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暗い気持ちが馬虻(うまあぶ)のように、しつこくからだにまつわりついて離れない
胸の底に暗い悲しみが澱む
関連カテ気分が晴れない・憂うつ
娘の気持が暗くなると、家の中には雨洩りがするときに似た陰湿なものが漂いはじめる
今にも降りだしそうな空模様な心
関連カテ気分が晴れない・憂うつ
泥絵の具で描かれた暗い絵を見ているような思い
勝目 梓 / 日蝕の街 amazon関連カテ気分が晴れない・憂うつ
おおいようもない終末感が暗い夕闇のように胸にしずみこむ
自分の胸が重くなるのを感じた。陰鬱な思いが身体を駆ける。呼吸もままならず、息を吐いても吐いても、空気が溜まってくる感覚があった。
......元で低い声がした。人の声とも風のざわめきとも自らの衣擦れの音ともつかないものだ。「人は誰でも、死にたがっている」そう聞こえた。 もう一歩、男が近づいた時、鈴木は自分の胸が重くなるのを感じた。陰鬱な思いが身体を駆ける。呼吸もままならず、息を吐いても吐いても、空気が溜まってくる感覚があった。 これは近づいてくる大男の発散する空気によるものなのか、と思いつつも、しだいに、意識が朦朧としてくる。 黒々とした憂鬱な思いが、鈴木の体内に広がった。《令嬢》で......
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon関連カテ気分が晴れない・憂うつ
穴の中へ身体が落ち込むような暗い気持
伊藤 整 / 氾濫 amazon関連カテ気分が晴れない・憂うつ
心が霧のように物憂い
関連カテ気分が晴れない・憂うつ
暗(やみ)に四方から包まれているのを、あたかも自分の心の裡(うち)さながらのような気がしながら
堀 辰雄 / 風立ちぬ amazon関連カテ気分が晴れない・憂うつ
物憂い気持ちが募る
関連カテ気分が晴れない・憂うつ
外は快晴で、夏を先取りしたような強い陽射しが降りそそいでいたが、車の中だけは梅雨空に厚く覆われていた。
......が見えていた。話をする場所として、僕は久能街道を選んでいた。冬になればイチゴ娘たちが立ち並ぶ一角──今はただの汚い小屋が並んでいるだけの場所に、車を停めている。外は快晴で、夏を先取りしたような強い陽射しが降りそそいでいたが、車の中だけは梅雨空に厚く覆われていた。「この車は向こうに持って行く」僕は思ったままを口にしていた。たった今決めたことだった。「真夜中でも、マユから電話ですぐに来てって言われたら、この車でできるだけ早......
乾 くるみ / イニシエーション・ラブ amazon関連カテ気分が晴れない・憂うつ
暗い心を持つものは暗い夢しか見ない。もっと暗い心は夢さえも見ない。
......ない。楽になったことは確かだとしても、年老いて死を迎えようとした時に一体僕に何が残っているのだろうと考えるとひどく怖い。僕を焼いた後には骨ひとつ残りはすまい。「暗い心を持つものは暗い夢しか見ない。もっと暗い心は夢さえも見ない。」死んだ祖母はいつもそう言っていた。 祖母が死んだ夜、僕がまず最初にしたことは、腕を伸ばして彼女の瞼をそっと閉じてやることだった。僕が瞼を下ろすと同時に、彼女が......
村上春樹「風の歌を聴け (講談社文庫)」に収録 amazon関連カテ気分が晴れない・憂うつ
あまり憂鬱ですから、さかさまに世の中をながめて見たのです。けれどもやはり同じことですね。
......狂したかと思い、驚いてラップを引き起こしました。 「
常談じゃない。何をしている?」 しかしラップは目をこすりながら、意外にも落ち着いて返事をしました。 「いえ、
あまり憂鬱ですから、さかさまに世の中をながめて見たのです。けれどもやはり同じことですね。」
これは哲学者のマッグの書いた「
阿呆の言葉」の中の何章かです。―― × 阿呆はいつも彼以外のものを阿呆であると信じている。 ×......
