「江戸の女性たちも恋バナをしていた?」など思い馳せるーー北斎・広重らが描いた世界へ五感で没入『動き出す浮世絵展』関西初上陸
『動き出す浮世絵展 OSAKA』
動き出す浮世絵展 OSAKA 2026.1.17(SAT)~3.14(SAT) グランフロント大阪北館 ナレッジキャピタル イベントラボ
『動き出す浮世絵展 OSAKA』がグランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル イベントラボでスタートした。同展はこれまで愛知、イタリア・ミラノ、鹿児島、東京、福岡と国内外で開催、35万人以上を動員した「イマーシブ(没入型)体感型デジタルアートミュージアム」だ。
葛飾北斎、歌川国芳、歌川広重、喜多川歌麿、東洲斎写楽、歌川国貞ら世界的な浮世絵師の作品300点以上をもとに3DCGアニメーションやプロジェクションマッピングを駆使して描いたデジタルアート作品を立体映像空間に投影することで、浮世絵の世界に没入できる。
まずは浮世絵について知ろう
エントランス
会場のエントランスでは「浮世絵とは何か」という解説ボードと動画、先に挙げた浮世絵師の紹介パネルが出迎えてくれる。それぞれがどんな絵師なのか、経歴や代表作について詳しく紹介されているため、浮世絵についてあまり明るくないという人も安心だ。先に知識を入れることでこの先の展示も一層楽しめるため、なるべく目を通しておこう。そして葛飾北斎の「冨嶽三十六景 凱風快晴」をあしらった巨大なフラッグに見送られ、いざ展示室へ。
大阪会場では、「眺」「藍」「麗」「彩」「瀧」「豪」「雅」の7つを展示する。各映像空間は3分〜10分程度で、撮影OK。各空間には小学生向けのわかりやすい解説も用意されている。
世界から絶賛される美しき「ジャパン・ブルー」
「藍」
最初の映像空間は「藍」。北斎や広重らの作品によく見られる藍色の正体はヨーロッパから渡来した人工顔料「ベロ藍」で、透明感のある鮮やかな青が「空」や「水」の多彩な表現を可能にした。その美しさは世界から「ジャパン・ブルー」と呼ばれ、絶賛されている。
壁面を覆うビジョンには、そんな「ジャパン・ブルー」で描かれた作品をもとにした最先端のデジタルアート映像が流れてくる。北斎の「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」、国芳の「宮本武蔵の鯨退治」、広重の「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」など、誰もが知っている有名作品が形を変えて立体的に目の前にあらわれる。
「藍」ではベンチに座って鑑賞することも可能
特に「宮本武蔵の鯨退治」で描かれた平面的なクジラがダイナミックに泳ぎ回る様子や、「神奈川沖浪裏」の寄せては返すリアルな水しぶきも圧巻。床にも映像が投影され、没入体験が加速する。驚くべきは映像クオリティの高さ。細部をアップで見ることができるため、水が動く瞬間を捉えた浮世絵師たちの審美眼にも感服した。
室内には江戸時代に刷られた浮世絵や復刻版の浮世絵も展示されている。作品解説と合わせてじっくり楽しんでみよう。
江戸の風景に入り込んだような「眺」
「眺」
続いての部屋は「眺」。名所絵を得意とした広重による「名所江戸百景」、様々な富士山の姿を描いた北斎の「冨嶽三十六景」シリーズを通じて、江戸時代の日本の古き良き風景を眺望し、江戸の営みや文化に浸ることができる。
春夏秋冬の四季はもちろん、朝・夕暮れ・夜といった旅情を誘う風景が音楽に乗って爽快に映し出され、まるでその場を旅したかのように感じられる空間だ。
上方浮世絵の展示ブース
また、同時に大阪にまつわる「上方浮世絵」も展示。北斎が天神祭の様子を描いた「諸国名橋奇覧 摂州天満橋」、歌川國員が桜宮の花見や今橋の景観を捉えた「浪花百景」など、大阪のいきいきとした商人文化や街並みも知ることができる。現在の大阪の街並みと比較してみるのもおもしろいだろう。
日本女性と花々が華やかに咲き誇る「麗」
「麗」
「麗」の部屋に入ると、良い香りが鼻をかすめる。香水ブランド「破天荒」のオードパルファム「魁」が演出で使用されているのだ。浮世絵といえば、女性を描いた「美人画」も好まれたジャンルの一つ。「魁」は歌麿の代表作「櫛を持つ女」の柔らかな色香と気品を香りで表現しているのだという。
「麗」
