休学する東大生
第8回 濱田純一・元東大総長に聞く 「東大生の休学者増加は日本社会の変化の兆し」
2022.10.24
休学する東大生が急増しています。東大が保存している2009年以降のデータでは、学部生の休学者は年を追って増え、22年の休学者(5月1日現在)は09年に比べて85%も増えていることがわかりました。東大生に聞くと、「休学して自分のやりたいことをする人が増えている」と言います。かつては4年でストレートに卒業して、官僚や有名企業を目指した東大生の意識が大きく変化していることがわかります。濱田純一・元東大総長にこの傾向をどう見るか、聞きました。(写真は、東大安田講堂)
(はまだ・じゅんいち)1950年兵庫県生まれ。東京大学法学部卒、同大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。法学博士。同新聞研究所教授、社会情報研究所長、大学院情報学環長・学際情報学府長、副学長を経て、2009~15年、東京大学総長。現在は映画倫理機構代表理事などを務める。
データを見てほーっと思った
――休学して自分のやりたいことを見つけたり、興味のあることを深めようとしたりする東大生が増えています(=下のグラフ。関係記事はこちら)。この傾向をどう見ますか。
データを見せてもらって、ほーっと思いました。総長だった時期に2013年度入学生から始めた「FLYプログラム」(初年次長期自主活動プログラム)は、それが目的でした。FLYプログラムは、欧米のギャップイヤーを念頭に、入学直後の学生が1年間の特別休学期間を取得して、東大以外の場所でボランティア活動や国際交流活動などを行うプログラムです。FLYプログラムに参加する学生は人数が限られていましたが、2010年代半ば以降に休学者がこれだけ増えているのを知り、自分の成長のために休学を選ぶ学生が育っているのは面白い傾向だと思います。自分を見つめ直すには、一定の余裕が必要だからです。
――休学した学生は、3年になって周りが就活や大学院進学に向けて動き出し、このままレールに乗っていいのか、自分のしたいことは何なのかと悩んで休学を選んだケースが多いです。
就活が休学を考えるきっかけになったのかもしれませんが、1、2年の間に考える目を養っていたのではないですか。最初から飛び抜けて好奇心のある人が東大に入ってくることは少なく、駒場キャンパスでの2年間の教養の学びや、学生団体や自主ゼミの活動などを通じて、考える機会があったのではないかと思います。
自分探しという言い方もできますが、自分は何者かといった抽象的なことではなく、周囲の期待は別にして、自分はどんな人生を過ごしたいのか、そのためにどんなステップを積めばいいのかと、地に足がついた自分探しと言えます。