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吹きつけて来る風に面と向かうと、鋭い刃物を当てられたように痛い
とてつもなく大きな黒い旗が何本も頭の上ではためいているように、真っ黒な空を猛烈に風が吹き鳴らしている
顔を向けられないほどの風が激しく吹き荒ぶ
関連カテ強風・暴風
風がガラス戸をガタンガタンと叩く
関連カテ強風・暴風
西風が朝から一日青い常緑樹の葉を泥の中へちぎって撒布(まきちら)すほど拭き募る
歳末大売出しの広告が吹きちぎれるほど風が強く吹く
高樹 のぶ子 / その細き道 amazon関連カテ強風・暴風
まっすぐに立って歩くのがしんどいほどの強風
関連カテ強風・暴風
外ではほんとうにひどく風が吹いて、林はまるでほえるよう
......どどう どっどど どどうど どどうど どどう 先ごろ、三郎から聞いたばかりのあの歌を一郎は夢の中でまたきいたのです。 びっくりしてはね起きて見ると、外ではほんとうにひどく風が吹いて、林はまるでほえるよう、あけがた近くの青ぐろいうすあかりが、障子や棚の上のちょうちん箱や、家じゅういっぱいでした。一郎はすばやく帯をして、そして下駄をはいて土間をおり、馬屋の前を通っ......
宮沢賢治 / 風の又三郎 青空文庫関連カテ強風・暴風
強風で帽子が飛ばされそうになる
関連カテ強風・暴風
風がもうまるできちがひのやうに吹いて来ました。
......雪の中に倒れてしまひました。 楢夫はひどく泣きだしました。 「泣ぐな。雪はれるうぢ此処に居るべし泣ぐな。」一郎はしっかりと楢夫を抱いて岩の下に立って云ひました。 風がもうまるできちがひのやうに吹いて来ました。いきもつけず二人はどんどん雪をかぶりました。 「わがなぃ。わがなぃ。」楢夫が泣いて云ひました。その声もまるでちぎるやうに風が持って行ってしまひました。一郎は毛布......
二本のマストは釣竿のようにたわんで、ビュウビュウ泣き出した。
......しの震動を伴ってドッ、ドッ、ドッ……と響いていた。時々波の背に乗ると、スクリュが空廻りをして、翼で水の表面をたたきつけた。 風は益々強くなってくるばかりだった。二本のマストは釣竿のようにたわんで、ビュウビュウ泣き出した。波は丸太棒の上でも一またぎする位の無雑作で、船の片側から他の側へ暴力団のようにあばれ込んできて、流れ出て行った。その瞬間、出口がザアーと滝になった。 見る見る......
トタン屋根が飛んできそうな風の強い日
関連カテ強風・暴風
底力のこもった鈍い空気が、音もなく重苦しく家の外壁に肩をあてがってうんともたれかかるのが、畳の上にすわっていてもなんとなく感じられた。
......に、夕やみはどんどん夜の暗さに代わって、窓ガラスのむこうは雪と闇とのぼんやりした明暗になってしまった。自然は何かに気を障えだしたように、夜とともに荒れ始めていた。底力のこもった鈍い空気が、音もなく重苦しく家の外壁に肩をあてがってうんともたれかかるのが、畳の上にすわっていてもなんとなく感じられた。自然が粉雪をあおりたてて、所きらわずたたきつけながら、のたうち回ってうめき叫ぶその物すごい気配はもう迫っていた。私は窓ガラスに白もめんのカーテンを引いた。自然の......
有島武郎 / 生まれいずる悩み 青空文庫関連カテ強風・暴風
吹き始めた暴風は一秒ごとに募るばかり
......範船からすぐ引き上げろという信号がかかったので、今までも気づかいながら仕事を続けていた漁船は、打ち込み打ち込む波濤と戦いながら配縄をたくし上げにかかったけれども、吹き始めた暴風は一秒ごとに募るばかりで、船頭はやむなく配縄を切って捨てさせなければならなくなった。 「またはあ銭こ海さ捨てるだ」 と君の父上は心から嘆息してつぶやきながら君に命じて配縄を切ってしま......
