(暗い室内に)窓からは一昔前のポーランド映画みたいにうす暗い光がさしこんでいた
村上春樹 / ノルウェイの森 amazon関連カテ室内に差し込む光
カーテンの隙間からあまく光が差してる
関連カテ室内に差し込む光
ブラインドの細いたくさんの隙間から、明るい陽が縞のように顔の上に落ちる
差し込んだ光の柱は均一で揺らがない。その中の空気が微かに揺れているだけ。
関連カテ室内に差し込む光
地下倉のなかに夕暮は微細な霧のようにしのびこんでくる。
朝の光が差し込んで、部屋の床にほんの少しだけ歪んだ四角い図形を描いた
関連カテ室内に差し込む光
午後の光が徐々に薄らぎ、夕暮れの気配があたりに漂った。最後の日差しが部屋の中を、無音のうちにこっそり移ろっていった。
ズボンもプレスがされていて、そこに窓から差しこんだ黄昏の陽が染みのようにあたっていた。
遠藤 周作 / 影法師 amazon関連カテ室内に差し込む光
ガラス戸から午後の陽光がうらうらと差し込んでくる。
関連カテ室内に差し込む光
暗い部屋の中に、明るい光が平たい板のような形に射し込んできている。雨戸の隙間から射す朝の光だ。
窓から陽射しが射し込んでいて、床には四角い日だまりができている。
関連カテ室内に差し込む光
掃除の行きとどいた朝の郵便局の光線は、海の底のように静かで、平和であった。
水のような夕やみが、ひたひたと水車小屋のなかにみちてきた。
中途半端にしか開かれていない遮光カーテンをそれぞれ左右にきっちり寄せる
太陽が穏やかな光を地上に注いでいた。その光は窓ガラス越しに部屋に射し込んで、二人の足もとに寡黙な日だまりを作り出していた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon関連カテ室内に差し込む光
沈みかけている秋の日を斜めに受けてその一部分が網の目のように透いていた。
真夏の海岸のように陽にさらされた窓辺
吉本 ばなな / 哀しい予感 amazon関連カテ室内に差し込む光
採光窓から降ってくる真夏の陽射しが床タイルにくっきりとした窓枠の影を作っている。
......っていたが、ことによると衝立岩も原因の一つだったか。呼び出し音を耳にしながら、悠木は微かな体の強張りを感じていた。3 地下食堂といっても実際には半地下にあって、採光窓から降ってくる真夏の陽射しが床タイルにくっきりとした窓枠の影を作っている。時間が時間だから、客は悠木と事業局の二人連れだけで、その話し声よりも洗い場の音のほうが耳につく。 販売局は誰も電話に出なかった。真っ昼間に部屋が無人というのも信......
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光
如月の横顔が美しい。窓からの光に縁取られて、パステル画の少年のように見える。幻のようで、作り物のようで美しい。《…略…》どこか現でないものを宿す。
......らなくて……病人だろうが怪我人だろうが、誰か人が中にいるなんて思えなくて……どうしても思えなくて、それで、やっぱどうしても入れなくて……そのまま、帰ってきた」 如月の横顔が美しい。窓からの光に縁取られて、パステル画の少年のように見える。幻のようで、作り物のようで美しい。どんな端正な顔立ちをしていても、お洒落上手でも、大人には絶対もてない美しさだ。どこか現でないものを宿す。 如月はまだ、こんな横顔を所有していたのだ。「帰ってきちまった」 如月の横顔がくしゃりと歪んだ。『面会謝絶』 白いプレートには確かにその四文字が刻み込まれていた......
朝といってももう十時ばかり、日の光は狭い部屋の隅々にまで透明な冬の明るさを投げていた。
......いすぎると腹が立つし、似すぎていると悲しくなる。それだけのことだ。 僕が最後に彼女への電話を受けたのはその冬の終りだった。三月の初め、晴れわたった土曜日の朝だ。朝といってももう十時ばかり、日の光は狭い部屋の隅々にまで透明な冬の明るさを投げていた。僕は頭の中でぼんやりとベルの音を聞きながら、ベッドのわきの窓から見えるキャベツ畑を見下ろしていた。黒い土の上には溶け残った雪が水たまりのようにところどころに白く......
夕陽が途切れ始めた雲を不思議な色あいに変え、その照り返しが部屋の中を同じ色に染めていった。
......。ただそれだけのことだ。 何日も降りつづいた雨は金曜の夕方になって突然上がった。窓から見下ろす街はうんざりするほどの雨水を吸い込み、全身をふくれあがらせていた。夕陽が途切れ始めた雲を不思議な色あいに変え、その照り返しが部屋の中を同じ色に染めていった。 鼠はTシャツの上にウィンドブレーカーをかぶり街に出た。アスファルトの舗道はところどころに静かな水たまりをたたえたまま黒々とどこまでも伸びている。街中に雨上がり......
椅子に腰掛けた。庭から差し込んでくる朝日が、テーブルの下にまで届いて、三人のスリッパの影が床に映っていた。
......たしの学校も義兄の勤めも冬休みに入っていたので、今朝の朝食はのんびりした雰囲気だった。「冬の光でも、寝不足の目にはまぶしいね」 義兄は眼鏡の奥の目を細めながら、椅子に腰掛けた。庭から差し込んでくる朝日が、テーブルの下にまで届いて、三人のスリッパの影が床に映っていた。「昨夜は遅かったんですか」 わたしは尋ねた。義兄はきのう勤め先の歯科医院の忘年会だったが、わたしが眠ってから帰ってきたようだった。「終電には間に合ったよ」 義兄......
小川 洋子「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光
窓は、何も遮るものが無いので、青い青い朝の空の光りが、程近い浪の音と一所に、洪水のように眩しく流れ込んでいる。
......ステキに広い、明るい部屋であった。北と、西と、南の三方に、四ツ宛並んだ十二の窓の中で、北と西の八ツの窓は一面に、濃緑色の松の枝で蔽われているが、南側に並んだ四ツの窓は、何も遮るものが無いので、青い青い朝の空の光りが、程近い浪の音と一所に、洪水のように眩しく流れ込んでいる。その中に並んで突立っている若林博士の、非常に細長いモーニング姿と、チョコナンとした私の制服姿とは、そのままに一種の奇妙な対照をあらわして、何となく現実世界から離......