芥川龍之介 / 河童 青空文庫関連カテ気分が晴れない・憂うつ
憂鬱な気分の中に閉ざされる
関連カテ気分が晴れない・憂うつ
胸に重しが乗っかる。
......さんも力なく笑い返してきた。「そうだよね、ごめんね。いまお昼ご飯を作ってたところなの」「おじゃまします」 部屋に入り、リビング兼台所のスペースが近づいてくると、胸に重しが乗っかる。自分の愛している男の人と違う女の人が住んでいる場所なんて、本当は見たくない。 少しまえを歩くアキヨさんからシャンプーの香りが漂ってくる。隆大の頭からも同じにおい......
僕の心もちは明るい電燈の光の下にだんだん憂鬱になるばかりだった。
......僕はテエブルの隅に坐り、ナイフやフォオクを動かし出した。正面の新郎や新婦をはじめ、白い凹字形のテエブルに就いた五十人あまりの人びとは勿論いずれも陽気だった。が、僕の心もちは明るい電燈の光の下にだんだん憂鬱になるばかりだった。僕はこの心もちを遁れる為に隣にいた客に話しかけた。彼は丁度獅子のように白い頬髯を伸ばした老人だった。のみならず僕も名を知っていた或名高い漢学者だった。従って又僕......
芥川竜之介 / 歯車 青空文庫関連カテ気分が晴れない・憂うつ
憂鬱が取り巻いてくる
関連カテ気分が晴れない・憂うつ
廊下はきょうも不相変牢獄のように憂鬱だった。
......けて中を探しまわった。が、白いタッブのかげにも鼠らしいものは見えなかった。僕は急に無気味になり、慌ててスリッパアを靴に換えると、人気のない廊下を歩いて行った。 廊下はきょうも不相変牢獄のように憂鬱だった。僕は頭を垂れたまま、階段を上ったり下りたりしているうちにいつかコック部屋へはいっていた。コック部屋は存外明るかった。が、片側に並んだ竈は幾つも炎を動かしていた。......
二重の憂鬱を味わう
関連カテ気分が晴れない・憂うつ
両側に並んだ店や目まぐるしい人通りに一層憂鬱にならずにはいられなかった。殊に往来の人々の罪などと云うものを知らないように軽快に歩いているのは不快だった。
......掛りだった。僕はこのホテルへはいることに何か不吉な心もちを感じ、さっさともとの道を引き返して行った。 僕の銀座通りへ出た時にはかれこれ日の暮も近づいていた。僕は両側に並んだ店や目まぐるしい人通りに一層憂鬱にならずにはいられなかった。殊に往来の人々の罪などと云うものを知らないように軽快に歩いているのは不快だった。僕は薄明るい外光に電燈の光のまじった中をどこまでも北へ歩いて行った。そのうちに僕の目を捉えたのは雑誌などを積み上げた本屋だった。僕はこの本屋の店へはいり、ぼんや......
芥川竜之介 / 歯車 青空文庫関連カテ気分が晴れない・憂うつ
さえざえしていた気分が、沈みかけた秋の日のように陰ったりめいったりし出して、冷たい血がポンプにでもかけられたように脳のすきまというすきまをかたく閉ざした。
......等に乗らなかったのだろう。こういう事がきっとあると思ったからこそ、乗り込む時もそういおうとしたのだのに、気がきかないっちゃないと思うと、近ごろになく起きぬけからさえざえしていた気分が、沈みかけた秋の日のように陰ったりめいったりし出して、冷たい血がポンプにでもかけられたように脳のすきまというすきまをかたく閉ざした。たまらなくなって向かいの窓から景色でも見ようとすると、そこにはシェードがおろしてあって、例の四十三四の男が厚い口びるをゆるくあけたままで、ばかな顔をしながらまじ......