有島武郎 / 生まれいずる悩み 青空文庫関連カテ強風・暴風
どう吹こうとためらっていたような疾風がやがてしっかり方向を定める
......物すごくも心強くも響いて来る。 「おも舵っ」 「右にかわすだってえば」 「右だ‥‥右だぞっ」 「帆綱をしめろやっ」 「友船は見えねえかよう、いたらくっつけやーい」 どう吹こうとためらっていたような疾風がやがてしっかり方向を定めると、これまでただあてもなく立ち騒いでいたらしく見える三角波は、だんだんと丘陵のような紆濤に変わって行った。言葉どおりに水平に吹雪く雪の中を、後ろのほうから、見上......
有島武郎 / 生まれいずる悩み 青空文庫関連カテ強風・暴風
外は春の嵐のような、あたたかい風がごうごう吹いていた。夜景も揺れるようだ。
...... 雄一も手伝ってくれた。彼は今夜はひまらしい。これも気づいたことだが、彼はひまがとても嫌いなのだ。 透明にしんとした時間が、ペンの音と共に一滴一滴落ちてゆく。 外は春の嵐のような、あたたかい風がごうごう吹いていた。夜景も揺れるようだ。私はしみじみした気持ちで友人たちの名を綴った。宗太郎は思わずリストからはずして、しまった。風が、強い。木や電線の揺れる音が聞こえてくるようだ。目を閉じて、おりた......
吉本 ばなな / キッチン「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon関連カテ強風・暴風
灌木の類は枝先を地につけんばかりに吹きなびいて、枯れ葉が渦のようにばらばらと飛び回っていた。
......れるのもかまわず空を仰いで見た。漆を流したような雲で固くとざされた雲の中に、漆よりも色濃くむらむらと立ち騒いでいるのは古い杉の木立ちだった。花壇らしい竹垣の中の灌木の類は枝先を地につけんばかりに吹きなびいて、枯れ葉が渦のようにばらばらと飛び回っていた。葉子はわれにもなくそこにべったりすわり込んでしまいたくなった。 「おい早くはいらんかよ、ぬれてしまうじゃないか」 倉地がランプの灯をかばいつつ家の中からどなるのが......
八方を吹き廻す風の荒々しい、唸り
......足がすくんで動けないのだ。市からはそういう天候だと、村まで有名な風当りの強い街道を冒して来る俥夫などは一人もなかった。 帰途には幸い風だけになった。真暗な夜道の八方を吹き廻す風の荒々しい、唸りだけ聞える。素子が幾分不安そうに前の俥の中から、 「――ひどいな――よっぽどあるんですか、まだ」 という声がした。 「もうあと三分の一」 ゆっくり力を入れ大きい声で明......
思わず外套の襟を立てて肩をすくめるような気難かしい風が荒々しく市街を吹きまくった。
......が見えた。勤め人や労働者などは、みな同じ鋪道でもきららかに日の照る側ばかりを選んで往来している。午後が短く、夕暮が灰色に侘しくなって来た。夜更けの芝居帰りなど、思わず外套の襟を立てて肩をすくめるような気難かしい風が荒々しく市街を吹きまくった。夏以降、一九一四年からの欧州戦争の終結が目に見えて迫ってきていた。 十一月七日の午後、伸子は珍しく朝からホテルに引籠っていた。 彼女は、晴れやかな昼間の光線に喜......
やや風が吹き出して、河の天地は晒し木綿の滝津瀬のように、白瀾濁化し、
......いた。私は小店員の去ったあと、また河の雪を眺めていた。 水は少し動きかけて、退き始めると見える。雪まだらな船が二三艘通って、筏師も筏へ下りて、纜を解き出した。 やや風が吹き出して、河の天地は晒し木綿の滝津瀬のように、白瀾濁化し、ときどき硝子障子の一所へ向けて吹雪の塊りを投げつける。同時に、形がない生きものが押すように、障子はがたがたと鳴る。だが、その生きものは、硝子板に戸惑って別に入口......