夢野久作 / ドグラ・マグラ 青空文庫関連カテ室内に差し込む光
(部屋の中にある)それ等のすべてが、清々しい朝の光りの中に、或は眩しく、又はクッキリと照し出されて、大学教授の居室らしい、厳粛な静寂を作っている光景を眺めまわしているうちに、私は自から襟を正したい気持ちになって来た。
......の金縁額面、又、左側には黒い枠に囲まれた大きな引伸し写真の肖像と、カレンダーが懸かっている。その又肖像写真の左側には今一つ、隣りの部屋に通ずるらしい扉が見えるが、それ等のすべてが、清々しい朝の光りの中に、或は眩しく、又はクッキリと照し出されて、大学教授の居室らしい、厳粛な静寂を作っている光景を眺めまわしているうちに、私は自から襟を正したい気持ちになって来た。 事実……私はこの時に、ある崇高なインスピレーションに打たれた感じがした。最前から持っていたような一種の投やりな気持ちや、彼女の運命に対する好奇心なぞいうもの......
明るい秋の朝の光線が、三方の窓から洪水のように流れ込んで、数行に並んだ標本棚の硝子や、塗料のニスや、リノリウムの床に眩しく反射しつつ静まり返っている。
......快濶な、若々しい余韻を持っている事に気が付いたので、ビックリして背後を振り向いた。けれども室の中は隅々までガランとして、鼠一匹見えなかった。 ……不思議だ……。 明るい秋の朝の光線が、三方の窓から洪水のように流れ込んで、数行に並んだ標本棚の硝子や、塗料のニスや、リノリウムの床に眩しく反射しつつ静まり返っている。 ……チチチチチチチ……クリクリクリクリクリクリ……チチ…… という小鳥の群が、松の間を渡る声が聞えるばかり……。 ……おかしいな……と思って、読んでしま......
そのふくらみに朝日が反射し、白い肌が滑らかに光っている。ふたつの胸の間には、青く深い影が湖のようにたまっている。
......つもよりもすこし細い。胸が、奇妙に重い。なんというか、物理的に重いのだ。俺は自分の体に目を落とす。そこには胸の谷間がある。 そこには胸の谷間がある。「……?」 そのふくらみに朝日が反射し、白い肌が滑らかに光っている。ふたつの胸の間には、青く深い影が湖のようにたまっている。 もんでおくか。 俺はすとんとそう思う。りんごが地上に落ちるみたいにほとんど普遍的に自動的に、そう思う。 ………………。 …………。 ……? …! 俺は感動して......
小屋の隅から三本の青い日光の棒が斜めにまっすぐに
一、山小屋 鳥の声があんまりやかましいので一郎は眼をさましました。 もうすっかり夜があけてゐたのです。 小屋の隅から三本の青い日光の棒が斜めにまっすぐに兄弟の頭の上を越して向ふの萱の壁の山刀やはむばきを照らしてゐました。 土間のまん中では榾が赤く燃えてゐました。日光の棒もそのけむりのために青く見え、またそのけむりはいろいろなかたちになってついついとその光の......
烈しい秋の日が、六尺の障子へ一面にあたって
......様子である。 「夜具の中から首を出していると、日暮れが待遠でたまりません。仕方がないから頭からもぐり込んで、眼を眠って待って見ましたが、やはり駄目です。首を出すと烈しい秋の日が、六尺の障子へ一面にあたって、かんかんするには癇癪が起りました。上の方に細長い影がかたまって、時々秋風にゆすれるのが眼につきます」 「何だい、その細長い影と云うのは」 「渋柿の皮を剥いて、......
午後の強い日差しが幻想的なしぶきのようにリノリウムの床に降り注いでいた。
......探すことになるだろう。 僕はエアコンの吹き出し口の前に立って汗を乾かしながら、女の子が持ってきてくれた冷たい麦茶を飲んだ。彼は何も言わず、僕も何も言わなかった。午後の強い日差しが幻想的なしぶきのようにリノリウムの床に降り注いでいた。眼下には公園の緑が広がり、芝生の上に寝転んでのんびりと体を焼いている人々の姿が小さく見えた。相棒はボールペンの先で左の手のひらをつついていた。「離婚したんだって......
ガレージの扉をあけると、中は広々として、板のすきまからさしこんだ日の光が黒い土の上に何本かの平行線をくっきりと描きだしていた。
......長いあいだ使われた形跡のない古い灰皿だった。鼠は煙草を吸わないのだ。僕は手のひらでしばらくフィルターを転がしてみてからもとの場所に捨てた。 重いかんぬきを外してガレージの扉をあけると、中は広々として、板のすきまからさしこんだ日の光が黒い土の上に何本かの平行線をくっきりと描きだしていた。ガソリンと土の匂いがした。 車はトヨタの古いランドクルーザーだった。車体にもタイヤにも泥ひとつついてはいない。ガソリンは満タンに近かった。僕は鼠がいつもキイを隠......
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光
畳に差し込んでいる街灯が、古い畳の上で点滅する蛍光灯と混じっている。
......廊下を進み、勝治の寝ている部屋の障子を開けた。「じいさん、また入院するって? 病院より家のほうがよかやろが?」 障子を開けた途端に、かすかにしものにおいがした。畳に差し込んでいる街灯が、古い畳の上で点滅する蛍光灯と混じっている。「病院に行けば、家に帰りたいって言うし、家に連れてくれば、病院のほうがよかって言うし、ほんと、もうどうにもならんよ、この人は」 房枝がそう言いながら蛍光灯をつけ......
吉田修一「悪人」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光
白い光にまみれた教室
......地いー。祭りのあと、花火するでしょー?」 小川さんや若葉ちゃんのグループが、伊吹たちに声をかける。小川さんが笑いながら伊吹を叩き、その指が伊吹の皮膚に触れる。 白い光にまみれた教室では私の指は、熱気の中で蹲るしかない。暗闇の中でこの手の中に伊吹の温度があったことも、ここでは掻き消されてしまう。 小学生の頃は、ああいうところにいる伊吹を見る......
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光
よく晴れた午後で、風も雲もなく、金色の甘い陽ざしがなにもない私の故郷であった部屋をすかしていた。
......、おかゆを作りますから。 口には出せずに、そう思った。 大切な大切なコップ。 翌日は、もとの家を正式に引き払う日だった。やっと、すべてを片づけた。のろかった。 よく晴れた午後で、風も雲もなく、金色の甘い陽ざしがなにもない私の故郷であった部屋をすかしていた。 のんびりした引っ越しのおわびのため、大家のおじさんを訪ねた。 子供の頃よく入った管理人室で、おじさんの淹れたほうじ茶を飲んで話をした。彼も歳をとったなあ。と私......
