雨にうたれた猿のように疲れている
村上春樹 / ノルウェイの森 amazon関連カテ疲れる・疲労感
座りっぱなしで脚は棒のように突っ張って痺れている
関連カテ疲れる・疲労感
全身の筋肉がぶちのめされたように疲れている
関連カテ疲れる・疲労感
心労と塵労が全身にかさぶたのようにかぶさる
開高 健 / 地球はグラスのふちを回る amazon関連カテ疲れる・疲労感
体は壊れかかった機械のようにギクシャクしている
関連カテ疲れる・疲労感
朝から真夜中まで、からだがコンニャクのようになるほど駆けずり回る
小林 多喜二 / 蟹工船 一九二八・三・一五 amazon関連カテ疲れる・疲労感
乾からびた茸のような疲労を覚える
北 杜夫 / マンボウ響躁曲―地中海・南太平洋の旅 amazon関連カテ疲れる・疲労感
とにかく眠い。頭の中は鉛か腐った泥が詰まったようにぼんやりしている
関連カテ疲れる・疲労感
牢獄を出たばかりのようなみすぼらしい疲れ
川端 康成 / 掌の小説 amazon関連カテ疲れる・疲労感
独楽のようにいつも全速力で廻っていなければ倒れてしまう
(雨に濡れていたし、)ひどく疲れた顔をしていた。息が乱れ、肩が不規則に上下していた。まるで溺れかけたところを助けあげられたばかりの人のように見えた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon関連カテ疲れる・疲労感
一歩も動けないほど疲れている
関連カテ疲れる・疲労感
エネルギーの備蓄をすべて使い果たしたように、老婦人は椅子の中に深く身を沈めた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon関連カテ疲れる・疲労感
服のまま部屋の真ん中にドシンと音を立ててひっくり返る
関連カテ疲れる・疲労感
大股に急ぐ彼の歩調はいつの間にかのろくなり勝ちだった。眠くてたまらぬ者が気がついては眼を無理に開きながらもつい居眠りする様なものであった。
長与 善郎 / 青銅の基督 amazon関連カテ疲れる・疲労感
据えられた置物のように重い体
関連カテ疲れる・疲労感
体中がばらばらになりそうなほど疲れ果てる
関連カテ疲れる・疲労感
長い長い不愉快な旅の後、漸く自家に帰って来た旅人の疲れにも似た疲れだった。
体がどっしりした疲労感に浸される
関連カテ疲れる・疲労感
手足の感覚がなくなるほど疲れ果てる
関連カテ疲れる・疲労感
(伸びる)マクロのようにのびてしまう。
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon関連カテ疲れる・疲労感
ぐったりと死人のようになる
関連カテ疲れる・疲労感
ずた袋のようにぐったりしている
関連カテ疲れる・疲労感
最後に爆発させるために力を温存している
関連カテ疲れる・疲労感
古草履のように疲れ果てた我等
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon関連カテ疲れる・疲労感
ここまで書いてきて、婆やは、九段坂を車を曳いて上った人のように、草臥れた。
獅子 文六 / 胡椒息子 (1953年) amazon関連カテ疲れる・疲労感
疲れていて、誰も口をきかない
関連カテ疲れる・疲労感
体は重たい泥のように弾力なく崩折(くずお)れてゆくのだった。
阿部 知二 / 冬の宿 (1948年) amazon関連カテ疲れる・疲労感
徹夜明けで体はかなり疲労している
関連カテ疲れる・疲労感
痺れを感じていた。疲労はピークを迎えているに違いなかった。
......入れるだけでも面白くないのだろう。伊東の部下である安西を悪し様に言ったのも同じ理由に違いない。坊主憎けりゃ袈裟までの類の話だ。 勝手に啀み合ってろ。 悠木は脳に痺れを感じていた。疲労はピークを迎えているに違いなかった。「はい、お願いしまーす」 整理部員の声がして、デスクの上に、第二社会面の仮刷りがふわっと置かれた。 まず目に飛び込んできたのが、下段の大きな広告だった。《お詫び......
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
まともな朝食をとる気にならないほどヘトヘトになっている
関連カテ疲れる・疲労感
三時をこえたあたりから電池が切れかけたようにペースが落ちはじめ、四時には全てが死に絶えた。
......は取りあわず、午後の間ずっと持ち帰りの翻訳の仕事を続けた。下訳のアルバイト学生が試験期間中だったせいで、僕の仕事はたっぷりたまっていたのだ。調子は悪くなかったが三時をこえたあたりから電池が切れかけたようにペースが落ちはじめ、四時には全てが死に絶えた。もう一行も進まなかった。 僕はあきらめて机に敷いたガラス板の上に両肘をつき、天井に向けて煙草をふかした。煙は静かな午後の光の中をゆっくりと、まるでエクトプラズム......
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感ペース
どっかと椅子に腰を下ろしてしばし押し黙った
関連カテ疲れる・疲労感
重病人のようにベッドでぐったりして
......、姉のお腹は少しも目立たない。何週間もクロワッサンとスポーツドリンクだけしか口にしていないので、どんどんやせるばかりだ。M病院と二階堂先生の所へ出かける以外は、重病人のようにベッドでぐったりしている。 わたしにできることといえば、においを出さないように心掛けるだけだ。石けんは全部、無香性のものと取り替えた。パプリカやタイムやセージの香辛料の類は、缶に詰......
小川 洋子「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
クッションの利いたシートに頭から突っ込むように倒れこむ
血色悪いように見え、だらり垂れきっている
......のが遠くでもはっきり見え、腰でもお尻でもなく背中で座っている二人は、一見してまわりとの意気の差がとてもはなはだしい様子、そこだけ色が違って見えるわ、なぜか非常に血色悪いように見え、だらり垂れきっているのを発見し、やあやあ、と小走りで近寄って声をかけるも、二人のあいだには聞いてたとおりの小さくまとめられた重苦しい雰囲気、わたしに気がつくと目をあげ、立ち上がって......
