Think Gender
幸せになるためのジェンダー教育 支配や抑圧のない関係を 元小学校教員の「生と性の授業」(後編)
2025.11.14
子ども時代の過酷な体験、癒えぬ傷とともに生き抜いた先で、星野俊樹さんが出会ったのがフェミニズムでした。フェミニズムがどのように星野さんの教育観や人生観を形作ったのか、ジェンダーという課題に、子どもたちとどのように向き合ってきたのか、また、家庭内におけるジェンダー教育についても聞きました。(前編はこちら)
(ほしの・としき)1977年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、雑誌編集者を経て小学校教師に転身。公立小学校での勤務を経て、京都大学大学院教育学研究科に進学し、修士課程を修了。その後、私立小学校に着任し、教員としてのキャリアを重ねる。教員歴は20年。現場では、ジェンダー平等を目指す教育実践に取り組んできた。2025年3月末に退職し、現在は執筆や講演などを通じて活動の幅を広げている。著書に『とびこえる教室—フェミニズムと出会った僕が子どもたちと考えた「ふつう」』(時事通信社)。
「生と性の授業」
――休職を経て教員として復帰された後、フェミニズムの視点を取り入れた教育実践を始められたのですね。
「生きづらさを抱える子どもを減らしたい」という強い思いから、フェミニズムの視点を取り入れた「生と性の授業」に本格的に取り組むようになりました。私自身、フェミニズムを学ぶことで、以前よりもずっと自分らしく生きられるようになったと感じています。
――星野さんにとって、フェミニズムとはどのような営みなのでしょうか。
まず、内面化された自己責任論や能力主義を問い直すことです。そして、ジェンダー規範の抑圧から人間を解放し、誰もが自分らしく生きられるようにすること。また、男性中心社会の持つ暴力的な構造を明らかにし、その支配から弱者を守ることでもあります。さらには、ケアを通じて、傷ついた人間同士が互いをエンパワーし合うこと、そしてマイノリティーを抑圧する社会構造そのものを変える営みを促すことだと考えています。
最初に取り組んだのは、私と同じ性的マイノリティーの子どもたちが、自信をもって自分らしく生きられるための実践でした。2017年に、ジェンダーやセクシュアリティーに踏み込んだ性教育に取り組むことを決意しました。そもそも性とは、本質的には「私」や「あなた」のあり方や生き方そのものです。だから、性教育は同時に生教育でもある。そう考え、自分がこれから取り組む授業を「生と性の授業」と名づけたのです。