吉本 ばなな / キッチン「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光引っ越し
戸板の杉の赤みが鰹節の心のように半透明にまっ赤に光っているので、日が高いのも天気が美しく晴れているのも察せられた。甘ずっぱく立てこもった酒と煙草の余燻の中に、すき間もる光線が、透明に輝く飴色の板となって縦に薄暗さの中を区切っていた。
......性に富んだ熱したその肉をかんだ。 その翌日十一時すぎに葉子は地の底から掘り起こされたように地球の上に目を開いた。倉地はまだ死んだもの同然にいぎたなく眠っていた。戸板の杉の赤みが鰹節の心のように半透明にまっ赤に光っているので、日が高いのも天気が美しく晴れているのも察せられた。甘ずっぱく立てこもった酒と煙草の余燻の中に、すき間もる光線が、透明に輝く飴色の板となって縦に薄暗さの中を区切っていた。いつもならばまっ赤に充血して、精力に充ち満ちて眠りながら働いているように見える倉地も、その朝は目の周囲に死色をさえ注していた。むき出しにした腕には青筋が病的に思......
南側のガラス戸からさしこんだ陽が、座敷の半分まではいっていた。その位置に床がのべてあった。早春の明かるい陽に、床は清潔に輝いてみえた。
......がめて聞き、奥へ取りついだ。「どうぞお上がりくださいまし」 ふたたび現われた老婢は、膝を突いて言った。 三原は奥まった座敷に通された。八畳ぐらいのひろさである。南側のガラス戸からさしこんだ陽が、座敷の半分まではいっていた。その位置に床がのべてあった。早春の明かるい陽に、床は清潔に輝いてみえた。 白い顔の婦人が、その床の上に半身を起こして客を待っていた。老婢が羽織をかけてやっている。羽織の紅を点じた黒っぽい地色が、人物と床に急にアクセントをつけて、妙に......
松本 清張「点と線 (新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光
カーテンから洩れた陽に、埃が渦になって立ち舞っていた。
......たが、彼女の横たわったあとが、汗で淡い色になっていた。 俺はその上に転がった。「暑いから、脱いだら?」 民子は、粘ったような顔で云った。 いいよ、と俺は云った。カーテンから洩れた陽に、埃が渦になって立ち舞っていた。「もう、来ないかと思ったわ」 と云いながら、うちわで俺を煽いだ。来ないことを知ってでもいるような口吻だった。それから、その云い方にも草いきれのような生臭さと、気......
閉め切ってあった部屋には、午後の穏やかな斜光とともに、むっとするいきれがこもっている。
......どうして戦地へなど行く気になったのかと訊きたく思った。伸子に何の説明も与えず、佃は丁寧に挨拶して、ぎごちない足どりで人ごみの間に隠れた。 伸子は部屋に帰った。 閉め切ってあった部屋には、午後の穏やかな斜光とともに、むっとするいきれがこもっている。彼女は窓を広くあけた。そして、帽子をとり、外套を脱ぎ、先ず一休みという心持で、長椅子の上に横たわった。 彼女の両手は組合わされて頭の下にあった。その下にクッショ......
宮本百合子 / 伸子 青空文庫関連カテ室内に差し込む光
西日は、もう畳三分の一ぐらいのところまで、眩く躍りこんでいる。
......で暮すのであった。永い明るい夏の日が何とゆるゆるたつことか。 ある午後、伸子は八畳と六畳との境の開け放した襖によりかかり、ウクレリーを弾いていた。 例によって、西日は、もう畳三分の一ぐらいのところまで、眩く躍りこんでいる。粗末な譜本を膝の前にひろげ、あぐらを組み、伸子は譜と首っぴきで、フラットの多い民謡を稽古していた。 Hao, hae, haae ……ハオ、ハエ、ハアエ……、ボ......
宮本百合子 / 伸子 青空文庫関連カテ室内に差し込む光
うらうらと体も心も包むような光線が、縁側一杯に部屋の中まで射し込んでいた。
......て、 「大分抜けるな」 両手で頭を掻き、ふけを自分のあぐらの上へ落した。
上野には博覧会が開催され、英国
皇儲が来遊されるという、ことの多い三月下旬であった。
うらうらと体も心も包むような光線が、縁側一杯に部屋の中まで射し込んでいた。 じき七十になる佃の老父は、 「同じ日本国中でも違うもんじゃのう。……私があっちを立つ宵は吹雪じゃったに――東京は、はやすっかり春じゃ」 眩ゆそうにその日ざしを眺......
宮本百合子 / 伸子 青空文庫関連カテ室内に差し込む光
西日が小箱の口のように、たった一方に開いた縁側からさしこんで来た。
......きつづけ住みつづけるであろう。左様なら! 不思議な、明るい、暗い子供時代の生活よ、すべて左様なら。 その家は西向きで、崖のとっぽさきに立っていた。午後になると、西日が小箱の口のように、たった一方に開いた縁側からさしこんで来た。力一杯に、西日は部屋の壁際まで照りつけるのだが、それだけ風もよく通ると見え、伸子は大して暑くも感じなかった。こんな小っぽけな家、こんな西日、伸子は珍しい心持で、......
ひとりのときに部屋を貫くように差し込んでくる太陽は嫌いだ。ひとりのあたしに、あたしはひとりだとまんまと思わせるからだ。窓から外を見たりなんかすると、アスファルトでさえ宝石でも紛れ込ませているかのようにきらきらしているように見える。太陽は、ひとりの自分を嫌いになるようにしむけてくる。
......しはとなりでうずうずしている大嶋さんと目が合わないようにしながら仕事を終え、今日、土曜日という二十四時間をまるまる持て余している。 ひとりは嫌いではないけれど、ひとりのときに部屋を貫くように差し込んでくる太陽は嫌いだ。ひとりのあたしに、あたしはひとりだとまんまと思わせるからだ。窓から外を見たりなんかすると、アスファルトでさえ宝石でも紛れ込ませているかのようにきらきらしているように見える。太陽は、ひとりの自分を嫌いになるようにしむけてくる。 ひーちゃんにメールしよっと。ベッドに寝転んだまま携帯のロックを外す。すると、去年の秋、尾崎と観に行った京都のもみじがあたしを出迎えてくれた。左端に映り込んでし......
