用部ショック」(その1):日本
「日本がギリシャにならないために」。そんなフレーズが流行ったことがあった。今から15年ほど前、民主党政権の時のことだ。 その後、政権交代があったこともあってこのフレーズはあまり聞かれなくなったが、長年にわたる地方創生の成果なのか、永田町という町で最近見事に復活したようだ。石破総理は「日本の財政はギリシャよりも悪い」という自身の見立てを国会で問われ、その認識に誤りはないとの見解を改めて表明している(6月9日の参議院決算委員会)。 もっとも、その数日後に石破総理は全国民に2万円の給付を行うことを自民党総裁として党側に指示している(子どもと低所得者についてはさらに2万円上乗せ)。もし破綻寸前の国で一国の総理が消費税1%分に相当する給付を行うことを表明したら、その瞬間に「国債暴落」が起きてもおかしくないから、通常であればこのような指示をすることはためらわれることになるだろう。 そうなると、「ギリシ
国内外の専門家でつくる「若年型甲状腺癌研究会(JCJTC)が6月12日、福島県に対して、甲状腺検査に関する要望書を提出しました。検査対象となっている若者や子どもへの不利益があるなどとして、①学校の授業時間内の検査を即時中止②過剰診断の意味と国際専門機関の勧告内容を正確に伝えること③利害関係のない国内外の専門家による新たな委員会による甲状腺事業の検証――の3点を提言しています。 若年型甲状腺癌研究会は、7人のコアメンバーと、4人の海外メンバーで構成されています。コアメンバーのうち、大津留晶氏(長崎大客員教授)と緑川早苗氏(宮城学院女子大)は、かつて福島県立医科大学で甲状腺検査事業に関わった経歴があり、津金昌一郎氏(国際医療福祉大学大学院)と高野徹氏(りんくう総合医療センター)は福島県県民健康調査検討委員会の委員を務めたことがあります。 要望書では、これまでに300例を超える甲状腺がんが見つか
ひと月ほど前、ノア・スミスさんの記事をきっかけに、ネット上で輸入とGDP(国内総生産)の関係が話題になりました。 「なぜ経済マスコミは『輸入はGDPから差し引かれる』の間違いを犯し続けるのか?」 (https://note.com/econ101_/n/ne154cc130cde) この話題はGDPやGNPの話(国民経済計算)のことを考えるうえでとてもよい素材になっています。以下では、この話を起点に、国民経済計算のことについて考えてみたいと思います。 輸入が増えると実は「GDPは増える」 「輸入物価が上がるとGDPデフレータは低下する(物価は下がる)」、「輸入が増えるとGDPは減る」。このいずれが正しいか、街中でアンケートをとったら、おそらく後者のほうに「正しい」という票が集まるでしょう。 しかしながら、実際には前者のほうが正しく、後者は間違っています(前者がなぜ正しいのかはデータとともに
赤いきつねのウエブCMが炎上した。この炎上の背景を調査したので報告する。 事件のあらましは以下の通りである。このCMはマルちゃんでおなじみの東洋水産が、主力商品の一つである赤いきつねと緑のたぬきの販促につくったウエブCMである。公表後しばらくは何もなかったが。2月16日あたりから炎上が始まった。このウエブCMには女性が登場する赤いきつね版と男性が登場する緑のたぬき版があり、炎上したのは女性版の方である。女性版では家で一人でドラマを見て涙ぐむ女性が赤いきつねを食べ、最後に商品名を口する。 このCMが炎上したのは、女性が性的に扱われているからだというものである。動作としては食べているだけであるが、頬を赤らめ、髪をかき上げ、口をアップで映すところが性的なものを感じさせる、より正確に言えば、男性目線で性的に見えるように描かれているというのが炎上の理由である。Xでの批判者の書き込みを見ると、CMの背
「公正さというのは極めて限定された世界でしか通用しない概念のひとつだ。しかしその概念はすべての位相に及ぶ。かたつむりから金物屋のカウンターから結婚生活にまで、それは及ぶのだ」(村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』) 政治的リベラリズムと婚姻制度 現代は価値が多様化した時代である。社会にはさまざまな問題が存在するが、ゆずれない重要な価値観にかかわるものである場合、対立は激しいものとなる。宗教にかかわるケースが典型的だが、特段の信仰をもたない人でもそうした事態に直面することはあるだろう。解決策のひとつは、何から何まで同一の価値観を全員が受け入れることである。だがこれは、特定宗教への改宗を強制するようなものであって、魅力的でも実行可能な選択肢でもない。 異なった価値観をもつ人びとが、その違いを保ったまま、共生することはいかにして可能か。これはまさに、ジョン・ロールズが『政治的リ