激しい風は、もうぴったり納まって、ところどころ屑や葉を吹き溜めた箇所だけに、狼藉の痕を残している。
かの女は、一足さきに玄関まえの庭に出て、主人逸作の出て来るのを待ち受けていた。 夕食ごろから静まりかけていた春のならいの激しい風は、もうぴったり納まって、ところどころ屑や葉を吹き溜めた箇所だけに、狼藉の痕を残している。十坪程の表庭の草木は、硝子箱の中の標本のように、くっきり茎目立って、一きわ明るい日暮れ前の光線に、形を截り出されている。 「まるで真空のような夕方だ」 それは夜の九時過ぎまでも明るい欧州の夏の夕暮に似......
風が、山をうごかしてきた。喬木の魔形が雲のはやい空に揺れて、唸っている。
......を拾った。読むとすぐ、裂いて、袂に突っこみながら、 「ああ、喉が渇いた」 と、まだ幾分か、宿酔の眼まいを感じるらしく、ふら、ふら、と御手洗の方へあるいて行った。 風が、山をうごかしてきた。喬木の魔形が雲のはやい空に揺れて、唸っている。足場の人影は、あわただしく、活溌になって、木ッ葉や、鉋くずが、地に舞った。 「ちょっと伺います。――職人衆、仕事のお手を止めて、恐れ入ります」 仕切帳でも包んであ......
オオ! と叫んでも 風が吹き消して行く
......客室はくたばりかけたどじょう鍋のように ものすごいフットウだ。 しぶきだ雨のようなしぶきだ みはるかす白い空を眺め 十一銭在中の財布を握っていた。 ああバットでも吸いたい オオ! と叫んでも 風が吹き消して行くよ。 白い大空に 私に酢を呑ませた男の顔が あんなに大きく、あんなに大きく ああやっぱり淋しい一人旅だ! 腹の底をゆすぶるように、遠くで蒸汽の音が鳴っている。鉛色によど......
林芙美子 / 新版 放浪記 青空文庫関連カテ強風・暴風
ゆすぶられるような激しい風が吹く。
......さんは立ちあがると、狂人のようにあわただしく梯子段を降りて帰って行ってしまった。――夜更け、島の男の古い手紙を出して読んだ。皆、これが嘘だったのかしらとおもう。ゆすぶられるような激しい風が吹く。詮ずれば、仏ならねどみな寂し。 (三月×日) 花屋の菜の花の金色が、硝子窓から、広い田舎の野原を思い出させてくれた。その花屋の横を折れると、産園××とペンキの板が......
林芙美子 / 新版 放浪記 青空文庫関連カテ強風・暴風
砂まじりの強い風が吹いた。
......と云う店があった。並んで松月と云う店もある。みとれるように綺麗なひとがきどった小さい白まえだれをしてのぞいている。胸まであるエプロンはもう流行らないのかしら。 砂まじりの強い風が吹いた。 四丁目で、コック風な男が、通りすがりの人に広告マッチを一つずつくれている。私も貰った。後がえりして二つも貰った。 ものを書いて金にしようなぞと考えた事が、まる......
(樹木が)まるで痒みに耐えかねる犬のようにその身をくねらせ
......パートの窓をぜんぶきちんと閉めてまわった。窓をぜんぶ閉めてしまうと、風の音はもう殆んど聞こえなくなった。窓の外では無音のうちに樹木が──ヒマラヤ杉と栗の木だ──まるで痒みに耐えかねる犬のようにその身をくねらせ、雲のかけらが目つきの悪い密使のように大急ぎで空をかけぬけ、向いのアパートのベランダでは何枚かのシャツが置き去りにされた孤児のようにビニールのロープにぐるぐると......
村上春樹 / ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ強風・暴風風を受ける
アパートのベランダでは何枚かのシャツが置き去りにされた孤児のようにビニールのロープにぐるぐると巻きついてしがみついていた。
......無音のうちに樹木が──ヒマラヤ杉と栗の木だ──まるで痒みに耐えかねる犬のようにその身をくねらせ、雲のかけらが目つきの悪い密使のように大急ぎで空をかけぬけ、向いのアパートのベランダでは何枚かのシャツが置き去りにされた孤児のようにビニールのロープにぐるぐると巻きついてしがみついていた。 まるで嵐だな、と僕は思った。 でも新聞を開いて天気図をにらんでみても、どこにも台風のしるしなんてない。降水確率はみごとにゼロ・パーセントときている。天気図で見......