陽が差込んで、まだつけたままのシャンデリヤの灯影をサフラン色に透き返させ、その光線が染色液体のように部屋中一ぱい漲り溢れている。
......しは……却って気の弱い……女に戻りました」 そして、どうかこれを見て呉れと云って、始めて私をカーテンの内部へ連れ込んだ。 東の河面に向くバルコニーの硝子扉から、陽が差込んで、まだつけたままのシャンデリヤの灯影をサフラン色に透き返させ、その光線が染色液体のように部屋中一ぱい漲り溢れている。床と云わず、四方の壁と云わず、あらゆる反物の布地の上に、染めと織りと繍いと箔と絵羽との模様が、揺れ漂い、濤のように飛沫を散らして逆巻き亘っている。徒らな豪奢のう......
窓から強い朝日に押し込まれて来たように、新吉の眼を痛いほど横暴に刺戟する。
......へ伝わり出した。空は晴れている。昨日自分が張り渡した窓の装飾の綾模様を透して向う側の妾町の忍んだような、さゝやかな装飾と青い空の色と三色旗の鮮やかな色とが二つの窓から強い朝日に押し込まれて来たように、新吉の眼を痛いほど横暴に刺戟する。立たなければよくも見分けられぬが恐らくベッシェール夫人の屋根越しのエッフェル塔も装飾していることだろう。 新吉は此の装飾の下に雑沓の中でカテリイヌを探す自分のひ......
(バスは)窓硝子から間近い両側の商店街の強い燭光を射込まれるので、車室の中の灯りは急にねぼけて見える。その白濁した光線の中を
......の相手が結局誰だか判らないので、口惜しさに今度は身体が痺れて来る。 バスは早瀬を下って、流れへ浮み出た船のように、勢を緩めながら賑やかで平らな道筋を滑って行く。窓硝子から間近い両側の商店街の強い燭光を射込まれるので、車室の中の灯りは急にねぼけて見える。その白濁した光線の中をよろめきながら、Mの学生の三四人は訣れて車を降り、あとの二人だけは、ちょうどあいたかの女の前の席を覘って、遠方の席から座を移して来た。かの女は学生たちをよく見る......
瞳を揶揄するように陽の反射の斑点が、マントルピースの上の肖像画の肩のあたりにきろきろして、かの女の視線をうるさがらしていた。《…略…》そのきろきろする斑点を意固地に見据えて、ついでに肖像画の全貌をも眺め取った。幸い陽の斑点は光度が薄かったので、肖像画の主人公の面影を見て取ることが出来た。
......諦め兼ねた。窓の外の木々の葉の囁きを聴き乍ら、かの女は暫く興醒めた悲しい気持でいた。すると何処かで、「メー」と山羊が風を歓ぶように鳴いた。 さっきから、かの女の瞳を揶揄するように陽の反射の斑点が、マントルピースの上の肖像画の肩のあたりにきろきろして、かの女の視線をうるさがらしていた。窓外の一本太い竹煮草の広葉に当った夕陽から来るものらしかった。かの女はそのきろきろする斑点を意固地に見据えて、ついでに肖像画の全貌をも眺め取った。幸い陽の斑点は光度が薄かったので、肖像画の主人公の面影を見て取ることが出来た。金モールの大礼服をつけた額の高い、鼻が俊敏に秀でている禿齢の紳士であった。フランス髭を両顎近くまで太く捻っているが、規矩男の面立ちにそっくりだった。 かの女はつ......
岡本かの子 / 母子叙情 青空文庫関連カテ室内に差し込む光
夏のたそがれ前の斜陽が小学校の板壁に当って、その屈折した光線が、この世のものならずフォーカスされて窓より入り、微妙な明るさに部屋中を充たした頃から、雛妓は何となく夢幻の浸蝕を感じた
......二人きりで揺蕩と漂い歩く気持をさせられていた。 雛妓ははじめ商売女の得意とも義務ともつかない、しらばくれた態度で姿かたちをわたくしの見検めるままに曝していたが、夏のたそがれ前の斜陽が小学校の板壁に当って、その屈折した光線が、この世のものならずフォーカスされて窓より入り、微妙な明るさに部屋中を充たした頃から、雛妓は何となく夢幻の浸蝕を感じたらしく、態度にもだんだん鯱張った意識を抜いて来て、持って生れた女の便りなさを現して来た。眼はうつろに斜め上方を見ながら謡うような小声で呟き出した。 「奥さまのかの......
(夜、戸を蹴破ると銀世界)眼を射るような白夜の光が、さッと、室内へ冷たい空気をふきこんだ。
......どのことがあろう」
長押の槍へ、手をのばす者、日ごろ、
稽古をしていた、半弓の
弦を鳴らす者――。 「丈八郎! 俺と一緒に働け」 一角は、一枚の雪戸を蹴ってさけんだ。
眼を射るような白夜の光が、さッと、室内へ冷たい空気をふきこんだ。 裏門、表門。――室内へ、庭口へ。 烏のような人数が、どっと、なだれ込んだ。誰が将、誰が
某とも、わかたない。
付人側の十一人、鳥居与右衛門、須藤与一、
左右田孫......
ななめにしいた蒲団の上には、天窓の朝陽がキラキラ輝いていて、埃が縞のようになって私の顔の上へ流れて来る。
......窓の下では、微笑んでもいいでしょう――。 二畳の部屋には、土釜や茶碗や、ボール箱の米櫃や行李や、そうして小さい机が、まるで一生の私の負債のようにがんばっている。ななめにしいた蒲団の上には、天窓の朝陽がキラキラ輝いていて、埃が縞のようになって私の顔の上へ流れて来る。いったい革命とは、どこを吹いている風なのだ……中々うまい言葉を沢山知っている、日本の自由主義者よ。日本の社会主義者は、いったいどんなお伽噺を空想しているのでしょ......
カーテンをめくって、陽の光りを見上げた。
......私はたい子さんと抱きあってねむっていた。二人とも笑いながら背中をむけあう。 「起きなさい。」 「私いくらでも眠りたいのよ……」 たい子さんは白い腕をニュッと出すと、カーテンをめくって、陽の光りを見上げた。――梯子段を上って来る音がしている。たい子さんは無意識に、手を引っこめると、 「寝たふりをしてましょう、うるさいから。」と云った。 私とたいさんは抱きあって寝たふ......