日本銀行の「多角的レビュー」には、ひとつの隠れたテーマがある。それは「財政ファイナンス」に関するものだ。この問題をめぐる議論の必要性については、2度にわたり開催された多角的レビューの会場でも複数の参加者から指摘がなされたと記憶しているが、昨年12月に日銀から公表されたレポート(「金融政策の多角的レビュー」)の本編では、必ずしもこの問題について十分な言及がなされていないようだ。 金融政策の運営について政府があれこれ注文をつけることに一定の慎重さが求められるのと同じように、日銀が財政運営について垣根を越えて発言することは控えるべきという判断はあってもおかしくないが(2013年8月の消費増税集中点検会合で「どえらいリスク」を強調して予定通りの増税実施を促した黒田総裁(当時)も、その後は財政運営について控えめの発言を繰り返すようになった)、「財政ファイナンス」をめぐる議論は財政と金融の連携と役割分
兵庫知事選の有権者について選挙1か月後を追跡調査したので報告する。長いので最初に結論を述べておく。なお、2か月経過後に事態はさらに変化しているが、それこまでは追ってない。1か月後の変化である。 (1)1か月後の時点で斎藤氏と稲村氏の二人の支持率に変化はない。パワハラがあったかどうか、マスコミの捏造かどうかといった点について見解の分断もそのままである。斎藤陣営の選挙違反事件は支持率に影響を与えていない。 (2)斎藤氏の勝利の要因としてはYouTubeの影響が大きく、YouTube動画だけで5%程度支持率を上げた計算になる。注目すべきはYouTubeで政治・社会問題についての動画を初めて見たという人が斎藤氏を支持する傾向があることで、いわば初見効果(初めて見たことによる効果)が働いた可能性がある (3)選挙後に分断状況に変化がないと述べたが、これはマクロのことで、個々人で見ると意見の変化はある
コロナ禍を経て世の中の関心は「デフレ」から「物価高」へと移りました。そうした中にあっても経済の停滞は続いていますが、私たちの経済に大きな変化が生じつつあるのも確かでしょう。 ここでは、そのような経済の動きを読み解くうえで有益な視点を与えてくれる1冊をおすすめしたいと思います。 飯田泰之著『財政・金融政策の転換点 日本経済の再生プラン』(中公新書) 財政・金融政策のこれまでの経過を振り返りつつ、最近の経済政策をめぐるさまざまな論点について、見通しのよい解説と政策対応のあり方が提示されています。 本書の特徴や類書との違いを表すキーワードを選ぶとしたら、財政政策と金融政策の「一体化」と「高圧経済論」。 拙速な政策転換を避け、粘り強く需要刺激を続けることが、経済の構造調整を容易にし、供給力の強化にもつながるという「高圧経済論」は、各方面において注目されていますが(今年の5月に開催された日本銀行の「
「103万円の壁」をめぐる議論が引き続き活発に行われている。この問題をめぐっては新たな論点も浮上した。それは基礎控除の引き上げなどによる所得税と住民税の減収によって、都道府県・市町村の一般財源に大幅な減収が生じることに関するものだ。 各県の知事からはこの問題をめぐり相次いで懸念が表明され、中には「このままでは財政破綻」との声も聞かれる。これに対し、国民民主党の玉木代表はSNS上で、減収分は地方交付税で補てんされるという趣旨の説明を行っている(https://x.com/tamakiyuichiro/status/1858810419525415362)。 結論からいうと、両者の見方はいずれも極端で不正確なものだ。後述するように、各都道府県・市町村の収支がきちんと合うよう減収分が補てんされる仕組みがあるから、財政破綻が生じるおそれはない。だが、その調整の仕方は、減収分がそのまま地方交付税で補