川上 未映子「乳と卵(らん) (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
(ベッドを)見たとたん、体力気力の糸が切れた。棒っきれのように横たわる。シーツは日なたの匂いがした。
精神的にも肉体的にも、再び起つ勇気があるかないかすら解らない位疲れてしまっている。
......に非常な打撃を与えて追い払ったようであるが、しかし、それと同時に私も力が尽きた。自分の行為の善悪を判断する力はおろか、この大テーブルから離れる元気さえなくなった。精神的にも肉体的にも、再び起つ勇気があるかないかすら解らない位疲れてしまっている。 ……けれども……けれども私の背後には今一つの強敵が控えている。その強敵Wは、或はこの場の光景までも見透かして、冷笑しているかも知れぬ。それ程に抜け目のない、......
夢野久作 / ドグラ・マグラ 青空文庫関連カテ疲れる・疲労感
脳がいい加減休めと信号を出す
関連カテ疲れる・疲労感
足がうごいてゐるかどうかもわからずからだは何か重い巌に砕かれて青びかりの粉になってちらけるやう何べんも何べんも倒れては
......なかったのです。一郎はもうあらんかぎりの力を出してそこら中いちめんちらちらちらちら白い火になって燃えるやうに思ひながら楢夫を肩にしてさっきめざした方へ走りました。足がうごいてゐるかどうかもわからずからだは何か重い巌に砕かれて青びかりの粉になってちらけるやう何べんも何べんも倒れては又楢夫を抱き起して泣きながらしっかりとかゝへ夢のやうに又走り出したのでした。それでもいつか一郎ははじめにめざしたうすあかるい処に来ては居ました。けれどもそこは決......
膝から下は義足に触るより無感覚になり、ひょいとすると膝の関節が、蝶つがいが離れたように、不覚にヘナヘナと坐り込んでしまいそうになった。
......い立てて、甲板で「爪たたき」をさせられる。それを一寸していると「紙巻」の方へ廻わされる。底寒くて、薄暗い工場の中ですべる足元に気をつけながら、立ちつくしていると、膝から下は義足に触るより無感覚になり、ひょいとすると膝の関節が、蝶つがいが離れたように、不覚にヘナヘナと坐り込んでしまいそうになった。 学生が蟹をつぶした汚れた手の甲で、額を軽くたたいていた。一寸すると、そのまま横倒しに後へ倒れてしまった。その時、側に積さなっていた罐詰の空罐がひどく音をたて......
小林多喜二 / 蟹工船 青空文庫関連カテ疲れる・疲労感
身体は壊れかかった機械のようにギクギクしていた。
......か、ハッキリ分れ、分れになっていた。 朝だった。タラップをノロノロ上りながら、炭山から来た男が、 「とても続かねえや」と云った。 前の日は十時近くまでやって、身体は壊れかかった機械のようにギクギクしていた。タラップを上りながら、ひょいとすると、眠っていた。後から「オイ」と声をかけられて思わず手と足を動かす。そして、足を踏み外して、のめったまま腹ん這いになった。 仕......
小林多喜二 / 蟹工船 青空文庫関連カテ疲れる・疲労感
疲労は徐ろに僕の頭を曇らせはじめた。
......、七枚、十枚、――原稿は見る見る出来上って行った。僕はこの小説の世界を超自然の動物に満たしていた。のみならずその動物の一匹に僕自身の肖像画を描いていた。けれども疲労は徐ろに僕の頭を曇らせはじめた。僕はとうとう机の前を離れ、ベッドの上へ仰向けになった。それから四五十分間は眠ったらしかった。しかし又誰か僕の耳にこう云う言葉を囁いたのを感じ、忽ち目を醒まして立......
僕は確実に磨耗していった。四日めには東西南北の感覚が消滅した。東の反対が南であるような気がし始めたので、僕は文房具屋で磁石を買った。磁石を手に歩きまわっていると、街はどんどん非現実的な存在へと化していった。建物は撮影所のかき割りのように見え始め、道を行く人々はボール紙をくりぬいたように平面的に見え始めた。太陽はのっぺりとした大地の片方から上り、砲丸のように天空に弧を描いて片方に沈んだ。
......ーを着こんだ。札幌の街は広く、うんざりするほど直線的だった。僕はそれまで直線だけで編成された街を歩きまわることがどれほど人を磨耗させていくか知らなかったのだ。 僕は確実に磨耗していった。四日めには東西南北の感覚が消滅した。東の反対が南であるような気がし始めたので、僕は文房具屋で磁石を買った。磁石を手に歩きまわっていると、街はどんどん非現実的な存在へと化していった。建物は撮影所のかき割りのように見え始め、道を行く人々はボール紙をくりぬいたように平面的に見え始めた。太陽はのっぺりとした大地の片方から上り、砲丸のように天空に弧を描いて片方に沈んだ。 僕は一日に七杯もコーヒーを飲み、一時間おきに小便をした。そして少しずつ食欲を失くしていった。「新聞に広告を出してみれば?」と彼女が提案した。「あなたのお友だち......
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
腕の力が、次第に衰えて来たのであろう、打つ太刀が、一太刀ごとに重くなった。今では踏む足さえ危うくなった。
......ったが、喉をかもうとする犬の息が、暖かく顔へかかると、思わずまた、目をあいて、横なぐりに太刀をふるった。何度それを繰り返したか、わからない。しかし、そのうちに、腕の力が、次第に衰えて来たのであろう、打つ太刀が、一太刀ごとに重くなった。今では踏む足さえ危うくなった。そこへ、切った犬の数よりも、はるかに多い野犬の群れが、あるいは芒原の向こうから、あるいは築土のこわれをぬけて、続々として、つどって来る。―― 次郎は、絶望の目を......