ふっと横の砂壁にちらちらと朝の陽が動いている。幻燈のようなり。
......う返しに結っている。このひとは大島伯鶴というのが好きだとかで、飽きもせずに寄席の話ばかりしている。 宛名を書くのがめんどう臭くなって来る。ぼんやりとしてしまう。ふっと横の砂壁にちらちらと朝の陽が動いている。幻燈のようなり。池田さんも、富田さんも大島の羽織で、日給八十銭の女事務員には見えない。池田さんは眼は細いけれども芸者にしてみたいような美人なり。干物屋の娘のせいか、いつもにきび......
林芙美子 / 新版 放浪記 青空文庫関連カテ室内に差し込む光
台所と居間は私ひとりになった。陽があたって光に満ち、まるで真昼の海辺のように乾いていた。
......がした。 こういうのもまた、一歩間違えると普通のおばさんの告白みたいなんだけれど、目の前で、ライブで聞くと壊す勇気を体験した凄みを感じる。 純子さんが出かけて、台所と居間は私ひとりになった。陽があたって光に満ち、まるで真昼の海辺のように乾いていた。 冷蔵庫から朝食を出し、ソファーに坐ってもそもそ食べた。 そして、自分が二日酔いなのに気がついた。 何でだっけ……と思った。思い出すのに少し時間がかかることがあっ......
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光
大きな窓から陽がいっぱい入って、テーブルのうえもまぶしい。
......を食べながら。一軒の店の中でなぜかしきりの向こう半分は床屋をやっていて、しゃきしゃきと銀のはさみの音がする。すごく清潔なんだか、不潔なんだかさっぱりわからない。大きな窓から陽がいっぱい入って、テーブルのうえもまぶしい。 薄いコーヒーと甘い菓子、缶のビール。強烈な陽ざし。飛びかうフィリピン語。 変な町だ。印象がつかめず、変に希薄な感じがする。人々が絵のように薄く見えたりする。か......
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光
窓枠に躍る光
......。出かけます。夕方戻ります。食べるものが冷蔵庫にあります。」 という竜一郎からの手紙が枕元にあった。 光がまぶしく、空気がおいしかった。 呼吸も楽だったし、空や窓枠に躍る光もいつもよりもずっとまぶしかった。 まだ体だけがすこしふらふらしていて、それもなんだか柔らかい感じに思えた。この世のすべてが自分につごうよくあるような錯覚にとら......
部屋は暗く、ベランダ側のカーテンだけが 仄 明るい 矩形 に浮かび上がっている。
......を、胡座をかいてちびちび剥いている姿が頭をよぎる。靴を脱ぎ、自分のスリッパをつっかけた足先で、薄汚れたスリッパを壁際に蹴り飛ばす。 灯りを点けていかなかったので部屋は暗く、ベランダ側のカーテンだけが仄明るい矩形に浮かび上がっている。下の階の台所から甘辛い煮物のにおいが漂ってくる。 なぜこんなに淋しいのだろう? 部屋の戸口に立ち止まり、そのままドアの枠に肩をもたせる。こんなに淋しいのになぜ人......
フロントガラスの照り返しで、車内は見分けられない。
......日下はシートベルトを素早く外し、助手席側のロックを解除してドアを開けると、車外に滑り出た。 焼けつくような日差しに身を晒したまま、後続の車両に素早く目を向ける。フロントガラスの照り返しで、車内は見分けられない。だが、目の前の人物の異様な行動に驚愕していることは疑いない。 中腰のまま、ゆっくりと側道を進んでゆく。 そのまま、前の車両の左脇を通り越す。車内後部座席にいた小......
閉じたままのカーテンの隙間から、外の、信じられないほど明るい光がもれてくる。その一条の光の筋に、無数の細かな埃が舞っているのが見える。
......や頰にすべっていくのを感じている。 言葉もないまま、わたしたちはすでにもう、どうにもいたたまれないほどの欲情にかられてしまって、それはとどまるところを知らない。閉じたままのカーテンの隙間から、外の、信じられないほど明るい光がもれてくる。その一条の光の筋に、無数の細かな埃が舞っているのが見える。わたしは一瞬、そこがどこなのか、わからなくなる。 前日にビーチで焼いた肌が、乾いたシーツの上でこすれて、かすかにそこかしこが痛む。だが、その痛みすらもしみ入るよ......
カーテンの隙間からは朝の光が 洩れていて、外の通りからは日常が始まろうとする音がしている。
......行く準備の合間に、沙希はどっちが勝っているかと聞いてくれる。 焼けたパンの香りがしている。試合は拮抗している。 僕に気を使って電気はつけないでいてくれるけれど、カーテンの隙間からは朝の光が洩れていて、外の通りからは日常が始まろうとする音がしている。沙希はリュックを背負い玄関で靴を履いている。 芥川が放ったオーバーヘッドキックをブラジルのキーパーのジーダがキャッチする。 沙希がこっちを見ている気配がする。僕......
又吉直樹「劇場(新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ朝室内に差し込む光
高校の校舎は窓が大きい。だからどこにいても、表情が隠せないくらいには、太陽に明るく照らし出されてしまう。
......! 書いたの忘れてたから誕生日も忘れてた」 芋づる式に、とひとしきり笑ったあと、大地は、ころんとサイコロを振るように言った。「ケーキ、全然甘くなかったっしょ」 高校の校舎は窓が大きい。だからどこにいても、表情が隠せないくらいには、太陽に明るく照らし出されてしまう。「甘くはなかったけど、おいしかったよ」 愛子がそう答えると、大地は「そっか」と、エナメルバッグを肩にかけ直した。「つーか最近メールなくね?」「何?」 愛子は、カ......
朝井 リョウ「武道館 (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光
レースのカーテンの精巧な模様をすり抜けた光が、ベージュのカーペットの上一面で弾けている。
......にこやかに迎え、傲慢な許可と寛容を見せつけているのかもしれない。そんな疑いをわたしはゆっくり飲み込んだ。 玄関を入ってすぐ右手は、吹き抜けのロビーになっている。レースのカーテンの精巧な模様をすり抜けた光が、ベージュのカーペットの上一面で弾けている。丸テーブル、布製のソファー、公衆電話、植木鉢、すべてのものがきちんと手入れされ、整頓されている。十人程の老人たちは皆ソファーには坐らず、足を崩して床に坐り込み、......
