身近になるサイエンス
VRで打撃練習、記録が見える水泳ゴーグル…最新トレーニング法から学ぶ科学技術の進化とは
2023.11.10
2023年もいよいよ終盤に差し掛かってきました。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)、バスケットボールやラグビーのワールドカップなど、今年はさまざまなスポーツの世界大会が行われた年でした。スポーツ選手の活躍に勇気をもらう人も多かったのではないでしょうか。ところでみなさん、スポーツ選手のトレーニング方法、一昔前とは大きく変わっているのをご存じでしょうか。今回はそんなスポーツにかかわるサイエンスを紹介します。データの「見える化」に注目しながら、最新のトレーニング方法を一緒に見ていきましょう。(写真は、VR〈仮想現実〉システムを使って打撃トレーニングをする横浜DeNA(現巨人)の梶谷隆幸選手=2017年3月、横浜市中区の横浜スタジアム)
球技ではデータを「見える化」 VRの活用も
「WBCロス」。今年3月にSNS上で話題になったワードです。大谷翔平選手をはじめとした日本代表の大活躍は日本中を感動の渦に巻き込みました。その反動で、大会が終わって心にすっぽり穴が開いたような「ロス」を味わう人が多かったのでしょう。
これまでスポーツは人々に多くの感動を与えてきました。それはひとえにスポーツ選手の努力によるものですが、スポーツ選手の技術向上にはトレーニング方法の進化もかかわっています。最近は、一昔前では考えられなかったような、テクノロジーを用いたトレーニング方法が登場しつつあります。
スポーツの世界では、データによる「見える化」が重要です。例えば、KDDIは、スマートフォンのカメラで撮影した映像から、全身65カ所の骨格点を抽出することで、身体の使い方の分析を行う技術を発表しています。サッカーや野球、クライミングの選手が、自身のフォームを「見える化」することで、より効果的な身体の使い方を研究することができます。
また、GPSを用いたトレーニングも有名です。サッカーやラグビーなどで、選手のフィールドでの動きを「見える化」し、一人ひとりの走行距離やスピードなどを解析します。それらのデータがあれば、トレーニングの負荷を適切に調整することができます。
最新のトレーニング方法はこれだけではありません。なかには「本当にそんなものが!?」と目を疑いたくなるようなユニークなものもあります。いくつか紹介しましょう。
例えば野球では、VRを活用したトレーニング方法が導入されつつあります。NTTデータが開発している打撃トレーニングシステム「V-BALLER(ブイボーラー)」はその一つです。プロジェクト自体は、2017年に楽天イーグルスに導入し、その後大リーグ機構(MLB)でも展開。昨年からはアマチュア向けにも導入されています。
V-BALLERとは、ヘッドマウントディスプレーを頭に装着することで、VR空間上でリアルな投球を体験できるシステムです。同時に身体にセンサーをつければ、頭や体の動き、タイミングの取り方なども数値化され、自分のスイングの特徴が一目でわかります。プロ野球選手が試合前のイメージトレーニングに使うことができるのはもちろん、高校生がプロの投手のピッチングを体験して技術向上に努めることもできます。ゲームにも使われるVRがスポーツの世界でも使われているのです。
バスケットボールでもユニークな技術が登場しています。スマホとつながるセンサーを搭載したボールが開発されているのです。ボールの中に直接センサーを入れることで、シュートの成功率はもちろん、シュートを放った位置や力の入れ方のデータを分析して、自分の癖や改善点をアドバイスしてくれます。またしても「見える化」です。苦手なシュートの位置がわかれば、その位置での練習を集中的に行うことで、トレーニングの効果を上げることができます。
勘の鋭い方はお気づきかもしれませんが、この技術は球技であれば他のスポーツにも応用できます。実際に、野球やサッカーのボール内にセンサーを入れてデータを集める取り組みがすでに行われています。あらゆることがデータ化されていくことにちょっとワクワクしませんか。