そんな事を思うと葉子は悒鬱が生み出す反抗的な気分になって、湯をわかさせて入浴し、寝床をしかせ、最上等の三鞭酒を取りよせて、したたかそれを飲むと前後も知らず眠ってしまった。
......ほど葉子に対して反感を持っている永田が、あの単純なタクトのない古藤をどんなふうに扱ったろう。永田の口から古藤はいろいろな葉子の過去を聞かされはしなかったろうか。そんな事を思うと葉子は悒鬱が生み出す反抗的な気分になって、湯をわかさせて入浴し、寝床をしかせ、最上等の三鞭酒を取りよせて、したたかそれを飲むと前後も知らず眠ってしまった。 夜になったら泊まり客があるかもしれないと女中のいった五つの部屋はやはり空のままで、日がとっぷりと暮れてしまった。女中がランプを持って来た物音に葉子はようやく目......
有島武郎 / 或る女(前編) 青空文庫関連カテ気分が晴れない・憂うつ
なんとなく憂鬱として面白くない
関連カテ気分が晴れない・憂うつ
どこからともなく不意に襲って来る不安は葉子を底知れぬ悒鬱の沼に蹴落とした。
......、葉子は全く孤独である事を深く感じた。そして始終張りつめた心持ちと、失望からわき出る快活さとで、鳥が木から木に果実を探るように、人から人に歓楽を求めて歩いたが、どこからともなく不意に襲って来る不安は葉子を底知れぬ悒鬱の沼に蹴落とした。自分は荒磯に一本流れよった流れ木ではない。しかしその流れ木よりも自分は孤独だ。自分は一ひら風に散ってゆく枯れ葉ではない。しかしその枯れ葉より自分はうらさびしい。......
唇からは、微笑と言葉が流れた星のように消えて行った。
......の鹿と馬とはだんだんと肥えて来た。しかし、長羅の頬は日々に落ち込んだ。彼は夜が明けると、櫓の上へ昇って不弥の国の山を見た。夜が昇ると頭首を垂れた。そうして、彼の唇からは、微笑と言葉が流れた星のように消えて行った。彼のこの憂鬱に最も愁傷した者は、彼を愛する叔父の祭司の宿禰と、香取を愛する兵部の宿禰の二人であった。ある日、祭司の宿禰は、長羅の行衛不明となったとき彼の行衛を占......
冷たい陰鬱が襲い掛かってくる
関連カテ気分が晴れない・憂うつ
火の消えたような気持。
......じられず、わざとらしく、変に感じられた。何でもないはずのことを、行きがかりで、仰々しく、悲壮らしく振舞っているような落着かなさ。同時に何とも云えずがらんどうな、火の消えたような気持。――伸子は坐り込んだまま、この妙な心持に沈んでいた。母は母で、両腕でしっかり自分の胸を抱き込むようにしながら、じっと前方を見据えて動かない。―― 佃が立ちかけて......
ジーンと沁み込んでいく様な陰鬱
関連カテ気分が晴れない・憂うつ
伸子の精神からは、健全な意志が腐れ落ちたような有様であった。彼女に決心というものは殆ど何一つできなかった。
......たいへん自然に片づいてよい――そのように考える。執念深く、一日じゅう飽きず、そのようなことを思いつづけた。その癖、逃げるなら逃げる実行方法を計画するかと云えば、伸子の精神からは、健全な意志が腐れ落ちたような有様であった。彼女に決心というものは殆ど何一つできなかった。ただ思う、思う。彼女は夢のうちでさえ、そのように思い悩んでいるままの自分をみた。 その夏、伸子は、佃に連れられて彼の故郷に行っていた。二階を自分の部屋にしていた......
(夜に安心する)備校の自習室を出て、あっというまに夜になっていることに、私はほんとうは安心している。大学生になることに成功した人たちがシャキシャキと消費する昼間の空気に触れなくて済んだことに、毎日、ほっと安心する。
......。 もうすぐ二十歳になる。二十歳になっても、その瞬間をたったひとり予備校で過ごしたとしても、私の目の前にはこれまでと同じように、二十四時間が横たわっている。 予備校の自習室を出て、あっというまに夜になっていることに、私はほんとうは安心している。大学生になることに成功した人たちがシャキシャキと消費する昼間の空気に触れなくて済んだことに、毎日、ほっと安心する。 ほら空見て、あした晴れだよー、つばきっ。 えー! じゃあマラソンがあるじゃん、やだやだやだやだ! 大丈夫、こっさんがふたりぶん走ってくれるってさ。 それはむり......
