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腸内細菌が薬を食べてしまう。薬効成分が腸内細菌により台無しにされることがあるという研究結果(米研究)

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Pattrayut/iStock
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 治療や症状を止める時に使用される薬は、注射や点滴、皮膚に塗ったりと様々な使用法があるが、もっとも一般的なのは口から飲む方法だろう。

 口から入れた薬は胃を通過し腸に入る。だがそこで問題が生じるようだ。

 アメリカ・ハーバード大学の研究によると、腸内細菌がはせっかく飲んだ薬を食べてしまい、その効果を台無しにしてしまうことがあるそうだ。

 近年、腸内細菌は人が健康を維持する上で決定的に重要な役割を担っていることがわかってきている。

 あなたが大好物のお料理をぺろりと平らげた後、消化器官に流れ込んできた食材を分解し、体が必要とする栄養素に変える役割は、お腹の中に潜んでいる数兆という細菌が担っている。

 それだけでなく、腸内細菌は感情や気分にも影響を与えるほどで、文字通り人の心身の健康を支える大切な存在だ。

・腸の声を聞け。感情や気分、対人コミュニケーションまで腸が関与している可能性(米研究) : カラパイア

腸内細菌は薬効成分にまで関与する

 だが、この驚くべき進化の賜物が、体の中に入ってきた薬に対しても影響を与えてしまうことがある。

 要するに、腸内細菌は体内に入ってきた薬を食べちゃうことがあり、薬がちっとも効かなくなってしまうばかりか、場合によっては健康に害を与えることすらあるということだ。

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Arek Socha / Pixabay

パーキンソン病の薬「レボドパ」が効かない理由

 研究著者のマイニ・レクダル氏らが取り上げたのは、パーキンソン病の薬である「レボドパ」だ。

 パーキンソン病は、脳内の神経伝達物質ドーパミンを作り出す神経細胞を攻撃し、そのせいで体が震えたり、筋肉が硬直したりしてしまう病気だ。そこでレボドパは脳にドーパミンを送り届け、症状を緩和しようとする。

 ところがレボドパが1960年代に販売されて以来、薬がお腹の中の酵素によって分解されてしまい、脳までほとんど届かないことが知られていた。なにしろ、きちんと脳まで届くのは薬のたったの1~5パーセントでしかないのだ。

 そこで「カルビドパ」というレボドパの分解を防ぐ薬と一緒に服用することで、どうにか治療効果を得るというのが現状だった。

体内で分解されることの副作用

 しかし、薬を分解してしまう代謝についてはまだまだわかっていないことが多く、しかも個人差がある。そして、これがとても厄介なのだ。

 たとえばレポドパの場合、効きにくい人がいるというだけでなく、脳の外でドーパミンに転換されてしまうと、ひどい胃腸障害や不整脈を引き起こしたりと副作用が現れることがある。治療効果を得られるどころか、かえって体調を崩す羽目になってしまうのだ。

 過去の研究では、抗生物質を投与するとレボドパの効果が向上したために、おそらく効き目の個人差は腸内細菌が原因ではないかと推測されていた。だが、いったい無数にある細菌のどれが薬を食べてしまっているのかは不明だった。

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Dr_Microbe/iStock

腸内細菌が薬を食べている証拠が発見される

 その犯人発見の手がかりとなったのは、L-ドーパ(=レボドパ)をドーパミンに転換するという珍しい化学的能力だ。こんなことができる細菌酵素はほとんどない。

 一方、「チロシン」というL-ドーパに似たアミノ酸と結びつくものなら結構いる。その中で、チロシンとL-ドーパの両方に結びつくことができるのは、牛乳やピクルスでよく見られる細菌の「ラクトバチルス・ブレビス」だけだ。

 レクダル氏らは、ヒト・マイクロバイオーム・プロジェクトを参考に、似たような酵素を作り出せるDNAを持つ腸内細菌がいないか調査。いくつか候補が発見されたが、毎回すべてのL-ドーパを食べるのは「エンテロコッカス・フェカーリス」だけだった。

 こうして世界で初めて、エンテロコッカス・フェカーリスとその酵素である「PLP依存性チロシンデカルボキシラーゼ」がL-ドーパ代謝と関連しているという証拠が発見された。

微妙な構造の違いが薬の効果を激減させる

 じつは、人が持つある酵素もまた腸内でL-ドーパをドーパミンに転換することができる。また、先ほど紹介したレボドパと一緒に服用されるカルビドパはその反応を止めることができる。

 それなのになぜ腸内細菌のE・フェカーリスの酵素にはカルビドパがあまり効かないのだろうか?