小川洋子 / 揚羽蝶が壊れる時「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon関連カテカーテン室内に差し込む光
手をもう少しだけ持ち上げてカーテンを開ける。所々引っ掛かりながら、弱々しくレールが鳴る。開けた幅だけカーテンの濃い色合いが抜けて、無色の光が差し込む。
......きできないでいる。 目覚まし時計に手をのばす。明日の朝は好きなだけ眠っていればいいと言い聞かせてから眠っても、わたしは毎日同じ時刻に目を覚ましてしまう。その同じ手をもう少しだけ持ち上げてカーテンを開ける。所々引っ掛かりながら、弱々しくレールが鳴る。開けた幅だけカーテンの濃い色合いが抜けて、無色の光が差し込む。窓枠に縁どられた小さな公園が、斜めに覗く。錆びたベンチの足元に、丸まった新聞紙が転がっている。公園の入口には、昨夜のうちに出されたビニール袋のゴミの山が眠ってい......
小川洋子 / 揚羽蝶が壊れる時「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon関連カテカーテン室内に差し込む光
(美術館では)高い天井から差し込む光が足元に十字架のような模様を作っている
......しそうじゃない。去年はもっと無口な人だったのに、さっちゃんが娘になってよく笑うようになったもの。気に入ってるのよ」 優しくフォローされ、館内を歩き始めたけれど、高い天井から差し込む光が足元に十字架のような模様を作っていることや、無駄な装飾のないコンクリートの質感を生かした壁が絵の良さを際だたせていることなどを気付くにつれ、浩一さんの存在がどんどん遠くなっていくようだった。 この......
湊 かなえ「花の鎖 (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光
もう少しカーテンを引き、月の明かりを更に部屋に送り込んだ。そしてその黒いかたまりの中から、もつれた糸をほぐすように、輪郭線をひとつひとつ見分けていった。それはひとりの人間の身体のようだった。
...... ミュウは静かな呼吸を続けながら、そのものをじっと凝視していた。口の中はからからに渇き、寝る前に飲んだブランディーの匂いがかすかに残っていた。彼女は手を伸ばしてもう少しカーテンを引き、月の明かりを更に部屋に送り込んだ。そしてその黒いかたまりの中から、もつれた糸をほぐすように、輪郭線をひとつひとつ見分けていった。それはひとりの人間の身体のようだった。髪が前に垂れかかり、二本の細い脚が鋭角に折り曲げられている。誰かが床に腰を下ろし、頭を脚のあいだに入れて丸まっているのだ。少しでも身を縮めて、空から降ってくる物......
高いところにある換気用の小窓から、わずかな光が差し込み、それがいつもカーペットの上にぼんやりした筋を作っていた。
......われる、横に細長い小部屋だった。どんなに工夫して二人座っても、必ず体のどこかがくっつき合うほどの狭さで、ここでどう休憩を取るのか不思議なほどだった。背の届かない高いところにある換気用の小窓から、わずかな光が差し込み、それがいつもカーペットの上にぼんやりした筋を作っていた。 休憩室は私のお気に入りの場所だった。子供時代、足を踏み入れたことのあるあらゆる種類の部屋の中で、ずっとベストワンに輝き続けていた。「ねえ、お願い」 中に入ると......
小川 洋子 / 亡き王女のための刺繡「口笛の上手な白雪姫」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光
月はいよいよ明るさを増し、小屋の床に一筋の帯となって差し込んでいた。星もたくさん出ているようだった。
......、やはり自分は仮の居場所に過ぎないのだと、ちゃんと分をわきまえていた。小母さんは指を握ったり開いたりした。女の子の温もりと髪の湿り気が、まだ皺の間に残っていた。月はいよいよ明るさを増し、小屋の床に一筋の帯となって差し込んでいた。星もたくさん出ているようだった。 眠りは訪れそうになかったが、小母さんは無理やり目をつぶった。浴槽から上がったばかりの、湯気の立つ赤ん坊の背中を瞼の裏に浮かび上がらせた。腰の真ん中にえくぼのよ......
(風呂場に差し込む光)気持のいい日光が硝子窓を透して箱風呂の底まで差込んでいた。湯気が日光の中で小さな無数の粒になってモヤモヤと動いている。
......信さん、風呂はどうかな?」と云った。「俺は沢山だ」「それじゃあ、ちょっと失敬するよ」こう云って謙作は風呂場へ行った。 彼は久しぶりで風呂へ入ったような気がした。気持のいい日光が硝子窓を透して箱風呂の底まで差込んでいた。湯気が日光の中で小さな無数の粒になってモヤモヤと動いている。彼は兄が待っているのでなければ、長閑な気持で、ゆっくりと浸かっていたかった。「お前が家を空けるのでお栄さんが心配してられるよ」信行はそんな事を云って笑った。 謙......
早い時間の朝の陽ざしは澄んでいて、窓ガラスを素直に通り抜けて彼女の肌に当たる。彼女は自分の腕の産毛が金の鎖のように、やわらかく動くのを感じる。
......、この心地良い家にしばらく滞在するつもりであったので、ゆったりとした気持で、もう一度、ベッドにもぐり込んだ。 朝はいいわ。まだ何も始まっていないから落ち着ける。早い時間の朝の陽ざしは澄んでいて、窓ガラスを素直に通り抜けて彼女の肌に当たる。彼女は自分の腕の産毛が金の鎖のように、やわらかく動くのを感じる。そういえば、その産毛を誉めてくれた男がいたわ。その男の名前を思い出そうとした。そして、もらい慣れた誉め言葉の主を思い出すのは本当に難しいと悟るのだった。彼女は苛......
目を覚ますと、朝の光がカーテンのすき間から輝きすぎるほどにこぼれていた。
......ろう。たまに帰らぬのもいいだろう。しかし、あとで、もう少しあとで、電話だけはもう一度かけた方がいい──泊るということを──睦子が眠ってしまってから── しかし、目を覚ますと、朝の光がカーテンのすき間から輝きすぎるほどにこぼれていた。 女は、いなかった。 私は、驚かなかった。無意識の領域で予期していたような気がした。 いいことは続かない。 そういう感じ方が、ほとんど本質になりかけていて、女が......
四時ちかく、冬の陽が廊下を退きだした。
......じの姪と婚約をしたということである。 勝呂はどもりながら弁解しようとしたが、相手はうるさそうに彼からプイと離れて、ふたたびカルテの束を忙しげにめくりはじめた。 四時ちかく、冬の陽が廊下を退きだした。おやじは秘書の役もさせている大場看護婦長を従えて部屋からやっと現われた。二人ともひどく疲れているようだった。 真白なおやじの診察着の胸もとで、みどり色のネクタイ......