芥川龍之介 / 偸盗 青空文庫関連カテ疲れる・疲労感
蚕のように、各〻の棚の中に入ってしまうと、誰も一口も口をきくものがいなかった。
......くなってきた。しかし時化は止みそうもなかった。 仕事が終ると、皆は「糞壺」の中へ順々に入り込んできた。手や足は大根のように冷えて、感覚なく身体についていた。皆は蚕のように、各〻の棚の中に入ってしまうと、誰も一口も口をきくものがいなかった。ゴロリ横になって、鉄の支柱につかまった。船は、背に食いついている虻を追払う馬のように、身体をヤケに振っている。漁夫はあてのない視線を白ペンキが黄色に煤けた天井に......
死滅と同然の倦怠疲労
......も振り回して、ゆすぶって、たたきつけて、一気に猛火であぶり立てるような激情、魂ばかりになったような、肉ばかりになったような極端な神経の混乱、そしてそのあとに続く死滅と同然の倦怠疲労。人間が有する生命力をどん底からためし試みるそういう虐待が日に二度も三度も繰り返された。そうしてそのあとでは倉地の心はきっと野獣のようにさらにすさんでいた。葉子......
神がかりにあった人が神から見放された時のように、葉子は深い肉体の疲労を感じて
......あとでは、一筋の透明なさびしさだけが秋の水のように果てしもなく流れているばかりだった。不思議な事には寝入っても忘れきれないほどな頭脳の激痛も痕なくなっていた。 神がかりにあった人が神から見放された時のように、葉子は深い肉体の疲労を感じて、寝床の上に打ち伏さってしまった。そうやっていると自分の過去や現在が手に取るようにはっきり考えられ出した。そして冷ややかな悔恨が泉のようにわき出した。 「間違って......
有島武郎 / 或る女(後編) 青空文庫関連カテ疲れる・疲労感
彼女は何かにしっかり捉まりこの苦しい疲れる衝動を制したかった。
......に高い熱と痙攣が起った。 体が妙に突き上げるような不可抗力でヒクリ、ヒクリ、そり返る。体じゅうしゃくりをする。伸子はそのたびに悲しげな、断れ断れな叫びを上げた。彼女は何かにしっかり捉まりこの苦しい疲れる衝動を制したかった。しかし何処にも手応えがない。頭の裡も外もフラッシュライトに取り巻かれているように一面の光の渦巻だ。その光の海は絶えず揺れる、閃く、走り廻る、いそがしい。明るい、......
宮本百合子 / 伸子 青空文庫関連カテ疲れる・疲労感
一晩中うねる大波に揉まれていたような心身の疲労を極度に感じた。
......護婦を見た。室内に流れる冷たい灰色の払暁の光線を感じた。伸子は反射的につぶやいた。 「そう――朝になった」 自分は眠ったのか眠らなかったのか一向はっきりせず、ただ一晩中うねる大波に揉まれていたような心身の疲労を極度に感じた。眠い、やたらに眠い。 「そうそう、いいお嬢さんですね、おやすみなさらなけりゃいけませんよ」 伸子は、微かな歪んだ頬笑みを浮べた。佃の声がした。 「――それではまた参......
宮本百合子 / 伸子 青空文庫関連カテ疲れる・疲労感
旅の疲れであまりお腹はすいていなかった
......大木だった。青葉がかくれるほど、白い花が空に向って咲いている。マロニエの花ってこんなにたくさん咲くものかといまさらおどろいた。*パリに着いたのは、お昼前だった。旅の疲れであまりお腹はすいていなかったけれど、久しぶりにおいしいフランスパンがたべたかったから、バゲットという1メートル近い長さのフランスパンにバタをたっぷりぬって半分ぐらいたべて、それから一日アパ......
石井 好子「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
何を想い、何に心をひかれる弾力も無くなって見える
......を帯びて黒い一と塊りになりかけている広場を囲む町の家々に燦爛と灯がともり出した。 また疲れて恐迫症さえ伴う蒼ざめた気持ちになって新吉は此処まで来た。新吉のもはや何を想い、何に心をひかれる弾力も無くなって見える様子にベッシェール夫人は惨忍な興味を増した。老女の変態愛は自分も相当に疲れて居ながら新吉を最後の苧がらのように性の脱けたものにするまで疲れさせねば承知出来なくな......
岡本かの子 / 巴里祭 青空文庫関連カテ疲れる・疲労感
銀座の散歩も、もう歩き足り、見物し足りた気怠るさを、落した肩と引きずる靴の足元に見せはじめた。
......の外套や手柄をかけた日本髷や下町風の男女が、目立って交っていた。 人混を縫って歩きながら夜店の側に立ち止ったり、青年の進み方は不規則で乱調子になって来た。そして銀座の散歩も、もう歩き足り、見物し足りた気怠るさを、落した肩と引きずる靴の足元に見せはじめた。けれども青年はもっと散歩の興味を続け、又は、より以上の興味を求め度いらしく、ズボンのポケットへ突込んだ両手で上着をぐっとこね上げ、粗暴で悠々した態度で、街を漁り......
綿のように疲れはてた。
......って降りるにゃ、二十両が関の山なんだ」 「結構結構。それだけあれば一時のしのぎはつくからなあ」 番交代を待ちかねて、蔵六は、家へ帰って行った。 心も体も、雲霧は、綿のように疲れはてた。といって、眠気もささない。頭の中はあの土蔵の闇を詰めて来たように、混濁している。――消そうとすればするほど、薄命な女の死に顔や、因果な子の乳の香が、そこらに、ち......
吉川英治 / 雲霧閻魔帳 青空文庫関連カテ疲れる・疲労感
憂鬱が立て罩めて来る、私は歩き廻った疲労が出て来たのだと思った。
......ずかずか入って行った。 しかしどうしたことだろう、私の心を充たしていた幸福な感情はだんだん逃げていった。香水の壜にも煙管にも私の心はのしかかってはゆかなかった。憂鬱が立て罩めて来る、私は歩き廻った疲労が出て来たのだと思った。私は画本の棚の前へ行ってみた。画集の重たいのを取り出すのさえ常に増して力が要るな! と思った。しかし私は一冊ずつ抜き出してはみる、そして開けてはみるのだが、克明......