朝井 リョウ / もういちど生まれる「もういちど生まれる (幻冬舎文庫)」に収録 amazon関連カテ気分が晴れない・憂うつ
牛のような青年は、巨獣が小さい疵にも悩み易いように、常に彼もどろんとした憂鬱に陥っている。それでむす子は、何か憐愍のような魅力をこの男に感ずる
......交渉している無形な電気を感じ取った。 かの女の隣にいる小ざっぱりした芸術写真師は、見かけだけ快く、内容はプーアなので、むす子に案外嘗められているのかも知れない。牛のような青年は、巨獣が小さい疵にも悩み易いように、常に彼もどろんとした憂鬱に陥っている。それでむす子は、何か憐愍のような魅力をこの男に感ずるらしい――。 むす子は男性に対しては感受性がこまかく神経質なのに、女性に対しては割り合いに大ざっぱで、圧倒的な指揮権を持っていた。 女たちは、何かいうにも、むす......
天気が曇りだしたような味気ない気持ち
関連カテ気分が晴れない・憂うつ
憂鬱が立て罩めて来る、私は歩き廻った疲労が出て来たのだと思った。
......ずかずか入って行った。 しかしどうしたことだろう、私の心を充たしていた幸福な感情はだんだん逃げていった。香水の壜にも煙管にも私の心はのしかかってはゆかなかった。憂鬱が立て罩めて来る、私は歩き廻った疲労が出て来たのだと思った。私は画本の棚の前へ行ってみた。画集の重たいのを取り出すのさえ常に増して力が要るな! と思った。しかし私は一冊ずつ抜き出してはみる、そして開けてはみるのだが、克明......
寝るには余り暗い考えが彼を苦しめる
......。
喬は彼の心の風景をそこに指呼することができる、と思った。
どうして喬がそんなに夜更けて窓に起きているか、それは彼がそんな時刻まで寝られないからでもあった。
寝るには余り暗い考えが彼を苦しめるからでもあった。彼は悪い病気を女から得て来ていた。 ずっと以前彼はこんな夢を見たことがあった。 ――足が
地脹れをしている。その上に、
噛んだ歯
がたのようなものが
二......
暗澹となりまさる胸の中
関連カテ気分が晴れない・憂うつ
(街に出掛けたが)舗道が早くも疲労ばかりしか与えなくなりはじめる
......た。そしてほんとうに連れがなくとも金と健康を持っている人に、この物欲の市場が悪い顔をするはずのものではないのであった。 「何をしに自分は銀座へ来るのだろう」 堯は舗道が早くも疲労ばかりしか与えなくなりはじめるとよくそう思った。堯はそんなときいつか電車のなかで見たある少女の顔を思い浮かべた。 その少女はつつましい微笑を泛べて彼の座席の前で釣革に下がっていた。どてらのよ......
梶井基次郎 / 冬の日 青空文庫関連カテ気分が晴れない・憂うつ
(夕方)僕はこの頃今時分になると情けなくなるんだ。空が奇麗だろう。それにこっちの気持が弾まないと来ている
......けられて見えた。歩きながら大槻は社会主義の運動やそれに携わっている若い人達のことを行一に話した。 「もう美しい夕焼も秋まで見えなくなるな。よく見とかなくちゃ。――僕はこの頃今時分になると情けなくなるんだ。空が奇麗だろう。それにこっちの気持が弾まないと来ている」 「呑気なことを言ってるな。さようなら」 行一は毛糸の首巻に顎を埋めて大槻に別れた。 電車の窓からは美しい木洩れ陽が見えた。夕焼雲がだんだん死灰に変じていった。......
