「愚かなことした」末期がん宣告で気付いた命の尊さと罪の重さ 体重20キロ減で裁判を待つ被告、遺族の複雑な心境

2022年7月18日 06時00分 有料会員限定記事
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名古屋拘置所で面会に応じた松井被告。逮捕時と比べ約20キロ体重が落ち、身体はやせ細っていた(イラスト・鷹野健)

 名古屋拘置所(名古屋市東区)に「ステージ4」の末期がんを宣告された被告の男がいる。2017年に名古屋市南区で80代夫婦を殺害して金を奪ったとして強盗殺人罪に問われている松井広志被告(47)。「一時の怒りで愚かなことをした」。自身の最期が迫る中、2人の命を奪った罪と向き合う。遺族らは複雑な思いを抱えつつ、裁判で被告の刑が確定することを求めている。(奥村圭吾)

◆ステージ4で延命治療、被害者の冥福祈る日々

 5月末、名古屋拘置所の面会室。「松井です」。奥の扉から松井被告が松葉づえをついて姿を見せた。体重は約20キロ減り、逮捕時とは別人のように痩せ細っていた。「身体がだるく、食欲もない」。アクリル板越しに、飲み薬の抗がん剤と栄養剤で延命治療をしていると語った。
 膵臓すいぞうがんと分かったのは2月下旬。がんは肝臓にも転移しており、医師からは「手術や放射線治療は不可能。5年間の生存率は数%」と告げられたという。「死刑を宣告されたようなもの。いつまで生きとれるかも分からない」

松井被告が収容されている名古屋拘置所

 事件当時は、生活保護を受給していた。外出先から帰宅した際に会った被害者から「『仕事もしないでいいご身分ね』と言われ、自分の怒りを抑えきれなかった」と、犯行の動機を打ち明けた。
 拘置所では毎日、被害者の顔写真を見て両手を合わせ、命日やお盆には「南無阿弥陀仏」と唱えた。遺族への謝罪の思いを便せん5枚につづったこともあったが、「気持ちを逆なでするかもしれない」と手紙は出せなかった。
 今は、無事に明日を迎えられるかも分からず「命ははかなく、尊いもの」と感じるようになった。「あのとき、自分の怒りの気持ちを静める理性さえあれば…」。松井被告は目に涙を浮かべ声を震わせた。「でも、もう戻れないし、2人は生き返らない。だから一生罪を背負い、冥福を祈り続けるしかないです」

◆「裁判は終えられる?」「健康でなければ償えない」

 19年3月の一審名古屋地裁判決は強盗殺人罪ではなく殺人と窃盗が成立すると判断し、無期懲役(求刑死刑)を言い渡した。20年1月の二審名古屋高裁判決は強盗殺人罪を認めなかった一...

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