手の筋肉に疲労が残っている。
......れを繰り返した。とうとうおしまいには日頃から大好きだったアングルの橙色の重い本までなおいっそうの堪えがたさのために置いてしまった。――なんという呪われたことだ。手の筋肉に疲労が残っている。私は憂鬱になってしまって、自分が抜いたまま積み重ねた本の群を眺めていた。 以前にはあんなに私をひきつけた画本がどうしたことだろう。一枚一枚に眼を晒し終わって後、......
彼はすぐにも頬ぺたを楓の肌につけて冷やしてみたいような衝動を感じた。 「やはり疲れているのだな」彼は手足が軽く熱を持っているのを知った。
......蹠
の感覚の快さを知っているものだ。そして茣蓙を敷くやいなやすぐその上へ跳び込んで、着物ぐるみ
じかに地面の上へ転がれる自由を楽しんだりする」そんなことを思いながら
彼はすぐにも頬ぺたを楓の肌につけて冷やしてみたいような衝動を感じた。 「やはり疲れているのだな」彼は手足が軽く熱を持っているのを知った。 「私はおまえにこんなものをやろうと思う。 一つはゼリーだ。ちょっとした人の足音にさえいくつもの波紋が起こり、風が吹いて来ると漣をたてる。色は海の青色で――御覧その
......
梶井基次郎 / 城のある町にて 青空文庫関連カテ疲れる・疲労感
いつまで経っても私の「疲労」は私を解放しなかった。私が都会を想い浮かべるごとに私の「疲労」は絶望に満ちた街々を描き出す。
......滞在はこの冬で二た冬目であった。私は好んでこんな山間にやって来ているわけではなかった。私は早く都会へ帰りたい。帰りたいと思いながら二た冬もいてしまったのである。いつまで経っても私の「疲労」は私を解放しなかった。私が都会を想い浮かべるごとに私の「疲労」は絶望に満ちた街々を描き出す。それはいつになっても変改されない。そしてはじめ心に決めていた都会へ帰る日取りは夙うの昔に過ぎ去ったまま、いまはその影も形もなくなっていたのである。私は日を浴びて......
疲労をまぎらしてゆく快い自動車の動揺
......んという不似合いな客であったろう。私はただ村の郵便局まで来て疲れたというばかりの人間に過ぎないのだった。 日はもう傾いていた。私には何の感想もなかった。ただ私の疲労をまぎらしてゆく快い自動車の動揺ばかりがあった。村の人が背負い網を負って山から帰って来る頃で、見知った顔が何度も自動車を除けた。そのたび私はだんだん「意志の中ぶらり」に興味を覚えて来た。そして......
重い疲れが彼に凭りかかる。
......に短いのだろう」 彼はそんなときほどはかない気のするときはなかった。燃えた雲はまたつぎつぎに死灰になりはじめた。彼の足はもう進まなかった。 「あの空を涵してゆく影は地球のどの辺の影になるかしら。あすこの雲へゆかないかぎり今日ももう日は見られない」 にわかに重い疲れが彼に凭りかかる。知らない町の知らない町角で、堯の心はもう再び明るくはならなかった。
梶井基次郎 / 冬の日 青空文庫関連カテ疲れる・疲労感
疲れて眠たくなっていた
......もかも投げ出したくなってきた。通りすがりに蒼い瓦葺きの文化住宅の貸家があったので這入ってみる。庭が広くて、ガラス窓が十二月の風に磨いたように冷たく光っていた。 疲れて眠たくなっていたので、休んで行きたい気持ちなり。勝手口を開けてみると、錆びた鑵詰のかんからがゴロゴロ散らかっていて、座敷の畳が泥で汚れていた。昼間の空家は淋しいものだ。薄い人の......
魚の腸のように疲れて帰って来て
......ても甘い女です。 そんな言葉を聞くと、さめざめと涙をこぼして、では街に出て働いてみましょうかと云ってみるのだ。そして私はこの四五日、働く家をみつけに出掛けては、魚の腸のように疲れて帰って来ていたのに……この嘘つき男メ! 私はいつもあなたが用心をして鍵を掛けているその鞄を、昨夜そっと覗いてみたのですよ。二千円の金額は、あなたが我々プロレタリアと言って......
林芙美子 / 新版 放浪記 青空文庫関連カテ疲れる・疲労感
疲れて夢も見ずにすぐ寝てしまう
......初めて自分の体になったような気がした。真実にどうにかしなければならぬ。それは毎日毎晩思いながら、考えながら、部屋に帰るのだけれども、一日中立ってばかりいるので、疲れて夢も見ずにすぐ寝てしまうのだ。淋しい。ほんとにつまらない。住み込みは辛いと思う。その内、通いにするように部屋を探したいと思うけれども何分出る事も出来ない。夜、寝てしまうのがおしくて、暗......
魚のように体が延びてしまった。
...... * (七月×日) ちっとも気がつかない内に、私は脚気になってしまっていて、それに胃腸も根こそぎ痛めてしまったので、食事もこの二日ばかり思うようになく、魚のように体が延びてしまった。薬も買えないし、少し悲惨な気がしてくる。店では夏枯れなので、景気づけに、赤や黄や紫の風船玉をそろえて、客を呼ぶのだそうである――。じっと売り場に腰を掛けていると......
極度の疲労困憊は、さながら生きているミイラのようだ。
......してくると、一切合切がグラグラして来て困ってしまう。つかみどころなき焦心、私の今朝の胃のふが、菜っぱ漬けだけのように、私の頭もスカスカとさみしい風が吹いている。極度の疲労困憊は、さながら生きているミイラのようだ。古い新聞を十度も二十度も読みかえして、じっと畳に寝ころんでいる姿を、私はそっと遠くに離れて他人ごとのように考えている。私の体はいびつ、私のこころもいびつなり。と......
