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暁の爽やかな薄明が東の空に星々のまどろみを消し去っていく
けぶったような青白い夜明けの光が部屋の中に入ってくる
関連カテ夜明け
くっきりとした朝の光がまるでテーブルクロスでも引き払うように闇を消し去るころ
......で橋を焼いたんじゃないか、と鼠は思う。お前が自分で壁を塗り、中に自分を閉じ込めたんじゃないか……。 鼠は灯台を眺める。空が明け、海がグレーに色づき始める。そしてくっきりとした朝の光がまるでテーブルクロスでも引き払うように闇を消し去るころ、鼠はベッドに入り、彼の行き場所のない苦しみと共に眠った。 街を出ようという鼠の決心は一時は揺らぎのない確固としたものに思えた。長い時間をかけ、様々な角度から検......
空が不気味な赤みを帯びて明るみ始める
関連カテ夜明け
インクのしみのような太陽がわずかばかりの薄明を地上に投げる
夜明けだ、新しい空気が甘美な果汁のようにかれを蘇生させる。
曇った銀のような薄白い明るみが広がる
関連カテ夜明け
夜が更けるにつれて灯は消え始め、最後には街灯とネオンの灯だけが残った。
......にはこんな格言が書かれていた。「惜しまずに与えるものは、常に与えられるものである。」 僕は夜行バスの切符を買い、待合所のベンチに座ってずっと街の灯を眺めていた。夜が更けるにつれて灯は消え始め、最後には街灯とネオンの灯だけが残った。遠い汽笛が微かな海風を運んでくる。 バスの入口には二人の乗務員が両脇に立って切符と座席番号をチェックしていた。僕が切符を渡すと、彼は「21番のチャイナ」と言った......
夜でも朝でもなく、夢の続きではないが確かな現実とも思えない、夜明けの白っぽい薄明の感覚
関連カテ夜明け
あけがた近くの青ぐろいうすあかり
......先ごろ、三郎から聞いたばかりのあの歌を一郎は夢の中でまたきいたのです。 びっくりしてはね起きて見ると、外ではほんとうにひどく風が吹いて、林はまるでほえるよう、あけがた近くの青ぐろいうすあかりが、障子や棚の上のちょうちん箱や、家じゅういっぱいでした。一郎はすばやく帯をして、そして下駄をはいて土間をおり、馬屋の前を通ってくぐりをあけましたら、風がつめた......
空がいぶし銀のようにぼうっと明るくなる
関連カテ夜明け
忙しく歩く人たちの姿が見える。一日の始まり。世界が目を覚まし、世の中の歯車が回転し始める時間。
......ざいます」 私は次に並んでいた女性客に会釈をする。朝という時間が、この小さな光の箱の中で、正常に動いているのを感じる。 指紋がないように磨かれたガラスの外では、忙しく歩く人たちの姿が見える。一日の始まり。世界が目を覚まし、世の中の歯車が回転し始める時間。その歯車の一つになって廻り続けている自分。私は世界の部品になって、この「朝」という時間の中で回転し続けている。 再びおにぎりを並べに走ろうとした私に、バイトリー......
村田 沙耶香「コンビニ人間」に収録 amazon関連カテ夜明け
夜明けと呼べるだけの明るさが、窓の外にある
関連カテ夜明け
東のそらがぼうっと銀いろになって
......すよ。」と云いました。 「何を生意気な。こんなばかなまねをいつまでしていられるか。もう出て行け。見ろ。夜があけるんじゃないか。」ゴーシュは窓を指さしました。 東のそらがぼうっと銀いろになってそこをまっ黒な雲が北の方へどんどん走っています。 「ではお日さまの出るまでどうぞ。もう一ぺん。ちょっとですから。」 かっこうはまた頭を下げました。 「黙れっ。......
