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座ってもたれかかっている居間と和室を区切る柱はすり減って細く、柱の表面の木はところどころ削れていたり、黒ずんでいたり、部屋の年月を感じさせる。木目を指でなぞると、滑らかすぎる感触に鳥肌が立ち、指から身体にまで伝わった。ありもしない木のささくれを、手の平が想像している。果芯のように細い柱。私たちは日にちの経ったりんごのなかで、黒い種になり向かい合いながら暮らしている。
......増えると近くにある水門が開き、濁流が勢いを増し、へどろの臭いが立ちこめる。町の人々がストレス発散のためにつばを吐いたり紙を散らして汚したりもする、都会の川だ。 座ってもたれかかっている居間と和室を区切る柱はすり減って細く、柱の表面の木はところどころ削れていたり、黒ずんでいたり、部屋の年月を感じさせる。木目を指でなぞると、滑らかすぎる感触に鳥肌が立ち、指から身体にまで伝わった。ありもしない木のささくれを、手の平が想像している。果芯のように細い柱。私たちは日にちの経ったりんごのなかで、黒い種になり向かい合いながら暮らしている。 絃はベッドに寝そべって、まだ会社で出力してきた企画書を見たりしている。早く終えたいのかページをめくる手つきが少し荒々しい。彼の生活の基軸は会社で私生活は長めの......
綿矢 りさ「しょうがの味は熱い (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ同棲・一緒に暮らす
私たちは同じものを食べ、同じ寝床にもぐりこみながら、将来住みたい場所さえ違うんだから、今私たちがこの部屋にそろっていることは、ほとんど偶然みたい。 いつか人生が分かれてしまう 無理に束ねていた二つの茎が それぞれの太陽に向かって育ち始めてしまう だましだましでもいいから できるだけ長い時間を いっしょに生きたかった
......周りが呆れて誰もいなくなっても、身体が冷たくなってもまだ動かない。まだまだ飲みたりないのに水は枯れてきて細くなり、一滴でも逃がさないように舌をつき出している。 私たちは同じものを食べ、同じ寝床にもぐりこみながら、将来住みたい場所さえ違うんだから、今私たちがこの部屋にそろっていることは、ほとんど偶然みたい。 いつか人生が分かれてしまう 無理に束ねていた二つの茎が それぞれの太陽に向かって育ち始めてしまう だましだましでもいいから できるだけ長い時間を いっしょに生きたかった ゆったりと愛せたことはあったか。あなたを安心させたことはあったか。 でも愛してるという言葉はいまはそんなに重要じゃなくて、いま大切なのはあなたのために何ができ......
犬のように拾われた
......ごく恥ずかしいだけだった。「田辺って。」彼は言った。「変わってるんだってね。」「よく、わかんない。」私は言った。「あまり会わないし。……話も特別しないし。 私、犬のように拾われただけ。 別に、好かれてるんでもないしね。 それに、彼のことはなにも知らないし。 そんなもめごともマヌケなまでに全然、気づかなかったし。」「でも、君の好きとか愛と......
吉本 ばなな / キッチン「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon関連カテ同棲・一緒に暮らす
共同たんつぼのような悪臭
......実もフタもないザラザラした人情を感じると、私を捨てて去って行った島の男が呪わしくさえ思えて、寒い三月の暮れた街に、呆然と私はたちすくんでいる。玉葱としょっぺ汁。共同たんつぼのような悪臭、いったいあの女達は誰を呪って暮らしているのかしら……。 (三月×日) 朝、島の男より為替を送って来た。母のハガキ一通あり。――当にならない僕なんか当にしないで、......
真由は引退してから定職につかず、アルバイトをしながら彼と 同棲 していた。あまりにも長い間それが続いたので、私も母も、彼らが結婚していないことすら忘れてしまっていた。
......の青年だった。そして私は、この人があの濃密な小説を紡ぎ出すのには、彼の脳の中で大変な時間の凝縮が行われているに違いない、と思った。そういうあり方の才能だった。 真由は引退してから定職につかず、アルバイトをしながら彼と同棲していた。あまりにも長い間それが続いたので、私も母も、彼らが結婚していないことすら忘れてしまっていた。私はしょっちゅう、彼らの住むマンションに遊びに行ったし、彼らもしょっちゅう家に遊びに来ていた。そしていつも二人は普通に楽しそうだったので、どうして彼女があんなマ......
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ同棲・一緒に暮らす