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飛行機の音ではなかった。耳の後ろ側を飛んでいた虫の羽音だった。蠅よりも小さな虫は、目の前をしばらく旋回して暗い部屋の隅へと見えなくなった。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon関連カテ虫が飛ぶ・羽音
茶褐色の虫が、スースーという老人の寝息のような羽音をたてて
井上 光晴 / 小説ガダルカナル戦詩集 amazon関連カテ虫が飛ぶ・羽音
やがて短く羽音がして、また静まった
関連カテ虫が飛ぶ・羽音
ぶ厚い四翅をばさばさと打ちふるたびに、綿の実のような鱗粉が片々と乱れ
北 杜夫 / 谿間にて「新潮日本文学 61 北杜夫集―楡家の人びと・他」に収録 amazon関連カテ虫が飛ぶ・羽音蛾(が)
どこからともなく蜜蜂の羽音が聞こえてくる。先生の部屋で聞いた羽音の名残りなのか、ただの耳鳴りなのか区別がつかない。しかしそれはどんなにか細く微かでも、それることなく真直ぐ鼓膜を突き抜けてゆく。
......が赤の無地で斜め右上に緑の蔓草模様。正方形、長方形、二等辺三角形に直角三角形。どこまでもパッチワークは広がってゆく。静かな夜、一人きりで布切れをつなげていると、どこからともなく蜜蜂の羽音が聞こえてくる。先生の部屋で聞いた羽音の名残りなのか、ただの耳鳴りなのか区別がつかない。しかしそれはどんなにか細く微かでも、それることなく真直ぐ鼓膜を突き抜けてゆく。 羽音は雨に濡れた蜜蜂へ、次にチューリップ、しずくの流れる窓ガラス、天井のしみ、粉薬、そして先生の肋骨へつながってゆく。どうしても、スウェーデンにはたどり着けな......
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ虫が飛ぶ・羽音
蜜蜂の唸るような音
......わかって おそろしいのか [#改ページ] …………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。 私がウスウスと眼を覚ました時、こうした蜜蜂の唸るような音は、まだ、その弾力の深い余韻を、私の耳の穴の中にハッキリと引き残していた。 それをジッと聞いているうちに……今は真夜中だな……と直覚した。そうしてどこか近くで......
起きている窓はなく、深夜の静けさは暈となって街燈のぐるりに集まっていた。固い音が時どきするのは突き当っていく黄金虫の音でもあるらしかった。
一 喬は彼の部屋の窓から寝静まった通りに凝視っていた。起きている窓はなく、深夜の静けさは暈となって街燈のぐるりに集まっていた。固い音が時どきするのは突き当っていく黄金虫の音でもあるらしかった。 そこは入り込んだ町で、昼間でも人通りは少なく、魚の腹綿や鼠の死骸は幾日も位置を動かなかった。両側の家々はなにか荒廃していた。自然力の風化して行くあとが見えた。紅殻が古びてい、荒壁の塀は崩れ、人びとはそのなかで古手拭のように無気力な生活をしているように思われた。喬の......
(小さい虫たちが飛び交う)昆虫。昆虫。初冬といっても彼らの活動は空に織るようである。
......も幾条も流れてゆく。(その糸の上には、なんという小さな天女! 蜘蛛が乗っているのである。彼らはそうして自分らの身体を溪のこちら岸からあちら岸へ運ぶものらしい。)昆虫。昆虫。初冬といっても彼らの活動は空に織るようである。日光が樫の梢に染まりはじめる。するとその梢からは白い水蒸気のようなものが立ち騰る。霜が溶けるのだろうか。溶けた霜が蒸発するのだろうか。いや、それも昆虫である。微......
梶井基次郎 / 冬の蠅 青空文庫関連カテ虫が飛ぶ・羽音
(小さな虫が飛び交う)内湾のように賑やかな溪の空
......か。いや、それも昆虫である。微粒子のような羽虫がそんなふうに群がっている。そこへ日が当ったのである。 私は開け放った窓のなかで半裸体の身体を晒しながら、そうした内湾のように賑やかな溪の空を眺めている。すると彼らがやって来るのである。彼らのやって来るのは私の部屋の天井からである。日蔭ではよぼよぼとしている彼らは日なたのなかへ下りて来るやよみがえっ......
蜂がけだるい羽音を立てて飛んでいた。
......らしい雨のなごりが隣家の屋根の上できらきらと光っているのが見える。空には、まるで夏がもう一度戻ってきたようなくっきりとした白い雲が浮かび、庭のあじさいの花の上を蜂がけだるい羽音を立てて飛んでいた。塀のむこうからは近所のおばさんたちが朝の挨拶をかわしている声が聞こえる。どこかで鶏が鳴き、どこかで犬が吠えている。心地好い朝だ。こんな暖かな太陽を目にしたのは何......
村上春樹「遠い太鼓 (講談社文庫)」に収録 amazon関連カテ虫が飛ぶ・羽音