梶井基次郎 / 雪後 青空文庫関連カテ気分が晴れない・憂うつ夕方
暗い気持ちにさいなまれる
関連カテ気分が晴れない・憂うつ
以前自分はよく野原などでこんな気持を経験したことがある。それはごくほのかな気持ではあったが、風に吹かれている草などを見つめているうちに、いつか自分の裡にもちょうどその草の葉のように揺れているもののあるのを感じる。それは定かなものではなかった。かすかな気配ではあったが、しかし不思議にも秋風に吹かれてさわさわ揺れている草自身の感覚というようなものを感じるのであった。酔わされたような気持で、そのあとはいつも心が清すがしいものに変わっていた。
......ならない自分はよくぼんやり鏡や薔薇の描いてある陶器の水差しに見入っていた。心の休み場所――とは感じないまでも何か心の休まっている瞬間をそこに見出すことがあった。以前自分はよく野原などでこんな気持を経験したことがある。それはごくほのかな気持ではあったが、風に吹かれている草などを見つめているうちに、いつか自分の裡にもちょうどその草の葉のように揺れているもののあるのを感じる。それは定かなものではなかった。かすかな気配ではあったが、しかし不思議にも秋風に吹かれてさわさわ揺れている草自身の感覚というようなものを感じるのであった。酔わされたような気持で、そのあとはいつも心が清すがしいものに変わっていた。 鏡や水差しに対している自分は自然そんな経験を思い出した。あんな風に気持が転換できるといいなど思って熱心になることもあった。しかしそんなことを思う思わないに拘ら......
憂鬱になっているときの私の顔はきっと醜いにちがいありません。見る人が見ればきっとそれをよしとはしないだろうと私は思いました。
......うな音楽です。時には嘲笑的にそしてわざと下品に。そしてそれが彼等の凱歌のように聞える――と云えば話になってしまいますが、とにかく非常に不快なのです。 電車の中で憂鬱になっているときの私の顔はきっと醜いにちがいありません。見る人が見ればきっとそれをよしとはしないだろうと私は思いました。私は自分の憂鬱の上に漠とした「悪」を感じたのです。私はその「悪」を避けたく思いました。然し電車には乗らないなどと云ってはいられません。毒も皿もそれが予め命ぜられ......
梶井基次郎 / 橡の花――或る私信―― 青空文庫関連カテ気分が晴れない・憂うつ
あたりが暗く閉ざされた気持ち
関連カテ気分が晴れない・憂うつ
雨が続くと私の部屋には湿気が充満します。窓ぎわなどが濡れてしまっているのを見たりすると全く憂鬱になりました。
......く程の距離にかなひでという木があります。朴の一種だそうです。この花も五月闇のなかにふさわなくはないものだと思いました。然しなんと云っても堪らないのは梅雨期です。雨が続くと私の部屋には湿気が充満します。窓ぎわなどが濡れてしまっているのを見たりすると全く憂鬱になりました。変に腹が立って来るのです。空はただ重苦しく垂れ下っています。 「チョッ。ぼろ船の底」 或る日も私はそんな言葉で自分の部屋をののしって見ました。そしてそのののしり方......
暗澹とした気持ちになってきて、一切合切が、うたかたの泡より儚なく、めんどくさく思えて来る。
......りの短篇を書きあげる。この六枚ばかりのものを持って、雑誌社をまわることは憂鬱になって来た。十子は食パンを一斤買って来てくれる。古新聞を焚いて茶をわかしていると、暗澹とした気持ちになってきて、一切合切が、うたかたの泡より儚なく、めんどくさく思えて来る。 「私、つくづく家でも持って落ちつきたくなったのよ、風呂敷一ツさげて、あっちこっち、カフエーやバーをめがけて歩くのは心細くなって来たの……」 「私、家なんかちっとも......
林芙美子 / 新版 放浪記 青空文庫関連カテ気分が晴れない・憂うつ
墨汁を流し込んだような暗さが心を重く押し付ける
関連カテ気分が晴れない・憂うつ
笠原メイがいなくなってしまうと、僕の体は再びあのつぎめひとつないのっぺりとした灰色の雲のかげに覆われてしまったように感じられた。
......えりの人々の群れの中に吸いこまれるように消えてしまい、もう二度と戻ってこないのを見届けてから、僕は上着のポケットに手をつっこんだまま適当な方向に歩きはじめた。 笠原メイがいなくなってしまうと、僕の体は再びあのつぎめひとつないのっぺりとした灰色の雲のかげに覆われてしまったように感じられた。頭上を見あげると、雲はまだそこにあった。ぼんやりとした灰色に夜のブルーが混じり、注意して見なければそこに雲があることすらわからないほどだったが、それはあいかわら......
