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人っ子一人通らない早寝の暗い横通り
......俺がかけてきてやろう」などと落着かず立って話している部屋の光景を思うと異様に物々しかった。伸子は
愧しく思った。
赤坂へ行ったのは九時過であった。 表の角から、
人っ子一人通らない早寝の暗い横通りを歩いて行くと、竹垣の透間から佃の部屋の灯が煌々と往来まで洩れていた。単衣の肩が薄寒いように感じつつそれを眺め、伸子は暗い格子をあけた。佃が弦の切れたような勢い......
小広く引込んだ道
......を奪われたような、むずかしい顔をして眺めて居る。行ったり来たりして、しつこく附纏う南京豆売り、壁紙売り。角のカフェ・ド・ラ・ペイとこっちのイタリー街の角との間は小広く引込んだ道になっていて、其の突当りがグランド・オペラだが此所からは見えない。たゞその前の地下鉄の停留所の階段口から人の塊が水門の渦のようになって、もく/\と吐き出されるの......
岡本かの子 / 巴里祭 青空文庫関連カテ路地・小道
延徳街道と穂波のほうから戸狩へはいる白い道すじ
......頭の上で啼いた。 「お芳」 「え」 「大丈夫か」 「誰も来やしませんてば」 お芳は赤い帯揚をしていた。郷士の娘で、小締めな体つきで、顔だちがよかった。木立の外に立って、延徳街道と穂波のほうから戸狩へはいる白い道すじを見張っていた。 墓地といっても、この地方の習慣では、一人一基主義で、ひとり死ぬと一つ墓石が立つ。だから戸数の割合にそれが多い。山の裾にも、畑の端にも、河原の崖......
吉川英治 / 銀河まつり 青空文庫関連カテ路地・小道
普通の通行人のための路ではないような隘路
......なかには教会の尖塔が聳えていたり、外国の公使館の旗がヴィラ風な屋根の上にひるがえっていたりするのが見えた。しかしその谷に当ったところには陰気なじめじめした家が、普通の通行人のための路ではないような隘路をかくして、朽ちてゆくばかりの存在を続けているのだった。 石田はその路を通ってゆくとき、誰かに咎められはしないかというようなうしろめたさを感じた。なぜなら、その......
梶井基次郎 / ある崖上の感情 青空文庫関連カテ路地・小道
大きな通りを外れて街燈の疎らな路へ出る。月光は初めてその深祕さで雪の積った風景を照していた。
......「月の影だな」と自分は思った。見上げると十六日十七日と思える月が真上を少し外れたところにかかっていた。自分は何ということなしにその影だけが親しいものに思えた。 大きな通りを外れて街燈の疎らな路へ出る。月光は初めてその深祕さで雪の積った風景を照していた。美しかった。自分は自分の気持がかなりまとまっていたのを知り、それ以上まとまってゆくのを感じた。自分の影は左側から右側に移しただけでやはり自分の前にあった。そして......
大通りから1本入ると、めまいのように夜が暗かった。
......らあら。」 私は言った。「庄司のいたマンションがあるあたりだわ。」「行きたくない?」 萃が言った。「ううん、ずうっと行ってないから興味がある。」 私は答えた。 大通りから1本入ると、めまいのように夜が暗かった。「ここよね。」 闇にそびえるなつかしのマンションは、工事の白幕が張られ、外から見えるすべての窓が暗かった。建て替えるのか、あるいはビルになるか。ふうん、と思った......
道幅は一メートルと少しというところだが、垣根がせりだしていたり、いろんなものが路上に置かれていたりするせいで、体を横に向けないことには通り抜けられないところも何ヵ所かある。
......あるからだ。近所の人々はその小径をただ便宜的に「路地」と呼んでいるだけの話なのだ。「路地」は家々の裏庭のあいだを縫うようにして約二百メートルばかりつづいていた。道幅は一メートルと少しというところだが、垣根がせりだしていたり、いろんなものが路上に置かれていたりするせいで、体を横に向けないことには通り抜けられないところも何ヵ所かある。 話によれば──その話をしてくれたのは我々にとびっきり安い家賃でその家を貸してくれている僕の親切な叔父だった──「路地」にもかつては入口と出口があり、通りと通り......