村上春樹 / ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ洗濯物強風・暴風風を受けてなびく
じっと耳を澄ましているとほんのわずかの風の切れめから女の声らしきものがちらりと聞こえたような気がしたが、それもあるいは僕の錯覚かもしれなかった。
......ていた。「もしもし」と僕は言ってみたが、僕の声は圧倒的な歴史の怒濤の中に空しく吸いこまれていった。「もしもし」 と僕は大声でどなってみたが、結果は同じだった。 じっと耳を澄ましているとほんのわずかの風の切れめから女の声らしきものがちらりと聞こえたような気がしたが、それもあるいは僕の錯覚かもしれなかった。とにかく風の勢いが激しすぎるのだ。そしてたぶんバッファローの数が減りすぎたのだ。 僕はしばらく何も言わずに受話器にじっと耳をあてていた。耳が受話器にはりついてと......
ぺらぺらとした細長いブリキの看板は肛門性愛の愛好者のようにそのひ弱な 脊椎 をのけぞらせていた。
......のレコードをつづけて聴いた。 窓の外をときどきいろんな物体が飛び去っていった。白いシーツが草の根を煮たてている呪術師のような格好で東から西に向って飛んでいった。ぺらぺらとした細長いブリキの看板は肛門性愛の愛好者のようにそのひ弱な脊椎をのけぞらせていた。 僕がショスタコヴィッチのチェロ・コンチェルトを聴きながらそんな窓の外の風景を眺めていると、また電話のベルが鳴った。電話のとなりの目覚まし時計は三時四十八分を指......
村上春樹 / ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ強風・暴風のけぞる・反り返る風を受ける
(強い風が)日々の爆発の黒煙を、清掃員のような馴れた面持ちで片づけてしまう。が、規模が大きかったのか、今上がっている煙は、容易には絶えない。誰かが死の黒いインクを、地の底からこの世界に逆さまに垂らし続けているかのようだった。
......い町だった。それも、東京のように、高層ビルにぶつかって癇が立ったような風とは違い、荒涼とした無人の土地を吹き抜けてきた、乾いた大波のような風だった。 その風が、日々の爆発の黒煙を、清掃員のような馴れた面持ちで片づけてしまう。が、規模が大きかったのか、今上がっている煙は、容易には絶えない。誰かが死の黒いインクを、地の底からこの世界に逆さまに垂らし続けているかのようだった。「──ダイジョブ?」 洋子は、振り返って傍らを見上げた。大きな傷跡のある頰に栗色の無精髭が伸びたフィリップがデスクの傍に立っている。こちらの精神状態を見極めよう......
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 amazon関連カテけむり強風・暴風
看板はがたがた音を立てて揺れ、若葉に 彩られた枝も音を立ててずらりとなびいていた。歩道をゆく人々はみな、ごうごう吹き荒れる風に顔をしかめたり、髪を押さえたりしていて、やたら落ち着かなかった。青い空だけがじっと動かずにそういう世間を見ていた。体重が軽い私も、風に押されて飛んでゆきそうなので、必死だった。
...... その日は春を感じさせる生温かい陽気で、とても風が強かった。 すかっと晴れた真昼の街を、突風が吹き荒れていた。私は学校帰りでひとり、並木道の大通りを歩いていた。看板はがたがた音を立てて揺れ、若葉に彩られた枝も音を立ててずらりとなびいていた。歩道をゆく人々はみな、ごうごう吹き荒れる風に顔をしかめたり、髪を押さえたりしていて、やたら落ち着かなかった。青い空だけがじっと動かずにそういう世間を見ていた。体重が軽い私も、風に押されて飛んでゆきそうなので、必死だった。そうして戦うように苦労して、スカートを押さえながらもふと前方を見ると、まるで風など全然吹いていないかのようにただひとり平然と歩いてくる、しかめ面の大男を見つけた......