兵庫知事選は斎藤元彦氏が返り咲いた。パワハラで県庁職員とマスコミから叩かれつづけ、県の労働組合は辞職要求を出し、兵庫県議会は自民党から共産党まで含めての全会一致で不信任決議を出した。選挙戦中には兵庫県の22人の市長が連名で斎藤氏を再選させるべきではないとの異例の声明を出し、日本ファクトチェックセンターは、パワハラはでっち上げだという斎藤氏の擁護側の主張を根拠なしと断じた。いわば、四面楚歌だったはずで、それを覆しての勝利である。全国レベルでの知見と兵庫県内での知見に大きな差があったと言っても良い。 本稿の目的はその落差を多少なりとも埋め、起こった事態を理解することである。そのために兵庫県民へのアンケート調査を投票直前に行った。結論は以下のとおりである。 (1)斎藤支持者の7割は、斎藤氏のパワハラはマスコミの捏造と考えており、また、8割は今回の辞任劇は斎藤氏が進めた改革に反対する既得権益層が起
最近の霞が関で新語・流行語大賞を選ぶとしたら、EBPM(合理的な根拠に基づく政策立案)は間違いなくその候補のひとつということになるだろう。各省庁でEBPMの本格的な導入に向けた取り組みが進められ、「行政事業レビュー」にもEBPMの話題が頻繁に登場し、書店にはEBPMをタイトルに含む本やEBPMを特集した雑誌が数多く並んでいる。行政の効率化や政策の有効性の確保に向けた取り組みが進展していくことは、もちろんよいことだ。 もっとも、EBPMのブームには懸念されることもある。EBPMの取り組みが、これまでに行われてきた同様の取り組みと比べて優れたものであるという「エビデンス」は存在しないからだ。見た目の新しさに目を奪われて、EBPMを導入すれば行政がよくなるという「根拠なき楽観」に陥ると、期待外れでがっかりということにもなりかねない。 政策形成に合理的で科学的な手法を導入すれば行政の効率化が実現で
今回の衆議院選では自民党が大幅に議席を減らし、過半数を割り込んだ。政権与党が選挙に敗れる原因は、与党の政策の失敗か大きな政治的スキャンダルであることが通例である。今回も例外ではなく、物価上昇と賃金の停滞など自民党の政策面での失敗と、不記載問題(裏金問題)への批判が敗北の原因であることは衆目の一致するところであろう。 さらに、今回はそれに加えて、総選挙の直前に総裁選があり自民党の総裁が僅差で高市氏ではなく石破氏になったという事件があった。このとき、高市氏が敗れたことに失望して自民党支持を止めるという声がネットに流れたことがある。 本稿の課題は有権者への事前のアンケート調査で、これら敗北の要因の定量評価を行うことにある。結論を先に述べておくと、政策の失敗、不記載問題、高市落選への失望の3つの要因はいずれも働いている。このうちこれまでにない要因として注目すべきは、高市落選への失望効果であろう。
はじめに 平和学(peace studies)は、平和を脅かす要因を特定し、平和の諸条件を明らかにすることを目的としています。めずらしい学問だと思うかもしれませんが、平和学や平和研究という科目を置いている日本の大学は沢山あります。私は早稲田大学社会科学部に進学して平和学を学び、国際関係論のゼミナールに入りました。卒業後は大学院に進学し、国際協力・平和構築論の研究室で研究に取り組みました。また、大学院在学中にノルウェーのオスロ大学大学院政治学研究科へ留学し、平和・紛争研究プログラムで学びました。現在は大学教員として平和や紛争に関する研究、教育、そして難民支援などの社会活動に取り組んでいます。 私が大学や大学院で学んだ平和学、国際関係論、国際協力論、平和構築論、紛争解決学などは、いずれも戦争や平和について考える学問です。これらの学問に興味を持った最初のきっかけは、小学生の頃に市の文化会館で行わ
東京一極集中の是正は、長きにわたり重要な政策課題とされてきた。「過密と過疎の同時解消」は「国土の均衡ある発展」を経て「地方創生」に変わったが、一極集中の是正と地方分散を求める声は今も根強くある。そのような声は、かつては道路や鉄道、空港などのインフラ整備を求めるものであったが、最近は少子化への対応と関連づけて是正策が論じられるようになった。 「東京はブラックホール」という議論自体は都市伝説だとしても(各地域の出生率は人口移動の「結果」として決まる指標でもあるということに留意)、首都直下地震のことなどを考えると、東京への過度の集中は好ましくない。もっとも、一極集中是正の対象となる「東京」の範囲をきちんと意識しないと、対応策があいまいなものとなってしまうということを前回の議論で確認した。東京の都心への大学の立地を規制することも一極集中の是正策ではあるが、このような立地規制の結果、都心にある大学の