村上春樹 / ねじまき鳥と火曜日の女たち「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ路地・小道
高度成長期になってかつて空き地であった場所に家が新しく建ちならぶようになってからは、それに押されるような格好で道幅もぐっと狭くなり
......にとびっきり安い家賃でその家を貸してくれている僕の親切な叔父だった──「路地」にもかつては入口と出口があり、通りと通りを結ぶ近道のような機能を果していた。しかし高度成長期になってかつて空き地であった場所に家が新しく建ちならぶようになってからは、それに押されるような格好で道幅もぐっと狭くなり、住人たちも自分の家の軒先や裏庭を人が往き来するのを好ましく思わなかったので、その小径はそれとなく入口を塞がれるようになった。はじめのうちそれは穏やかな垣根のよ......
村上春樹 / ねじまき鳥と火曜日の女たち「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ路地・小道
路地をはさむようにして建った家々は、まるで比重の異る液体を混ぜあわせたみたいに、はっきりとしたふたつのカテゴリーにわかれていた。ひとつはゆったりとした広い裏庭を持つ昔からの家のグループで、もうひとつは比較的最近建てられたこぢんまりとした家のグループだった。
......鼻の中にもぐりこんできた。 僕は両側に注意ぶかく目を配りながら、ゆっくりと均一な歩調で路地を歩いた。そしてときどき歩をとめて、小さな声で猫の名前を呼んでみた。 路地をはさむようにして建った家々は、まるで比重の異る液体を混ぜあわせたみたいに、はっきりとしたふたつのカテゴリーにわかれていた。ひとつはゆったりとした広い裏庭を持つ昔からの家のグループで、もうひとつは比較的最近建てられたこぢんまりとした家のグループだった。新しい方の家には概して裏庭と呼べるほどの広いスペースはなく、中には庭というものをひとかけらたりとも持たないものもあった。そんな家では軒先と路地のあいだには、物干......
村上春樹 / ねじまき鳥と火曜日の女たち「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ町並み・集落路地・小道
闇市 跡のような暗い路地
......ない男の理屈に過ぎなかった。たまに沙希は核心をつくことがあった。純粋に放たれた言葉は重く肩にもたれかかって、いつまでも振り払うことができなかった。 下北沢駅前の闇市跡のような暗い路地を進んでいくと、トタン屋根が途切れるところから光が射して徐々に明るさを増し、路地を抜けきると一気に視界が明るくなって人が増える。人の流れに逆らって歩けば誰もいな......
又吉直樹「劇場(新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ路地・小道
線路沿いの国道から一本南寄りの細い道に入ると、人のざわめきが急に遠のいてゆく。
......特別な場所だ。ここはわたし専用の見張り塔で、わたしだけの純を見ることができる。彼はわたしの真中を、一直線にはみださないで貫いてゆく。 駅前の商店街を通り抜けて、線路沿いの国道から一本南寄りの細い道に入ると、人のざわめきが急に遠のいてゆく。五月の今の季節なら、純の練習が終わってからプールを出てこの駅に降りる頃でも、まだ昼間の光の名残が漂っている。 砂場と水飲み場だけの公園や会社の独身寮やさびれた感......
小川洋子 / ダイヴィング・プール「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon関連カテ路地・小道
車が漸くすれちがうほどの道路。
......るめない。逃げるようだ。まるで、私から。あるいは、本当に私から逃げているのか? 追いすがるように近づいて、小さく私は呼んだ。「睦子」 こたえずに女は左へ曲る。 車が漸くすれちがうほどの道路。背中が揺れる。揺れながら、今度は右へ曲る。車の通れない狭い登り坂。 いきなり女が振り返った。 睦子だった。なんという変りよう。いや、老婆からの変身に比べれば、驚......
山田太一「飛ぶ夢をしばらく見ない」に収録 amazon関連カテ路地・小道
ほとんどドアの巾だけの廊下。
...... 私の声は震えてしまう。 睦子は目を伏せた。「来て」 また背を揺らせて、短く坂を登り、左手の古いビルの三段ばかりの石段を上り、いたんだスチールのドアをあける。 ほとんどドアの巾だけの廊下。 狭い階段。 睦子のダブダブの青いズボンが先を上って行く。腰の揺れ。しかし、欲望を抱く余裕はない。上りながら睦子は赤いポシェットのジッパーをあける。鍵を出すのが......
山田太一「飛ぶ夢をしばらく見ない」に収録 amazon関連カテ路地・小道
駅の裏側にまわりこむような形の通り
中上 健次 / 黄金比の朝「岬 (文春文庫 な 4-1)」に収録 amazon関連カテ路地・小道