吉本ばなな / うたかた「うたかた/サンクチュアリ」に収録 amazon関連カテ強風・暴風
(強風吹かれながらの電話)大きな声で聞き返す。ビルの外側にある非常階段の踊り場は、とても風が強い。きちんとつかまえていないと、自分の声も碧の声も全部ばらばらに砕けてしまう気がした。《…略…》声が、電話口に届く前に、風にさらわれていく。
......不良って聞いたけど」 愛子は、非常階段のドアを開ける。なんとなく、事務所の誰にもこの会話を聞かれないほうがいいような気がした。【ごめんね、愛子】「え? 何?」 大きな声で聞き返す。ビルの外側にある非常階段の踊り場は、とても風が強い。きちんとつかまえていないと、自分の声も碧の声も全部ばらばらに砕けてしまう気がした。【ドラマで、大切な人と別れるシーン撮ってて……そしたらもう、会いたくなっちゃって】「何? 何言ってるの?」 本当は、きちんと聞き取れていた。だけど愛子は、何度も......<中略>......ではないということはわかった。「今、駅だよね? 何駅?」【私、今でもはっきり覚えてるんだよ。何回も何回も思い出してたから】「ねえ、どこ? 行くから、そこまで」 声が、電話口に届く前に、風にさらわれていく。【事務所に入ったときは、アイドルになるつもりじゃなかったの、私】 愛子は、閉めたドアにもたれると、携帯を持ち直した。【いつかは女優にって思ってたんだけど……そし......
(ビルの屋上で)無情にも風が強くなる。ビルがぐらりと傾斜した。気のせいだ。ビルは傾かない。身体が風に煽られただけだ。
......すくむのをこらえ、ぐっと両足を踏ん張る。目を上げ、空を見る。まだ、だいじょうぶだ。でも、風が吹いている。いつまでもつかわからない。誰か、早く助けてくれないか。 無情にも風が強くなる。ビルがぐらりと傾斜した。気のせいだ。ビルは傾かない。身体が風に煽られただけだ。疲れてきている。足下がふらつく。もうだめかもしれない。 踏ん張って、こらえる。下を見ないようにして、どうにかやり過ごす。また風が吹く。身体が揺れ、ビルがさらに傾......
肌寒い北風がヒースの薄桃色の花を天に吹きあげる
......あるいはまた城壁の鬱蒼たる繁みの陰に無気味な生き物がそっと身をうずくまらせ息を殺して潜んでいた。世界は昏く、どこへ行っても人と悪魔が共存している時代であった。 肌寒い北風がヒースの薄桃色の花を天に吹きあげる頃、二人のイングランド貴族がヨーク公の城館に訪ねて来た。 一人は長身瘦軀、眼は深く落ち凹んで鈍い光を放ち、傲慢に折れ曲がった鷲鼻は、薄い唇とあいまって彼の狷介な......
地表からすべての物体をなぎはらおうとするかのように、激しい風が吹く。
......的にいえばミコノス島と東京はほぼ同じ緯度上に存在している。要するに、誰がなんと言おうが思おうが、冬はやはり寒いのだ。そしてミコノスは非常に風の強いところである。地表からすべての物体をなぎはらおうとするかのように、激しい風が吹く。冷たく湿った風である。一度吹き始めると、強風は最低三日は続く。朝から晩まで、風は一刻の休みもなく吹き続ける。そして一晩中狂おしい音をたててあばれまわり、灌木をな......
村上春樹「遠い太鼓 (講談社文庫)」に収録 amazon関連カテ強風・暴風
(強い風で)緩んだドアノブがかたかたかたかたと音を立てつづけている。ひどく疲弊したドアノブだ。まるで落ちぶれはてたリア王のようだ。
......島を出ていこうとしている。僕は空気のむっとしたオリンピック航空のオフィスで、空港行きのバスを待っている。外ではまた風が激しくなっている。飛行機は出るだろうか? 緩んだドアノブがかたかたかたかたと音を立てつづけている。ひどく疲弊したドアノブだ。まるで落ちぶれはてたリア王のようだ。 さらばミコノス島。 僕は小説の原稿をいれたスーツケースにちらっと目をやる。それから窓の向こうの、白い波の立つ港をぼんやりと眺める。鷗が暗い空を切り裂くようにま......