林芙美子 / 新版 放浪記 青空文庫関連カテ疲れる・疲労感
疲れて五感がにぶっている
......ない。離婚もしていない。だから何か問題があったことは初耳だった。「……だからね、本当に小さいころに見えなかったからね、何にでも触れたぐらいじゃ安心しないの。特に疲れて五感がにぶっていると、目を閉じて強く押しつけたり、強くつかんだりしていないと安心できないの。痛い? ごめんね。」「目が開いていても、こわいときはこわいんだよ。うちの病院にはそうい......
吉本 ばなな / とかげ「とかげ (新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
病院に入るほど疲れていた
......、別の病院に入院したんだよ。私もいろいろ考えたんだが、これではだめだ、と思ってすべてをやり直そうということにして毎日見舞いにいった。その時にはもう、お母さんには病院に入るほど疲れていたのや、どうしてそんなになったかの理由はわかるようになっていたが、君を川に落としたという記憶だけがなかった。……今も多分ないと思う。多分だが。ただ、他の点ではどん......
の蓄積した疲れ
......」 私は顔をしかめた。コップを受け取って乙彦が言った。「どうして君に薬を飲ませるなんてひどいことをするんだ?何のために。」 少し怒った調子だった。そこに、彼なりの蓄積した疲れを感じた。「死ぬつもりだったよ、萃。」 私は言った。「やっぱり。そういうふうに決めているのかな、といういやな予感がした。だから早く帰ってきたんだ。でもいない。心......
吉本 ばなな「N・P (角川文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
胴体を荒繩でくくりあげて、空高く起重機で吊りさがりたいような疲れを感じる。
......になる。部屋の隅にごろりと横になる。谷底に沈んで行きそうな空虚な思いのみ。卑屈になって、何の生甲斐もない自分の身の置き場が、妙にふわふわとして浮きあがってゆく。胴体を荒繩でくくりあげて、空高く起重機で吊りさがりたいような疲れを感じる。お父さんとは別れようかのと母がぽつんと云う。私は黙っている。母は小さい声でこんななりゆきじゃからのうとつぶやくように云う。私は、男なぞどうでもいいのだ。もっとす......
林芙美子 / 新版 放浪記 青空文庫関連カテ疲れる・疲労感
そんなことを深く考えるには僕は疲れすぎていた。
......ーツは新しく清潔で、しわひとつなかった。僕はその上に体を横たえ、カーテンのあいだから月を眺めた。我々はいったい何処に行こうとしているのだろう、と僕は思った。でもそんなことを深く考えるには僕は疲れすぎていた。目を閉じると、眠りは暗い網のように音もなく頭上から舞い下りてきた。......
疲れのせいか妙にハイになってくる
......も俺は『人生は旅だ』とか『旅のつれ合い』とかそういうことを言いたいんじゃないんだが、二日も三日も同じメンバーでツアーをしていると、男女の別も仕事もないところで、疲れのせいか妙にハイになってくるだろ? 帰りの車内で別れがたくて、やけに陽気になったり、何を話しても面白おかしくて、こっちの人生の方が本物なんじゃないかと錯覚するくらい楽しかったり。そういうの......
泳いでからバイトに行くと疲れて死にそうになる。
......た。プールのことなんて忘れてしまった。 私は体にいいだろうな、と思って暇な日はあいかわらずひとりで通っていた。問題は暇じゃない時、とくにバイトに行く前だった。 泳いでからバイトに行くと疲れて死にそうになる。体に悪い。毎日泳いでも仕方ない。明日行こう。そうわかっていても夕方、むしょうに水に入りたくて、苦しくなった。渇望だった。そして心はついせんだって、狂ったようにプ......
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感泳ぐ
「今日は疲れたね」と言いあって、ダブルベッドで何もしないでキスだけして、老夫婦のように寄り添って眠った。
......らしてきたような錯覚をする。 竜一郎がシャワーを浴びている問に、栄子の家に電話してみたが、誰も出なかった。私もシャワーを浴びたら何だかへとへとになってしまった。「今日は疲れたね」と言いあって、ダブルベッドで何もしないでキスだけして、老夫婦のように寄り添って眠った。目ざめても彼が死んで、いなくなったりしていませんように、もしそういう日が当然のように来るとしても前もって知らせることだけはやめて下さい。と最後にお祈りをした。本......
仕事もむちゃくちゃで会社に泊まったりもしていた。
......の、娘は小さな娘として、自分は健康な父親として永遠に続きそうなある平和な午後だったのだろうか? わかりようもない。 でも父はそのころから妙に太りはじめていたし、仕事もむちゃくちゃで会社に泊まったりもしていた。 とにかく彼はそのとき、大きなガラスのコップに入っている金色のビールをおいしそうに飲み干し、そう、私はその時、ビールっておいしそうだなあと子供心にも思った。 こ......
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
意識したように、背中を丸めて疲れをあらわにした。
......からといって、車で張り込んだりするのは無意味だと思いますから。そういうことで疲労をため込まないで下さい」「そうですね。そうかもしれません」 池本は言われて初めて意識したように、背中を丸めて疲れをあらわにした。 それから携帯電話の番号を交換したところで、雪見はやっと二人から解放された。 それにしても……と一人になって途方に暮れる。 こんなことを聞かされたって、どうすれ......
抵抗不可能な疲労感に捕らえられてしまう。これ以上動くことも考えることもしたくない。その場にしゃがみ込んでしまいそうになるのを、なんとかベンチまで戻り、腰を下ろす。
......歩きはじめる。向かいのホームから反対方向の電車に乗ってしまうか、駅を出ていつものように夜の街をさまよい歩くか。 下り口に立って長い階段を片目で見下ろすと、しかし抵抗不可能な疲労感に捕らえられてしまう。これ以上動くことも考えることもしたくない。その場にしゃがみ込んでしまいそうになるのを、なんとかベンチまで戻り、腰を下ろす。横の女がすぐに立っていくが、十和子を避けるためなのかどうかはわからない。そのまま陣治を待つ。 次の電車にも、その次の電車にも陣治は乗っていない。それでも、待って......