宮沢賢治 / セロ弾きのゴーシュ 青空文庫関連カテ夜明け
閉じられた窓の鎧扉の僅かの隙間から暁の色が白々と流れ込んで、室の中のすべての物を、海底のように青々と透きとおらせております。
......指をさし上げて、頭の上の電燈のスイッチを一ツ……二ツ……三ツ……と切って、最後に四ツ目をパッと消してしまいました。 しかし室内はモトの闇黒には帰りませんでした。閉じられた窓の鎧扉の僅かの隙間から暁の色が白々と流れ込んで、室の中のすべての物を、海底のように青々と透きとおらせております。 ……茫然と、その光りを見つめておりました彼は、やがてその両手の指をわななかせつつ、ピッタリと顔に押当てました。ヨロヨロと背後によろめいて壁に行き当りました。......
明け方の山中の空気は霧で潤み、むせかえる土と木の香りがした。自然はまさにいまの時間に深呼吸をしているんだなと感じる澄んだ空気。自分の吐いた息が霧に溶けて、植物たちの養分になっていくのが想像できる。
......な気分で布団から這い出た。素足で降り立った床がつめたい。こんな朝早くから長野さんに真剣な顔で呼び出されるなんて、一体なにがあったんだろう。 小屋のドアを開けると明け方の山中の空気は霧で潤み、むせかえる土と木の香りがした。自然はまさにいまの時間に深呼吸をしているんだなと感じる澄んだ空気。自分の吐いた息が霧に溶けて、植物たちの養分になっていくのが想像できる。朝つゆの浮いた雑草をふみながら長野さんのうしろをついてゆくと、彼は山小屋の裏へ回った。 たどり着いた場所は本当にただの小屋の裏で、小屋の反対側は木々が生い茂って......
東の空はもうやさしいききょうの花びらのようにあやしい底光りをはじめました。
そらのてっぺんなんかつめたくてつめたくてまるでカチカチのやきをかけた鋼です。 そして星がいっぱいです。けれども東の空はもうやさしいききょうの花びらのようにあやしい底光りをはじめました。 その明け方の空の下、ひるの鳥でもゆかない高いところをするどい霜のかけらが風に流されてサラサラサラサラ南のほうへとんでゆきました。 じつにそのかすかな音が丘の上の一本いちょうの木に聞こえるくらいすみきった......
宮沢賢治 / いちょうの実 青空文庫関連カテ夜明け
そのかすかな音が丘の上の一本いちょうの木に聞こえるくらいすみきった明け方です。
......りをはじめました。 その明け方の空の下、ひるの鳥でもゆかない高いところをするどい霜のかけらが風に流されてサラサラサラサラ南のほうへとんでゆきました。 じつにそのかすかな音が丘の上の一本いちょうの木に聞こえるくらいすみきった明け方です。 いちょうの実はみんないちどに目をさましました。そしてドキッとしたのです。きょうこそはたしかに旅だちの日でした。みんなも前からそう思っていましたし、きのうの夕方......
(ききょうの花びらは朝日の底光りの比喩)東の空のききょうの花びらはもういつかしぼんだように力なくなり、朝の白光りがあらわれはじめました。星が一つずつきえてゆきます。
......あたしなんにもいらないわ。」 「あたしもよ。今までいろいろわがままばっかしいってゆるしてくださいね。」 「あら、あたしこそ。あたしこそだわ。ゆるしてちょうだい。」 東の空のききょうの花びらはもういつかしぼんだように力なくなり、朝の白光りがあらわれはじめました。星が一つずつきえてゆきます。 木のいちばんいちばん高いところにいたふたりのいちょうの男の子がいいました。 「そら、もう明るくなったぞ。うれしいなあ。ぼくはきっと黄金色のお星さまになるんだ......
星がすっかりきえました。東の空は白くもえているようです。
......ならそのときぼくはお客様になっていってもいいだろう。」 「いいともさ。ぼく、国を半分わけてあげるよ。それからおっかさんへは毎日おかしやなんかたくさんあげるんだ。」 星がすっかりきえました。東の空は白くもえているようです。木がにわかにざわざわしました。もう出発に間もないのです。 「ぼく、くつが小さいや。めんどうくさい。はだしでいこう。」 「そんならぼくのとかえよう。ぼくのはすこし......