村上春樹 / 双子と沈んだ大陸「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ気分が晴れない・憂うつ曇り空・曇天
(忘れられない元恋人)黒崎の記憶は慣れっこになった慢性の疼痛だ。忘れている時間も多い。が、たとえ忘れていても痛みが続いている以上は、 清々しい気分になったり、何かに夢中で取り組んだり、ぐっすり眠ったりすることは不可能なのだ。
......映画を観ることのほかに、いったい何ができるだろう? それでも映画さえも観ず、これといって何もしない日もあるにはある。昨日までの二、三日がそうだった。そういう日、黒崎の記憶は慣れっこになった慢性の疼痛だ。忘れている時間も多い。が、たとえ忘れていても痛みが続いている以上は、清々しい気分になったり、何かに夢中で取り組んだり、ぐっすり眠ったりすることは不可能なのだ。 何もしない日と、映画を観る日と、どちらが過ごしやすいかは一概には言えない。 何もしない日の黒崎を忘れている間は、何かくだらないことをぼんやり考えている。ほんと......
火の消えたような気持ち
関連カテ気分が晴れない・憂うつ
歩き出してはみたけれど、それは家を目指して歩いていたわけではなく、ただ肉体に従い引きずられているような感覚に近かった。《…略…》自分の肉体よりも少し後ろを歩いているような感覚で、肉体に対して止まるよう要求することはできなかった。
......った。どこでもないような場所で、乾ききった排水溝を見ていた。誰かの笑い声がいくつも通り過ぎ、蟬の声が無秩序に重なったり遠ざかったりしていた。ついにきっかけもなく歩き出してはみたけれど、それは家を目指して歩いていたわけではなく、ただ肉体に従い引きずられているような感覚に近かった。僕の肉体は明治通りを南へ歩いて行くようだったけれど、一向に止まる気配を見せなかった。 自分の肉体よりも少し後ろを歩いているような感覚で、肉体に対して止まるよう要求することはできなかった。表参道とぶつかる原宿の交差点に近づくと、急に人が増えたように感じた。いや、少し前から人は増えていたのだと思う。人波にのまれ、あらゆる音が徐々に重なったが、自分の......
鉛 のような気分
......考えているのかわからない時があった。彼がずっとウサギを飼っていたことも僕は最近になって知った。そんな野原が僕に笑いかけたのだ。さて、どうやって話を切り出そうかと鉛のような気分で野原の隣に座った。 辞めたいと申し出た二人とは向かい合う形になっている。金髪で長身の男が戸田で、打ち上げや酒席では大体この男が座の中心になった。坊主刈りで細身......
又吉直樹「劇場(新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ気分が晴れない・憂うつ
両足が空中を歩いているように浮ついていて、いつまでも目的地に到着しなければ良いという気持ちが身体に反映されているようだった。
......店長が連れて何人かで飲みに行ったということだろうか。二人で帰ったというニュアンスをどうしても否定したかった。 そもそも、なぜ僕は店長の家に向かっているのだろう。両足が空中を歩いているように浮ついていて、いつまでも目的地に到着しなければ良いという気持ちが身体に反映されているようだった。 田所が誤解している可能性はないか。あいつは何も把握していなくて、青山から聞いた話をすべて鵜呑みにして話しているだけではないのか。今日も一人で飲みたかっただけで......
又吉直樹「劇場(新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ気分が晴れない・憂うつ
打ちひしがれたようにじっと目を落としたまま黙り込む
メンバーは鉛でも飲み込んだような顔で言葉を失った。
......ことをしなきゃならない理由があるんですか」「カネの問題じゃない」 佃は断言した。「これはエンジン・メーカーとしての、夢とプライドの問題だ」 テーブルを囲んでいたメンバーは鉛でも飲み込んだような顔で言葉を失った。「プライドといわれても……」 困惑した口調で唐木田は首を振っている。「あの帝国重工にエンジン関連の特許を提供するだけでも、そんじょそこらの会社にできることではな......
