※本稿は、富士通「テクノロジーニュース」の記事〈CES2026が示したモビリティ産業の次の競争条件〉(1月13日公開)を再編集したものです。
CESで感じた「自動車業界」の変化
CES2026のモビリティ会場を歩いていて、強い印象を受けた。モビリティが次の段階へ進んだという、はっきりとした手応えだった。
今年、ハードとしてのクルマそのものは前面に出ていなかった。EVの新型車が並ぶ光景は、すでに日常の一部になっている。自動運転のデモに人だかりができる場面も、確実に落ち着いてきた。しかしそれは関心が薄れたからではない。技術が「見せる段階」から「使いこなす段階」へ移ったからだ。
展示やセッションで繰り返し語られていたのは、AIによるSDV(Software Defined Vehicle)の開発と運用、クルマを「売る」ことから「使い続ける」ことへ重心を移した更新・検証・責任の設計、そしてモビリティを社会インフラとしてどう回し続けるかという、より実装に近い議論だった。派手さはないが、産業として成熟するために不可欠なテーマが、会場の中心に据えられていた。
会場では、こんな言葉も頻繁に聞かれた。「EVシフトは、もはやトレンドではない」。一見すると、EVブームの後退や電動化への幻滅を示す言葉のようにも聞こえる。だが、CES2026の現場で共有されていた空気は、それとはまったく違う。EVが終わったのではない。自動運転が失敗したわけでもない。それらが“競争の主語”ではなくなったのである。
競争の主語は「技術」ではない
では、主語は何に移ったのか。この問いを考えるうえで、見逃せない出来事がある。2025年12月、中国系自動車メーカーは世界の新車販売台数において首位となる見通しが示された。これをどう読むかによって、CES2026の見え方は大きく変わる。中国が日本を打ち負かした「勝利宣言」なのか。それとも、巨大な国内市場が生んだ一時的な「バブル」なのか。
私の答えは、視点によってそのどちらでもあるということだ。短期的には、確かにバブルの要素は濃い。だが同時に、自動車産業の前提そのものが書き換わり始めていることも否定できない。CES2026が示していたのは、EV(Electrified Vehicle、電動車)かICE(Internal Combustion Engine、内燃機関)かや、自動運転か否か、といった技術選択の先にある世界だった。誰が、どの技術を持っているかではない。誰が、複線化した技術を前提に、産業全体を止めずに回し続けるOSを引き受けられるか。競争の軸は、すでにそこへ移っている。
本稿では、CES2026のモビリティ展示とセッションの現場で確認された事実を起点に、2025年中国車世界首位の意味、「EVシフト修正」は本当なのか、そしてこれからの競争条件は何なのかを、感情論でも技術礼賛でもなく、産業構造の視点から読み解いていく。CES2026は、派手な革命の場ではない。だが、静かな地殻変動の只中にいることだけは、疑いようもなく感じられた。