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
東京行きの最終ののぞみに一人で乗って、夜の窓をぼんやりと眺めた。蛍光灯でありありと照らし出された車内の景色は、疲労の重みで、どことなくグロテスクだった。
......九月半ばの敬老の日の翌日、城戸は、司法修習生時代に京都で親しくしていた同期の弁護士が、虚血性心不全で突然死したというので、日帰りで大阪に行き、通夜に参列した。 東京行きの最終ののぞみに一人で乗って、夜の窓をぼんやりと眺めた。蛍光灯でありありと照らし出された車内の景色は、疲労の重みで、どことなくグロテスクだった。居眠りしている者も多かったが、酔っ払って話が止まらぬ者らも何組かいた。 車内の空気には、一日働いた人の汗と、ビールと、スルメか何かつまみの類の臭いとが入り混じっ......
平野啓一郎「ある男」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
百メートルを全力疾走した時のような疲れ
......、どれだけ野呂のことが頭から離れずにいても、ともかく余計なことは考えずに、よろよろしながらも身体を起こし、ベッドから出て、窓のカーテンを開けた。この作業だけでも百メートルを全力疾走した時のような疲れを感じたが、やめるわけにはいかなかった。 そうやって、淀んだ空気に満ちた室内を光で充たしてから、洗面所に行った。勢いよく水道の水を流しながら歯を磨き、次いで熱い......
小池真理子「愛するということ (幻冬舎文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
(遊び疲れる)ぼろぼろになるまで遊んだ
......カギっ子で、よくここにすわって自分で冷蔵庫から出してきたおやつを食べた。いつも必ず、ほうれん草がそえてあった。あわてて食べて、いつも野球に行った。グラウンドで、ぼろぼろになるまで遊んだその記憶を、もぐもぐ食べるほうれん草の味がよみがえらせる。全く、なじめない。信じられない。よくあんなに元気だったものだ。 元気が出ない。まるで呪いのように出ない......
吉本ばなな / サンクチュアリ「うたかた/サンクチュアリ」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
現メンバーは皆、背もたれにどっしりと体を預け、そのまま眠れるような体勢をとっている。大きく開いている真由の口からは、今にも 涎 が垂れてしまいそうだ。
......バスが、のろのろと道路を走っている。終演からはもうしばらく時間が経っているけれど、一応、ライブ会場の最寄駅は利用しないようにとマネージャーからは言われている。 現メンバーは皆、背もたれにどっしりと体を預け、そのまま眠れるような体勢をとっている。大きく開いている真由の口からは、今にも涎が垂れてしまいそうだ。 二期候補生たちは、バスの前のほうの席に固まって座っている。 候補生が九人だということは、現メンバーには昨日、知らされた。最年長は十七歳、最年少は中学一年生にな......
相手をする人間の神経を鉛のように疲れさせた。
......かく誰かをつかまえて一日中喋り続けていた。それはもう、少しでも黙っていると息が止まってしまうのではないかという不安に突き上げられたような、切羽詰まった喋り方で、相手をする人間の神経を鉛のように疲れさせた。そして相変わらず、家の中ではダイニングテーブルの上でストッキングが丸まっていたり、洗濯機の中に黴のはえたオレンジが落ちていたりした。 わたしは、喋り続ける彼女の......
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
ここ数日、和弥さんは食欲がなくなり、ぼんやりと遠くを見ていることが多くなりました。
......すると、季節に添った花々を安くお洒落に組み合わせてくれます。和弥さんの図面が選ばれたときは、豪華な花束を作ってもらおうと、今からとても楽しみにしています。 ただここ数日、和弥さんは食欲がなくなり、ぼんやりと遠くを見ていることが多くなりました。具合を訊ねると、大丈夫だと言われますが、本当はかなり疲れているのではないかと心配です。根を詰めた作業のしわ寄せが、今頃になって出てきたのでしょうか。 だからこそ......
湊 かなえ「花の鎖 (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
時差のもたらす奇妙なしびれのようなものが頭の中心にあった。そのせいもあるのかもしれないが、現実と現実らしく見えるものとの境目がうまく見分けられなかった。
......の白い鳥が丘の斜面を海岸に向けて、滑るように降りていった。近所のどこかからラジオの音が聞こえてきた。アナウンサーは早口のギリシャ語でニュースを読みあげていた。 時差のもたらす奇妙なしびれのようなものが頭の中心にあった。そのせいもあるのかもしれないが、現実と現実らしく見えるものとの境目がうまく見分けられなかった。ぼくはこの小さなギリシャの島で、昨日初めて会ったばかりの美しい年上の女性と二人で朝食をとっている。この女性はすみれを愛している。しかし性欲を感じることはできない......
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感時差
日頃の疲れや 錆 のようなもの
......自分がここにいるのがしみじみと求められていて居心地がいい感じだった。私はちょっとなら英語を話せるし、春香ちゃんの面倒を見ることもできるし、好かれているからだ。 日頃の疲れや錆のようなものを全て落としきって、なにものでもない自分になって、春香ちゃんの小さい手と手をつないでジェラートのはしごをしたり、Tシャツだとかマニキュアだとか化粧品だとかを買っ......
よしもとばなな / 銀の月の下で「まぼろしハワイ」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
ジーンと音でもしていそうな疲れ切った(足)
......高い洋風の段々と云い、この不調和な生々しい座敷の様子と云い、芝居の仲の町とは大分趣の異ったものだと謙作は思った。彼は多少落ちつかない気持で、柱に背を寄せかけて、ジーンと音でもしていそうな疲れ切った膝から下を立膝にし、抱えていた。 女将と入れ代って眼の細い体の大きな、象のような印象を与える女中が茶道具を持って入って来た。「小稲と云う人は居るかい」物馴れた調......
志賀直哉「暗夜行路 (講談社文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
気持にも 身体 にも異常な疲労が来た。彼はもう何も考えられなかった。
......穢らわしかった。母の為に穢らわしかった。 彼はたまらなく母がいじらしくなった。彼は母の胸へ抱きついて行くような心持で、「お母さん」と声を出して云ったりした。七 気持にも身体にも異常な疲労が来た。彼はもう何も考えられなかった。彼はそれから二時間ばかり、ぐっすりと眠った。 四時頃眼を覚ました。その時は気分も身体も殆ど日頃の彼になっていた。彼は顔を洗って、少時、縁へしゃがんで、ぼんやり前......