灰色の影にひたされた廊下
......だとすりゃあ、これは執刀者の罪やないからな。選挙運動の時にも弁解できるやないか」 勝呂は戸田に背をむけて廊下を歩いていった。「どうなので、ございましょうか?」 灰色の影にひたされた廊下の中で死者の家族が声をかけた。彼は黙って階段をおりた。 夕暮の構内を自転車に乗った看護婦が通りすぎていく。「坂田さあん」彼女の友だちであろう、病室の窓からだれか......
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon関連カテ夕方室内に差し込む光
一人で教室に戻ると、西陽が白い埃を浮かせながら誰もいない机や椅子の上に流れ落ちている。
......で思いうかべていた。 いつものように課外の授業が終ったあと、ぼくは友だちと校門を出た。校門を出た時、教室に弁当箱を忘れたのを思いだした。これはウソではなかった。一人で教室に戻ると、西陽が白い埃を浮かせながら誰もいない机や椅子の上に流れ落ちている。廊下も静まりかえっている。ぼくの足は博物の標本室の方にむいていた。ドアを押すと鍵がかかっていない。おそろしいほど、万事が都合よくいったのである。ナフタリンの臭い......
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光
午後の弱々しい陽がわびしく窓に溜っていた。
......長がわりこむと白い布で死体を覆った。おやじは一、二歩、よろめくように後退したが、そのまま床にたったまま動かなかった。 手術室の戸をあけて将校たちが廊下に出た時、午後の弱々しい陽がわびしく窓に溜っていた。 その窓をみながら将校たちはしばらく眼ばたきをしたり不機嫌な表情で首をふり片手で自分の肩を叩いて、わざと大きな欠伸をしてみせた。「大したことはなかったですなあ」......
小枝で作った壁の 隙間 から糸のように白い陽が流れこんでくる。
......じめ、曇った遠くの空で、かすかな鈍い雷の音がきこえてきた。「そこもとのために、あの者らがどげんに苦しむことか」 窪地の小屋の中に入れられた。むきだしの地面の上に小枝で作った壁の隙間から糸のように白い陽が流れこんでくる。壁の外では、警吏たちのしゃべる声がかすかにきこえている。あの百姓たちは何処につれ去られたのか、それっきり、もう姿をみせない。地面に腰をおろし、膝を手で組んだまま......
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光
夕陽は簾を通して 斑 に彼の顔にあたり
......不平を言った。人眼を避けるために駕籠の簾をおろしたので、外の模様は何も見えぬ。たださまざまな物音が聞えてくるだけである。童たちの叫びや声。僧の鈴の音。普請の音。夕陽は簾を通して斑に彼の顔にあたり、音だけではなく色々な臭いもにおってくる。樹の匂いと泥の臭い。鶏や牛馬の臭い。眼をつぶって司祭はわずかな間だが手に戻ってきたこれら人間の生活を胸の底まで吸いこん......
店の入口から差し込む夏の 陽 が、男のうしろで光の輪を作っていた。
......うど対岸にあたる端建蔵橋のたもとに、やなぎ食堂はあった。「おっちゃん来月トラック買うから、あの馬、のぶちゃんにあげよか」「ほんまか? ほんまに僕にくれるか?」 店の入口から差し込む夏の陽が、男のうしろで光の輪を作っていた。男は昼過ぎになると、馬に荷車を引かせて端建蔵橋を渡ってくる。いつもやなぎ食堂で弁当をひろげ、そのあとかき氷を食べていくのだった。そのあいだ、馬は店先でおとなしく......
宮本 輝 / 泥の河「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光
虚ろな対岸の明かりが、光と影の 縞模様を部屋中に張りめぐらせている。
......落ちた。彼はそのままの格好で、何気なく母親の部屋の窓から中を覗いた。 闇の底に母親の顔があった。青い斑状の焔に覆われた人間の背中が、その母親の上で波打っていた。虚ろな対岸の明かりが、光と影の縞模様を部屋中に張りめぐらせている。信雄は目を凝らして、母親の顔を見つめた。糸のように細い目が、まばたきもせず信雄を見つめ返していた。青い斑状の焔は、かすかな呻き声を洩らしながら、さらに烈しく波打......
川ぞいの窓から差し込んでくる朝の光が、武内を照らしていて、それを邦彦はカウンターの中から見るともなしに見ていた。トーストの焼ける匂いと、珈琲ポットからのたてたばかりのほろ苦い香りが、邦彦のまわりに生温かくたちこめていたが、それは黙り込んでいるときの武内のうしろ姿からときおり滲み出てくる 物憂い静寂みたいなものを、いやにはっきりと映し出していた。
......こには武内独特の型と呼べるものがあって、一種類だけの手に余るほどの花の束が、いつも不思議な勢いとおさまりを保ちながら、ちゃんと花器の中で咲いてしまうのだった。 川ぞいの窓から差し込んでくる朝の光が、武内を照らしていて、それを邦彦はカウンターの中から見るともなしに見ていた。トーストの焼ける匂いと、珈琲ポットからのたてたばかりのほろ苦い香りが、邦彦のまわりに生温かくたちこめていたが、それは黙り込んでいるときの武内のうしろ姿からときおり滲み出てくる物憂い静寂みたいなものを、いやにはっきりと映し出していた。 武内は、体つきは年齢よりもうんと若かったが、顔つきは実際よりかなり老けて見えた。そのバランスが、ふとしたひょうしに大きく崩れることがある。そんなときの武内は、......
川ぞいの窓から 薄陽 が差し込んで、そのおぼろな光がひそやかに店の底で 澱んでいる。
......リバーに向かって歩きだした。「俺が珈琲をいれたげる。うちの店においでよ。誰もおれへん。マスターも十時過ぎにならんとけえへんから」 鍵をあけてリバーの中に入ると、川ぞいの窓から薄陽が差し込んで、そのおぼろな光がひそやかに店の底で澱んでいる。 邦彦がガスに火をつけて、珈琲沸かしに水を入れ、珈琲豆の分量を計っているあいだ、さとみは窓ぎわの椅子に坐って途切れ途切れに鼻歌を歌った。そうしながら、何か物思い......
月明りがくっきりと差し入り、黄ばんだ 漆喰 の壁には、ステンドグラスの七色の光が、幻燈のような紋様を描いていた。
......嵌まるで、急ぐんでないよ」 少女は舞うように何度も振り返りながら改札を駆け抜けた。「こら、走るんでないってば」 待合室に戻ると、少女の姿はもうどこにもなかった。月明りがくっきりと差し入り、黄ばんだ漆喰の壁には、ステンドグラスの七色の光が、幻燈のような紋様を描いていた。 扉を軋ませて仙次が寝呆けまなこの顔を覗かせた。「なんだね乙さん。まだ暗いでないの――やあ、十二時。寝入りっぱなでないかい」 仙次は柱時計を振り返って、大きなあ......