映像では、歌麿の「婦女人相十品 ポッピンを吹く娘」、「歌撰恋之部 物思恋」、歌川国貞の「日月星ノ内 星」など、カラフルな着物を身に纏った可憐で繊細で艶やかな女性たちが多数登場する。女性たちが目を閉じたり歩いたり、命を吹き込まれたように動き出す様は愛らしく、いつまでも見ていたくなる。色とりどりの花々がビジョンと床一面に舞う様子も華やか。モダンでデザイン性の高い演出も相まって、つい「江戸の女性たちも恋バナやオシャレについて話していたのだろうか」と想いを馳せてしまう可愛らしい空間になっていた。
四季の移り変わりと花鳥風月を味わう「彩」
「彩」
次なる「彩」は空間全体が和室の様相を呈していた。お茶屋さんに置いてある赤い椅子の前には縁側を思わせる木の柵が設置され、横にワイドなパノラマビジョンには障子や丸窓が映る。
ここでは葛飾北斎と歌川広重の花鳥画、風景画をメインに、日本の豊かな四季とそこに息づく動植物たちを幻想的な映像表現で展開した。線画から立体的に色が乗り、四季の風景と生命が宿っていく様子は実に繊細で儚く美しく、長時間見入ってしまうほどだった。ただただうつろいゆく季節の風景、自然の風物……。それらを愛でた当時の人々の視点を追体験する感覚になる。
武者たちが躍動する「豪」、名瀑を鑑賞できる「瀧」
「豪」
「豪」では、武者絵をダイナミックな音と炎や雷の映像で表現した。国芳の「通俗水滸傳豪傑百八人之壹人・浪裡白跳張順」、「南総里見八犬伝」の一場面を描いた「芳流閣之図」など力強いポーズや表情、大胆な構図で躍動する武士や名将らが勢揃い。ぎょろりと目を動かして、大迫力で鑑賞者を取り囲む。国芳の「相馬の古内裏」の巨大骸骨もインパクト大で、時折、歌川広重「名所江戸百景 深川洲崎十万坪」に有名な大鷹が出てくるのもおもしろいポイントだった。
「瀧」
次の「瀧」では、北斎の意欲作「諸国瀧廻り」を中心に、数々の名瀑を音とスクリーンに映した映像で魅せる。縦長の構図を活かして滝の落差を強調しつつ、滝見を楽しむ人々や川で休息をとる馬などをユーモラスに描く北斎の画力や観察力にもハッとさせられた。
刻々と表情を変える富士山が鮮やかな「雅」
「雅」
最後の映像空間は「雅」。まず部屋の真ん中に鎮座する富士山型の真っ白なオブジェに驚かされる。富士山に投影されるのは、北斎の「冨嶽三十六景」などもありながら、当時江戸庶民から圧倒的な人気を誇った「江戸ポップカルチャー・浮世絵」の存在感を示す鮮やかでポップな作品たち。雨が降ったり、晴れたり、雲がかかったり……。刻々と表情を変える富士山の荘厳さを感じるのはもちろん、猫や役者、花など、周りを彩る浮世絵のモチーフを見ていると、心が弾むような気持ちになる。
この部屋では演出として「破天荒」のオードパルファム「花火」の香りが使われていた。「花火」は安藤広重「名所江戸百景 両国花火」に描かれた幻想的な風景から、現代の浅草の情景を映し出す香りとなっているとのことで、より没入できる空間が醸成されていた。写真映えも抜群の「雅」、ぜひたっぷりと堪能してほしい。
グッズやカフェコラボメニューも充実
ミュージアムショップではオリジナルグッズをはじめ、浮世絵の関連グッズを多数販売。同展のSNSアカウントをフォローするとステッカーがもらえるというキャンペーンも開催中だ。
手前:浮世絵ラテ、奥:UKIYO マンゴーグリーンティー-眺-
また、会期中は会場の隣にある「CAFE Lab.」にてコラボレーションメニューが登場。神奈川沖浪裏、美人画、写楽大首絵、がしゃどくろ、猫づくし、てるてる坊主の6種の浮世絵がなめらかな泡の上に浮かび上がる本格カフェラテ「浮世絵ラテ」(税込990円)や、抹茶とマンゴーの組み合わせが新鮮な「UKIYO マンゴーグリーンティー-眺-」(テイクアウト税込1,296円/イートイン税込1,320円)など展覧会の余韻を五感で堪能できるドリンクとスイーツをいただくことができる。
全世代が楽しめるエンタメ展覧会
会場内は全て写真・動画の撮影が可能。子どもから大人までエンタメ感覚で楽しめる内容となっている。浮世絵や江戸の文化が好きな人、興味がある人は一度訪れてほしい。
取材・文=久保田瑛理 撮影=川井美波(SPICE編集部)
イベント情報
開催期間:2026年1月17日~3月14日
開催時間:10:00〜20:00(最終⼊場19:30)
大人:2,300円/子ども(4歳以上中学生以下):1,000円/学生(高・大・専門):1,600円
開催場所:グランフロント大阪北館 ナレッジキャピタル イベントラボ
主催者:動き出す浮世絵展 OSAKA 実⾏委員会
https://www.ukiyoeimmersiveart.com/osaka