直哉, 志賀「暗夜行路 (新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
自分が死骸となり果てて
......。明かりの消えた部屋。お互いの体が明確に見てとれる時刻になるまでサユリはティエンの体を求めた。それは彼にとって、ほとんど苦痛に近いものだった。 彼は朝になったら自分が死骸となり果てて、体の上の彼女の存在をどうすることもできずにただながめているのではないかと、恐怖に怯えることすらあった。けれど、信じられないくらいに生き生きと、自分の体は彼女の......
山田詠美「新装版 ハーレムワールド (講談社文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
(だるい)だるくて、身体中の筋肉がくさって行くような、ナイフでどこかを刺してまぎらせたいと思うほどのだるさが二時間も三時間も続いて、耐えきれないほどになって倒れて、意識がなくなって
......りがだるかったの。ぬけ出して、タクシーで横浜まで帰ったわ」「東京にいるといった」「用心してたの。翌日の夜、すごいのが来たわ。また私は、口をあけて、這い回ったの。だるくて、身体中の筋肉がくさって行くような、ナイフでどこかを刺してまぎらせたいと思うほどのだるさが二時間も三時間も続いて、耐えきれないほどになって倒れて、意識がなくなって」「半月?」「二十日以上──二十二日」「衰弱しないで?」「若くなって。気がつくと、この若さ。でも、このままいつまでいられる? 前の時が一月の終りから三月の八日ま......
疲労は重く全身に広がっている
......にとってあまりにも重苦しいものであった。 恭平が布団についたのは三時過ぎだったろう。ここ二夜ばかりろくに眠られぬ夜が続いたが、今夜はさらに眠れそうもなかった。 疲労は重く全身に広がっているが、頭の中だけは冴えていた。目をつぶると目の奥でジンジンと神経がうなっているような気がした。 酒を飲もうかと、起きてコップ一ぱいに注いでみたが、このままグッスリ......
阿刀田 高 / 恋は思案の外「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
おびただしい疲労が彼の瞼を重くした。
......となった。 山井敏郎が留置場の湿った毛布の下で眼を閉じたのは、夜三時の見廻りが過ぎたあとだった。 今日一日のことを思って、まんじりともせずにいたのだが、最後にはおびただしい疲労が彼の瞼を重くした。 しかし、彼の眠りはすぐに破られた。 肩口に揺するような腕の気配を感じて首を持ち上げた。 かすかな光の中に、あの女が立っている。「どうしてこんなところに?」「あ......
もう六十時間くらい起きたまま机に向かっているのでしょうか。眼の裏に薄い膜でも張ったみたいに疲労と興奮が粘りついています。時折眼の前にもう一人の自分がすわっていて、せっせと紙の上に筆を走らせているのが見えます。
...... それ以外のなにものでもありません。 ずいぶんと字が乱れているでしょう。自分でもなにを書いているのかよくわかりません。 一昨夜も、昨夜も、一睡もしておりません。もう六十時間くらい起きたまま机に向かっているのでしょうか。眼の裏に薄い膜でも張ったみたいに疲労と興奮が粘りついています。時折眼の前にもう一人の自分がすわっていて、せっせと紙の上に筆を走らせているのが見えます。それが、まるでだれか他の人を目のあたりに眺めているように鮮明に見えるのです。おおかた頭が少しいかれ始めているのでしょう。 今こうしてお手紙を書いているのも同じ机......
阿刀田 高 / 縄 ──編集者への手紙──「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感眠たい・眠気
なにかふかいどうにもならぬ疲れをおぼえた。
......為をうちあけた時、ぼくは火鉢の中に燃えている青白い火を眺めながら考えていたのである。 ぼくは顔をあげた。柴田助教授も浅井助手も唇に微笑さえうかべていた。 ぼくはなにかふかいどうにもならぬ疲れをおぼえた。柴田助教授からもらった煙草をもみ消して椅子から腰をあげた。「参加してくれるかね」と彼は言った。「ええ」とぼくは答えた。答えたというよりは呟いた。三 午後三時 二......
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
疲れ果てて死んでしまった
......、それでもミゲル・マツダとよぶ日本人の司祭とイエズス会のマテオ・デ・コーロス師とがひそかにこの近辺の村や部落と連絡を保っていましたが、二人とも一六三三年の十月に疲れ果てて死んでしまったのでした。「で、その六年間どうしたのです。洗礼やそのほかの秘蹟を」ガルペはそう訊ねました。モキチたちが答えた話の内容ほど我々の心を動かしたものはありません。今の......
前には関心のあった、これら日本人の服装や 恰好 も、もう疲れ果てた心には何の興味もひかない。
......道の端に立ちどまり、異様なものにでもぶつかったように、放心した顔でじっと眺め続けていた。畠では、鍬を放りだして百姓たちが、こちらに一散に駆けてくることもあった。前には関心のあった、これら日本人の服装や恰好も、もう疲れ果てた心には何の興味もひかない。彼はただ眼をつぶって、夕暮の修道院で行われる「十字架の道行き」の祈りを一つ一つ、渇いた舌を動かし呟いていた。その祈りは、聖職者や信徒ならば誰もが知っている受難の......
ずっと自転車を押しつづけて、横腹のあたりがだるかった。
......〈稲〉であったかどうかは竜夫にはもうわからなかった。「ちょっと、くたびれたねェ……」 千代の言葉でみんな歩みを止めた。四人はすでに相当の距離を歩いていた。竜夫もずっと自転車を押しつづけて、横腹のあたりがだるかった。ちょっと一服じゃァと言って銀蔵は道端の石に坐り込んだ。「こんなに歩いたのは何年ぶりかのお、なんか、この世での歩き納めっちゅう気がせんでもないがや」 日灼けた銀蔵......