天井の煙抜きから差し入る光の帯がちらちらと埃を舞い輝かせる
......い厨だ。かつてコックや板前や、大勢の女中が立ち働いていたそこのただならぬ静けさは、それだけでも恐ろしかった。 悪魔は、薄暗い板敷の中央に、体を丸めて座っていた。天井の煙抜きから差し入る光の帯がちらちらと埃を舞い輝かせる真下に、悪魔は、黒々とした体毛で被われた醜悪な姿を、どっしりと据えていた。 もし僕の目の錯覚でなければ、それは優に人の体を超える大きさを示し、歪んだ二本の角と、......
浅田次郎 / 悪魔「鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光
夕に近づいて弱くなった光が、部屋の四隅のしみのついた壁紙の上に溜っている。そして部屋のなかのすべてのものにほのぐらい影がついている。
......なした。何か、哀れな、はかない、堪えがたいという気持が、ふっと彼の頸部の辺りに一瞬まといついて、すぐ消えて行った。 及川隆一は体を廻して部屋の内を改めて眺めた。夕に近づいて弱くなった光が、部屋の四隅のしみのついた壁紙の上に溜っている。そして部屋のなかのすべてのものにほのぐらい影がついている。右隅の横木に打ちつけた竹の衣類かけには純白のアイロンの折目のはっきりついたワイシャツがかかっていた。そしてその傍に軍隊の兵隊用の国防色の塗料を用いた平べったい水......
野間宏 / 崩解感覚「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon関連カテ夕日・西日室内に差し込む光
小さな網窓からさす太陽の光が、房内の木の壁の上に光の正方形をつくり
......房の横を、ひたひたとあるかなきかの足音がし、空気を動かして、人の行きすぎるけはいがした。そして再び人々の嘆息の音楽が始まった。 横の調練場に面してつくられた高い小さな網窓からさす太陽の光が、房内の木の壁の上に光の正方形をつくり、それが次第に位置を高くし、うすれ、ぼやけ、セルの薄鼠色の獄衣をつけた囚人の体に、夕の色がまといつく。分列行進の演習をしていた囚徒達を還房させるために看守達の掛......
野間 宏 / 第三十六号「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光
リビングの床に、さざなみのように揺れる日差し。
......たの?」 と柔らかく訊いた。「五月には、もうぜんぶ終わってるんだなって思って」「例の事件のこと?」 うん、と短く頷く。 テーブルの上に、食べ残したうどんの土鍋。リビングの床に、さざなみのように揺れる日差し。平和すぎて、自分がどちら側の人間なのか、分からなくなる。「ひさしぶりに思い入れが強くなっちゃって。よくないね。臨床心理士になったばかりの頃は、それこそ、しょっち......
島本 理生「ファーストラヴ (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光
空港のロビーは、巨大なガラスから差し込む日差しで透明な光に満ち 溢れていた。
......った。 行ってきます、と手を振ってから、私は準備室を出た。 旅立つ朝、まだ朝もやの立ち込める中を出発した。 行きの成田エクスプレスの中で眠っているうちに到着した空港のロビーは、巨大なガラスから差し込む日差しで透明な光に満ち溢れていた。 トランクを押しながら、慣れない空港内を歩き回ってなんとか搭乗手続きを済ませた。 空港の広さに目が回りそうだった。空港内のアナウンスは人の喋り声にかき消されてや......
島本 理生「ナラタージュ (角川文庫)」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光
(海辺の風景が描かれたキャンバス)窓から差し込む光が青い油絵の具の上で揺れると、光が反射してかすかに本物の水面のように見える瞬間があった。
......行った。がらんとした教室の壁に数点ほど学生の絵が展示されていて、その中でも一番大きなキャンバスに海辺の風景が描かれていた。モチーフはちょっと平凡な感じがしたが、窓から差し込む光が青い油絵の具の上で揺れると、光が反射してかすかに本物の水面のように見える瞬間があった。 小野君がとなりでぼそっと「来年の夏になったら、一緒に海に行きたいな」 そうだね、と私も言った。 夕方になってから小野君のアパートに戻った。彼が部屋の明かりを点......
真っ赤な夕日が床を切りつけるようにまっすぐに差し込んでいた。
......なる。あなたに対してそう思ったように」 夕暮れが訪れるまで、私たちはベッドの中で起きたり眠ったりをくり返していた。 何度か他愛ない夢を見た後で、薄目を開けると、真っ赤な夕日が床を切りつけるようにまっすぐに差し込んでいた。 寝返りを打つとそこには葉山先生の姿はなく、彼の頭の形に枕が歪んでいるだけだった。 がらんとした部屋の中で、時の流れにさらわれていくのを感じた。雨の廊下で出会っ......
壁のずっと上の方に窓があって、そこからアンジェイ・ワイダの白黒映画みたいな光がほのかに射しこんでくる。
......のとき空いていた部屋というのは地下室で、お世辞にも良い部屋とは言えなかった。実質的には半地下なのだけれど、これは正直言って正常な市民が住むスペースとは言えない。壁のずっと上の方に窓があって、そこからアンジェイ・ワイダの白黒映画みたいな光がほのかに射しこんでくる。見上げると、通りを歩く人の脚がロー・アングルでちらちらと見える。ちょうどソニー・クラークの『クール・ストラッティン』のジャケット写真みたいな光景だ。ときどき魅力......
村上春樹「遠い太鼓 (講談社文庫)」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光
窓辺のカーテンを開けた。とたんにまばゆい日の光が床にほぼ水平にさし込んで来た。
......を見回した。かすかにうなずき、それからの桃子さんの動作は素早かった。七十を超した人とは思えぬ身のこなしでタオルケットを蹴上げ、滑り落ちるようにしてベッドを離れ、窓辺のカーテンを開けた。とたんにまばゆい日の光が床にほぼ水平にさし込んで来た。 あふれる笑顔で階段を降り身支度を整え、お湯を沸かし、雨戸を開ける。お茶を淹れ、お茶を差し上げ、灯明をともし、鈴を鳴らしという一連の動作が噓のように新鮮だった。......
透明硝子を通して射し込んでくる午後の黄色いさらさらした光
中上 健次 / 黄金比の朝「岬 (文春文庫 な 4-1)」に収録 amazon関連カテ室内に差し込む光