⚠️
このページは 新デザイン に変更中です。表示や操作が旧ページと異なる場合があります。
風の死んだ、むっとするほど静かな夕暮
林房雄 / 恐怖の花(双生真珠) amazon関連カテ無風・風がない
風が死んだように凪ぎ、帆が全く役に立たない
平岩 弓枝 / 風の墓標 amazon関連カテ無風・風がない
水の辺に立枯れてゐる蓬の葉を、ゆする程の風もない。
......相違ない。――これが、利仁と五位との一行である事は、わざわざ、ここに断るまでもない話であらう。 冬とは云ひながら、物静に晴れた日で、白けた河原の石の間、潺湲たる水の辺に立枯れてゐる蓬の葉を、ゆする程の風もない。川に臨んだ背の低い柳は、葉のない枝に飴の如く滑かな日の光りをうけて、梢にゐる鶺鴒の尾を動かすのさへ、鮮かに、それと、影を街道に落してゐる。東山の暗い緑の上に、霜......
芥川龍之介 / 芋粥 青空文庫関連カテ無風・風がない
激しい風は、もうぴったり納まって、ところどころ屑や葉を吹き溜めた箇所だけに、狼藉の痕を残している。
かの女は、一足さきに玄関まえの庭に出て、主人逸作の出て来るのを待ち受けていた。 夕食ごろから静まりかけていた春のならいの激しい風は、もうぴったり納まって、ところどころ屑や葉を吹き溜めた箇所だけに、狼藉の痕を残している。十坪程の表庭の草木は、硝子箱の中の標本のように、くっきり茎目立って、一きわ明るい日暮れ前の光線に、形を截り出されている。 「まるで真空のような夕方だ」 それは夜の九時過ぎまでも明るい欧州の夏の夕暮に似......
風もなく蒸暑い夜だった。
......った。 「少しお雛妓マニヤにかかったね」 苦笑しながら逸作はそう言ったが、わたくしが近頃、歌も詠めずに鬱しているのを知ってるものだから、庇ってついて来て呉れた。 風もなく蒸暑い夜だった。わたくしたち二人と雛妓はオレンジエードをジョッキーで取り寄せたものを飲みながら頻りに扇風器に当った。逸作がまた、おまえのうちのお茶ひき連を聘んでやろうかというと......
風がやんで、空一面をおおった薄い雲が、月の輪郭をかすませ
......はない。 庄兵衛は不思議に思った。そして舟に乗ってからも、単に役目の表で見張っているばかりでなく、絶えず喜助の挙動に、細かい注意をしていた。 その日は暮れ方から風がやんで、空一面をおおった薄い雲が、月の輪郭をかすませ、ようよう近寄って来る夏の温かさが、両岸の土からも、川床の土からも、もやになって立ちのぼるかと思われる夜であった。下京の町を離れて、加茂川を横ぎったころからは、......
珍しく風のない静かな晩だった。そんな夜は火事もなかった。
......しかしこんな考えは孤独にするな」 「俺は君がそのうちに転地でもするような気になるといいと思うな。正月には帰れと言って来ても帰らないつもりか」 「帰らないつもりだ」 珍しく風のない静かな晩だった。そんな夜は火事もなかった。二人が話をしていると、戸外にはときどき小さい呼子のような声のものが鳴いた。 十一時になって折田は帰って行った。帰るきわに彼は紙入のなかから乗車割引券を二枚、 「学......
梶井基次郎 / 冬の日 青空文庫関連カテ無風・風がない
氷屋の旗がびくともしない。
......) 爽やかな天気だ。まばゆいばかりの緑の十二社。池のまわりを裸馬をつれた男が通っている。馬がびろうどのような汗をかいている。しいんしいんと蝉が鳴きたてている。 氷屋の旗がびくともしない。 オッカサンも私も背中に雑貨を背負って歩いている。全く暑い。東京は暑いところだ。 新宿までの電車賃をけんやくして、鳴子坂の三好野で焼団子を五串買ってたべる。お茶......
風なんてぴくりとも吹いてはいなかった
......に躍っていた。 風は僕の知らないあいだに少しずつ勢いを増していたようだった。というのは朝──正確に言うと午前十時四十八分──洗濯ものをベランダに干したときには、風なんてぴくりとも吹いてはいなかったからだ。そのことについて僕は溶鉱炉のふたにも似た頑丈で確実な記憶を有している。そのとき僕は「こんな風のない日には洗濯ものをピンチでとめる必要もないな」とふと思っ......
村上春樹 / ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ無風・風がない
空にはいくつか小さな雲が浮かんでいたが、それらはまるで中世の銅版画の背景に描きこまれた雲のように鮮明で簡潔なかたちをとっていた。目につく何もかもが見事にくっきりとしているせいで、僕自身の肉体がいかにも茫洋としてとりとめのない存在であるように感じられた。
......た影は僕の白いシャツの上に素速く這って、それからまたもとの地表に戻った。 あたりには物音ひとつなく、草の葉が日の光を浴びて呼吸する音までが聞こえてきそうだった。空にはいくつか小さな雲が浮かんでいたが、それらはまるで中世の銅版画の背景に描きこまれた雲のように鮮明で簡潔なかたちをとっていた。目につく何もかもが見事にくっきりとしているせいで、僕自身の肉体がいかにも茫洋としてとりとめのない存在であるように感じられた。そしてひどく暑い。 僕はTシャツに薄手の綿のズボンにテニス・シューズという格好だったが、それでも日なたを長く歩いていると、わきの下や胸のくぼみにじっとりと汗がに......
村上春樹 / ねじまき鳥と火曜日の女たち「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ雲無風・風がない
ぼくらの前には池が広がっていた。風はない。水面に落ちた木の葉は、そこにぴたりと張りつけられたみたいなかっこうで浮かんでいた。
......な意味でだよ」とぼくは言った。「ほんとに犬を殺すわけじゃない」 ぼくらはいつものように井の頭公園のベンチに並んで座っていた。すみれのいちばん好きなベンチだった。ぼくらの前には池が広がっていた。風はない。水面に落ちた木の葉は、そこにぴたりと張りつけられたみたいなかっこうで浮かんでいた。少し離れたところで誰かが焚き火をしていた。空気には終わりかけた秋の匂いが混じり、遠くの音がいやにきれいに聞こえた。「君に必要なのはおそらく時間と経験なんだ。ぼく......
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon関連カテ無風・風がない
風が 凪いで、迎え火の煙が庭先にわだかまった。
......、理不尽だとちえ子は思った。たとえば遠縁の誰かひとりでもいい。自分の正義を代弁してくれる人間がいたならば、仮に結果は同じになろうともどれほど心強いことだろう。 風が凪いで、迎え火の煙が庭先にわだかまった。目を刺されたふうをして、ちえ子はハンカチで瞼を押さえた。泣き顔を見られたら負けだ。呻き声を奥歯で噛み殺すと、腰が摧けた。ちえ子は迎え火のかたわらに蹲った。「ちい......
浅田次郎 / うらぼんえ「鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)」に収録 amazon関連カテけむり無風・風がない