 それは2つの酵素はまったく同じ化学反応を起こすが、E・フェカーリスの酵素については若干違って見えることが原因らしい。

 レクダル氏の推測では、カルビドパはこの細菌の細胞を貫通できないか、構造が微妙に違っているために、細菌の酵素とうまく作用しないのではないかという。そして仮にそうなのだとすれば、他のホスト標的薬も、カルビドパと同じくあまり効果が期待できないということになる。

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Christoph Burgstedt/iStock

パーキンソン病の新薬開発へ向けて

だが、こうしたことも特に問題とはならないだろう。レクダル氏らはすでに、E・フェカーリスの酵素を阻害できる分子を発見しているのだ。

 この分子は、腸内の細菌を殺してしまうことなく、不必要なその代謝だけを抑える。まさにパーキンソン病を治療する新薬開発のスタート地点ができたわけだ。

 今パーキンソン病で苦しむ人たちにとっては希望となるようなニュースだろう。一刻も早く新しい薬が登場するよう願いたい。

 この研究結果は『Science』に掲載された。

References:Gut microbes eat our medication | Department of Chemistry and Chemical Biology/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 14件

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  1. ここまで腸内細菌強いのにピロリ菌やアニサキスのような
    変な奴生き残れるのだろう

    • +2
    1. >>1
      ピロリ、アニサキス「え、あの…私たち…胃袋にいるんです…」

      • +13
  2. また一歩医学が進歩したんだね!

    …それにしても、沢山の生き物が自分の体の中で生活しているって不思議だなぁ

    菌のみなさんいつもありがとう
    みんなのために頑張って美味しいもの食べるからね

    • +12
  3. たまにチロシンのサプリ飲んでる
    気分が上向きになるけど、人によってはイライラするらしい

    • 評価
  4. 意味わからんな
    なぜ大腸を通さないように血管に注射しない?

    • -6
    1. >>4
      血管にも末梢性DOPA脱炭酸酵素って言うのがあってな…血管に打ち込むと血管の中でドパミンに変換されちゃう
      血管の中のドパミンは殆どBBBを越えられない(=1~3%しか脳に入らない)からすごく効率が悪い。文中のカルビドパってのは、この末梢性DOPA脱炭酸酵素を阻害して、レボドパのまま脳へお届け→脳の中で中枢性DOPA脱炭酸酵素によってドパミンに変換するもの

      でも一番の理由は薬の時間の度にぶすぶす注射を刺される患者さんの負担とか、インスリン自己注射以上に面倒な血管内投与を誰がやるんだとか色々あって経口剤の方がいいってなってる。今は在宅も多いしね
      一応注射剤もあるよ、確か。周術期で経口投与できない患者さんのためのやつ

      • +19
      1. ※8
        明快な説明
        🐜🐜🐜🐜🐜🐜🐜🐜🐜🐜

        • +4
  5. 「チロシン」というL-ドーパに似たアミノ酸と結びつくものなら結構いる。その中で、チロシンとL-ドーパの両方に結びつくことができるのは、牛乳やピクルスでよく見られる細菌の「ラクトバチルス・ブレビス」だけだ。

    チロシンは、タケノコの白いヤツに多く含まれており、「頭を良くする」物質とも言われている

    …ということは、タケノコと乳製品(+乳酸発酵頻)を一緒に摂取することは止めたほうがいいんだな

    • +3
  6. 薬の効き方にも個人差あるからな
    今まで体質って言われてたものが具体的になんなのかってのが一部明らかになったってことかな

    • +8
  7. 薬は多すぎれば毒ってことを考えれば、見慣れない異物を処理排除してるわけで優秀な門番兼処理役ってことなんだろうけどね
    たまたま、薬に人の意思と目的が介在してたけど伝わらず普段通りにお仕事してたという話

    • +2
  8. >毎回すべてのL-ドーパを食べるのは「エンテロコッカス・フェカーリス」だけだった

    ………..なあ、それってビオフェルミン(胃腸薬)の主成分じゃなかったか???

    スモン病の原因がありふれた整腸剤「キノホルム」だったことを思い出した…

    • 評価

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