宮沢賢治 / いちょうの実 青空文庫関連カテ夜明け
東の空が白くもえ、ユラリユラリとゆれはじめました。おっかさんの木はまるで死んだようになってじっと立っています。 とつぜん光のたばが黄金の矢のように一度にとんできました。子どもらはまるでとびあがるくらいかがやきました。
......、どうしてもないわ。ほんとうにわたしどうしましょう。」 「わたしとふたりでいきましょうよ。わたしのをときどきかしてあげるわ。こごえたらいっしょに死にましょうよ。」 東の空が白くもえ、ユラリユラリとゆれはじめました。おっかさんの木はまるで死んだようになってじっと立っています。 とつぜん光のたばが黄金の矢のように一度にとんできました。子どもらはまるでとびあがるくらいかがやきました。 北から氷のようにつめたいすきとおった風がゴーッとふいてきました。 「さよなら、おっかさん。」「さよなら、おっかさん。」子どもらはみんな一度に雨のようにえだ......
もう夜が明けていた。カムサツカの連峰が金紫色に輝いて、海から二、三寸位の高さで、地平線を南に長く走っていた。小波が立って、その一つ一つの面が、朝日を一つ一つうけて、夜明けらしく、寒々と光っていた。――それが入り乱れて砕け、入り交れて砕ける。その度にキラキラ、と光った。鴎の啼声が(何処にいるのか分らずに)声だけしていた。――さわやかに、寒かった。
......達とは親と子なんだ……」 監督が入ってきた。 皆ドマついた
恰好で、ゴソゴソし出した。
空気が
硝子のように冷たくて、
塵一本なく澄んでいた。――二時で、
もう夜が明けていた。カムサツカの連峰が金紫色に輝いて、海から二、三寸位の高さで、地平線を南に長く走っていた。小波が立って、その一つ一つの面が、朝日を一つ一つうけて、夜明けらしく、寒々と光っていた。――それが入り乱れて砕け、入り交れて砕ける。その度にキラキラ、と光った。鴎の啼声が(何処にいるのか分らずに)声だけしていた。――さわやかに、寒かった。荷物にかけてある、油のにじんだズックのカヴァが時々ハタハタとなった。分らないうちに、風が出てきていた。
袢天の袖に、
カガシのように手を通しながら、漁夫が段々を......
(マユミ)マユミの赤い火が燃え移ったみたいに、あたりは少しずつ明るくなっていった。最初は薄青く染まった空気が、ついで朝焼けのオレンジに変わり、やがて透明で清浄な朝が来た。
......れた俺を、注意深く見守っていてくれたんだろう。おかげで、落ち着きを取り戻すことができた。俺は清一さんを振り返り、「もう大丈夫です」とちょっとうなずいてみせた。 マユミの赤い火が燃え移ったみたいに、あたりは少しずつ明るくなっていった。最初は薄青く染まった空気が、ついで朝焼けのオレンジに変わり、やがて透明で清浄な朝が来た。 斜面の途中で、俺は足を止めた。 神去山の森。暗闇のなかでわけもわからず突進していた場所は、とんでもない森だったんだ。 神隠しに遭った山太を探したときにも、その......
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 amazon関連カテ夜明け花
未だほの闇いのに家を出る。
......んで、涙を絞った。どれだけ涙が出たか、隣室の母から夜が明けた様だよと声を掛けられるまで、少しも止まず涙が出た。着たままで寝ていた僕はそのまま起きて顔を洗うや否や、未だほの闇いのに家を出る。夢のように二里の路を走って、太陽がようやく地平線に現われた時分に戸村の家の門前まで来た。この家の竃のある所は庭から正面に見透して見える。朝炊きに麦藁を焚いてパチ......
一番鳥が鳴きわたる時刻
......気予報の信号灯を見やっている。暗い闇の中に、白と赤との二つの火が、夜鳥の目のようにぎらりと光っている。赤と白との二つの球は、危険警戒を標示する信号だ。船を出すには一番鳥が鳴きわたる時刻まで待ってからにしなければならぬ。町のほうは寝しずまって灯一つ見えない。それらのすべてをおおいくるめて凍った雲は幕のように空低くかかっている。音を立てないばかり......
