Think Gender
増える理工系女子学生向け奨学金 ソニーグループも年最大120万円の給付型制度を創設
2024.05.27
理系人材への社会のニーズが高まるなか、大学の理工系学部で学ぶ女子学生を支援する企業や団体が増え始めています。エンターテインメントから電子機器、金融まで多様な事業を展開するソニーグループも今年度、奨学金給付制度を設けました。
(たねがしま・よしこ) 総合電機や自動車メーカー、リテールや製薬会社などさまざまな業界で、労務、組織・人材開発、タレントマネジメント、Diversity,Equity & Inclusion、HRBPなど幅広く人事領域を経験し、2022年入社。現在はソニーグループの採用活動を統括している。
(やますげ・ひろゆき) 2002年に入社し、研究所において情報通信技術の研究開発に携わったのち、エンジニア経験をもとに組織・人材開発などの人事業務に09年から従事。現在はソニーグループのエンジニア向け人事施策とエンジニア交流促進を担当している。
理工系女子学生を支援する奨学金制度は、すでにトヨタ自動車を中心とするトヨタグループやメルカリ創業者が創設した山田進太郎D&I財団が実施中で、LSI(大規模集積回路)を設計・開発するグローバル・ファブレス(工場を持たない)半導体メーカー、メガチップスが今年度始めた〈※文末に詳細〉。新たにソニーグループが制度を設けた背景や意図を、制度創設の中心になった2人に聞いた。
理工系女性の母数そのものを増やしたい
――今回、理工系女子学生向けに授業料相当額の奨学金を給付するなどの制度「SONY STEAM GIRLS EXPERIENCE」を立ち上げるにあたって、社内ではどのような議論があったのでしょうか
種子島)ソニーは「クリエイティビティーとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」ことを存在意義としています。その実現のためにイノベーションの原動力となる人材の多様性が不可欠であるという価値観があります。
そしてもう一点、テクノロジーが人々の生活を支える時代に、理系人材の獲得競争が年々厳しくなってきています。ソニーも当然、人材獲得に力を入れていますが、その多様性を考えるときに、そもそも日本における理工系女子学生の母数が少なすぎることが大きな課題です。理工系に入る女性は大学入学者の約7%とされ、ほんとうにわずかしかいません。
そうなると、もはや採用活動の強化というだけでは間に合わない。大学生よりもっと若い高校生、中学生に向けて、文理選択のはざまで何か偏見なり悩みがあるのであれば、そこにアプローチして、全体的な変化を生み出していきたいと考えました。
理工系女子学生が一定数まで増えるまでの間、焦点を絞ってやっていくことに意味があると思っています。
――女性だけに絞った個別の奨学金給付に踏み込むことに対して、「男性差別と批判されるのでは」といった懸念はありませんでしたか
種子島)今回の施策を進めるうえで、そういうハードルはありませんでした。ソニーにおいても女性エンジニアが絶対的に少ないという事実については、グループの各事業会社も課題に挙げています。だからこそ、ここ数年、東京大学メタバース工学部や奈良女子大学など大学との連携をはじめ、いろいろな取り組みをやってきました。
こうしたいままでの流れのなかで、さらに若年層にアプローチする施策なので、これが最初の議論というわけではありませんでした。産学連携のなかでできることもたくさんありますが、企業と大学という枠組みではなく、自分たちがオーナーシップを持つ取り組みであれば、自由に越境しやすい。そこは一つのメリットかなと。
――女子学生の理工系選択に際して経済的な問題が障害になっているという認識もありますか
種子島)今回の施策を大学に説明するなかで、理工系は授業や研究の時間が多いので、なかなかアルバイトができず、お金の面で苦労している学生が多いと聞きました。そういう意味では、授業料を給付する支援は、学生にとっては学びに集中できるという点で価値あるものになるのではないかと思います。
これまで採用活動などでお付き合いのある全国の理工系を持つ大学100ぐらいに案内を送って、ポスター掲示のお願いをしています。要望があれば、それ以外の大学にも送ります。告知した大学からはポジティブな反応をもらっています。学生にとってはものすごくいいプランだと。できるだけ情報拡散しますという協力的な反応です。初年度なので、どれくらい応募が来るかは手探りですが。