最近おきた3つの炎上事件、しまむらの幼児服・男の体臭・おじさんの詰め合わせの炎上はこれまでとは違い、男性側が責める側すなわち攻撃側になっているという特徴がある。この点で炎上を見直す一つの分岐点になる可能性があり、以下ではそれを検討する。結論から言うと、炎上を抑制する方向への分岐の萌芽は見いだせる。むろん、まだ弱いものであるが、注視していく価値はあるだろう。 1.三つの炎上事件とその背景 まず、事件を簡単に解説する。しまむらの幼児服事件とは、あるデザイナーと共同企画した幼児服に子供視点とみられる言葉が書いてあったが、母親については「ママがいい」「ママいつもかわいいよ」とあるのに対し、父親については「パパはいつも寝てる」「パパはいつも帰り遅い」「パパは全然面倒を見てくれない」など不満の言葉が述べられていた事件のことである。これに対し、男が頑張って働いている事を評価しない、あるいは幼い子供に父親
(1)事件の概要 第一幕:ゲームの炎上 アサクリ・弥助の炎上事件は単なる一ゲームの炎上事件以上の思わぬ広がりを見せており、下手をすると国際問題になる可能性がある。この事件について簡単な調査を行ったので報告する。 まず、多くの人はこの事件のことを知らないと思われるので簡単にいきさつを説明する。事の起こりはアサシンクリードというゲームの予告が炎上したことである。 このゲームはフランスのゲーム会社UBI制作の人気シリーズで、過去のさまざまな場所・時代にアサシンとして乗り込み、同様に過去の時代・場所に乗り込む能力を持った敵の勢力を倒していくゲームである。これまでに、ルネサンス期のイタリア、産業革命期のロンドン、独立戦争時のアメリカなど様々な舞台でのゲームが発売されており、その時代の建物・風俗などが忠実に再現されていることでも話題となった。 このシリーズが日本の戦国時代を舞台としてつくられることにな
データサイエンス系学部の隆盛 本稿の目的は、計量社会学への招待なのですが、これから大学へ進学することを考えておられる方々を念頭において、最近目立ってきた大学学部の動向についてまずは触れさせてください。 2023年度、一橋大学が実におよそ70年ぶりに新学部を開設しました。「ソーシャル・データサイエンス学部」です。ここ最近、新設される大学の学部の多くが、データサイエンスに関連する学部です。以降、横浜市立大学、名古屋市立大学、京都女子大学などが続き、新たにデータサイエンス系学部を設置しました。2024年には、明治学院大学が、当大学初めての理系学部である「情報数理学部」が開設されました。データサイエンスを専門とする学部内のコース(学科)の設置を含めると、新規設置の数はかなりのものになります。 データサイエンス系の学部の設置のはしりは、2017年の滋賀大学による「データサイエンス学部」で、意外に思わ
シリーズ「環境倫理学のフロンティア」では、環境倫理学の隣接分野の研究者との対話を行っています。今回は「環境経済学×環境倫理学」として、「クリティカル自然資本」をキーワードに研究されている環境経済学者の篭橋一輝さんと対話を行います。篭橋さんは、最近では自然の価値に関する論考を書かれており、これは環境倫理学に親和性のあるものになっています。今回は、これらの内容をふまえて、環境経済学と環境倫理学の観点から、現代における自然の価値について議論していきます。 吉永 篭橋さんは環境経済学がご専門で、南山大学社会倫理研究所で第二種研究員としてお勤めになり、以前(2019年3月)には同研究所で『未来の環境倫理学』の書評会を開いていただきました。このように、以前から環境経済学の観点から環境倫理学の研究を見守っていただいておりましたが、2020年にお書きになった論考「〈関係価値〉は新しい価値カテゴリなのか――
「0.99ショック」をきっかけに東京の出生率の低さに再び注目が集まっています。2か月ほど前に公表された人口戦略会議(議長=三村明夫・日本製鉄名誉会長)の報告書では、東京都の16の区をはじめとする25の自治体が「ブラックホール型自治体」とされ、東京は「人を吸い込むブラックホール」であると報じる新聞やテレビのニュースもありました。 0.99という数字に象徴されるように、東京が子どもを産み育てにくい場所だとすれば、地方から東京へという「人の流れ」が変わらない限り、少子化と人口減少がますます加速してしまうことになりかねません。 もっとも、「東京はブラックホール」という議論については、その意味するところに留意して、その状況を注意深くながめていく必要があります。というのは、この議論のもとになっている出生率の指標(合計特殊出生率)にはバイアス(特定の方向への偏り)が含まれている可能性があるからです。デー
