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一筋縄ではいかない「マドゥロ拘束」後…二転三転するトランプ言説とベネズエラの駆け引きの行方とは?日本のベネズエラ第一人者に聞く【前編】

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ベネズエラの首都カラカスで、故チャベス大統領の壁画の前を通る子どもたち(写真:ロイター/アフロ)

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2026年の幕開け直後、世界に衝撃をもたらしたアメリカによるベネズエラのマドゥロ大統領拘束。「ついに来た」――アジア経済研究所で35年間ベネズエラを研究してきた坂口安紀・主任研究員にとっては想定された事態だった。アメリカは25年秋からベネズエラを威嚇したが膠着状態に陥り、戦争嫌いのトランプ大統領でも手ぶらでは帰れないと見ていたからだ。
21年に著した『ベネズエラ――溶解する民主主義、破綻する経済』(中公選書)では、石油が豊富で二大政党制のもと政治・経済が安定していたベネズエラが、1999年のチャベス政権誕生以降、後継のマドゥロ政権にかけて見る影もなくなった様を描いた。選挙や国会、裁判所といった制度が形だけ残して大統領の意のままに動くようになり、国家介入型の経済運営は石油価格の下落で暗転した。産油量が激減し13万%ものハイパーインフレで国民生活は窮乏。治安が悪化し、4分の1の国民が国外に脱出した。
なぜ今回のような拘束劇に至ったのか。そして、今後の焦点は。日本におけるベネズエラの第一人者に話を聞いた。【石油産業の行方などについての後編はこちら
 
坂口安紀(さかぐち・あき)/アジア経済研究所地域研究センター主任研究員。1964年生まれ。90年米カリフォルニア大学ロスアンジェルス校(UCLA)修士号取得、アジア経済研究所入所。専門はベネズエラ地域研究。1990年代と2000年代に2年ずつ現地で暮らした(提供写真)

――マドゥロ政権下で副大統領だったロドリゲス氏が暫定大統領に就任し、アメリカに協力する姿勢を示していることをどう捉えていますか。

日本のメディアはロドリゲス氏が態度を軟化させたと報じたが、表向きの発言をそのまま受け取ることには慎重になったほうがいい。彼女はまだ50代だが老獪で、さまざまな政治的な技を使う人物だからだ。2つも3つも顔を使い分ける。

アメリカ向けの顔、国内向けの顔

公にはアメリカに協力すると発言する一方、ベネズエラ国内ではまったく変わっていない。それを示すのが、ロドリゲス氏の側に常にいる2人だ。

前列左からパドリノ・ロペス国防大臣、カベージョ内務大臣、ロドリゲス暫定大統領、兄のホルヘ・ロドリゲス国会議長(1月5日、Miraflores Palace/ロイター/アフロ)

1人はカベージョ内務大臣。ベネズエラの権威主義体制の中でインテリジェンス活動のトップであり、国民に対する弾圧や監視の責任者である。人権侵害だけでなく、麻薬取引への関与や汚職、犯罪組織との関係も一番深いと言われている。アメリカが最も注視する人物だ。

もう1人はパドリノ・ロペス国防大臣。これまでベネズエラ軍内部では離反する動きがあり、その芽を事前に摘むべく軍人を締め付けてきた。国軍を掌握するトップだ。

ベネズエラのチャベス派体制は、トップのマドゥロ氏がいなくなっただけで、その下はそっくりそのまま残っている。ロドリゲス氏は協力している姿勢を見せるために政治犯の釈放に手をつけたが、マドゥロ拘束前の850人程度から1月11日の段階で804人に減ったにすぎない。

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