有島武郎 / 生まれいずる悩み 青空文庫関連カテ夜明け
あや目も知れない闇の中から、硫黄が丘の山頂――右肩をそびやかして、左をなで肩にした――が雲の産んだ鬼子のように、空中に現われ出る。鈍い土がまだ振り向きもしないうちに、空はいち早くも暁の光を吸い初めたのだ。
......中から赤子の激しい泣き声が起こる。しばらくしてそれがしずまると、風の生み出す音の高い不思議な沈黙がまた天と地とにみなぎり満ちる。 やや二時間もたったと思うころ、あや目も知れない闇の中から、硫黄が丘の山頂――右肩をそびやかして、左をなで肩にした――が雲の産んだ鬼子のように、空中に現われ出る。鈍い土がまだ振り向きもしないうちに、空はいち早くも暁の光を吸い初めたのだ。 模範船(港内に四五艘あるのだが、船も大きいし、それに老練な漁夫が乗り込んでいて、他の船にかけ引き進退の合図をする)の船頭が頭をあつめて相談をし始める。どこと......
有島武郎 / 生まれいずる悩み 青空文庫関連カテ夜明け
その白い羽根がある瞬間には明るく、ある瞬間には暗く見えだすと、長い北国の夜もようやく明け離れて行こうとするのだ。
......して来て波に腹をなでさすかと思うと、翼を返して高く舞い上がり、ややしばらく風に逆らってじっとこたえてから、思い直したように打ち連れて、小気味よく風に流されて行く。その白い羽根がある瞬間には明るく、ある瞬間には暗く見えだすと、長い北国の夜もようやく明け離れて行こうとするのだ。夜の闇は暗く濃く沖のほうに追いつめられて、東の空には黎明の新しい光が雲を破り始める。物すさまじい朝焼けだ。あやまって海に落ち込んだ悪魔が、肉付きのいい右の肩だけ......
有島武郎 / 生まれいずる悩み 青空文庫関連カテ夜明け
(朝焼け)夜の闇は暗く濃く沖のほうに追いつめられて、東の空には黎明の新しい光が雲を破り始める。
......したように打ち連れて、小気味よく風に流されて行く。その白い羽根がある瞬間には明るく、ある瞬間には暗く見えだすと、長い北国の夜もようやく明け離れて行こうとするのだ。夜の闇は暗く濃く沖のほうに追いつめられて、東の空には黎明の新しい光が雲を破り始める。物すさまじい朝焼けだ。あやまって海に落ち込んだ悪魔が、肉付きのいい右の肩だけを波の上に現わしている、その肩のような雷電峠の絶巓をなでたりたたいたりして叢立ち急ぐ......
有島武郎 / 生まれいずる悩み 青空文庫関連カテ夜明け
叢立ち急ぐ嵐雲は、炉に投げ入れられた紫のような光に燃えて、山ふところの雪までも透明な藤色に染めてしまう。それにしても明け方のこの暖かい光の色に比べて、なんという寒い空の風だ。長い夜のために冷え切った地球は、今そのいちばん冷たい呼吸を呼吸しているのだ。
......破り始める。物すさまじい朝焼けだ。あやまって海に落ち込んだ悪魔が、肉付きのいい右の肩だけを波の上に現わしている、その肩のような雷電峠の絶巓をなでたりたたいたりして叢立ち急ぐ嵐雲は、炉に投げ入れられた紫のような光に燃えて、山ふところの雪までも透明な藤色に染めてしまう。それにしても明け方のこの暖かい光の色に比べて、なんという寒い空の風だ。長い夜のために冷え切った地球は、今そのいちばん冷たい呼吸を呼吸しているのだ。 私は君を忘れてはならない。もう港を出離れて木の葉のように小さくなった船の中で、君は配縄の用意をしながら、恐ろしいまでに荘厳なこの日の序幕をながめているのだ。......
有島武郎 / 生まれいずる悩み 青空文庫関連カテ夜明け
恐ろしいまでに荘厳なこの日の序幕
......た地球は、今そのいちばん冷たい呼吸を呼吸しているのだ。 私は君を忘れてはならない。もう港を出離れて木の葉のように小さくなった船の中で、君は配縄の用意をしながら、恐ろしいまでに荘厳なこの日の序幕をながめているのだ。君の父上は舵座にあぐらをかいて、時々晴雨計を見やりながら、変化のはげしいそのころの天気模様を考えている。海の中から生まれて来たような老漁夫の......