出生率のデータが公表されると、東京都はいつも最下位となる。にもかかわらず、若者は東京に集まる。出生率の高い地域から低い地域に人が動けば、日本全体として出生数が減り人口減少が加速する。全国から若い人を集めておきながら、次の世代を担う子どもたちを生み育てることのない東京は「ブラックホール」である。 このように、東京=「ブラックホール」論は理路整然としていて、とてもわかりやすい。東京の出生率が他の地域と比べて低いということも、人口移動において東京が転入超過であるということも統計的な事実だから、実証的にも非の打ち所がないように見える。 だが、はたしてこの話はどこまでもっともらしいのだろうか。どこかに見落としはないのだろうか。 前回は「東京は出生率が低い」という議論がなされるときに用いられる出生率の指標、すなわち合計特殊出生率とはどのようなものか、この指標を利用する際に注意すべきことは何かということ
東京は「ブラックホール」なのか?(その1):少子化にまつわるエトセトラ 中里透 マクロ経済学・財政運営 社会 出生率に関するデータが公表されると、きまって東京の出生率が低いことが話題となり、「子育て支援策の充実を」「子供を産み育てやすい街づくりを」という趣旨のコメントが新聞やテレビに登場する。 出生率が低い東京に全国から若者が集まってくるから(就学・就職などで)、そうなると次の世代を担う子ども達が生まれにくくなり、少子化と人口減少がますます加速する。東京は若者を飲み込む「ブラックホール」だから、日本の国力の衰退を止めるには今こそ東京一極集中の是正と地方分散を、という話になる。 だが、このような見立てはどこまで妥当性を持つものなのだろうか。議論に大きな見落としはないのだろうか。以下ではこれらの点について考えてみることとしたい。 1.東京の「出生率」は低いのか? 合計特殊出生率の「分母」と「分
つい最近まで、社会保障の議論では「2025年問題」ということが現実の問題として頻繁にとりあげられた。これは「団塊の世代が75歳に到達する2022年から2025年にかけて、社会保障費が急増する」という話だ。 だが、2025年を翌年に控えた今(2024年)、このフレーズを見かける機会はほとんどない。「2025年にかけて社会保障費が急増する」という話が錯覚や思い込みでしかないことが、実際のデータから明らかになったからだ(なぜこのような錯覚が生じたのかという点については、2018年に公表された下記レポートをご覧ください。 「190兆円の社会保障費をどのようにとらえるか-「2025年問題」の虚像と実像」(ニッセイ基礎研)[https://www.nli-research.co.jp/files/topics/58888_ext_18_0.pdf?site=nli])。 このような経緯があるにもかかわ
「異次元の少子化対策」は、まさに異次元の政策である。年間で3.6兆円(概数)もの予算が新たに追加されるにもかかわらず、この対策によって出生率がどの程度上がるのかがわからないからだ。 最近、EBPM(合理的な根拠に基づく政策形成)ということがさかんに言われ、霞が関でもさまざまな取り組みが行われているが、肝心な話になると、なぜかその時々の風向きと雰囲気で政策が進められていってしまう。少子化と人口減少への対応は重要な政策課題であるが、「満蒙は日本の生命線」というノリで「産めよ、殖やせよ国のため」とやっても、首尾よく成果をあげることはできないだろう。 何事についても目的と手段の関係を明確にし、コスパ(費用対効果)をきちんと考えて現実的な対応をとることが必要だ。「これからの6~7年が、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンス」と唱えていさえすれば数兆円規模の支出増が実行に移せるということであれ
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