真昼でも 闇 の中にいるようないやな気分になった。
......らないものだ。 そんなものはもうどこにもない。全てがいつの間にかすっかりがらん、と終わってしまって、今は時間をかせぐより他にすることがなにもない。 そう思う度、真昼でも闇の中にいるようないやな気分になった。「そういえば智明、お姉ちゃんに赤ちゃんできたの知ってる?」 母親が言った。少しもじっとしていないたちの人で、いつも台所を動き回ってなにかすることを探していた。少......
その前を通るときだけが嫌だった。飛行機に乗る前に空港でやられる、X線のゲートをくぐるあのときの気の重さに似ている。
......る客で小さな列が出来ている。 波津子は強い化粧のせいか別人のように華やかに見えた。その奥の、古びた雛人形のような目鼻立ちの小造りな留袖は、波津子の母親であろう。その前を通るときだけが嫌だった。飛行機に乗る前に空港でやられる、X線のゲートをくぐるあのときの気の重さに似ている。「おめでとう」「おめでとうございます」 すこし大き過ぎたかな、と思うほど声を張って挨拶した。大きな声を出して笑いながらしゃべると、左の頰は震えないのである。 波......
向田邦子 / 三枚肉「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ気分が晴れない・憂うつ
その事は不思議な重苦しいものとして、僕の頭に 被いかぶさっていた
......会に又それを繰返さず、打明けて下さった事を心から感謝しています。君が打明けて下さらなければ、僕はまだまだ知らずにいなければならなかったのです。しかも知らぬままにその事は不思議な重苦しいものとして、僕の頭に被いかぶさっていたかも知れません。どうか僕の事は心配しないで頂きます。僕は知ったが為に一層仕事に対する執着を強くする事が出来ます。それが僕にとって唯一の血路です。そこに頼って打克......
私は心に気の滅入る虫を飼っているよう
関連カテ気分が晴れない・憂うつ
踏張 って見ても、泥沼に落込んだように 足 搔 きがとれず、気持は下へ下へ沈むばかりだった。
......かに感ぜられた。そして実際弾ね返す事が出来たのだが、今度の事ではなぜかそういう力を彼は身内の何所にも感ずる事が出来なかった。こんな事では仕方がない、こう思って、踏張って見ても、泥沼に落込んだように足搔きがとれず、気持は下へ下へ沈むばかりだった。独身の時あって、二人になって何時かそういう力を失って了った事を思うと淋しかった。 少時して二人は二年坂を登り、そこの茶屋に入った。謙作は縁の籐椅子に行って、倒れ......
いつもは心を癒してくれる歌声も今日ばかりはまるで効果がない
戦争が勝とうが負けようが勝呂にはもう、どうでも良いような気がした。それを思うには 躰 も心もひどくけだるかったのである。
......分には理解できぬ歯車がまわっているような気がする。 海は今日、ひどく黝んでいた。黄いろい埃がまたF市の街からまいのぼり、古綿色の雲や太陽をうす汚くよごしている。戦争が勝とうが負けようが勝呂にはもう、どうでも良いような気がした。それを思うには躰も心もひどくけだるかったのである。三「五十六億七千万、弥勒菩薩はとしを経ん まことの信心うる人は、このたび燈を開くべし……」「そのままでいいけん、ジッと寝ときなさい」「はい」 勝呂が診察をしてい......
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon関連カテ気分が晴れない・憂うつ
白々とした空虚感が、時には突然黒い怒りに変ることがあった。
......れどもそうした事を考えるのも気だるかったし、考えてもわかりそうになかった。短期現役を明日にもひかえている現在、凡てはどうでもよいような気さえしてくる。 そうした白々とした空虚感が、時には突然黒い怒りに変ることがあった。勝呂がおばはんを叩いたのも、そんな感情にかられてだった。 その日、彼は薬用の葡萄糖の塊りを臨床の時、ひそかにおばはんの枕もとにおいてやった。阿部ミツがそれを横眼......
肉親に死なれたようにふさぎ込む
関連カテ気分が晴れない・憂うつ
暗雲に閉じ込められる
関連カテ気分が晴れない・憂うつ