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さいはての駅に下り立ち 雪あかり さびしき町にあゆみ入りにき 雪が降っている。私はこの啄木の歌を偶っと思い浮べながら、郷愁のようなものを感じていた。
......の中では、金鎖や、指輪や、風船、絵本などを売る商人が、長い事しゃべくっていた。父は赤い
硝子玉のはいった指輪を私に買ってくれたりした。
[#改ページ] (十二月×日)
さいはての駅に下り立ち 雪あかり さびしき町にあゆみ入りにき
雪が降っている。私はこの啄木の歌を偶っと思い浮べながら、郷愁のようなものを感じていた。便所の窓を明けると、夕方の
門燈が薄明るくついていて、むかし信州の山で見たしゃくなげの
紅い花のようで、とても美しかった。 「
婢やアお嬢ちゃんおんぶしておくれッ!」 ......
林芙美子 / 新版 放浪記 青空文庫関連カテ故郷が恋しい
少女時代を過したあの海添いの町を、一人ぽっちの私は恋のようにあこがれている。
......尾道へ行く事だろう。あああの海、あの家、あの人、お父さんや、お母さんは、借金が山ほどあるんだから、どんな事があっても、尾道へは行かぬように、と云っていたけれど、少女時代を過したあの海添いの町を、一人ぽっちの私は恋のようにあこがれている。「かまうもんか、お父さんだって、お母さんだって知らなけりゃ、いいんだもの?」鴎のような水兵達の間をくぐって、酒の匂いのする酒荷船へ乗り込むことが出来た。――七十......
林芙美子 / 新版 放浪記 青空文庫関連カテ故郷が恋しい
郷愁っていうくらいのちょうどいい照れ
......子供の気持ちで。 そうすると愛しいのか、憎いのか、応援したいのか、引きずり降ろしたいのか、夕刻の金に光る町の中でわからなくなる。 それはすごくいい感じだった。 郷愁っていうくらいのちょうどいい照れがあった。 バイトを終えて夜中に帰ったら、台所のテーブルの上に母からの手紙があった。「朔美へ 今日は由男とお好み焼きを食べたそうで、どうもありがとう。 ちゃんと......
親戚 の家に泊まった晩のような、妙に不安な、家恋しい気分に似たものがつのってきた。
......近少し薄くなったように思える頭髪を、信雄は見た。その真上で、扇風機の風に煽られた蠅取り紙がなびいている。ついさっきまでのはしゃいだ気分が信雄の中から消えていき、親戚の家に泊まった晩のような、妙に不安な、家恋しい気分に似たものがつのってきた。「その歌、最後まで知ってるか?」「うん、全部歌えるで」「そら凄いなあ。……そうかあ、もういっぺん最初から全部聴かせてェな」 長い歌を喜一は懸命に歌った。おとなび......