有島武郎 / 生まれいずる悩み 青空文庫関連カテ夜明け
満天の星空の縁が、ほんのわずか白んできたように見える。そろそろ夜明けが近い。
......子なんて」 僕は黙り込む。「車に戻りましょうか」 橋本さんは踵を返して歩きだした。事故の現場から先へは、けっきょく足を進めなかった。 僕も橋本さんのあとを追う。満天の星空の縁が、ほんのわずか白んできたように見える。そろそろ夜明けが近い。風に草がそよぐ、その少し上を、ほの白いものが流れる。霧が出ているのかもしれない。 少し歩いてから、後ろを振り向いた。思いのほか坂の勾配は急だったようで、もう丘の......
重松 清「流星ワゴン (講談社文庫)」に収録 amazon関連カテ夜明け
朝が来ると、闇の魔法は解けて、私たちは黒い世界から白い世界へと引きずり戻されている。
......くて、私はさらにドリンクを飲み込んだ。 塞がれたトンネルの前で、出口はどこにもなかった。私はそれを見つめながら、甘いドリンクが零れ落ちた唇を、手の甲で拭った。 朝が来ると、闇の魔法は解けて、私たちは黒い世界から白い世界へと引きずり戻されている。 私はのっそりとベッドから起き上がり、身支度を始めた。制服を身に着けながら鏡の中の自分を見て、ずっと夜が続けばいいのに、と思った。昼間の世界で光に晒されて生きる......
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 amazon関連カテ夜明け
いくら闇に紛れても、眼鏡で顔を隠しても、黒い世界は終わって、また朝がくれば白い世界に私たちは引きずり出されてしまう。暗闇に紛れていた残酷な現実が、色鮮やかに光の下で晒されてしまう。
......通りになる小さな男の子ではない。子供の頃は身体だけは自由にできたのに、それもできなくなっていく。 私は伊吹の熱に触れられない指を、骨が痛むまで強く握りしめた。 いくら闇に紛れても、眼鏡で顔を隠しても、黒い世界は終わって、また朝がくれば白い世界に私たちは引きずり出されてしまう。暗闇に紛れていた残酷な現実が、色鮮やかに光の下で晒されてしまう。 私はもう伊吹のシャツに手を伸ばせなかった。闇の中で、届かないオレンジ色のパーカーが風に揺れていた。「ごちそうさま」 箸を置き、茶碗を持って立ち上がろうとすると......
眠りの浅い夜を終えて、カーテンの向こうがだんだん光の中へ引きずられ、気が付くと白い世界の中にいる。
......でいる骨がただ、佇んでいた。 私はゆらゆらと、夜の街を歩いた。伊吹とよく歩いた緑道には入らなかった。住宅街から見下ろす緑道は、相変わらず、深い川のようだった。 眠りの浅い夜を終えて、カーテンの向こうがだんだん光の中へ引きずられ、気が付くと白い世界の中にいる。 学校へ行くと、教室では、井上くんが皆を笑わせている。 大嫌いだったこの冗談で、笑ったり、困った顔をしてみせたりする必要がなくなった。私はぼんやりと窓の外を見つ......
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 amazon関連カテ夜明け
羅生門の夜は、まだ明けない。下から見ると、つめたく露を置いた甍や、丹塗りのはげた欄干に、傾きかかった月の光が、いざよいながら、残っている。
......めて行った。兄も黙っていれば、弟も口をきかない。しんとした夜は、ただ馬蹄の響きにこだまをかえして、二人の上の空には涼しい天の川がかかっている。 八 羅生門の夜は、まだ明けない。下から見ると、つめたく露を置いた甍や、丹塗りのはげた欄干に、傾きかかった月の光が、いざよいながら、残っている。が、その門の下は、斜めにつき出した高い檐に、月も風もさえぎられて、むし暑い暗がりが、絶えまなく藪蚊に刺されながら、酸えたようによどんでいる。藤判官の屋敷から、引......