宮本 輝 / 螢川「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
痺れるような、荒涼たる感情が私の心を領していた。それは一部は私の肉体の疲れの、一部は今通って来た大きな草原の、孤独の効果らしかった。
......第に増えて行った。 私は疲れていた。刈り取られた玉蜀黍の切株の固い畦を渡って、そういう兵等のかたまっているところに辿りつくと、黙って腰を下し、水筒の水を飲んだ。痺れるような、荒涼たる感情が私の心を領していた。それは一部は私の肉体の疲れの、一部は今通って来た大きな草原の、孤独の効果らしかった。 原は広く、目指す病院の屋根はなかなか近くならなかった。それは波立つ萱の彼方に、手に取るように見えながら、私を取り巻く原の広さを思わせて、いつまでもちんまりと遠......
足は動かなかった。いかに大きい呼吸をしても肺臓は汚れた空気をその中に残しているように思われ、息がつまった。
......りはねえんだぞ。このくそ暑いのに、こっちに一々文句を言わせねえようにしろ。」 彼等は黙って兵長を見上げ、諦め、手綱をのばして、馬からはなれて歩いた。しかし彼等の足は動かなかった。いかに大きい呼吸をしても肺臓は汚れた空気をその中に残しているように思われ、息がつまった。そして遂には右肩を圧える防毒面の掛紐が、呼吸をとどめるように感じられた。……日中の太陽の放射する炎熱を吸い込んだ山の肌は、夜になってほてりをはきだし兵隊達の汗と......
野間 宏 / 顔の中の赤い月「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
本を読むのに疲れると(たぶん疲れたのだろう)、ページから目を上げ、前の棚に並べられた酒瓶をひとつひとつ眺めた。まるで遠くの国からやってきた珍奇な動物の 剝製 を点検するみたいに。
......、とでも言うように。夜の比較的早い時刻に、本を小脇に抱えてやってきて、それをカウンターの上に置いて読んだ。分厚い単行本だ。文庫本を読んでいるのを見たことがない。本を読むのに疲れると、ページから目を上げ、前の棚に並べられた酒瓶をひとつひとつ眺めた。まるで遠くの国からやってきた珍奇な動物の剝製を点検するみたいに。 しかし馴れてしまうと、その男と二人きりになるのは、木野にとってとくに気詰まりなことではなくなった。木野自身が無口な性格だったし、誰かと一緒にいながら口をきかな......
疲れたので駅前の喫茶店に入った。そして冷たいアイスティーにガムシロップを多めに入れて飲んだ。
......のだ。一体ここからどこに動いたのだろう。私は立ち上がって植物園の出口のほうへ歩きだした。なんの当てもなかった。 駅に戻り、また電車で移動して高校の近くに戻った。疲れたので駅前の喫茶店に入った。そして冷たいアイスティーにガムシロップを多めに入れて飲んだ。 ほてった体が強い冷房にさらされていると、今度はぞっとするほど冷えてきて、またまぶしい昼間の中に飛び出して、彼を捜し続けた。 日が暮れ始めると、さすがに足が疲れ......
島本 理生「ナラタージュ (角川文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
疲れ切って、気を抜いたら倒れそうだった。
......うだった。半年ぐらいひどい不眠症で眠れず、前にいた高校のほかの先生たちがたびたび裁判だなんだで僕が休んでいるのを不審に思っているのが伝わってきて、いろんなことに疲れ切って、気を抜いたら倒れそうだった。それで、今の高校に移ることにしたんだ。もっとも場所が変わったからって、現状はなにも変わらないと分かっていた。けど」「けど?」「君だよ」「私?」 聞き返すと、彼は......
島本 理生「ナラタージュ (角川文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
すごく歳を取ってしまったような気がする。すべてが緩慢で遠くにあるように感じられる。
......をじっと見るのだ。 僕は今ワインの瓶をじっと見つめている。ずいぶん長いあいだ見つめている。でもまだ何の結論にも達しない。 感情? うん、感情なら少しある。 僕はすごく歳を取ってしまったような気がする。すべてが緩慢で遠くにあるように感じられる。そしてジョルジョとカルロが相変わらず頭の中を飛びまわっている。ぶんぶんぶんぶんと。僕の疲弊こそが彼らの養分なのだ。 ぶんぶんぶんぶん* ジョルジョとカルロは東京......
村上春樹「遠い太鼓 (講談社文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
うまく口もきけないくらい疲れていた。からだの隙間という隙間に、歯医者が充塡用に使うセメントが詰まっているみたいな気がした。どこまでが肉体的疲労で、どこまでが時差ぼけで、どこまでが精神的消耗なのか、僕にはもう見当もつかなかった。
......るのか、いったい幾つのスーツケースを持ってきたのか、それさえ思い出せなかった。 というわけで、最初にローマのレオナルド・ダ・ヴィンチ空港に降りたったとき、我々はうまく口もきけないくらい疲れていた。からだの隙間という隙間に、歯医者が充塡用に使うセメントが詰まっているみたいな気がした。どこまでが肉体的疲労で、どこまでが時差ぼけで、どこまでが精神的消耗なのか、僕にはもう見当もつかなかった。それが我々の旅行の出発点だった。疲弊、自失、消耗。 僕は合計十日間この町に滞在した。そこで一応態勢を立て直し、それからアテネに向かった。* そのローマでの滞在中......
村上春樹「遠い太鼓 (講談社文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感
頭が求めるものに体はもうついていけない
......木々もやっと紅葉し始めた。 間延びした秋が冬を素通りにして春に突入してしまうようで、冬が冬として物足りない。 この時期桃子さんはいつもそう思う。とはいうものの、頭が求めるものに体はもうついていけないようで北国のきりっと引き締まる冬も恋しいが、今となれば暖かい冬がなによりなのだった。きれいに色づき始めた南天の葉に見とれながら、ともかくも今年も何事もなく無事に......
若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも (河出文庫)」に収録 amazon関連カテ疲れる・疲労感